赤い戦艦竜と決着を!!

作者:なちゅい

●現れた戦艦竜だが……
 神奈川県南部に広がる相模湾。
 そこでは、多数の漁船が操業している。ここで獲れる、カツオ,マグロ,アジ,ブリなどの海の幸は、日々の食卓でおなじみの食材だ。
 とある1隻の漁船もまた、それらの魚を獲るべく操業を行っていたのだが……。
「また現れやがった!!」
 乗組員は、海底から近づく物陰を察知して、叫んだ。
 今まで2度、この漁船はこの海に潜む紅い戦艦竜に沈没されられている。船の所々は植物風味になっており、ケルベロスのヒールグラビティによって補修された跡が見える。
 だが、『2度あることは3度ある』ということわざがある。
 深海から現れた戦艦竜はジェット噴射で近づいてきていた。そして、10メートルもの巨体で直接、漁船に向けて突撃してくる。
「く、逃げら……れん!!」
 なんとか舵を切って逃げようとするが、あまりに巨大な戦艦竜から、逃れることはできなかった。船体を砕かれ、またも乗組員達は救命胴衣を身につけて脱出する。
「今回こそ、頼むぞ、ケルベロス……!!」
 3度も船を沈められ、悔しがる乗組員達は、戦艦竜の撃沈を心から願い、この海域から避難していくのである……。
 
 赤い戦艦竜がまたも、相模湾に姿を現した。
「皆ようこそ。……赤い戦艦竜、ようやく捉えたよ」
 ヘリポートで、リーゼリット・クローナ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0039)がこの戦艦竜の話を持ち出すのは3度目。だが、発端を考えれば、ケルベロスと対するのは4度目となる。
「そろそろとどめを刺したいワ」
 ドローテア・ゴールドスミス(黄金郷の魔女・e01306)は討伐に意欲を見せる。前回、いいところまで追い込んでいたからこそ、今回は轟沈させたいと意気込んでいる。
「念の為、状況を一から説明させてもらうよ」
 今回から参戦を考えるケルベロスもいる為、リーゼリットは事の発端から話を始める。
 狐村・楓(闊達自在な螺旋演舞・e07283)の調査で、城ヶ島の南の海にいた『戦艦竜』が、相模湾で漁船を襲うなどの被害を起こしている事が判明したのだ。
「戦艦竜は、城ヶ島の南の海を守護していたドラゴンだね。戦艦のような装甲や砲塔を持つこのドラゴンは、非常に高い戦闘力を持っているよ」
 城ヶ島制圧戦で、南側からの上陸作戦が行われなかったのは、この戦艦竜の存在が大きい。
 実際、この戦艦竜は強行調査時にとあるチームが出くわし、逃がしてしまった戦艦竜だ。
「全体数でいえば、戦艦竜の数は多くないけれど、個々の力は非常に強力だね。このままでは、相模湾内を安心して航行できなくなってしまうよ」
 現場まではクルーザーを利用して相模湾へと移動し、戦艦竜の対処を頼みたいとリーゼリットは語る。
「強行調査後に2度、戦艦竜と対面したチームがそれぞれ、相手を撃退しているよ」
 戦艦竜は、強力な戦闘力と引き換えに、ダメージを自力で回復する事ができないという特徴がある。
 城ケ島という拠点を失った敵は、回復する手段が乏しい。しかも、船体にはそれぞれ接触したチームが傷を与えており、黒煙が上がるところも確認されている。
「かなり追いつめている状況なのは間違いないよ。今回は撃退でなく、討伐も可能だとは思う」
 だが、手負いの相手こそ、痛い目を見ることがある。油断なきよう相手をしたい。
 場所は相模湾。操業中の漁船が襲われていることから、沖合での戦いとなる。
「冬の海、水温が低い海中での戦いだね。苦手な人は対策してもいいかもいれないよ」
 敵となる赤い戦艦竜は、炎を操ることが分かっている。グラビティの力も手伝い、水中でも火炎を放って攻撃してくるので、気を付けたい。
「あと、以前戦ったケルベロス達の報告では、前足を使った爪での攻撃、それに、複数の砲門を一斉発射した業火を、狙った1人に対して浴びせかけてくることが分かっているよ」
 放たれた業火で、前々回、ケルベロスの1人が重傷を負っている。この攻撃には注意したいところだ。
「前回の戦いでは、それまでと違った攻撃方法は確認できなかったようだね」
 また、戦艦竜は総じて、攻撃をしようとすれば、迎撃をしてくる。同時に、深追いしないという行動をとるという報告が上がっている。
「ただ、前回、戦艦竜は離脱を図ったようにも見えたけれど……」
 再三説明をしてはいるが、敵を追い込んでいる状況なのは間違いない。今回は逃げられないよう十分に配慮し、迎撃に当たるといいだろう。
 一通り説明を終えたリーゼリットは一息ついてから、ケルベロスへと呼びかける。
「ここが正念場だよ」
 とはいえ、敵の力は強大だ。しかも、手負いの敵。なりふり構わず攻撃を仕掛けてくるだろう。
「……とにかく、気をつけて」
 リーゼリットはそうして、ケルベロス達を相模湾へと送り出すのだった。


参加者
フィーベ・トゥキヤ(地球人のガンスリンガー・e00035)
ユーリー・マニャーキン(風籟のアナスタシア・e00062)
薬師丸・秋雨(その失意を希望に変えて・e00654)
ヴィンチェンツォ・ドール(ダブルファング・e01128)
斎宮・初(白妙の・e01230)
ドローテア・ゴールドスミス(黄金郷の魔女・e01306)
ファン・バオロン(イフリート・e01390)
ヴァルリシア・ゲルズ(シャドウエルフのウィッチドクター・e11864)

■リプレイ

●今度こそ……!
 相模湾を行くクルーザーには、8人のケルベロスの姿がある。
「おーおー、また戦艦竜相手かいな。しかも、今度は赤いのか。3倍速そうな相手やな」
「ドラーゴ退治とはな。なに、仕事はこなすさ」
 フィーベ・トゥキヤ(地球人のガンスリンガー・e00035)は別の戦艦竜との対戦経験があり、今回はそれを生かしたいと討伐に意欲を見せる。ヴィンチェンツォ・ドール(ダブルファング・e01128)もそれに同意していた。
(「ドラゴン――。1体だけで弱っているとはいえ、重傷者も死者も出した種族」)
 生活が掛かっている漁師達の為にも手は抜けないと、薬師丸・秋雨(その失意を希望に変えて・e00654)は考えていた。
 その近くでは、知った顔を見かけたドローテア・ゴールドスミス(黄金郷の魔女・e01306)がそのドラゴニアンの女へと声を掛けていた。
「黄道十二騎士団……その中でも、当代随一の実力者、『乙女座』煌・爆龍。こうして肩を並べることができて光栄だワ」
「ドローテア・ゴールドスミス……。共に戦えることを嬉しく思う」
 呼びかけられたファン・バオロン(イフリート・e01390)は、黄道十二騎士団……OZの先輩として、ドローテアに敬意を持って挨拶した。
「フフ、なんちゃって。それじゃ、頼りにしてるワよ?」
 2人はそうして、握手を交わす。
「強敵ですからね。油断せず、確実にダメージを与えて勝利を掴んで見せます!」
 シスター服を纏ったヴァルリシア・ゲルズ(シャドウエルフのウィッチドクター・e11864)もまた、他の戦艦竜を相手した経験があり。相手の実力を知るからこそ、気合を入れている。
 ヴァルリシアは顔見知りのユーリー・マニャーキン(風籟のアナスタシア・e00062)と挨拶をしていた。一見女の子に見えるユーリーだが、いわゆる男の娘である。
 そこに吹き付ける冷たい風。寒さがケルベロス達の身に染み入る。
「冬の寒い海だもの。保温対策は念入りにしていこうね」
 ユーリーは保温クリームを塗り、対策を講じる。
「冬の海……まぁ、しょうがないよね。終わった後のタオルや、あったかい飲み物でも用意しておこうかな」
 現場到着までの間、秋雨は事後のことも考えて準備を行うのだった。

●4度目の遭遇
 さて、ケルベロス達はドローテアが中心となってブリーフィングを行い、作戦の確認を行う。
 前回まで赤い戦艦竜に当たったメンバー達は、ハンドサインを使っていた。これは、水中での伝達が難しいという状況もあって使われているものだ。
 秋雨の希望もあり、ドローテアはそのハンドサインを仲間達へと教授する。
「あ、ボクにも教えて教えてー!」
 ユーリーもそこに加わっていく。3回の作戦で踏襲されているサインは、次の通りだ。
『敵を指したら、攻撃指示』
『水面を指したら、撤退指示』
『狙われた味方を指したら、防御もしくは回避指示』
 なお、前回、追加されたサインは不要と判断され、今回は削除されている。
「今回も引き続き、攻撃寄りの作戦ね」
 一通り教え終えたドローテアは、そう仲間達へと最後に告げた。
 程なく敵の現れる海域に到着したケルベロス達は、冬の海へと飛び込んでいく。冷たいはずだが、皆、さほど苦痛には感じていない様子。
「故郷の海とは違うな。しかし、問題はない」
 ダイブ経験のあるヴィンチェンツォは、スマートに泳いで見せる。
「いや、勝利の紫煙を楽しむことができないか」
 ヴィンチェンツォはふと口元に寂しさを覚える。撃退するにせよ、撃沈させたにせよ。それは、クルーザーに戻ってからになりそうだ。
 ヴァルリシアはスタイルのよいその体で水中でもうまく泳いでいたし、フィーベも苦もなく水中で活動できるようにと、水中呼吸を行っているなど対策を行っている。泳ぎが得意なメンバーも多いメンバー達だ。
 そんな中、斎宮・初(白妙の・e01230)だけは運動音痴ということもあり、水中でどう体を動かしてよいか分からず、苦労していた。それでも、彼女は白い4枚の羽根を使い、バランスを取ろうと努めていたようだ。
「こ、これが戦艦竜……ですか……」
 その初が、近づいて来る赤い巨体に気づく。全長10メートルもの船体に圧倒されてしまうが、彼女はすぐに気持ちを切り替える。
「いえ、怖じ気付いている場合ではありませんね。我が物顔で海を荒らすのは、これまでです……!」
 地獄化した鱗を燃え上がらせ、自在に水中を動き回るファンが戦艦竜の前へとやってくる。
「名も知らぬ戦艦竜よ、今日を貴様の沈む日としてみせよう」
 ここで必ず沈める。皆、その気概で目の前の竜と対面していた。
「さァ、狩りの時間よ。Get ready! Rock'n'roll!」
 ドローテアはそう叫び、敵を指差すと、全員がその討伐の為、動き始めるのだった。

●短期決着の為に
 敵を指し示すサインは、攻撃指示だ。
「さァ、戦端を開きましょ。此度で合計4度目の戦。これで逃したら、笑われてしまうワ!」
 ドローテアによる攻撃の合図に続くファン。彼女が担ぐ斧は、大きな鉈のようにも見える。それを難なく水中でも振り回すことができるのは、身体から炎を噴き出して体勢を整えていた事も大きい。
 ファンは早速、斧に刻まれたルーンを発動させ、光輝く呪力と共に敵と振り下ろす。
 初撃で船体に傷を負う戦艦竜。だが、すでにその体は至るところに傷が入っていた。それでも、戦艦竜は近づくケルベロスへと大きな爪を振るってくる。
 仲間を守ろうと、ユーリーが前に出て、それを受け止めた。ダメージを抑えてなお、激痛が走るほどの威力のある一撃。彼のオルトロス、スラミフィが気遣い、次は自分がと前に出ていた。
(「恐らく、攻撃参加の余裕は無いでしょう……。その分、全力で皆様を支援させて頂きます」)
 短期決戦の為に。初はなんとか水中で体勢を整えつつ、自身ができること……仲間の援護を図る。
「支えてみせます……!」
 初はライトニングロッド『封神十絶刃』を操り、まずは仲間の前方に雷の壁を展開していく。敵の爪はそれすら打ち砕いて来るだろうが、初は気にすることなくかけ直すつもりでいた。
「ほう、海中の竜と言うのも絵になるな。破壊する前に、絵にでもしたいところだが……」
 身体の所々からは小さく黒煙が上がっていたが、戦艦竜は今なお悠然と泳ぐ。
「それだけに、残念だな」
 ヴィンチェンツォは短期決戦で沈めたいと銃を突き付け、海中に弾丸をばら撒いた。彼はジャマーとして、敵の侵攻を可能な限り食い止めようと動く。
「少しでも、被害を受ける人が出ないようにする為に頑張らないと、ですからね!」
 同じくジャマーのヴァルリシアもまた戦艦竜の足止めをと、敵の頭上まで浮上してから、グラビティを纏わせたエアシューズで蹴りつける。
 その衝撃で、少し機動力を奪われた戦艦竜。それでも、あまり堪えていないようにも見えるから、どれだけタフなのかと思い知らされる。
「ドラゴンなんて、夢物語で充分だ」
 そんなリアリズムを突き付けようと、秋雨は身の丈よりも大きなライトニングロッドを振り回す。その先から迸る雷が、戦艦竜の身体へと命中すると、船体に走る雷によって思うように動けなくなっていたようだ。
 さらに、一度敵の攻撃を抑えたユーリーがアームドフォード、アンチマテリアルライフルの銃口を敵へと向けた。
「純真無垢な弾丸は、アナタの胸に一直線! 届け、私のドキドキ!」
 ユーリーは至近距離から、真紅の弾丸を撃ち放つ。さほど貫通力のないその弾丸だが、戦艦竜の船体に接触すると圧縮された猛毒が拡散し、その体内へと侵入していく。傷口を中心に変色していく戦艦竜の身体を、瞬く間に毒へと侵す。
 そして、スナイパーとして立つ2人は、敵のジェット機構、そして機関部を狙う。
 前回はジェット機構を使われて敵に逃げられていたし、何より、これによって突撃してくる攻撃は痛い。
 また、機関部は間違いなく敵の心臓、そして、頭脳を併せ持つ箇所だろう。ここを叩けば、戦艦竜は墜ちる可能性が高い。
「誇りに……否、意地に賭けて。必ず沈めるワよ!」
 ドローテアは蠍座の星剣を携え、刀身に織り込まれた術式を起動していく。
「チェイン接続開始。術式回路オールリンク。封印魔術式、二番から十五番まで解放……いくワよ。『蠍の星剣/Scor-Spear』!」
 彼女の振るう星剣は、赤い軌跡を描く。それはまるで、サソリの尾が敵を狙っているようにも見えて。敵の機関部を狙って斬りかかったが、戦艦竜は致命傷を避けるべく躱す。
 だが、ドローテアの狙いからは完全には逃れられず、船体に深い傷を受けていたようだ。
「ま、いくら強いっつってもな」
 フィーベは軽口を叩きつつ、敵を狙う。一度戦艦竜と相対していることもあり、彼は迷いなくリボルバー銃を構える。
 やはり、狙いはジェット噴射を行う後部。リボルバー銃の引き金を引いたフィーベはここを破壊すべく、海底を使って跳ね返る弾丸で敵の死角をつき、狙った敵の後部を打ち貫かんとした。
 新たに戦艦竜から黒煙が立ち上り始める。それは、船体が限界に近づいていることを意味していた。

●淡々と攻撃を続けて
 短期決戦を考えていたケルベロス達だが。戦艦竜は多少の攻撃ではビクともしない。
 己に潜む膨大な魔力を風と雨の形に顕現させ、秋雨は自らの力を高める。
 その最中、秋雨は紅玉の瞳を持つ女性の姿を、脳裏に思い浮かべていた。
(「前までずっと、自分がケルベロスであることに迷いがあった」)
 しかし、先日、その女性と愛情を確かめ合ったことによって、彼はケルベロスとしての自分を受け入れることができていた。
(「――これが、僕の存在理由なのならば」)
 秋雨はそのまま、戦艦竜の正面へと飛び込んでいく。
「遅い遅い。――襲うよ?」
 一時的にではあるが、水中にも関わらず軽やかに動き、秋雨は敵に肉薄していく。そして、ライトニングロッドを巧みに操り、次々と薙ぎ払い、突き、まるで暴風雨のように荒れ狂い、攻撃を叩き付けていく。
 鹵獲術士としての力も持ち合わせる秋雨。彼は同時に敵の力を奪い、その能力を下げていく。
(「――戦艦竜を、倒す」)
 秋雨の目にはまだ、自信が欠けている。だが、この相手を倒すことで、本当にケルベロスになれるのだと直感していた。
 戦艦竜はケルベロスの攻撃によって、船体の所々でガタが出だしていた。動く度に黒い煙が噴き出す。
 戦艦竜はそんな状態でもジェット噴射を行い、ケルベロスへと突撃してきた。
 影の弾丸を投げつけていたユーリーは、仲間を積極的に庇っていたが、前線に立つメンバー全員へと巨体をぶつけてくると、さすがに仲間を庇いきれない。
 初は傷つく仲間の負担を軽減する為にと、今度はケルベロスチェインを使い、地面に魔法陣を展開していく。
「術式展開、完了です!」
 初が仲間達を手厚く支援すると、ケルベロス達はさらに攻勢を強める。
 ファンが電光石火の蹴りで船体に穴を開け、戦艦竜の体を痺れさせた。さらに、ヴィンチェンツォがリボルバー銃を素早く打ち放ち、敵の砲門にヒビを走らせる。
「貴方が犯した罪に相対する時が来ました! 自分の過去に向き合ってください!」
 ヴァルリシアが月天使の名の許において、呼び出した鏡。それを戦艦竜の顔面の前へと置いた彼女は、相手に犯した咎、犠牲になった人達の幻を見せつけ、トラウマを植えつけていた。
 飄々として戦うフィーベも、目だけは真面目に敵を見据えていて。
「所詮は木偶の棒だな」
 フィーベは敵に向けて挑発する仕草をしつつ、精神を集中させて敵のジェット機構を爆破させる。部位の破損でもあったのか、そこからも黒煙が上がり始めていた。
 とにかく、敵に異常を与える絡め手で攻める。短期決戦には反しているようにも見えるが、これによって敵の動きを攻撃、回避の両面で封じ、攻め入るチャンスを作っていたのだった。

●ついに……!
 順調に戦艦竜へと攻め入るケルベロス。
 そんな中、戦艦竜の全砲門が突き出すように動き、何かに狙いを定める。
「む……」
 大きな鉈を振り回していたファンがそれに気づく。ドローテアもそれに注視し、仲間へとサインを送った。
 指差したのは……ユーリー。それは、防御もしくは回避指示の合図だ。
 ユーリーはそれまで斬撃、射撃と手段を変えて攻撃していたが、敵の構えを見て、その手を止める。
「来たね……。全力で受け止めるよ!」
 戦艦竜の砲門から巻き起こる地獄の業火。それが一挙にユーリーへと浴びせかけられる。
「ユーリー様、初の声が聞こえますか!? 今、手当を……!」
 初は呼びかけながら、電気ショックを飛ばす。
 ただ、ケルベロスとしては、4度目の戦い。メンバー達は相手の戦いを調べ尽くし、かつ、それに対する対策をしっかりと行っていた。
 ユーリーはかなりボロボロにはなっていたものの、それに耐えて見せていていた。
「ふう、助かったよー!」
 彼は礼を言いながら、なおも攻撃を行う。
「激しいな、故に燃えると言うものだ」
 敵の業火はかなりの威力。だからこそ、ヴィンチェンツォも心躍らせつつ戦う。リボルバー銃から放つ白銀の光。戦艦竜の身を雷神の手が締め付ける。
 ヴァルリシアもまた、敵の急所……機関部目がけて攻撃を行う。敵はさらなる攻撃をと旋回するが、うまくジェットが機能しない。
 そこに、秋雨が愛用の武器を振るい、高速斬撃を浴びせかけることでさらに敵を足止めする。
 もはや、敵の装甲は所々が剥がれてきていた。剥き出しの素肌へ、フィーベは素早く銃弾を叩き込む。
 畳みかけるメンバー達。ファンは一旦高く浮上し、全身の鱗から炎を噴出させて高速移動しつつ、戦艦竜の頭に自身の斧を叩き込む。
 全身からもくもくと煙を噴き出す戦艦竜。水中なので分かりづらいが、異音を立てているのが水の振動で伝わってくる。航行不能に陥らせるのも近い。
 ヴィンチェンツォは精神を極限まで集中させ、敵を見据える。
「……Addio」
 イタリア語でサヨナラとヴィンチェンツォが告げると、戦艦竜の体に爆発が巻き起こった。
 ついに、機関部が破壊され、その目からは光が失われた。船体が2つに割れて完全に動きを止めたそいつは、海底へと墜ちていく。
 そこで、ドローテアが海上を指差す。ぼやぼやしていると、別の戦艦竜から襲われてしまいかねない。とり急ぎこの海域を離脱すべく、メンバーはクルーザーへと乗り込んでいく。
 沈みゆく竜を背にして、クルーザーは発進した。現場海域からの離脱を確認し、ヴィンチェンツォは紫煙を燻らせる。
 前回、前々回のメンバーと共に、力を尽くしてくれたからこそ得られた勝利。メンバー達は、戦果を上げたことを大いに喜び合うのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年2月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。