ヒーリングバレンタイン2016~甘々花びらトリュフ

作者:質種剰

●花びらトリュフ
「人馬宮ガイセリウムが東京へ侵攻を始めたことにより、東京都内に被害が出ている上、このままだと更に大きな被害が予測されているでありますよ」
 小檻・かけら(サキュバスのヘリオライダー・en0031)が、集まったケルベロス達へ説明を始める。
 人馬宮ガイセリウムの暴走を食い止めて最善の結果を出したとしても、ガイセリウムが通過した市街の被害は大きいだろうし、万一自爆を許してしまえば最悪首都消失まであり得る状況だ。
「そこで、東京防衛戦後の都心部の復興活動も兼ねまして、いかがでありましょう。一緒にバレンタインのチョコレートを作ってみませんか?」
 にっこりと微笑んで皆を誘うかけら。
 主目的は、東京都内の被害が大きかった場所の建物などをヒールグラビティで修復することだ。
「せっかくバレンタインデーが近いのでありますから、皆さんがヒールなさった建物の中でも、お菓子っぽい雰囲気になったりお菓子を作るのに相応しいような場所として修復された建物を、チョコ作りに利用したいなぁと思ったのであります♪」
 嬉しそうにチョコレート作りの計画を語ってから、かけらは補足する。
「わたくし達だけでチョコを作るのではなく、被災した周辺住民の方々もご参加できるイベントにしたいであります。それならばきっと、防衛戦後の一般人の方々のお心を幾分かお慰めすることもできるのではないかと……」
 つまりは、市街地の復興と被災者の心のケアと、バレンタインの準備が同時に出来る、一石三鳥の作戦であるらしい。
「皆さんにヒールして頂きたい場所は、ビルの建ち並ぶオフィス街であります♪」
 オフィス街といえば、働き詰めで疲れたサラリーマンやOLの心を癒す為に木や草花が多く植えられている――とかけらは力説した。
「ですので、被災した方々をお花で元気づけて差し上げたく思うであります。お花がいっぱい咲いた建物で、花びらトリュフを作りましょう♪ 被災した方々の為、そして、皆さんの大切な方へのプレゼントとして!」
 今回は完全な復興活動なので、ケルベロスは『会場のヒール』以外にもチョコレートと花々の搬入や一般人参加者のお世話をこなしつつ『自分のバレンタインプレゼントも作る』という流れになる。
 そして、花びらトリュフとは、トリュフに卵白とグラニュー糖でコーティングした花びらをたっぷり混ぜ込んだ、かけら曰く『料理下手でも何とか見た目をごまかせるチョコレート』らしい。
 勿論、お菓子作りが得意な人は、好きに材料を使って思い通りのチョコ菓子を作ってくれて構わない。
「それでは、皆さんのご参加を楽しみにお待ちしてるでありますよ♪ かけらも頑張って花びらトリュフ作るであります!」
 自分も相当張り切りつつ、ケルベロス達を誘うかけらであった。


■リプレイ


「お花いっぱいの復興イベントなんて素敵だねー」
 ヴィヴィアンはスミレの花びらを混ぜたチョコに苺パウダーをまぶし女性らしい色のトリュフ。
「ですよねー、ほらボクも恋に恋する青少年ですし、人生で一度ぐらいははこーゆー甘いイベントを体験しておきたいなって……」
 一方、東西南北は、オレンジの花へオレンジピールを入れたチョコをかけ固めたトリュフ作り。
 調理前に小檻へ挨拶もした。
「東西南北ちゃん手際いいね、あたしも頑張らなきゃ!」
「ヴィヴィアンさんは甘くていい匂いがしますね~……いけない、集中集中!」
 意識の落差には関係なく、どちらの花びらトリュフも恙なく完成。
 菫色と苺パウダーのピンクも、2種のオレンジも色鮮やかだ。
「ヴィヴィアンさんはそのチョコ誰にあげるんですか? 恋人か片想いの男性だったり……?」
 やっぱりおモテになるでしょうね美少女ですし……。
 東西南北が素で褒めるのへ、慌てるヴィヴィアン。
「こ、恋人なんていないよ! モテたりとかも全然だし……それに東西南北ちゃんだってよく見ると結構美少年だと思うよ?」
 このチョコはね、あたしと仲良くしてくれる人に感謝の気持ちを込めて作ったんだよ。
「だから、はい……東西南北ちゃんにあげる。今日は誘ってくれてありがとう!」
「あ、有難うございます!」
 東西南北は感激した様子でトリュフを受け取るや、すかさず自分も差し出して。
「ど、どうぞ。ボクなんかに付き合ってくれたお礼です」
「ありがと、嬉しいなあ……!」

「東京の破壊を阻止できなかった責任があるからなオレ達は。東京中駆け巡って修復していくぜ!」
 泰地は相変わらずの格闘家スタイルで、寒風吹き荒ぶオフィス街の寒さも物ともせずに、ヒールを始める。
「まずはここのビル群か、ヒールするとスイーツなオフィス街になっちまいそうだがそこは勘弁してくれな!」
 次々ボディビルのポージングを繰り出して『癒しの波動』を放射、ガイセリウムによって倒壊した建物を、見事に修復してみせた。
 ビルというよりファンタジックな塔らしくなった外観に、青々と蔦が這っている。

 また、その傍らでは壮輔が、公園やビルをヒールして、
「もしも植え込みが庭園みたいに変化したら、それはそれですごいし、綺麗な街並みも戻ってきてくれたら嬉しいな」
 と、人馬宮侵攻前の景観へ思いを馳せていた。
 順調に修復していく合間、休憩がてらチョコレートを摘む壮輔の処へ、
「七道殿、またお目にかかれて嬉しかったでありますよ〜」
 小檻が勿忘草トリュフを渡していったようだ。

「手早く直せるのは良いが、何とかして見た目を変えずにヒール出来ないものか……勿体無い……」
 鋼は黒鉄式エネルギー兵器『ムーンライト』:治癒光波を用いて、淡々とビルを直していく。
「さて、黒鉄工房の長としての実力を、皆に見せつけてやるとしよう」
 またイベント会場では、恐ろしい程の精密さと速さで、ゼラニウムの花びらがカラフルなトリュフを次々量産していた。
 中に一つだけ、ピンクの胡蝶蘭の花びらのみを使った花びらトリュフが紛れている。
「今日は……いや、何時もヘリオライダーとしての業務、お疲れ様。ありがとう」
 帰り際、ふと思い立ち、小檻へゼラニウムトリュフを渡す鋼。
「有難うございます大首領――じゃなくて黒鉄殿」
「……」


「ふっ!」
 蘭華は、修復対象を粉々に割れたショウウインドウや街灯へ定めて『月天覆う氷華の甘露』を仕掛ける。
「斬霊刀使えればなぁ……」
 その様を見やって、蘭華の恋人兼同僚の凛那が肩を落とす。
 彼女も星座の光で街路を舗装したり崩れたブロックを修復していたが、斬霊刀に他者回復のグラビティが無くて残念らしい。
 それが終わると、次はお菓子作り。
「こういうのも、偶にはいいねっ」
「うん、いいよね……蘭華姉と一緒にお菓子作りだなんて」
 実家が老舗和菓子屋の蘭華は、製菓の腕は一応商業レベルとの事。
 一方、凛那も蘭華と共にメイドとして働いてはいるが。
(「あたしは丸焼きとか、肉や野菜を切って鍋に放り込むとかしかできないから」)
 お菓子作りに自信が無いらしく、彼女は我から進んで恋人のお手伝いに徹した。
「桜の花と抹茶チョコで、日本の春を先取り……っと」
 蘭華が仕上げた桜トリュフは、チョコの中心に小豆が一粒入り、和菓子の風趣が感じられる。
「凛那……あら?」
 凛那はと言うと、慣れない作業に戸惑って失敗を繰り返し、未だ湯煎の段階で足踏みしている。
「えっと、湯煎だっけ、次……うーん、これでいいのかな?」
「ふふっ、湯煎はこう……だよ♪」
 蘭華は、苦労する恋人の背に寄り添い、彼女が火傷しないよう手伝った。
(「不格好だけど……喜んでくれるかな」)
 協力の末完成したのが、季節の梅の花びらを添えたミルクチョコ。
「……好きだよ、凛那♪」
 桜と梅の取り合わせを満足そうに眺め、蘭華は凛那へ微笑んだ。

 彩葉がトリュフ作りに選んだ花びらは、清純な雰囲気漂う白い薔薇だった。
 ホワイトチョコを冷ましたものへ白薔薇の花びらを混ぜ込み、トリュフチョコとして丸めていく。
「よし、真っ白なホワイトチョコレートトリュフの完成!」
 ホワイトチョコと白薔薇の微妙な色の違いがアクセントになって、その綺麗な見た目は彩葉自身満足いく出来だ。
「んー……彩葉は白い薔薇かな? そしたら僕は……赤い薔薇で作ろうかなー。ふふっ、赤い薔薇の花言葉、わかるかなっ?」
 嬉しそうな彼女の手元を覗き見た神楽は、赤い薔薇と普通のミルクチョコでトリュフを丸める。
(「ちょっと普通のより甘めにしたら彩葉、喜んでくれるかな?」)
 そんな神楽の期待は、完成した赤薔薇トリュフに煌めくグラニュー糖へ現れていた。
「ふふっ、チョコレートの茶色に真っ赤な薔薇の色があって綺麗だよ? あ、彩葉は可愛いだけどねーっ」
 息をするように恋人を口説く神楽へ、彩葉もにっこり笑いかけて。
「はい、神楽君。特製ホワイトチョコレートトリュフだよ♪」
 白薔薇に包まれたトリュフをプレゼントする。
「いつも一緒にいてくれるお礼、美味しくできてると嬉しいんだけど……」
「ん、ありがとねー?」
 彩葉に見守られ、ぱくっとトリュフを食べる神楽。
「ふふっ、彩葉の気持ちだけでも充分嬉しいし、どんなチョコよりも美味しいよ」
 喜色満面な彼の言葉に、彩葉も安堵した。
「そしたらはい、これ。僕の気持ち。ふふっ、食べさせてあげるから……あーんしてー?」
 そんな彼女の口元へ、神楽はせっせと赤薔薇トリュフを運ぶのだった。

(「普段散々Love you言ってる気がしますが、それはそれ、これはこれ」)
「……とはいえ、いくら鈍感な先輩でも、これの花言葉ぐらいは知ってるかなぁ?」
 ミライの作る花びらトリュフは、真っ赤な薔薇の花びらをイチゴチョコのピンクで包んだもの。
「こう……中身は真っ赤な薔薇で秘めた情熱というか恋心? みたいな? ……」
(「……といっても、私、恋ってよくわからない気がしてきました。愛ならなんとなくわかるのだけれど」)
 同じ頃。
「……無念……」
 何故か倒れてぴくぴくする蒼眞。
 どうやら、空気を読まずリア充爆破と称して妙な事を企んだ『馬鹿の末路』らしく。
「面白い人をなくしたであります」
 ミモザトリュフを供える小檻の前で、精神的にも肉体的にもダメージを受けていた。
 それでも街の修復活動には、
「……ヒールなら大抵の場合誰かの役に立てて、しかも恨まれたりする事はまず無いから、悩まずに使えるしな」
 と、密かに貢献していた。
 因みに、彼の作った花びらトリュフは、ホワイトチョコやイチゴチョコの白やピンクへ、よりによって弟切草や彼岸花の黄色や赤い花びらが映える代物。
「……作ってしまったものは仕方ない」
 蒼眞は弟切草トリュフを小檻へ、彼岸花トリュフをミライへ贈った。
「ヘリオンでの事を根に持ってるのね」
 小檻は納得顔だが、
「先輩の馬鹿ぁぁぁ!」
 ミライは彼岸花の別名を考えてか悲嘆に暮れる。
 しかし、蒼眞は他意が無いようだが、彼岸花の花言葉は告白に相応しい情熱的なものもあるのだ。

「修復はこのくらいでいいっすかね……」
 薬液の雨で少し幻想的にしたビル街を見つめるのは宴。
「花びらを使ったチョコなんてお洒落でいいっすね……実はぼく、かけらさんにチョコを強請ろうと思って」
 無表情ながらも優しい彼の言葉へ、小檻も喜んで頷く。
「ぼくにも選んで作ってください。あ、義理で構いませんからね」
 かく言う宴は、お返しにとパンジーの花びらを使ったショコラを作っている。
「あと、あの……気になってたんですが、作り方の『突き刺す』ってなんすか?」
 不思議がる宴へ、小檻は笑って、
「柔らかいチョコへほんとに突き刺すのであります、折れぬようそっと」
 彼用のトリュフにクロユリの花びらを刺して実演してみせた。

「フハハハ……我が名は、世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスが大首領! 人心掌握の為、先ずはこのイベントに乗じ、人民の胃袋を満たす!」
 領は、ヒールしたビルの内1つを製菓工場オリュンポスと勝手に決めて、配布用の花びらトリュフを大量に作り始めた。
 それにしても、古より薬として使われ平和と希望を意味するヒナギクの花びらを使う辺り、相変わらず善人である。
 また、いかに材料を搬入してもチョコの製造ラインまで賄うのは厳しい為、結局領自ら作業員としてチョコを作る。
 更に、小檻をオリュンポス臨時作業員に任じ、只管トリュフを作らせた。
「大首領殿の為に働けて、かけら嬉しいであります♪」
 その傍ら、
「バレンタインデー……なるほど、普段お世話になっている方に『義理チョコ』というものをお贈りする日なのですね。普段からお世話になりっぱなしの大首領様に、とっておきの義理チョコをお渡ししなくてはなりません!」
 アンドロメダはメイド服にエプロン姿で気合充分。
 本職のメイドだけにお菓子作りは得意な筈だが
「ここはお母様直伝、オリュンポスに伝わる究極のチョコを作りましょう!」
 颯爽と等身大の大首領チョコを作り始める彼女は、いつもながら発想が斜め上だった。
「バレンタインコレジャナイ」
 それでも、作業しつつ苦悩する領へバレンタインらしい贈り物をするのだから、きっと喜んで貰える事だろう。
「せっかくなので夢のある花びらトリュフを作ってみようか」
 シャーロットは、大首領達を手伝おうと、それぞれ虹の七色に対応した花びらを用意。
「夢の詰まった虹の花びらトリュフ。どうぞ召し上がってくださいませ」
 製菓工場でせっせと量産した虹の花びらトリュフを、知り合い達が見たら『誰だ貴様!?』とツッコまれかねない淑やかさで配っていく。
(「まあ、あれだ。仕事とプライベートは別というヤツだな」)
 仕事とはいえ、シャーロットの心遣いに被災者は皆喜んでいた。


「正直何したいとかって決まってないんだよなぁ……一緒にここ来れたってだけで幸せだし」
 健気な事を呟く美琴の手を引いて、彼女の執事兼恋人のメッシュは、オフィス街を回りヒールに勤しむ。
「大丈夫か美琴、疲れてないか?」
「ありがとメッシュ。一段落したらとりあえずチョコフォンデュやろっか」
 イベント会場へ向かった後も、仲良くチョコレートフォンデュを食べる2人。
(「超恥ずかしいけど……」)
「はい、あ~ん?」
 美琴は微かに逡巡してから、チョコに浸したイチゴをメッシュの口元へ差し出す。
「あーん」
 あっさり食べるメッシュの目は笑っていた。
「何回やっても恥ずかしいな!  人前だし余計に恥ずかしい!」
 そして、ひとり照れまくる美琴の頬を包むや、キウイを口移しした。
「!」
 美琴は驚いて目を丸くするも、悪い気はしない。
(「でもほんと幸せだなー、こんな風に一緒に過ごせるなんて」)
 なんか夢でも見てるみたい ふわふわ浮かんでしまいそう――と幸せいっぱいだ。
「チョコも美味しいし周りもチョコだらけだし、ほんとー甘々もいーところだよねー……」
「中でも一番甘いのは美琴の……美琴?」
「なんか眠くなってきたかも……めっしゅー、肩かしてー」
「はいはい、お嬢様の仰せのままに」
「うんうん、やっぱ君はあったかいね」
 ――いっつもありがと、これからもよろしく……。
「勿論。何時までもお前と一緒に……」
 肩口へ頭を凭せ掛けて眠る美琴の為に、メッシュは赤い花びらを冷めたチョコに飾りつけ、花びらトリュフを作り始める。
 それは、2人の約束の花たるゼラニウムだから、きっと美琴は喜ぶに違いない。

「灰燼の中からでも復興はなる。滅んだ国の再興すら叶うのだから」
 空へ小型治療無人機を放ち、地へ故郷の国旗を突き立てて呟くのはカジミェシュ。
 アイラノレも彼を助けてヒールに励んだ後、共にチョコ作りを始めた。
「チョコレートに花なんて素敵ですね!」
 チョコも花も好きな彼女は、上機嫌でチョコを湯煎にかける。
「ああ、そうだな」
 頷き返すカミルも何やら奮闘中。
 アイラは、薔薇の赤い花びらと、ネモフィラの青い花びらに卵白を塗り、綺麗にグラニュー糖を振る。
 湯煎から冷ますのはホワイトチョコだ。
「ふふ、花の色がよく映えます」
 丸めたトリュフへ花びらを飾るアイラ。
「カミルは何にしました? 私はこんな感じです」
 隣を覗き込めば、カミルは赤い薔薇の花びらをホワイトチョコの表面へ細かく並べ、ポーランド国旗を真剣に作っていた。
 しかも、アイラへその国旗チョコを見せた後、
「本当は、こっちを贈りたかったんだが」
 渋い顔をしつつ、先に作った失敗作も見せてくれた。
 花とチョコで歯車っぽいトリュフを作ろうとして失敗したという。
(「凝った装飾への挑戦は、無謀であったか……」)
 カミルの落ち込みぶりを察してかアイラは、
「花を選んだ理由なんですけど、ネモフィラは、花言葉の一つに『愛国心』があったので、あなたにぴったりだなと思って」
 恥ずかしそうに頬を染めつつも語る。
「薔薇は……あなたに貰った特別な花だから」
「アイラ……」
 カミルが笑顔になったのを見て、アイラは少し迷ってからトリュフを摘む。
「はい、カミル。あ、あーん……」
 一瞬びっくりした顔をするも、差し出されるままにトリュフを食べたカミル。
「……美味しいですか?」
 恋人の問いに美味しいよと返せば、アイラがとても嬉しそうに笑ったので、妙な悪戯心が湧いた。
「私だけ、というのは不公平だろう? ほら」
 すぐに自作のトリュフを摘み、彼女へあーんのお返しするカミルだった。

 未来と当夜は、交互にブラッドスターを歌ってオフィス街を練り歩き、ビルのヒールに務めた。
 幾つかのビルを大層幻想的に建て直した処で、イベント会場へ赴き、チョコ作り開始。
 未来は元より料理が得意で、本人曰く手先もまぁまぁ器用との事。
 それ故か、初めて作った花びらトリュフも、ビターチョコへグラニュー糖がきらきら眩しい冬桜の花びらをまぶした様が非常に可愛らしい。
 無事に作れて安堵した未来が隣の当夜を見るや、彼は薔薇の花びらやミルクチョコと格闘していた。
 懸命にチョコを丸めて薔薇の花びらをたっぷりくるむも、菓子作りや料理の経験自体少なく、生来不器用なのも祟ってか、少しいびつだ。
「あ、あれ? 上手く出来ない……こうかなっ……? 未来さんっ……」
 わたわた慌てる当夜を微笑ましく眺め、アドバイスする未来。
「ココをこうしてこうすると、良くなるよ!」
 未来の手助けによって、当夜の薔薇トリュフは、ごつごつした塊から可愛い珊瑚のような様相へ。
「で、出来たんだよっ……!!」
 甘そうな珊瑚を眺めて、当夜が喝采した。

「さて、年に一度のバレンタイン。楽しむとしましょう」
 仁王は紙兵散布をする際に、予め漫画やアニメのキャラクターの形に折った紙兵を降らせて、子ども達を楽しませた。
 また、ボクスドラゴンも属性インストールの傍ら、彼らの遊び相手になっていたようだ。
「色々あって疲れた街に笑顔を――子ども達には楽しんでもらわなきゃだし、しっかり元気を与えながら街を直さないとねっ!」
 仁王の恋人であるカイリも、被災者を不安にさせない為か、笑顔で街の修復に取り組んでいる。
 そして、粗方ヒールし終えたら、後は一緒にチョコレート作り。
(「チョコレートに込めたこの思い、喜んでくれるといいな」)
 仁王は、色鮮やかな薔薇の花びらを用いてトリュフ作りに挑む。
 ダズンフラワーの意味を込めて12個作るつもりだ。
「ふふ、しっかりバレンタインを楽しむだなんて何年ぶりかしら?」
 カイリも彼の手元を見ながら、懸命に花びらトリュフを丸めている。
「えへへ、料理は得意じゃないけど、仁王と一緒なら上手く出来る気がするわねっ!」
 照れ笑いする彼女だが、仁王がトリュフを12個も作ったお陰で、作る手際を観察する機会が沢山あった。
「お世話になってる妹分さん達のでしたら、手伝わせて下さい。一緒に作りましょう」
「ありがと! こっちは真っ赤な薔薇の花びらを、そっちは白いコブシの花びらを……」
 しかも、彼がトリュフ作りを手取り足取り教えてくれた為、カイリのトリュフは全て上出来。
 2人とも笑顔で食べさせあいっこをする幸せなひとときを過ごせたのだった。
「やはりカイリの手作りは最高ですね」
「んぅー、美味しい……えへへ、幸せっ!」

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年2月13日
難度:易しい
参加:23人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 7
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