ヒーリングバレンタイン2016~チョコカフェ

作者:黒織肖

●デートスポットを取り返せ
「お疲れ様っす!」
 ヘリオライダーの黒瀬・ダンテは集まった一同に言った。
 ケルベロスウォーで忙しい時期に何だろうかと皆はダンテを見る。
「こんな時期に申し訳ないっす……っていうか。こんな時期だからこそなんっすけど!」
 そう言って、ダンテは拳を握って話しはじめた。何故か妙に力が入っている。
 今、東京は人馬宮ガイセリウムの侵攻により、都内に被害が出ているという。
 自分たちケルベロスもその話は耳に届いていたため、大事な何かあるのではと真剣にダンテの話を聞いた。
「このままだと更に大きな被害が出るんじゃないかって予測されててっすね……最善の結果が出ても、ガイセリウムが通過した市街の被害は大きいだろうし、最悪首都消失までありえる状況なんっす!」
 そこでダンテのテンションが一気に上がる。
 何事かと見ていれば、ダンテは矢継ぎ早にこう言った。
「そ……そこでっすね! 戦後の東京都心部の復興もかねて、バレンタインのチョコレートを作ってみたいなというか。一緒にチョコを届けたいなって思ってるんっすけど。どうっすかね?」
 我々にできることはないかと真剣なダンテの瞳がすこしうるうるとしている。
 戦えないダンテにとっては、東京を元気にする提案が一番のことなのかもしれない。
 ダンテ曰く、東京都内の被害が大きかった場所の建物などをヒールしたいとのことだった。
「バレンタインも近いし、丁度良いかなって思ってるんすけど。まあ……おそらく、ヒールされた建物の一部は、お菓子っぽい雰囲気になったり、お菓子を作るのに相応しいような建物として修復されるんじゃないかなって思うんっす」
 大体この時期はバレンタインだよねって言う、人々の集合意識とは恐ろしい。
 でも、チョコベースなら中々にファンシーかもしれない。
「そこでっすね……その建物を利用して、チョコレートをはじめとしたプレゼントを作成するイベントをしたいんっすけど。自分達だけでは無く、被災した周辺住民も参加できるイベントにすれば、防衛戦後の皆さんを安心させてあげられるかなって思ってるんっす」
 市街地の復興と被災者の心のケアと、バレンタインの準備が同時に出来る、一石三鳥の作戦かなって思ってるっす、とダンテは照れ笑いした。
「皆で集まってできる場所で、バレンタインっぽいってなると……繁華街っすかね?」
 ダンテは照れながら言った。
 ちらほらケルベロス達の中にもカップルが成立しているころであろうことはダンテにもわかっている。そういう意味でも、この試みは意味があるかもと思っていることは抜群に秘密だ。
 それに、この時期なら繁華街はデート予定のカップルも多いもの。そこに甘い雰囲気を取り戻すというのは、戦うだけではないヒールもするケルベロスらしい案だろう。
「で、場所は公園が近くにあって、広めの場所が良いかなって思ってるっす。繁華街なら近くにホテルもあるだろうし。最近は外でイベント会場を作れるような場所もあるっすから、イケるかなって思ってるんっすけどね」
 ふむーとマジな表情になったダンテが考えつつ言った。
「イベント内容は……『チョコカフェ&プレゼント制作』なんかどうっす?」
 難しいだろうかとやや心配そうに付け加えた。
 ケルベロス達の中にはカフェを経営するものや働く者、スイーツ好きが多いという印象で、人数は集まるのではないかとの目論見だ。
 それに、学園祭のノリで楽しいかもしれないし。被災者の中にも近隣のカフェの人がいるかもしれないし、一日店員さんをやりたくなる子供もいるかもしれない。
 和気あいあいとした雰囲気が出せればともダンテは考えていた。
 一方、チョコとカード制作のコーナーも設けて被災者もケルベロス達もともに楽しむのである。
「どうっすか?」
 嬉しそうにダンテは笑った。
 できることはたくさんある。
 チョコスイーツを作ることも、カフェらしい会場を用意することもケルベロス達にできることだし。近隣の被災者たちもバレンタインができる、イベント自体が素敵なプレゼントになるだろう。
「自分達も楽しいと思うし、イベントに参加した一般人の人達も楽しませるだけじゃないっすよ。このイベントで作ったプレゼント……きっと、貰った人が幸せになれるかもしれないっす」
 戦いは避けられないけれど、できることはまだある。
 どんなことが起こっても、皆で乗り越えていきたい。
 笑顔……忘れずにいきたいっす、とダンテは微笑んだ。


■リプレイ


 人馬宮ガイセリウムを駆る第五王子が倒されたものの、少なからず被害を受けており、ヒールと言う縁の下の力持ちを買って出た者たちがいる。
 その中の一人が相馬・泰地だ。
「よっしゃ、この筋肉に任せときな!」
 寒い繁華街に泰地が朗らかな笑顔。
(「今回の作戦をとったのはオレ達だからな…」)
 半裸で裸足の格闘家風スタイルのまま、次の場所へとヒールして回る。
 東京中を駆け巡って、一刻も早く早くと。
「この現場はもう十分か? よし、次行こうぜ!」
「あれ? 今日はここをヒールして回っているのか…」
 泰地の責任感溢れる声に、シルヴィアは通りすがるケルベロスの姿に振り返った。
 彼女は標と共にデートの約束。泰地は被災地をヒール。
 すれ違う一瞬の会合。
 これから訪れるカフェの場所を用意してくれたのは泰地だとは知らず、時間に遅れると、彼女は足早に去って行った。
 バレンタインとはいえ、ヒールでお菓子っぽい建物になっている繁華街に少し気になりつつ歩く。
(「チョコは…悪戯して最後に渡そうかな。あはは、楽しみ!」)
 ワクワクと道を往く。
 冬の日差しさえ明るい。
「シルヴィ♪」
「標!」
 物にまで共感してしまう優しいレプリカント。それがシルヴィアの彼氏だ。
 まだ付き合い始めて1月ちょっとの、あまり実感が湧かない今だからこその大切な約束(おでかけ)。
(「デートに誘うのって、なんだか照れくさいよね」)
 笑顔に幸せ滲ませて、二人は繁華街を歩きはじめた。

「……ヒマワ…、アーティラリィと一緒に出掛けるのも少し振りか」
「ディディエ、お主。何を言い掛けた?」
「否や、何も言いかけては居ないぞ」
「そうか。料理には自信あるし、腕を見せてやるとしようかのぅ」
 クロサギの翼のオラトリオと太陽の如き向日葵のオラトリオ。
 人目を引くカップルは、チョコ作りとカード作りのイベント会場にいた。
 泰地が作った会場にできたケルベロス主催のバレンタインイベント。
 種類は自由に作れるらしいことを有難いと思いつつ、互いに御手並み拝見と作りはじめる。
 向日葵のアーティラリィは洋酒を効かせたザッハトルテ。ディディエはブランデーのボンボン。
「作るのは久しぶり故、上手く出来るかどうか緊張するな」
 ディディエは相手の器用さに、つい手を止めて見てしまう。それに気づいてアーティラリィは声をかけた。
「ふむ、肩に力が入っておるぞ?料理には気持ちが篭るもの、楽しそうにやればよいのじゃ」
「アーティラリィも流石に手慣れて居るな」
 出来上がったザッハトルテは艶やかな良い色。
「多めに作ってある。お主も味わってみるとよいぞ?」
 チョコのビターな味ジャムの甘み。オレンジリキュールを加えての味わい深い舌触り。
 二人は互いの作品に満足して互いを称え合った。

「上手に焼けましたー! ……じゃなかった、イラッシャイマセー♪」
 いつもは牛肉を回し焼く【ケバ部】。
 しかし、今はケルベロスに出張カフェとして復興支援中だ。
「おかえりなさいませ、ご主人様。…おや、服装が変で、ございますか?」
 支給された服がメイド服なるもの。指摘され、てっきり正装かと静九は勘違いしていたことに気が付いた。
「ククク……弟よ。それは給仕服ではなく、高貴なお方の面倒を見る仕事着よ! でも可愛いからいいわね。グーよ」
 芙蓉は鳥の羽のアイドル風のウェイトレス服でお給仕していた。
「静九ちゃん、よかったね。凄く似合ってるよ。ココ、ウェイトレスさんのかわいいお洋服って、ちょぴっと憧れだったんだー」
 みんなと一緒だから、もっともっとうれしいねっ、とココは嬉しげに笑った。
 白梅の天使はメモ片手に張り切り、ピュンと飛んで先程まで仕事していた。
「あー、もう。適宜休憩させたげないとね……と言う事で、休憩タァーイムっ」
 時期的に甘いものは多いはずと、芙蓉はジンジャーやシナモン、コーヒーをベースにした甘さ控えめのビスケットを用意。
 ちょこっと休憩タイムに白梅の天使と機械仕掛けの美少年、優しい義姉との幸せ空間が広がる。
「おいしいホットチョコレート、淹れられるようになったんだよー」
 ココに淹れてもらったホットチョコを飲みつつ、静九は笑った。
 仕事が終わったら、手作りチョコケーキで感謝を伝えようと考えながら。

 復興支援のチョコカフェ会場の一角で、小雪と空風、棗の三人はロックカフェ『ノースグラウンド』を開いた。
 被災地のヒール後にお呼ばれすることはあっても、ケルベロス主催と言うのは珍しい。
 店のBGMも皆の演奏CDと言う念の入れようだ。
「ほう、空風。なんすか、このチョコ。サイコーにロックじゃないっすか!」
 普段は三人でアマチュアロックバンドをしているから、それにちなんで楽器型のチョコを空風が作っていたのだ。
 それを小雪は味見と称して食べた。
「この試練を乗り越えなければお客様に出すことはできねぇっす! そう、これが、試される大地の最初の試練っすよ」
 小雪はロックにチョコを食べ続ける。
 棗はとりあえず自分もと、エプロンを着てチョコ作りに参戦しようとした、が。あっさり断念した。
 試してみようとしたものの、少し手伝ってこれはダメだと察知してやめたのだ。
「おお。楽器チョコすげぇ…。ん、うまい。マジうまい! これってプロっぽくね?(小並感)」
 こなみかんまで口で言って、棗は味見に専念する。
「このなんか美味しさ、おいしいっす! アメージング! まぢ神秘!」
 評論家ぶろうとして頑張るが、ボキャ貧のために色々と日本語が壊れかける。それでもコメンツする情熱。小雪は本気だ。
(「こ、これは人前に出せるものなのかを見極めてくれているのか!?」)
「よし。味見は任せた。よろしく頼んだぞ!」
 空風の瞳が輝く。
 彼が頑張った甲斐あって、その後、チョコの評判は広まったようだった。

 泰地がヒールした場所にはケルベロス達によるチョコ制作コーナーや特別出張店舗が立ち並ぶ。
 青空カフェ『喫茶カランコエ』もその一つだ。
「いらっしゃいませー!」
 ノルと緋音はいつものエプロンといつものワイシャツで暖かい珈琲と小さなチョコケーキを提供していく。
 チョコペンも用意し、ケーキを好きなようにデコったり、誰かにあげるためのメッセージを書いたりできるサービスもああった。
「ラテ、お待たせしました!」
「わぁ、絵が描いてある♪」
 被害を受け元気の無かった高校生が笑顔になる。
 ラテアートで描いてから緋音は提供しているのだ。
「おいくらですか?」
「お金? 皆さんには防衛戦の時に、すげぇ世話になってるからな。必要ないぜ」
 そんなやり取りをノルは緋音らしいと微笑んでいる。
「僕もお手伝いしたい!」
「じゃあ、一日店員さんをやるか?」
「うん!」
 子どもたちにノルは微笑んだ。
 カフェに興味や知識のある大人も集まってくる。
 制服代わりのエプロンで、ノルや緋音は皆で一緒に温かい飲み物を提供した。


 Cafe★Ahnenerbe。
 賑わうケルベロス達の青空カフェに、ひときわ輝く店舗があった。
「いらっしゃい、よく来たな。ゆっくりしていってくれ」
「はうっ!」
 サラフディーンの微笑によろめく鞠緒。
「き、今日は倒れま…っぁ…」
「またか……」
 倒れた鞠緒を抱きとめて、サラフディーンは溜息を吐いた。
 190を超える長身、蒼瞳と眦のきつい美貌に漆黒の長髪。
 星の丘で出逢った鞠緒は美青年に弱い体質で、彼を見て気絶するのはしかたないだろう。
「いらっしゃいませ、お嬢様方」
 ルースが横からしゃしゃり出る。
 綺麗どころが来てくれるのは大歓迎。女の子とデートにまでこじつけてみせるとの気迫。
「遊ばず働け。鞠緒に手を出すな」
「目を光らせてるようだが、そんなことはしらん!」
「おう、来たぜ! 随分と賑やかだなぁ、サラフ」
「巌か?!」
 巌の声に、サラフディーンのクールな表情はなりを潜めて、屈託ない笑顔に変わる。
 慈悲深き地獄の番犬たちが戦場で繋いだ絆は深い。
 穣は巌が凄く楽しそうにしているので、余程に気が合うのだなと二人を見た。
「よう、戦友。商会では巡回医として籍を置いているから、何時でも頼ってくれな~」と、声をかける陽治。
「ありがとうな」
「馴染みの店が出来るのは喜ばしい事さ。で…このお嬢さんはどうしたんだ?」
「あー、これは……」
「難儀な体質ね、鞠緒さん」
 美男子は鞠緒の弱点。
 介抱役に回ったキリクライシャがやや苦笑する。
 妹のミオはサラフとよく似ている。恋人のテオは細身の美少年サキュバスだ。
 優弥も密かにがっちり系イケメンで、ルースは渋い大人の雰囲気だ。虎徹に至っては、銀髪に褐色肌と言う異色の美形。メイド服姿なのは、ちょっとアレでソレなのだが。
 店員だけでも凄いのに、多摩川戦で戦友となった巌はガテン系。相棒の穣はインテリ系。陽治は頼れる渋面系とあらゆるタイプが揃っている。
「サラフさん、リオン達向けのメニューもあるのかしら?」
「あぁ、もちろん」
「助かるわ」
「サラフ様……今日はポニーテールですのね。お似合い♪」
 行きつけのサーバントカフェが出張と聞いて、ウィングキャットの柘榴さんを連れて燈辻がやってきた。
「さーて、目が覚めたのなら、恋の魔法が叶う『マジ・ド・アムールフォンダンショコラ』を召し上がれ!」
 優弥がスイーツを鞠緒に見せる。
 普段は客として来ているのだが、人手が必要ということで、今日はパティシエとして手伝いに来ていた。
 優弥のフォンダンショコラは、焼く際に手作りガナッシュ入り。フォークで割った際にトロトロとチョコが溢れるタイプなのだ。
 ガナッシュをミルクチョコ、ビターチョコ+ラム酒と2種類用意のこだわり。女性や子供用と男性用に分け、トッピングも前者はドレンチェリーとバニラアイス、後者にはオレンジピールをあしらうという熱の入れよう。
「目玉商品は鳥型スイーツです♪」
 この店は今度のバレンタインデーに『バードスイーツフェア』を開催予定している。本企画はミオの案だ。
 可愛らしいオカメインコにセキセイインコ、桃色インコ型のスイーツの他にもハシビロコウやユーラシア鷲ミミズク、桜文鳥形もある。
 しかも、アルカロイド中毒対策済の素材でケーキを用意していた。さすが、ペットショップカフェ。
(「今日は兄さんの友人と交友を深めるわ」)
 ミオは店に来てくれた鞠緒やキリクライシャに話しかけた。
 店員と常連以上の仲になれるよう努めているのは、ミオの最大の目的のため。それは友達を増やす事。
「妹さん美人!」
「サーバント用もあるのよ」
「わぁ美味しそう! ヴェクさんも食べられるお菓子、あるんですか!?」
「ありますよ」
「やったぁ♪」
「鞠緒とキリクは初めまして! ゆっくりしてってね♪」
 テオドールは恋人の友人だと聞いて、鞠緒たちに挨拶した。
(「サラフの奴、いつの間にこんな可愛い友達…」)
 ふと気になって、テオドールは恋人をチラ見。
 サラフは復興支援の大事な仕事として、誰もが笑顔になるようにと笑顔0円のフルコース中だ。
「……」
 ウェイターをしていたテオは、可愛らしいミニのメイド服の端を抓んでモジモジする。
 チョコより甘い恋人への関心は蜜のような甘い誘惑。なのに、自分はそっちのけ。
「あー、もうっ」
「おーい、テオ! 優弥お勧めのフォンダンショコラを3人分貰うぜ」
「えっと……はーい♪」
 涙色の気持ちを押しこめて、テオは努めて笑顔を咲かせる。
「巌、飲み物は何がいい?」
「カフェモカを貰えるか」
「うん。穣は?」
「ケーキは巌が頼んだし、飲み物はホットチョコレートで」
「ホット…チョコね」
 テオが急ぐフリして去って行く。
 屋内の蛇口は、左がお湯で右はチョコレートドリンク。ヒールのせいでクリームが出る蛇口もある。そこへテオは逃げ込んだ。
 でも、物陰には先約あり。
 やや隠れた場所で愛しい恋人が手招いた。
「サラフ?」
 不意に裏に引っ張られ見上げれば、チョコを口に咥えてテオを煽るサラフディーンがいる。
 狡過ぎる甘い誘惑。ヤバいだけじゃない。
 拒否権ナンテ無イ。抗うことすらカナワナイ。
 本能が呼んでいる。やることは決まってる。
 物欲しげに見上げ視線の先は――貴方。
 自分にできることは、その両腕の中でチョコのように溶けることだけ。
 YESと告げるために、テオは口を開いた。

「ジョー、陽治、いつも商会を盛り上げてくれてサンキュウな!」
 三人で同じ卓についてカフェを楽しみつつ、日ごろの感謝の気持ちを伝えあう。
「いいえ、こちらこそですよ。巌、陽治もいつもありがとう」
「巌からの誘いがあったから今の縁があるんだ」
 ありがとうな、そしてこれからもよろしくと陽治が笑う。
 巌も穣も頷いた。
「お待たせ!」
「おう、来た来た。優弥のこだわりが光るフォンダンショコラを楽しむとしよう」
「そうだな……おっと!」
「ぶるあーー!」
「な、ナニ?」
 虎徹の声に振り返れば、和ませようとグラビティを筋肉に込め、ぴちぴちのメイド服を筋肉の力だけで破る曲芸を披露している。
 その姿に三人は笑い合った。
「何だか不思議。 わっ、お顔がくるくる変わる!?」
 鞠緒はキリクライシャのテレビウムに興味津々だ。
「まあ、テレビウムって可愛いわ。ねぇ、フクロウさんのケーキ…チョコの下はフランボワーズムースよ」
 打ち解けたのか、燈辻を含めた三人は仲良く歓談している。
「…ヴェクサシオン、触ってみても?」
「えぇ、どうぞ♪」
「…リオンのつるつるに慣れているから、新鮮…」
 ふわふわとした感覚にキリクライシャはうっすらと微笑み、あとで一緒にチョココーナーでプレゼントを作ろうと約束した。
「わたしも一般人の方々の接客を担当したいのですが」
 天音は責任者に頼み込んだ。
 丁度、人手も足りなかったため、それは快諾された。
 天音もメイド服を着て、積極的に会話をする。
 無愛想なところはあるけれど、癒しや慰めを求める人々には優しく、楽しく会話に興じ給仕した。
 シルヴィアと標は一緒に繁華街を歩き、ケルベロスによる青空カフェに入って休憩した。
 標はシルヴィアのチョコを貰えるかなと思いつつ、苺タルトをおいしそうに食べている彼女に見とれたり。
 恋はいつもせわしない。大好きなあなたを追って、視線も想いも急ぎ足。
「シルヴィ、かわいいな」
 ポロリ零れた本音を隠して、つい視線を街へと向ける。
「来年も2人で過ごせるように、がんばらないとね」
「うん、来年もその先も、ずっと一緒にいたいからな。好きだぞ、標」
「……うん」
「渡したいものがあるんだけど、後で標の家に一緒に行っていい?」
「え?」
 この先は二人だけの物語。
 秘密の物語だから。

 愛や友情、戦場の絆。色々刻んで乗り越えてゆこう。
 自分達ならきっとできる。
 地球が繋いだ僕らの絆は、きっと、ずっと鎖より強いはずだから。

作者:黒織肖 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年2月13日
難度:易しい
参加:26人
結果:成功!
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