ヒーリングバレンタイン2016~ベリー&ショコラ

作者:柊透胡

「人馬宮ガイセリウムの東京侵攻……ホント、大変な事態よね」
 集まったケルベロス達を前に、結城・美緒(ドワーフの降魔拳士・en0015)は大きな溜息を吐いた。
「もう東京都内に被害が出ているし、このままだともっと大きな被害が予測されているわ」
 既に全世界決戦体制(ケルベロス・ウォー)発動が要請され、着々と反撃の準備は進められている。だが、最善の結果が出ても、ガイセリウムが通過した市街の被害は大きいだろうし、最悪首都消失まであり得る。
「だからね、東京防衛戦が終わったら……都心部の復興も兼ねて、チョコレートを作ってみない?」
 東京都内で被害が大きかった場所、建物などをヒールするのだ。
「もうすぐ、バレンタインデーよね。バレンタインデーと言えば、チョコレート。だから、ヒールされた建物もファンタジーに変わるなら、お菓子っぽい雰囲気になったり、お菓子作りに相応しい見た目に修復されるんじゃないかしら?」
 折角ならば、そんな建物を利用してチョコレートを始めとしたプレゼントを作ってみよう、というのが今回の提案だ。
「勿論、私達だけじゃなくて、被災した周辺住民も参加できるイベントにするの。戦いが終わってあちこち瓦礫のままより、もう大丈夫だって皆安心出来ると思うのよね」
 市街地の復興と被災者の心のケア、おまけにバレンタインデーの準備も同時に出来る、一石三鳥の作戦♪ という訳だ。
「皆に担当して貰うのは……被害が出た地域にある、タワーマンション周辺のヒールになるかしら」
 尤も、何処のタワーマンションが被害に遭うかまでは、まだ判っていないのだけど。
「ほら、タワーマンションって、大抵、共有施設が色々あるでしょ? だから、ヒールしたタワーマンションのパーティルームが借りられないかなぁって、思ったの」
 それでね、と如何にも楽しそうに美緒は思い付きを口にする。
「チョコレートも色々あるけど……見た目も可愛い感じになる『ベリーとショコラ』のお菓子を作ってみたらどうかしら?」
 場所は、ヒールしたタワーマンション上層にある共有のパーティルーム。広々としているので、チョコレート菓子を作るなら、長テーブルを並べれば人数が増えても大丈夫だし、パーティ用に隣接した厨房を利用すれば、手の込んだ菓子も可能だろう。
「ベリーもチョコレートも一杯用意して、皆で自由にお菓子を作るの。そのままバレンタインデーまで取っておいても良いし、日持ちしないお菓子は『試食』しちゃえば良いわ♪」
 タワーマンション上層からの眺めは、ヒールで復興した街並なら尚の事、格別だろう。
「やる事は色々あるわよ。まず、『タワーマンションのヒール』でしょ。それから、『製菓の道具や材料の搬入』、試食するなら飲み物も必要よね。タワーマンションに住んでいる人も、この界隈に住んでいる人も、一般の人達が参加するんだから『イベントの進行、参加者のお世話』する人も欲しいわね」
 特にお菓子作りの先生は大歓迎だ。ちなみに、美緒の料理の腕前は一応人並みらしいが、色々と「大雑把」なんだとか。
 当日はケルベロス達も忙しくなるだろうが、『自分のお菓子を作る』時間は十分にある筈。チョコレートもベリーも様々な種類がある。きっと参加した人の数だけ、色々なお菓子がイベントを甘く彩るに違いない。
「イベントに参加した一般の人達を楽しませるだけじゃなくて、お手製のベリーショコラをプレゼントされた人も、幸せな気分になると素敵よね♪」
 そう言えば、ふんわりしたシュガーピンクの髪といい、チョコレート菓子のような帽子といい、当人も何だか砂糖菓子めいた装いの美緒。ニコニコと満面の笑みを浮かべている。
「じゃあ、よろしくね♪」
 人呼んで、ヒーリングバレンタイン2016――タワーマンションで可愛くて美味しい『ベリーとショコラ』のお菓子作りは如何?


■リプレイ

●苺チョコタワー
 そのタワーマンションの被害は、遠目からもよく判る。ポッキリ折れそうな様相に、早速ケルベロス達はヒールを掛け始めた。
「レッツ! フェスティバーーーーールッタイム! だねぇ!」
 丸口・二夜の号令で、狐の一群がもふもふもふ突進する様は中々壮観。
「よっしゃ、ここはオレに任せろ!」
 相馬・泰地は次々とボディビルのポージングを繰り出しつつ、『癒しの波動』を放つ。
 半裸裸足の格闘家スタイルだが、ビル風吹き抜ける中でもへっちゃら。寒冷適応の賜物だ。
「多少見た目が変わっちまうが、堪忍してくれな!」
 徐々にタワーマンションはまるでストロベリーチョコバーの様相に。淡いピンクがファンシーだ。
「わ~、見事イベントにぴったりな建物に~」
 ビル風も甘く香るような? 思わず歓声を上げる篶屋・もよぎ。
「私の守護星座は牡羊座だが、モコモコになってしまうかね?」
「あそこ、綿菓子ぽくなりましたわ」
 クリス・クレールがヒールドローンを展開する一方、キラキラとヒールするヒルダガルデ・ウィッダーとシア・メリーゴーラウンドを、八剱・爽は「うちの旅団のお姉さま方マジ天使」とスマホで録画している。
 ケルベロス達がヒールを勤しむ間に、イベントの準備も着々と。
「材料はこれだけ?」
「もう1台ありますね。材料の次は、調理器具もお願いします」
 荷物一杯の大きな台車を、結城・美緒と都築・創がせっせと押していた。

●ベリー&ショコラ
「わたし……目立つの、苦手だから」
「エリィも一緒にはしゃげばいいのに」
 マンションの住人だけでなく、周辺住民も集まったパーティルーム。大勢に尻込みするエルリーテ・ノイスダートノックだけど、姉の言葉に表情が和らぐ。
 そんな様子に笑みを浮かべ、マイクを手に取るヴィオニアン・ノイスダートノック。今日のイベント進行役だ。
「お集まりのみなさ~ん、今日はたっぷり楽しんでってね~!」
 明るく元気な挨拶と共に『ベリー&ショコラ』の始まり始まり。
「お菓子作りは科学に精通する所があるのじゃ」
 大いに背伸びして、ウィゼ・ヘキシリエンが早速講義開始?
「器具はこれで準備は万全なのじゃ」
 取り出したるは、秤にフラスコ、試験管にメスシリンダー。
「……ふぇ、必要ないとな?」
「実験器具では使い難いかと」
 創からの計量カップで仕切り直し。
「ここでベリーをドバーと。で、グツグツ煮込むのじゃ」
 ……何か、一気に適当になった。
 ウィゼの講義(?)を美緒がうんうんと聞いている間に、参加者達は思い思いにお菓子作りを始めている。
「来年のバレンタインに向けて、クロノ大先生がお料理教室ですぞー」
「先生よろしくお願いします」
 こちらは個人レッスン。輝島・華が挑戦するのは、チョコレートのベリーケーキだ。
「華ちゃんってさ~、気になる男の子とかいるの? 恋とか興味あるんだ?」
 湯煎に奮闘する華がキョトンとすれば、クロノ・アルザスターはにんまりと。
「チョコの作り方教えてとかそういう事でしょ? おませさんなんだ~~」
「今年は何も用意出来なかったので、来年はお友達にあげたり出来たら良いなって……気になる男の子とかそんな訳じゃ!」
 21歳のからかいに、あたふたする11歳。
「……その、恋とかは気になりますけど」
「そっか。一生懸命勉強してるんだもの。すぐ作れるようになるよ。頑張れっ」
(「あ、でも私より先にお相手出来るとかなったら……うぐぐ」)
 照れる表情も初々しい少女を横目に、お姉さんはちょっぴり内心複雑だったとか。

「2人ともどうした?」
 レシピはチョコとベリーのプチマフィン。早速材料を量る鈴代・瞳李だが、アッシュ・ホールデンと篠宮・琴杜の意外そうな視線に首を傾げる。
「お前が菓子作りってのがあんまイメージなくてなぁ」
「よ、用意周到ですね、流石お姉様です」
「こ、これでもレシピがあれば人並みにはできるぞ!?」
 自他共に認める軍人肌。だが、瞳李だって女性な訳で。
「た、楽しみだったんだ。悪いか!」
「とんでもない! お姉様の手作りが食べられる絶好の機会ですから!」
 お邪魔虫さえなければと言わんばかりの琴杜に、アッシュはしらっと視線を逸らす。
(「ま、楽しみだったんなら何よりだ」)
「力作業は頼んだぞ、アッシュ。琴杜の腕が太くなってはいかんからな」
「へーへー、一応手伝いに来たんだしな」
「味付けは私に任せてください」
 和気藹々、とは些か異なる雰囲気で暫し。
「……何でアッシュを威嚇するんだ?」
 事ある毎に、耳と尻尾を立てて睨む琴杜の様子が何だか判り易い。
「俺までおまけでついてきたのが複雑なんだよなー?」
「お姉様が、貴方も是非と! 仰るから! 致し方なく!」
 覿面の反応に、アッシュのニヤニヤも収まらない。
「何だかんだと言って、2人とも仲がいいみたいだな」
「仲良くはないです! 決して!」
「ま、この3人でってのも新鮮でいいけどな、面白いし」
「私も楽しくて好きだぞ。また一緒に出掛けような」
「お姉様のお誘いなら喜んで……」
 やっぱり牽制する視線に肩を竦め、アッシュは苺の飾り花をマフィンに乗せる。
「お前らがいいなら、っつーことで?」
 苺の花言葉に、家族を想うような気持ちを寄せて。

 ヒールで少し疲れたけれど、お菓子作りは別腹。ホリィ・カトレーは、愉しそうにホワイトチョコと苺のプチタルト作り。苺の飾り切りは得意だけど、肝心のタルト台は……。
「らぶが溢れちゃったんですね、素敵です」
 ハート型から膨らんでしまったタルト台。でも、林・瑞蘭の優しい言葉にホリィは思わずクスクス。
「じゃあ、しょうがないよね」
 ホリィがハートの苺を飾る間に、瑞蘭もハート型のムースを4つ拵える。
 ココアスポンジにふんわり苺ムース。甘酸っぱいラズベリーソースを重ね、生クリームや苺、ブルーベリーで飾付け。差し色にミントも添えて。
「ハートでお揃いー」
「ピンクですが、四葉のクローバーなんですよ」
 4つのハートを丸く並べる瑞蘭。
「私とホリィさんとウォーレンさんと先生、皆で楽しくって」
「僕も四葉の一部なんだ、嬉しい」
 後で皆で食べようと、笑顔で頷き合った。

 目指すはホットチョコレート。ベリーが浮かべばきっと美味しい。
(「お料理やった事ないけど、大丈夫だよね……?」)
 不安そうな西原・美影の隣で、ティスプ・ウェイリンも難しい表情。
「ねぇ、美影。湯煎ってお湯沸かしてドボンだっけ?」
「コーヒーかココアで溶かした方がチョコっぽいかも?」
 初っ端から迷走している。
「……もしかしなくても、やり方間違ってるかな」
 ここで、SOSを出さなかったのがきっと敗因。
「もう牛乳チンしてチョコドボンしてベリー浮かべるでいいかな」
「あ~、牛乳で溶かしたらそれっぽいかも~?」
 膜が張る程熱くした牛乳にチョコを投入、かき混ぜる事暫し。
「……あまり溶けてないっぽい?」
 牛乳更に加熱。と思う間もなく、ドアの隙間から溢れる何か。
「やば、チンしすぎてあふれた」
 漸く不穏な空気に勘付き、創が駆け付けた時には色々遅かった。
「ねぇ、美影。今度は調理用語とか方法も調べてやりましょう……?」
「そ、そうだね……ちゃんと調べてからじゃないと、危ないかも」
 粛々とレンジを片付ける創から目を逸らし、2人はチョコっぽいナニかの試食(と書いて始末と読む)に取り掛かった。

「皆で1つのケーキを作ろうね」
「ん、それじゃ始めよっか」
 四季・彩葉の言う通り、お題はミックスベリーのショコラケーキ。人生初のケーキ作りに、クラウディア・エーデルシュタインはやる気一杯だ。
(「ケーキは作った事あるし……彩葉が考えそうな事、予測ついてたからレシピ見てきたしね」)
 シェアハウスの4人で出掛けるのも珍しいから、桐生・神楽も楽しそうだ。
「上手いね、クララちゃん! これなら任せられるよ♪」
「ふふん、基礎をキッチリこなすのが大事よ」
 生地作りを幼馴染みに褒められご満悦のクラウディア。
「神楽っ、そっちはどーお?」
 色とりどりのベリーが美味しいクリームも下拵えが大事だ。
「美味しそうにできてるね♪ 後で皆で食べようね♪」
「ありがとねー。 うん、頑張ろーっ」
 彩葉の太鼓判が、クラウディアの闘志に火を点ける。
「男の娘仲間、というより女装男子の神楽も頑張ってるのね……負けられないわっ」
「な、何か対抗されてるっ!? あ、あはは……負けないよーっ!」
 生地を作ったり、ベリーを用意したり。相談せずとも、自然と役割分担。
(「正に以心伝心。素敵だね♪」)
 思わず頬を緩める彩葉だけど、天霧・愛樹の面倒くさそうな表情にすかさず声を掛ける。
「ほら、やる気出して!」
「美味しいケーキは彩葉に任せればできそうだし」
「ちょっと、愛樹さーん!」
「クララもこっち見ないで、自分の作業に集中しましょ?」
 2人掛かりでは敵わない。苦笑した愛樹は使った器具を片付けていく。
 やがて、焼き上がったケーキをクリームとミックスベリーで飾れば。
「わぁ、美味しそう♪」
 目を輝かせるクラウディア。神楽も嬉しそうにお茶の準備を始める。
「4人で協力したケーキの完成だね。ふふ、こういうのって楽しい♪」
「そうね。わたしも楽しかったわよ?」
 彩葉の満面の笑みに、愛樹も満更でもなさそうに頷いた。

「さあ! さあ! ここから本番だよー!」
 高所のヒールを頑張ったクイン・ブライトソードだけど、お菓子作りもワクワクと。
(「お菓子作った事ないし、メインは味見担当だけどね!」)
 あちこち覗き回っては、雑用を買って出ている。
「良いにおい! 月隠、ローレン、どんな感じ?」
 一巡して戻れば、月隠・三日月は湯煎したホワイトチョコレートに苺を付け終わった所。
「割と簡単だったが、きちんと出来ているか心配だな」
「ん! 美味しいじゃん! もう1個いい? もちょっとだけ!」
 シンプルイズベスト。早速味見したクインは、ほっぺたを押さえて満面の笑み。
「これは皆の分もあるんだからな! 全部食べちゃダメだからな」
「持って帰るのもあるの? じゃ戻ってから皆で食べよっか!」
「ねえ、ねえ、こっちも飲んでみて! おいしいと思うよ」
 お次はローレン・ローヴェンドランテのホットチョコレート。すり潰したベリーを湯煎したチョコに混ぜれば、甘さと酸味のコラボレーションの完成だ。
「冷やして食べるのもいいかも!」
「うん、これもイケるよ!」
 やっぱりシンプルイズベスト。お手軽だけあって、量はまだまだ沢山ある。
「あ、チョコは食べ過ぎると太っちゃうから注意しようね」
「う……」
 こちらも月齢道場のお土産になったとか。

「美緒も頑張ってるな。味見役、してやろうか?」
 お菓子作りの先生として巡回していた先行量産型・六号に、それじゃあとクッキーサンドを差し出す美緒――評価は可も不可もなく。
「市販のクッキーに市販のジャムだしね」
「今度はクッキーから作ってみたらどうだ?」
 2人の遣り取りを気にしながら、エレノア・エリュトゥラーはベリーソースのチョコワッフルに挑戦している。
「ここは焦がさないように……」
「上手く出来そうか?」
「ぼちぼちですね」
「ん……ベリーソースが甘めだからもう少しチョコは苦くても良いかもしれないぞ?」
「なるほど、ばらんすってやつですか!」
 試食した六号のアドバイスに、生地を作り直すエレノア。焼き上がったワッフルから、ビターな香りがふんわりと。
「ばっちりじゃないか、120点だ。きっと貰う奴も喜ぶな」
(「あ、あなたにあげるのですよー!!??」)
 内心で突っ込みながら、正に贈りたい当人からの褒め言葉だ。頭を撫でられ、ついつい頬も緩んでいた。

「うーん……」
 先程から難しい表情のケルン・ヒルデガント。
 チョコにブルーベリーを仕込んだお菓子に挑戦したが、どうも上手く作れない。
「妾にお菓子作りを教えてくれぬかの?」
「『チョコチップマフィン』で良かったら、一緒にやってみますか?」
 美緒の方は手抜きっぽかったので、杉崎・真奈美を先生にして方針変更。コルティリア・ハルヴァンも手伝っている。
(「お菓子作りは、あんまり得意じゃないんだよねぇ……少しでもスキルアップできたらいいな!」)
 砂糖とバターをすり混ぜて卵を加え、ふるった粉と合わせてサックリ混ぜる。ベリー成分は、チョコチップでストロベリーチョコやブルーベリーチョコを使った。生地を型に入れ、170℃のオーブンで焼けば出来上がり。
 コルティリアが用意した白猫のプレートが、マフィンの色によく映える。
「こっちも一緒にどうぞだねぇ」
 隣に並ぶのは、二夜お手製チョコレートムース。飾りのベリーが愛らしい。
「さすがぎょぇぇさん……」
「褒められた気がしないけど、料理は得意だからねぇ!」
 滑らかなムースの口溶けに、相好を崩す真奈美。
「ううーん、おいしいー!」
 コルティリアは素直に尻尾をパタパタさせている。
(「あたしもいつか……自分1人で作れたらいいなー」)
「マフィンも中々じゃな。初めて作ったにしては」
「きっと、皆で作ったからですね」
 ご満悦の表情で、ケルンはマフィンをもう1個おかわりした。

●甘い一時
「それでは、どうぞ甘い一時を!」
 イベント進行も滞りなく。試食の時間になってドリンクコーナーが盛況だ。
(「一杯喋って疲れた~」)
 マイクを置いたヴィオニアンは何か飲もうと、頭を巡らせて。
「おお! エリィ、チョコ作ってるんだ! ひとつちょーだい」
「……びっくり、する。ヴィオ姉。もう……」
 抱きつかれたエルリーテがゆっくり目を瞬く間に、ラミントンを口に放り込むヴィオニアン。
「……摘み食い、よくない」
「んん~、美味しい! 流石は自慢の妹だよー。私の好みを知り尽くしてるね」
 甘さ控え目は姉の為だったから。褒められればやっぱり嬉しい。
「……それなら、よかった」
「紅茶貰ってきたんだ~。エリィも疲れたでしょ? 一緒に飲もう」
 姉妹水入らずの時間はこれから。

 イルヴァ・セリアンのお手製は、苺を飾った一口サイズのチョコタルト。幾つもテーブルに並べていたら。
(「あれ、数が減ってるような……」)
 ふと隣を見ると、もよぎの口がもぐもぐと?
「もよぎさん?」
「美味しかったです!」
「やっぱり食べちゃったんですかー!」
 ベリーのような瞳を見開くイルヴァに、もよぎは笑み満面。
「美味しそうだったから我慢できなかったんです~」
「ずるいです! わたしももよぎさんのお菓子美味しそうと思って、でも我慢してたのに!」
 思わず抗議するイルヴァに、差し出される小皿。
「イルヴァちゃんの分はとっておきを用意してるのです!」
 ベリーとシュガーを散りばめ、チョコペンで雪の結晶を描いたカップケーキ――すっごく可愛くて美味しそう!
「えへー、もよぎさん、ありがとうございます!」
 怒ったシャドウエルフが何とやら。イルヴァの笑顔に、もよぎもふにゃりと笑み零れた。

「ふむ、初めてにしては上出来だな」
 ホッと息を吐くヒルダガルデ。自作のジャム入りチョコは見た目は少々歪だが、気にしたら負けだ。
「団長の手腕、拝見した」
「私を参考にするのは、あまりお勧めではなかったがね」
 ヒルダガルデを真似していたクリスの皿にも、ボンボンショコラが乗っている。
「……」
 似て非なるながらも、一口食べれば思わずドヤ顔。初めて自身の手だけで食べられる物が出来たのだ。やっぱり嬉しい。
「クリス様とヒルデ様のチョコ、よーく見ると、それぞれ個性が……お味はどうかしら?」
 2人のチョコをシアの細い指が摘む。彼女が作ったのは『星型苺チョコレート』。
 溶かしたホワイトチョコにドライストロベリーを混ぜた塊を、自ら拳で叩き割った。まあ、割れチョコの範疇としておこう。
「皆、苦手ーって言ってた割に出来いいじゃん。オシャンティってやつ」
「爽様は、相変わらず器用でセンスが良いですね」
「現代機器の恩恵を受けまくりだがね」
 チョコを生クリームとレンジでチン。程よく溶けたら調理バットに流し入れ、ベリーを並べて冷凍庫にイン。固まったらココアパウダーを振り掛け、お手軽ベリー生チョコモドキの完成だ。
 何処か無骨で温かい、そんな手作りチョコ。仲間と囲んで摘めば幸せの味。
「気持ちが籠ると一層美味しく感じるな」
 クリスの呟きに、笑顔で頷き合った。

「はい、一紀君にプレゼント」
 ラティエル・シュルツの力作は 苺畑風チョコレート。ビターチョコで土、抹茶で緑、ストロベリーチョコの苺が実りホワイトチョコの花が咲く。
「凄く上手じゃないか。ラティにお菓子作りの才能があるとはな」
 仁志・一紀に手放しで褒められて、もう一品。カッティングした苺の薔薇をチョコフォンデュで仕上げる。
「ありがとう。俺は幸せ者だよ」
 窓際のソファでお茶の時間。出来立てのお菓子に舌鼓を打ち、のんびり景色を楽しむ。
「恋人になって初めてのデートだね。これからも色々お出かけして思い出沢山作ろうね?」
 頷き合う恋人達を、ワイルドベリーのフレーバーティーの香りが甘く包む。
「折角のバレンタインだし、皆幸せを取り戻してくれるといいなぁ」
「皆の幸せもそうだが、お前も自分の幸せの事を気にしろよな」
 一紀がそっと肩に手を回して抱き寄せれば、恋人の肩に頭を預けて微笑むラティエル。
「私は一紀君が隣にいてくれれば、1番幸せだよ」

作者:柊透胡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年2月13日
難度:易しい
参加:34人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 10/キャラが大事にされていた 6
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