ヒーリングバレンタイン2016~チョコの噴水

作者:東雲ゆう

「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」
 ゆっくりと一礼すると、タブレットを手にした朝霧・譲(シャドウエルフのブレイズキャリバー・en0121)が話を切り出す。
「先日、全世界同時放送で伝えられましたように、東京に侵攻する人馬宮ガイセリウムに対抗するためにケルベロス・ウォーが発令されました」
 ケルベロスたちがゆっくりと頷く。それを確認して譲が続ける。
「ただ、既にこれまでの攻撃で都内各所に被害が出ており、また戦いの結果が最善のものになったとしても、大きな被害は免れないでしょう」
 そこで、と譲はにっこりと微笑む。
「復興もかねて、一緒にチョコの噴水を作りませんか?」
 譲の説明によると、バレンタインが近いということもあり、おそらくヒールされた建物の一部はお菓子っぽい雰囲気に修復されるだろう、ということだ。公園の中にも、お菓子の国のような雰囲気になるものが現われるかもしれない。そんな場所に大きな「チョコの噴水(=チョコレートファウンテン)」を作って、皆で楽しもうという企画だ。
「被災した周辺の住民の方々にも参加していただければ、きっと心のケアにつながるでしょう。市街地の復興と被災者の心のケア、そしてバレンタインの準備と、一石三鳥の作戦です」
 左手の指を3本立てていたずらっぽく微笑むと、譲は手元のタブレットの画面を皆の方に向ける。そこには、ガイセリウムが通過して壊滅状態になってしまったある住宅街が映っていた。
「皆さんには住宅街をヒールしていただくと同時に、その住宅街にある公園で行なうイベントの準備もお願いしたいと思います」
 譲が画面をタッチすると、画面が切り替わり公園が表示される。
「公園をヒールした上で、チョコレートファウンテン、すなわち『大きなチョコの噴水』を作るときっと見た目にも楽しくなるでしょう。皆さんの力があれば、高くて立派な噴水ができるはずです」
 それから、と譲は続ける。
「ヒールが終わりましたら、皆さんもぜひ住民の方と一緒にチョコレートファウンテンでプレゼントを作ってみてくださいね。もちろん、その場でお召し上がりいただいても大丈夫ですよ」
 大きなチョコの噴水にプレゼント作り。きっと子供も大人も喜んでくれるだろう。
「イベントに参加した住民の皆さんが楽しむだけでなく、チョコの噴水で作ったプレゼントをもらった人にも幸せな気持ちをお裾分けできるといいですね」
 そう締めくくると、譲は笑みを深くした。


■リプレイ

●ヒールとアピール
「ヒールは真面目に。楽しむためには、やる事やらないとね?」
 コンソラータの言葉に海月も頷く。少し離れた場所には、修復しながら告知するあぽろや、分身の術でヒールを行う果乃の姿も見える。
 別の路地では、半裸で裸足の格闘家風スタイルの泰地が次々とポーズを繰り出しつつ『癒しの波動』を発動していた。
「東京中を駆け巡って、一刻も早く修復していくぜ!」
 もちろん、ヒールの合間にイベントの宣伝をするのも忘れない。

 一通り修復が終わった泰地に、ミスティアンは声をかける。
「そろそろ会場に行く?」
「いや、オレは他の被災地のヒールにも向かうから、後は皆で楽しんでくれ!」
 次の現場へと急ぐ彼を見送って、ミスティアンは公園へと向かう。

●高く! もっと高く!
 一方、公園ではチョコの噴水の準備が着々と進んでいた。
「冷凍フルーツをチョコでコーティングすると、また味が違うんだ」
 幼馴染を思いつつ、フルーツを冷凍しながら朱里は微笑む。

 その後方では、アーシェスが賑やかに指示を出していた。
「わんこ! もっとじゃ! もっと高く積み上げるんじゃぞ! どら雄とどわ雄は、もっと材料を持ってくるのじゃ!」
「あっはい! 高く、ですね!」
 がしがし、と千代菊(わんこ)は土台を積み上げる。
「ど、どら雄……いえ、いいですけど。元気ですね……」
「どら雄とどわ雄の違いが難しいな……」
 言われるままにクィル(どら雄)とレン(どわ雄)は材料を運ぶ。
「皆さんはチョコファウンテンはご経験ありますか?」
 初挑戦の千代菊がクィルとレンに尋ねる。
「ん。僕はないですね。チョコレートは大好きなのでとても楽しみです。がんばって設営をしなければなりませんね」
「僕様もテレビや写真でしか見たことがないから楽しみだ。設営……頑張るか」
 きりっと表情が締まるクィルの横でぼそりとレンが呟く。
 
「えへへ、引っ張ってきちゃってごめんね」
「ああと、気にしないで下さい。寧ろ誘ってくれて凄く嬉しかった。……ありがとう、すみれ」
 町の人に喜んでもらいたいと張り切るすみれに、少し照れながら、冬也も笑う。二人は協力して搬入と設営の手伝いに励む。

「チョコファウンテンってはじめてー! たのしみっ」
 ルピナスは張り切って果物の段ボールを運ぶが、恋人のアズミは心配そうだ。
「大丈夫? 重くない?」
「だいじょーぶ、ボク、ちからもちだもん!」
 アズミは微笑むと、さり気なく箱の片側を持つ。

「ふぁうんてーんふぁうんてーん♪ タカラバコちゃん、噴水が出来るんだよ! 楽しみだね!」
 上機嫌でミミックとフルーツを運ぶひなみくの横で、郁もヒールが苦手な分、設営を全力で頑張ろうと意気込む。

「わうー! 準備から全力で参加っ。がんばるよー!」
 フルーツを両腕一杯に抱えた敬香が、ファウンテンの土台を調整しているクノーヴレットの横を慌しく行き来する。一方、キーラはゲスト用に並べられたテーブルのセッティングに忙しい。
「服やお口が汚れた時のために、布巾も用意しませんと」
 中央のテーブルでは、冬が慎重に足場を上り、グラスをタワーのように積み上げている。
「よし、グラスをくれると嬉しいのじゃ!」
「背が届きませんー」
 一生懸命背伸びするが、いちごでは到底届きそうもない。
「お嬢様もお手伝いですか?」
 こくり、と頷くいちごを凛子は抱っこする。
「凛子おば……メイド長、ご主人様抱えてるの危なくない、ですか?」
 はらはらしながら見守る環。その横から、比較的長身な蘭華がそっと助ける。
「ふふ。お嬢様、頑張っていらっしゃいますね」
「……役に立ってるでしょうか?」
 主人の言葉に、メイドたちは揃って笑顔で頷く。
「お嬢様は……相変わらず人気者ね? んー……誰か手が足りてない人とかいる?」
「すみません、ここをもう少しこちらに……」
 ファウンテンが巨大化して苦戦するクノーヴレットを手伝うべく朱歌は駆け寄っていった。

●チョコの噴水
 皆が協力した結果、チョコの噴水の高さはなんと4mになった。ヒールしていたメンバーの声かけで60人の住民が公園を訪れ、ケルベロスたちと合わせて会場は100人もの人で大賑わいだ。

「はい、こちらが会場案内図になります。是非手に取ってご覧下さい!」
 果乃が来場者にチラシを配る。交代の時間になると、大喜びでチョコの噴水に走っていった。
「ほら、マシュマロのチョコがけ、美味しいよ」
 そんな果乃にミスティアンはにっこりと串を差し出す。果乃はお礼を言って受け取ると、その後も色々なものにチョコをつけてもぐもぐと頬張った。

「いらっしゃいませ、ハッピーバレンタイン!」
 受付をする冬とキーラのすぐ側で、凛子もゲストの案内をしている。
「キーラ、凜子さん、案内の方を頼むのじゃ。妾は果物補充してくる」
 冬は食材の下ごしらえをしている蘭花を見つけると、果物の一部を渡す。
「あら、助かりますわ」
 一方、来場客が一段落し凛子が休憩していると、朱歌がやってきた。
「あ、り、凛子さん……?  あ、休憩ですか?  良かったら一緒に……」
「あら、朱歌さんも休憩ですか? どうしました、甘えてきて」
 くすりと笑うと、せっかくですし、とフルーツチョコをあーんと差し出す。それを朱歌はぱくり、と食べる。
「お、美味しいです……」
 心なしか朱歌が赤くなる。
「さ、もう一仕事。お嬢様の様子も見なくては」
 凛子の言葉に、2人は連れ立ってその場を後にする。

 噴水の前でいちごを囲むメイド達にキーラが声をかける。
「お嬢様、楽しんでいらっしゃいますか?」
「はい、楽しいです。キーラさんも一休みして一緒にどうですか?」
 キーラは笑みを深くすると腰を下ろす。
「お嬢様、暖かいお茶をどうぞ♪」
 蘭華がかいがいしく紅茶を出す。それを見た環が紅茶の淹れ方を尋ねると、即興の紅茶講座が始まった。
「楽しくやっておるかえ? 皆。ほら、追加の果物じゃぞ」
 会場を回ってきた冬も輪に加わる。メイド達がそれぞれに串を差し出し、いちごは『あーん』で大忙しである。と、チョコがはねて頬についてしまった。
「わう? 主様ほっぺにチョコついてるよー?」
 言うと、敬香はいちごの頬を舐める。
「はわわっ?!」
「拭くならハンカチある、ですよっ」
 環が慌ててハンカチを取り出す。その隙に、クノーヴレットがいちごとの距離を詰める。
「ご主人様、この苺とか特にお勧めですよ、食べさせて差し上げますね……口移しで♪」
「口移しはもっとダメ、ですー!」
 驚くいちごを庇うように環が間に入る。
「……あんっ、もう少しでしたのに」
 心底残念そうにクノーヴレットが呟く。
「環さん、私は大丈夫ですから落ち着いて。朱歌さんたちも一緒に食べましょう!」
 凛子と朱歌の姿に気付いたいちごが2人を呼ぶ。
「ふふっ、みんな楽しそうだし、お嬢様も満足そうで何よりね」
 朱歌の言葉に凛子も笑顔で頷き、輪に加わった。

「おまたせ朱里っ! さぁて今度は俺たちも客だぜ」
「ああ、楽しもう」
 2人は朱里が用意した冷凍フルーツを手に取る。見ると、あぽろの手には朱里の好きなリンゴと蜜柑、朱里の手にはあぽろの好きなパイナップルと洋梨がある。
 顔を見合わせ笑うと、あぽろがリンゴのチョコを差し出す。
「そーら幼馴染の愛を喰らえっ♪」
「……考えることは同じか。いただこう」
 うむ、美味い、と呟く朱里にあぽろは満足気だ。
「にひっ、美味いだろ? 俺の手作りだぜ手作り!」
「では、お返しだ。一味違うぞ? 召し上がれ」
 朱里が冷凍パインのチョコを差し出すと、あぽろは幸せそうに頬張る。
「ん~っ……もう1コ! もっと食いたい!」
「まだたくさんある。別のフルーツも試してみるか?」
 言うと2人は再び笑う。

「見て見ていちるちゃん、溢れんばかりのチョコだー!」
「うわぁ、ほんとに噴水なんだね!」
 目をきらきらさせながら見上げているのは、チョコファウンテン初挑戦の泪生といちるだ。
 全種類制覇しよう! と2人ははしゃぐ。そして、泪生はバナナを串に刺してそっとチョコにくぐらせる。
「ふあぁ……甘くてなめらか!」
「おいしいぃ……!」
 真っ赤な苺を食べるいちると顔を見合わせると、2人とも笑顔になる。
 いちるはふと思いつき、チョコのかかったマシュマロを差し出す。
「泪生、あーーん?」
 泪生は反射的にぱくっと食らいつく。
「えへへ、美味しさが二倍増した気がする! おかえしだよ! はい、あーん」
 いちるも照れながら泪生に差し出されたマシュマロをぱくり。
 楽しくて美味しくて、贅沢な時間を満喫していた。

「チョコの噴水! すごい! 食べ物入れたらチョコになる! 当たり前だけどすごい!」
「ふふ、辺りに漂う甘い匂いで満足してしまいそうです」
 大興奮の緋織を微笑ましく見守る景臣の横で、ヒノトとミルラも楽しげに噴水を見上げる。
「小さい頃、ゼリーのプールとかチョコの噴水に憧れたもんだけど、まさか本当にその夢が叶う日がくるとは……」
「これも幻想化がなせる技、だろうか」
「本当に壮観ね。でも、見るだけで満足してちゃ勿体ないのよ。美味しく頂きましょう?」
 息吹の言葉にヒノトも続く。
「景臣も腹いっぱいになるまで食べようぜ」
「ええ、確かにこんな機会は滅多にありませんしね。果物だとどれがチョコと合いますかね?」
「定番といえば苺やマシュマロが浮かぶけど……何かお勧めとかある?」
 景臣の問いに答えつつも、実は初めてで、と戸惑うミルラに息吹が答える。
「イブはオランジェットなんかも好きだけれど……オレンジ、あるかしら?」
「オレンジならこっちにあるぜ。俺はマンゴーで食べてみるか……ミルラ、この甘栗とか、どうだ?」
「……合うのか?」
 受け取りつつも首を傾げるミルラだが、試したところ結構美味しかったらしい。その横では、緋織が果物チョコ作りに勤しんでいた。マンゴーを食べて次の具を探していたヒノトに緋織は声をかける。
「鉋原、パイナップルここにあるから持っていきなよ」
「よっし、次はこれで決定だ!」
 ふと、ヒノトの声に緋織の方を振り返ったミルラは、そこにある大量の果物チョコに愕然とする。
「って、緋織作りすぎ作りすぎ!」
「あ、ごめんなさい……消費するの手伝って」
「さすがに僕だけじゃ食べきれないな……景臣も少し手伝ってくれる?」
「喜んで」
 童心に返ってはしゃいでしまいそうです、と微笑む景臣につられて息吹も笑う。
「皆いるんだもの、きっと食べきれるわ。色々食べて、協力して美味しい物を見付けましょう?」
 何だかんだ言いつつ楽しむ皆を見て、息吹は微笑む。
「美味しい物は、皆を笑顔にするのだわ。幸せの魔法ね」
「確かに」
 景臣もくすりと笑う。

「やったのじゃー! ちょこの滝なのじゃー! すごいのじゃー!」
「はしゃぐのもいいが、汚れないようにね」
 上機嫌で鈴カステラをとっぷりとチョコに沈める梅子を窘めながら、シエラはキウイ、苺、パイナップルといったドライフルーツを次々に手際よく串に刺していく。
「えへへー、皆でいっぱい食べようねぇっ」
「はい、チョコいっぱい食べちゃいましょう!」
 嬉しそうに生の苺を手に取るフェリシティを見て、あずきも苺を串に刺す。
(「ちょっとこれ俺ハーレムってやつだし、可愛い女の子とバレンタインとかそれだけで勝ち組?」)
 女子4人を眺めながら、器用にワッフルとフルーツを交互に刺していくノアに梅子が話しかける。
「ノアの串もかわいいのじゃ! でもなんというか、パンチが足りない気がするのじゃ~」
「うーん。新しい味にも挑戦してみたいけど、なんかイイもんない?」
 ノアの言葉にフェリシティの顔がぱっと明るくなる。
「じゃあノアはドリアンに挑戦ね。フェリスが付けてあげるー!」
「わあ! すごい! じゃあバナナも刺してあげますね!」
 少し距離を置きながらあずきがバナナを刺す。その後、フェリシティが容赦なくドリアンを重ねたため、ノアの串は強烈な臭いを放ち、彼の周りの人波がひいていった。
「うわっ、なんか臭いのじゃ、ノア……」
「……うん……あのさー臭くないから。チョコつければ皆同じだから」
 梅子の言葉に涙ぐむノアにシエラが声をかける。
「……同情はするけど、一度串に刺したら食べきるのがマナーだと思うよ」
 そう言われてもなかなか勇気は出ない。異変に気付いたホスト役の譲がそっとドリアン串を受け取り、人のいない方へと運んでいった。
 ほっとした女性陣は、それぞれに串を交換し始める。が、ノアは臭いがついてしまっているため輪に入れない。見かねたシエラがドライフルーツの串をノアに差し出した。
「はい、これ。……口直しになればいいけど」
「シエラ姉様、優しい……」
 差し出された串を受け取りほろりとするノアだった。

「おお……これがチョコファウンテンですか」
 感心するクィルの横で、無口ながらレンも感動していた。
「なんだか運命の瞬間です。この流れるチョコの滝に食べたいものを入れるんですよね!」
 恐る恐る苺を入れてひと口ほおばった千代菊は、その美味しさに感動する。
「僕はどうしようかな……。マシュマロを入れてみます」
 とクィル。
「僕様はバナナにする。チョコバナナはうまいからな」
 その頃、アーシェスは譲に迫っていた。
「じょーさん、じょーさん! わしもちょこを作るんじゃけど、受け取ってくれるかの?」
「あ……お気持ちだけありがたく頂戴しますね」
 やんわりと断られ、アーシェスは大騒ぎしながら仲間のもとへ戻る。
「また振られたのじゃー!」
 やけ気味にマシュマロを食べる彼女に苦笑する3人。それでも色々な味を楽しんでいった。

「地球のバレンタインには、自分自身にチョコをコーティングして贈る習慣があるそうですね」
「ち、違うよ!? ネットの情報鵜呑みにしちゃだめだよ!?」
 愛畄は目が点になるがプラスマリーは構わず続ける。
「ただ全身漬かると他の方のご迷惑になりますから、それは家でのお楽しみとして、まずは一口味見はいかがでしょうか?」
 指で溶けたチョコをすくい上げて、愛畄へ食べさせようとする。
「え? 家でやるの?! それに、ファウンテンは手で直接さわっちゃ……」
 愛畄は赤面しながら指を少し舐める。いつも恋人に先手を取られてばかりの彼は、お返しに恋人の指についているチョコを唇につけ、触れるか触れない程度の軽い口付けをする。
「――これでは足りません」
 言うと、プラスマリーはもう一度しっかりとキスし、にっこり微笑む。恋する乙女は強し、ということだろうか。

「わァ……! ミィ、見て」
「なぁに、ソラ? ――ホントにチョコだ!」
 初めてのチョコの噴水。2人は漂う香りに頬を紅潮させる。苺をチョコにつけながら、そういえば、と海月は切り出す。
「ソラとお出かけするのも初めてだよね?」
「うん、初めて。いっぱい遊ぼ。――ありがと、来てくれて」
 コンソラータはまずフランスパンでチョコの味を確認する。横では海月がマシュマロにくるりとチョコをまとわせた。
「これやってみたかったんだ」
 楽しみに食べようとした瞬間、コンソラータが横からかじる。膨れる海月に、コンソラータは笑いながら自分の串を差し出す。が、それは見事に唇の横にはみ出した。
「ちょ! わざとちょっとずらした?」
「ごめん。ごめんって。つい」
 拗ねる海月だが、いつの間にかつられて笑っていた。

「冬也さん、こっち、こっち!」
 すみれが冬也の手を引っ張ってチョコの噴水へ駆け寄り、苺やオレンジをチョコに浸す。
「……ん、絡めるのに苦労したけどキウイもバナナも美味しいな」
 次はマシュマロを、と冬也がチョコを絡めた瞬間、すみれが思わずぱくり、とそれを食べてしまう。
「あ、ご、ごめんなさい……!」
 平謝りするすみれに冬也は微笑む。
「あー……じゃあ、すみれさんが持ってるマシュマロでおあいこ、と言う事で……あ」
 その自分の言葉の意味を理解して冬也は赤面する。どきどきしながらも、2人は楽しい時間を過ごす。

「どーやるの? どーやるの?」
 初めてのチョコファウンテンに興味津々のルピナスに、アズミは優しく語りかける。
「ルピナスは食べたい物あるかい?」
「ボクはねー、えーと、いちごとバナナがたべたいっ」
 アズミは手際よく苺とバナナをチョコにくぐらせ、少し屈みながらルピナアスの口元へ運ぶ。
「それじゃー。はい……あーん」
「あーん♪」
 ルピナスは嬉しそうに苺を頬張る。
「つぎはアズミのばんねっ。はい、あーんっ」
「――甘酸っぱいよ。いろんな意味でね」
 アズミは照れながらも苺を食べた。

「わー、チョコの噴水すごいんだよ!」
 出来上がった噴水にひなみくと郁はテンションが上がる。
「ねっねっ郁くん、これおいしいよ! はいあーん!」
「?!」
 ひなみくにチョコを差し出され、郁は恥ずかしさで固まってしまう。
「どうしたの? 大丈夫だよ~!」
 しかし、楽しそうな様子に断るのも気が引けて、躊躇いがちに口を開いた。それを見てひなみくが満足気に話す。
「今日は来れて良かったね!」
「ああ、一緒に来れて嬉しかった……ありがと」
「うん、わたしこそありがとう! またタカラバコちゃんと3人で遊びにいこうね!」
 ひなみくの笑顔に、郁は充実感で胸がいっぱいになる。

 大きなチョコの噴水。その幸せが、あなたにも届きますように!

作者:東雲ゆう 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年2月13日
難度:易しい
参加:40人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 3
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