ヒーリングバレンタイン2016~笑顔になれるチョコ

作者:キジトラ

「人馬宮ガイセリウムの東京侵攻により、東京都内に被害が出ていることは皆さんご存知だと思いますの。加えて、このままだと更に大きな被害が予測されていますの……」
 まず、テッサ・バーグソン(シャドウエルフのヘリオライダー・en0130)は集まったケルベロスたちにそう切り出した。
 たとえ最善の結果が出たとしても、ガイセリウムが通過した市街には大きな被害が残るだろう。何しろ最悪の場合は、首都消失まで有り得る状況なのだから。
「そこで戦後の東京都心部の復興もかねて、皆さんにはバレンタインのチョコレートを作るイベントに参加して欲しいんですの。というのも、東京都内の被害が大きかった場所の建物をヒールすれば、バレンタインが近いということもあって、ヒールされた建物の一部がお菓子っぽい雰囲気になったり、お菓子を作るのに相応しいような建物として修復されそうだからですの」
 そこで、その建物を利用してチョコレートを初めてとした色々なお菓子を作るイベントが企画されている。
「イベントには被災した周辺住民の方々も参加されますの。上手く行けば防衛戦後の人々をケアすることもできると思いますし、どうか皆さんで元気付けてあげて欲しいんですの」
 すなわち、市街地の復興と、被災者の心のケア、更にはバレンタインの準備が同時にできる一石三鳥のイベントになる予定だ。
「私がご紹介するのは被災地の中で、商店街が中心になって行われるイベントですの」
 商店街の周辺は下町気質の強い地域だ。
 もちろん商店街自体も地域に根ざして、古くから愛されている。
 イベントにも子供や若者だけでなく、地域のお年寄りも多く参加されるとのことだ。
「皆さんにはこの地域をヒールしてもらってからイベントに参加してもらうことになりますの。で、そのイベントというのが『笑顔になれるチョコレート』を作ることですの」
 イベント会場では周辺住民と共にチョコレートを作ることになる。
 完成したチョコレートはコメントと共に会場で展示され、それを見た人が笑顔になるというのがイベントの趣旨だ。もちろん、その製作過程においても笑顔になれるよう楽しく盛り上げて行きたいところである。
「やって頂きたいのは、『商店街のヒール』、『イベントの進行や、参加者のお世話』をしつつ『チョコレートを作る』といったことになりますの」
 やるべきことは多いが、目指すのは笑顔になれること。
 自分が、そして他の人も。
 楽しく面白いイベントになるよう、誰かを笑顔にできるチョコレートを作れるように頑張って欲しい。
「イベントに参加した人も、イベントで作成されたチョコレートを貰った人も、笑顔になれるようなそんなチョコレートを一緒に作りましょう」


■リプレイ


 東京防衛戦はケルベロスたちの完全勝利で幕を閉じた。
 だが、ガイセリウムの侵攻で街には多大な被害が出ている。特に古い家屋の多いこの地域ではより顕著に現れているのだが……。
「なあに直らなかったら建て直すまでさ」
「そんなことよりお菓子食べんかね?」
「……ええと」
 修復に集まったケルベロスたちの周りは、既に歓待ムード一色のお年寄りたちが!
「ふう、次の現場はここだな、よっしゃ! 任せときな、すぐにヒールしてやっからよ!」
 と、そこに颯爽と現れたのは泰地。
 壊れた建物の前で止まると、鍛えられた体を見せつけるようにポージングをとる。すると生じた癒しの波動でどんどん建物が修復されていくではないか。
「おおっ!」
「さすがケルベロスさんじゃ。なんまんだぶなんまんだぶ」
「よし、ここはこんなものか。次の現場に急がないと!」
「待ってくだされ!」
「お礼を!」
 格好の獲物を見つけて一斉に群がるお年寄りたち。
 お年寄りゆえに抵抗できず、もみくちゃにされる泰地。
 他のケルベロスたちは人身御供となった泰地に手を合わせて作業を始める。ヒールが飛び交うと、お菓子に関係する建物へと変貌していく物も。
「あ、なんか美味そうな外見になった」
 朝陽菜の前には何と、お菓子の家のような物が。
「建物へのヒールは多少の幻覚が混じるのは知っていましたが、これは二つの意味で『おかしな』建物になっちゃいましたね」
 見れば、ヴェルサーチの方でも。
「おかしな……あは、あはははは。いま私上手いこと言いましたねぇ」
「さすがケルベロスさんじゃ、ありがたやありたや」
「え……」
 いつの間にかお年寄りたちがリターン。
「え、この場合……どうしたらいい?」
「前に治した草木が活き活きしたように、今回は住民の皆さんの笑顔による幸福のおすそ分けがウィッチドクターの診療報酬、ですね」
 とはいえ、何ともこそばゆい。
 朝陽菜は帽子を更に深くかぶって思いっきりヒールを掛け始め、ヴェルサーチは笑顔で感謝を述べる姿に何かを感じる。
「ありがたやありがたや」
 で、老人たちは涙を流しながら手を合わせている。
「……いや、もういいですから」
「ありがたやありがたや」
「もしかして、エンドレス!?」
 はい。
 どうぞ、存分に受け取って下さい!


 予定より遅れること1時間。
 どうにか修復作業も終わって、商店街にはイベントに参加する人々が集まっていた。
「元気ですかーっ!」
「「おーっ!」」
「いい返事ですね。わたしは元気溌剌! 司会のりぼんです! 皆さんよろしくお願いします!」
「「お願いします!」」
 威勢のいい声。
 集まっているのは老若男女を問わず、この付近の住民たちのようだ。故にチョコ作りなんて興味が無さそうな中年男性まで混じっている。これもケルベロス効果か、いずれにせよイベントは大盛況である!
「想いを伝えたい人はいらっしゃいますか! 大切な想い出や、新しい出会いをチョコにしましょう!」
「「おおっ!」」
 参加者たちの声に、りぼんの意気も上がっていく。
「ここでチョコ作りの先生を紹介しましょう! ジャック・スプモーニさんどうぞ!」
 紹介と共に壇上に現れたのは、南瓜のマスクを被った怪しい人物。
 会場も少しざわめき、
「……ええ、何故か私に白羽の矢が立ちまして僭越ながら講師のようなことをさせて頂きます。皆さんのご希望に添えるように料理スキル全開で、頑張ってみます」
 深く礼をすると、壇上の後ろの幕が上がる。
 そこに広がるのはチョコレート色の滝……いや、本当にチョコレートの滝だ。どうやら商店街の一部がチョコレート工場として修復されたようである。
「「すげえええ!」」
 子供たちから大歓声が。
 会場にチョコレートの甘い香りと人々の笑顔があふれ出し、
「さぁ、ハロプロのつむつむパワーを見せる時なのだ♪」
 負けじと、パティが旅団の仲間たちに呼び掛ける。
「「おーっ!」」
 仲間たちも気合充分。作るのは大量のジャックオーランタン・チョコ。
「で、それをギネス級に積み上げるのか……」
「ですね。……でも、既存のギネス記録ってあるんですかね?」
「さあ?」
 刻と、レンが顔を見合わせる。
「ま、まあ、何はともあれ頑張りますよー!」
 雑念を振り払うように、レンが再び気合を入れると、
「ふふっ、ついにこれの出番が来ました」
 不敵な笑みを浮かべ、千薙が前に立った。そして、後ろ手に持っていた物を取り出す。
「なぎ特製ハロプロエプロン、とても可愛い自信作です。勿論人数分ありますので……逃げないでくださいね?」
「おお、天津さん特製ハロプロエプロンだね」
 即座に、春乃が歓声を上げるが他の者はどうであろう?
 有無を言わせぬ、千薙の言葉と迫力に逆らうことなどできそうになく……という訳で数分後にはエプロン姿になったハロプロの面々が。
「みんな似合ってて、すっごい可愛いよ!」
 返る声は少しばらばらだけど、それでもチョコ作りを前にして興奮の色は隠せない。 
 その間にも、会場のあちらこちらで和気藹々とチョコ作りが始まる。
 ケルベロスも一般人も関係なく、楽しい時間の始まりだ!


 工場より大量に作られるチョコレート。
 溶けた液状のそれを集まった人々が思い思いに、味を加え、形を整え、トッピングを加えていく。先生役になったジャック・スプモーニは正に八面六臂。参加者たちにレクチャーしながら、仲間たちにも同じように教えていくのだが、
「正直、手が回りません……」
「他にお料理は誰が得意なんだろ?」
 春乃がそう言って仲間の顔を順に見ていく。
 目が留まったのは、千薙で。
「大丈夫です。スプモーニさんの分もサポートしますからね」
 自信のある声で応えると、レシピ本を取り出す。
「慣れるまではレシピ通りに作りましょうね。遊んだら駄目ですよ?」
「「はぁい」」
「では、早速ですが金色のチョコとか作れませんかね、ね!」
「パティ、オレンジ色のチョコレートにしたいのだー」
「先程の返答は何だったのでしょう? そうですね、金色となると金箔でも上に……」
 そう言って、千薙が考え込んだところに、
「ええと、パティ様はオレンジジュースを入れれば良いのではないですか?」
「だね。カボチャといえばオレンジ色♪ 一緒にオレンジ色で作っていくかい?」
 シエルと、ジャック・ランプがフォローに回る。そして、まず溶けたチョコレートに様々なものを加えて色を付けていく作業からスタート。
「わたしはミルクチョコに抹茶ペーストと砂糖をふんだんに使って深緑色のチョコを作るよ。おいしくあまーくなーれ♪」
 楽しく歌うように、パンプティはざばーっと大量の砂糖を入れる。
「皆様カラフルなチョコを作るのですね! わたくしは青い南瓜チョコを作りますわ!」
 傍らでは、シエルが溶けたホワイトチョコにブルーハワイ味のかき氷シロップを。
「ならボクは食用銀箔を使って銀色のチョコレートを作るよ」
「あたしが作る予定は黄色だから……。あ、南瓜入れれば、だいじょうぶかな?」
 それを見ていた、刻と、春乃も自分の作るチョコの色を決めて思い思いに材料を投下。
 見るも鮮やかな色に染まっていくチョコレート。ちなみに混ぜている物も商店街から提供されている。様々な店があるだけに着色する物にも困らなさそうで、
「あたしは赤色のヤツ作りてーなー……唐辛子でも混ぜりゃいけっかな?」
 アリス・リデルが危険な考えに行き着き、
(「にがーい、青汁をふんだんに練り込んで深緑色のチョコレートを作るよ。カモフラージュに抹茶パウダーをかけて、にっしっしー」)
(「……そーっと、そーっと」)
 更には、パンプティが意図的に危険物を作り出し、パティがこっそりと激辛辛子を他人のチョコに投入する。
 徐々に濃くなっていく不穏な空気。だが、他の面々はまだ知らない……。
 ちなみに他の場所でも惨劇の種はあったのだが、
(「アリス姫様……わたくしが料理を作ろうとすると、何故かいつもお止めになりますのよね……わたくしの『ジャバウォックを昏倒させ、バンダースナッチも裸足で逃げ出す』程の料理の腕前、折角ご披露をと思いましたのに……」
 未遂に終わって、ミルフィは小さく嘆息する。
 ……というか、既に料理をする人の考えとは思えない!
「でも……姫様達も楽しそうですし……まいいか、ですわ♪」
 彼女が目を細めた先には和気藹々と調理を進める、アリス・ティアラハートとテッサの姿があった。一応はレシピ本を片手に作っているが、さほど難しいお菓子ではないようで、楽しくお喋りをしながら、片方はバターや卵をかき混ぜ、片方はココア液を作っている。
 そんな楽しげな光景は会場のあちらこちらで。
 調理も弾むように進み、次第にチョコを型に流し込んでいく者も見受けられる。
「ふう、こんなものでしょうか。……ところで、千薙様の紫色はどうやっていますの?」
「……この大量の紫色は何かって? さて、何でしょうね?」
 笑顔で返す、千薙。
 考えている者もいるが、答えには行き着かない。
「さて、いよいよチョコを形にして行きましょう」
 と、ここでジャック・スプモーニが復帰。
 彼の指導も加わって、ハロプロの面々もいよいよチョコを形にしていく。
「チョコを丸めて形を整えて目と口を付けて完成!」
 まずはジャック・ランプが見事なジャックオーランタン・チョコを完成させる。カボチャの被り物をしているのは伊達じゃない……いや、関係ないか。
「あっ、せっかくだしチョコで作った蝙蝠羽なんかも付けてみちゃうっしょ!」
 それを見て、アリス・リデルがあっと驚くよーにと凝ったデザインを加え始める。
 こうしてどんどん作り上げられていくジャックオーランタン・チョコ。
 で、出来ると試食してみたくなるのも人情というもの。
「味見? まぁ、一つくらいなら良いのではないでしょうか」
「よし、シエルさんの許可も出たし、こっそり味見、味見!」
 そして、春乃が物は試しと他の人が作ったチョコに手を付けようとする。
 危険だ! 危ない! 危険が危ない!
「つぅぅぅぅぅ!」
 声になっていない声を上げて転げまわる……のはパティ。どうやら唐辛子入りのチョコを食べた模様。先ほど激辛辛子を入れた天罰か、正に人を呪わば穴二つ。
「んんん?  今、パティさんの叫び声が聞こえたけど……」
 辺りから漏れ聞こえてきた声に、春乃は伸ばしかけていた手を収める。
「ぅぅぅ、なんか危険な味が」
 次いで、パンプティもアタリを引いた。
 一体どれだけ危険物が混ざっているのだろうか、がくぶるがくぶる……。
「向こうは賑やかですの」
「そうですね、何でしょうか?」
 テッサとアリス・ティアラハートのチョコ作りも大体終わり、彼女たちの前には兎や猫といった可愛い形のプディングがいくつも並んでいる。
「あら、そんな形も作ってましたの?」
 テッサが指摘したのはハート型。
 言われて、アリス・ティアラハートは恥ずかしそうに顔を伏せる。
「あ……えっと……こ、これは……ミルフィの……です……」
「えっと……そうでしたの。何と言っていいか分かりませんが、頑張ってくださいの」
 テッサが勇気付けようと手を握ると、小さな声で「はい」と返答があった。


 チョコ作りも大体終了。
 参加者たちは展示用に作ったチョコを並べ始めている。
「さあ! お次はハロブロさんの作品ですが!」
 司会のりぼんがマイクを向けた先には無数のジャックオーランタン・チョコを積み上げようとしているハロブロの面々の姿があった。
「凄いチョコレートの数です。ちなみにこの若草色の南瓜チョコはわたしが作りました」
 見物人からすかさず拍手が鳴る。
「それでは1個目置いちゃいますよ」
 ひとつ目をそのチョコで飾っていよいよ挑戦開始。
 小鉄がツナギ服と同じ水色の南瓜チョコを手に取る。仲間の作ったカラフルなチョコと配色を考えながら、積んで、積んで。虎の尻尾も、びったん、びったん。
「さあ、地域の皆さんも一緒に積み上げましょう!」
 ここで、りぼんが見物人に呼び掛ける。
 真っ先に反応したのは子供たちだ。こんな楽しいイベントを見逃せるはずがない。
 釣られて保護者たちも。
 更には商店街の関係者やお年寄りたちまで。
「この商店街で世界一を目指せ! ですよ!」
「「おーっ!」」
 気合は充分。
「カラフルな南瓜型チョコのタワーで、目指すはギネス級です」
 ジャック・スプモーニの目も光る。
 彼の背後には作り溜めたチョコが。どうやら、チョコの貯蔵も充分だ!
「細心の注意を払って積みますよっ」
「いつも違う場所でやると緊張す……」
 慎重にと手を動かす、レンと、ジャック・ランプ。
 その声で、レンはふと気付く。
「あ、二人のジャックさんと南瓜チョコを間違えないようにしないと、ですねー……」
 間違うなんてと馬鹿にするなかれ。
「小さな南瓜ならいざ知らず、普通の大きさの南瓜チョコ、積み上げるのは至難なのだ!」
 パティの言う通り、作られたチョコには巨大な物も。
 冗談ではなく間違ってしまいそうなほどに大きいのだ!
「ふふっ、少し溶けたチョコを重ねれば高く積み上げても安定しますの♪」
 ここで、シエルが提案する。
 すると名案だと拍手が鳴り、すぐさまチョコを溶かす作業が。
 下からやり直して更に積み上げていく。
 運ばれてくるチョコもいい具合に溶けて……?
「まぁ! 南瓜が小さくなってますの! それは溶かしすぎだと思いますわ!」
 試行錯誤を繰り返し、それでも積んで、積んで。
「慎重かつ大胆にだよ」
「任せるのじゃ。確か、旅団内での最高記録は44段じゃね。45? 55いきたいのう」
 刻に肩車してもらいながら、小鉄が更にひとつ積む。
 高くなるごとに会場は大きな盛り上がりを見せる。無様なところは見せられない。
 千薙もお茶を飲みながらその様子を見守っている。
 少しわたわたしているところも可愛いなあと思ったところで、ふと気付いた。
(「明らかに傾いていますが、それは黙っておきましょう」)
 だってそうした方が、みんなの可愛い姿が見られそうだと、千薙がくすりと笑う。
 もっとも他の者が見つけるのも時間の問題で、
「気づけばずいぶんと高く積み上がりましたわ! ギネスも狙えますかしら、テッサ様」
「そうかもしれませんが……」
「どうかしましたか? あら……心なしか傾いている気がしますの……」
 シエルと、テッサが気付いたところで周りも騒ぎ始める。
「グラグラしてる……もしかして倒れるんじゃ……」
 心配そうに、ジャック・ランプが見つめる先には梯子に上った、小鉄の姿があって。
「曲がった箇所ないん? うー」
 上からではよく分からないのか、まだ気付いていない様子。
 だが、何やら騒がしい。
「倒れそうなったら支えてくれじゃ……うん?」
「……あ、倒れ……」
「わわっ!? 倒れそうです!」
 下を見れば、何やら大慌てで。
「ああっ、危ない! た、倒れるのだー!?」
 パティが叫んだところでようやく現状を理解した。
 とはいえ、上で何が出来るわけでもなく、ぐらつくチョコタワーを支えるので精一杯。
「ぎゃああ!」
 で、支える小鉄の体も一緒にゆらゆらと。
「……んにゃ、なんかツムツムのほーからだんちょーの声が聞こえたよーな」
「んんん? 今、パティさんの叫び声が聞こえたけど……」
 声に反応して、リデルと、春乃が顔を見合わせる。
「何かタワー傾いてる気がするよ!」
「Oh my god! せっかく高くなってきてたのに崩れそーじゃん!」
「助けに行くから、待って待って~!」
 春乃は慌てて駆け寄り、リデルは思わず顔を背ける。
 その間もぐらつくチョコタワー。
 揺れは大きくなり、とうとう小鉄が梯子から滑り落ち――レンが自慢の翼を駆って何とかキャッチ。
「……ふー、危ない所でした。事なきを得ましたよー」
「でも、タワーが………?」
 見れば、チョコタワーの揺れも小さくなっている。
 下の方に目を向ければ、それを支えるたくさんの人々の姿が。
 ハロプロの面々の指揮の下、参加者たちが協力して揺れを小さくしている。
「このまま一気に積んでしまいますよー」
「よし、任せるのじゃ!」
 小鉄が手にしたチョコを大きく掲げて、
「つむつむは根気と忍耐、ちょっとの運」
 揺れが収まっている間にさっと置いて手を離す。チョコタワーを支えていた人々もそっと手を離してゆっくりと距離を置き――崩れないことを確認!
「やったやったやったでー」
「わっわっ、暴れないでください」
 空中で、小鉄は大喜びできゃっきゃっとはしゃいでいる。
 カラフルにみんなで積み上げたチョコタワー。
 それを見て、参加者たちからも大きな歓声が上がり、会場は一気に興奮の坩堝と化した。
(「今なら……大丈夫ですね……」)
 アリス・ティアラハートが周りを見てから、ミルフィの服の裾を引く。
「あの……ミルフィ……一生懸命……作ったんです……」
「これを……わたくしに……?」
 ミルフィの顔も一瞬にして歓喜に染まる。
「最高のバレンタインですわ……♪」
 その顔を見たアリス・ティアラハートも。
 もう、イベントが成功したことは言うまでもないことだろう。
 既に会場は笑顔で溢れ、住民もケルベロスも共に笑い合っている。
 そして、美味しいチョコも一杯だ。ハッピーバレンタイン!

作者:キジトラ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年2月13日
難度:易しい
参加:17人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 2
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。