その名は、戦艦竜『ペレスヴェート』

作者:メロス

●海域の支配者
 数発の砲弾が命中しただけで、船は海上を漂う巨大な漂流物と化した。
 救命胴衣を着けた船員たちは次々と船縁から海へと飛び込み、予め投げ込んでおいた浮き輪やゴムボートに掴まって破壊された船から離れようとする。
 そちらには目もくれずに巨大な竜は砲塔を旋回させると、全ての砲門を漂流物と化した船へと向けた。
 再び轟音が響き、放たれた砲弾が外殻を破って船の内へと飛び込んでゆく。
 僅かな時間の後……砲音とは異なる激しい音が響き、金属の船は破片を撒き散らしながら引き千切られるように爆発した。
 海底へと沈んで行く鉄塊と波間を漂う残骸を眺めると……竜は天を仰ぐようにして、空気を震わすような咆哮をあげた。
 
●第二次攻撃隊、出撃!
「『戦艦竜』によって相模湾で船が沈められる被害が出ている事は、皆さんもご存知だと思います」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)はそう前置きしてから説明し始めた。
 戦艦竜は城ヶ島の南の海を守護していたドラゴンで、体に戦艦のような装甲や砲塔があり非常に高い戦闘力を持っている。
 現在は相模湾へと移動し、漁船等が襲われるという事件が多発しているのだ。
 戦艦竜の数は決して多くないものの個々は非常に強力で、放置すれば相模湾を安心して航行できなくなってしまう。
「戦艦竜は強力な戦闘力と引き換えに、ダメージを自力で回復する事ができないという特徴があります」
 一度の戦いで戦艦竜を撃破する事は不可能だが、ダメージを積み重ねる事で必ず撃破する事が出来るはずだ。
「皆さんにはクルーザーを利用して相模湾に移動して頂き、戦艦竜の撃退をお願いします」
 そう言ってセリカは、詳しく説明し始めた。
 
「今回皆さんに戦って頂く事になる戦艦竜は、既に1度別のチームが攻撃を行っています」
 それによって攻撃手段等、いくつかの能力が明らかになっている。
 『ペレスヴェート』と呼称される事になった戦艦竜の攻撃手段は、4種類。
「主砲による攻撃は2種類、多数を狙う一斉射と、単体を狙う集中砲火です」
 それに加えて、接近した対象を狙う機銃による掃射と、四肢と尾のヒレを振るって周囲の敵を薙ぎ払う近接打撃を行うようだ。
 攻撃の威力に関しては単体への集中砲火が最も強力であり、主砲の斉射、近接打撃と続くようである。
 機銃に関しては攻撃力はそれらよりかなり劣るが、逆に命中精度の方は高いようだ。
 また、攻撃に対しての耐性や弱点は戦った限りでは無いようである。
「以前の攻撃である程度のダメージを与えましたが、それが相手にとってどの程度なのかまでは判断できません」
 もちろん、並のデウスエクスなど問題ではない高い耐久力を持っている事は間違いないだろう。
 現在の様子と今回の攻撃を比較し、敵を観察する事によって、それらも判断できるかも知れない。
 他にも、前回の戦いに参加した者の報告書等から推測できる情報があるだろう。
「戦艦竜は攻撃してくるものを迎撃するよう行動をする為、撤退する事はありません」
 それゆえ好戦的な印象があるが、領海の維持を最優先にするので敵が撤退すれば無理に追撃するような事も無いようだ。
 とはいえ、脱出に時間が掛かれば砲撃を浴びせられる危険もある。油断は禁物だ。
 
「危険な任務ではありますが、攻撃を続け次に繋げていけば……必ず、撃破する事ができる筈です」
 どうか、充分にお気を付けて。
 ヘリオライダーの少女はそう言って、ケルベロス達を送り出した。


参加者
ディルティーノ・ラヴィヴィス(ブリキの王冠・e00046)
玖々乱・儚(参罪封じ・e00265)
ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)
カナメ・クリュウ(蒼き悪魔・e02196)
六条・深々見(喪失アポトーシス・e02781)
ロウガ・ジェラフィード(戦天使・e04854)
西院・織櫻(白刃演舞・e18663)
古牧・玉穂(残雪・e19990)

■リプレイ

●竜の海域、再び
 停泊したクルーザーから複数のボートが素早く海上へと降ろされる。
 ディルティーノ・ラヴィヴィス(ブリキの王冠・e00046)と玖々乱・儚(参罪封じ・e00265)の作業の様子を視界の隅に収めながら、ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)も用意した荷物や合図について確認していた。
 どこか楽しげな調子のディルティーノと、丁寧な口調の儚の会話を耳に入れながら……
「今度こそ、だよ」
 誰に言うでもなく、彼女は呟く。
 ケルベロス達が戦う事になる敵、戦艦竜。
 以前攻撃を行ったチームによってダメージを受け、戦闘方法なども分かり始めているが……それでも、今回だけでは倒し切れないであろう強敵だ。
(「……回復できない相手を複数に分けて叩く」)
「未だこれほどまでに実力に差があるとはな……」
 何かを噛み締めるようにして、ロウガ・ジェラフィード(戦天使・e04854)は呟いた。
 湧き上がってくる想いは、胸の内に収める。
 今の自分には為すべき事があるのだ。
 苦しむ民草の為にも、戦艦竜は一刻も早く倒さねばならない。
 そしてその為に、自分には……多くを持ち帰る、義務がある。
「……負けない、絶対に」
 その一言に想いを籠めて、青年は静かに口にする。
(「色々と不明な点が多いけど、今回はどれくらい情報を集められるかな……」)
「その為には、こっちも思い切り暴れてやらないとね?」
 クルーザーからボートへと降りながら、カナメ・クリュウ(蒼き悪魔・e02196)は仲間たちを見回すと楽しげに口にした。
「うん、気合十分、リラックスもできてます、行きましょうか」
 古牧・玉穂(残雪・e19990)が笑顔で答え、同じようにボートに移動する。
 今回で倒すのは難しくとも、明日へ希望を繋げるために。
「リラックスが一番です」
 肩の力を抜くようにして口にしながら、彼女も出撃準備を整える。
「戦艦竜は一度斬ってみたかったのです」
 西院・織櫻(白刃演舞・e18663)は自身の内で研ぎ澄まされる何かを味わいながら、後衛側のボートの1つへと乗り込んだ。
 善悪や誰かのためでない。
 己のためにのみ力を振るう。戦いたい時に戦えればそれで良い。
(「機銃まで装備した竜とは」)
「……どれ程手強いのか、楽しみですね」
 表情は変えず、静かに……何かを滲ませるような口振りで呟く。
 一行を乗せた複数のボートは、クルーザーを残して戦艦竜の領海へと進む。

 さほど時間は掛からなかった。
「でーかーいー……」
 波とは違う飛沫をあげ近付く何かを確認した六条・深々見(喪失アポトーシス・e02781)が、うんざりした様子で呟く。
 離れてもハッキリ確認できる、巨大で武骨な存在。
(「これあたしの攻撃とか効くのかな……」)
「いやちょっとは効くんだろうけど、すごい疲れそう……」
 そんな言葉が自然と口から零れた。
 元々彼女は引きこもり系女子なのだ。
 因みに人見知りとかではなく、単に外出するのが疲れるという物理的な理由である。
(「お仕事のために出てきてるけど、正直今すぐ帰りたい」)
「うあー……帰ったらゆっくり休も……」
 憂鬱な気分を振り払うようにして、少女は自分に言い聞かせるように口にする。
 対照的に、玉穂はスカートの裾をつまむと少し芝居がかった仕草で戦艦竜へと一礼した。
「ごきげんよう、明日のためにも色々と調べさせていただきます」

●海戦の始まり
 ボクスドラゴンの『ペレ』に攻撃を頼みながら、ノーフィアは近付いてくる戦艦竜へと瞳を向けた。
 自分の扱うグラビティが、どれだけの精度で命中させる事ができそうなのか?
 力を重視した攻撃と、俊敏さを活かした攻撃……2種の攻撃への対処能力に、大きな差は無さそうである。
 彼女はそう判断して仲間たちに呼びかけると、翼を広げながらボートの端を蹴るようにして跳躍した。
 続くようにディルティーノと深々見も動く。
「冬の海も冷たいもんね。風邪でも引いちゃう?」
 呼び掛けるように呟きながら、ディルティーノは抜き放った斬霊刀に力を籠めた。
 刀身から滲むように精製された物質の時間を凍結する弾丸が、戦艦竜へと向けられる。
 その間も彼女は竜の動きを観察し続けた。
 慎重第一に……とはいえ、加減する気は無い。最初から全力で。
「負ける気なんてないからね」
 精製された時空凍結弾が、ペレスヴェートに向かって放たれる。
 同時に深々見も海上に出現させた溶岩を、竜に向かって噴出させた。
 外出するからこんな目に遭うんだという心の奥底から湧き上がった気持ちを、溶岩へと変化させたのだ!
 八つ当たりっぽいと言われればそれまでだが、強い想いは竜すら傷つける力になる、という事……かも知れない。
 合わせるように動いた玉穂は、前衛のボートの1つを足場に跳躍すると一気にペレスヴェートへと距離を詰めた。
 そのまま二振りの刃を振るって、鋭い一撃で竜の外皮を斬り裂く。
「私は盾を磨き、剣を研ぐもの」
 儚は全体を見渡せるようにと距離を取りながら、戦艦竜の姿を視界に収めた。
「その盾が輝けば身を守り。剣が光れば敵を裂く」
 その威容に気圧されぬように、誓うように言葉を紡ぐ。
「個体はかわっても大きいことには変わりがありませんか。いやになります。でも……」
 それだけ、やりがいもある。
「任せましたよ、てれ。壊れない程度に遊んできなさい」
 青年の言葉に頷くと、テレビウムの『てれ』は巨大な凶器を感じさせぬ身軽さで戦艦竜へと近付いていった。
 接近する味方とタイミングを合わせるようにして、織櫻が敵を侵食する影の弾丸を放つ。
「刻の意思……調和の御心……舞うは癒しの羽根、祝福の金色」
 ロウガは翼を大きく広げると、その羽のひとつひとつに自身の生命力を分け与えた。
「――我が身に流れる刻の力よ、“生命を護れ”!!」
 力を籠められた無数の金色の羽が舞い拡がり、後衛たちを包み込む。
『命流百羽陣(ライフストリーム・フェザー・アウレア)』
 生命力の込められた羽根は触れる者たちの傷を癒し、同時に対象を守る防壁となるのだ。
 味方を庇えるようにと動きを確認しながら、カナメもボートの端を蹴った。
 まずは敵の動きを牽制する。
 流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを、青年はペレスヴェートに繰り出した。
 巨大な竜はその攻撃を、厚い装甲部分で耐えるように体を動かす。
 攻撃を防がれはしたものの、竜の身を足場に再度跳躍した青年は、竜を誘うように呼びかけた。
(「さあ、おいで?」)
「オレと楽しい事して遊ぼうか?」

●攻防と観察
 戦艦竜の四肢と尾の鰭が、勢いよく振り回される。
 竜の動きと共に渦が生み出されたかのような激しい流れが巻き起こり、巨大な鰭が飛沫や波と共に前衛たちに襲いかかった。
 直撃を受けたてれが砲弾と化したかのように吹き飛び、激しい水柱を上げ水没する。
 攻撃を耐える事には成功したらしく、すぐに小さな姿が海上に姿を現した。
 儚とノーフィアは、その様子を見て敵の攻撃を推測する。
 攻撃の精度は、頑強さによって生み出されたもののようだ。
 ダメージの軽減にも成功した事を考えると、攻撃は斬撃型なのかもしれない。
 砲撃に比べれば威力は低そうだが、逆に精度は高いように感じられる。
 ボートには固執せず海中へと飛び込んだノーフィアは、そのままペレスヴェートの更に下へと潜水した。
 水中呼吸も用意してある以上、不安は無い。
 翼と尾を振るい、まるで飛ぶように海中を進んだ彼女は、そのまま竜へと狙いを定めた。
「我黒曜の牙を継ぎし者なり。然れば我は求め命じたり。顕現せよ、汝鋼の鱗持ちし竜」
 自身の右腕に古の鋼竜の魂を降ろし、具現化させる。
「我が一肢と成りて立塞がる愚者へと鉄鎚を打ち下ろせ」
 鋭い鉤爪を生やし竜の如くに変質した腕を、ノーフィアは大きく振りかぶった。
「キミみたいなの相手するときのためのとっておきだよペレスヴェート!」
 そのまま巨大化した腕を……質量兵器として振り下ろし、叩き付ける。
 その衝撃は、戦艦竜すら僅かに揺るがし平衡感覚を鈍らす程だ。
 彼女はそのまま、重力を宿した蹴りと鋼竜の魂を降ろした打撃を使い分けながら、戦艦竜への攻撃を続行した。
 敵の動きの牽制に石化の魔法を放ったロウガは再び翼に生命力を注ぎ込み、その力で今度は前衛たちを包み込む。
「竜でも思い出したくない事ってあるのかなー」
 ナイフの刀身に竜の瞳を、その奥に存在する何かを映すように力を込めながら。
 問い掛けるように呟きながら……ディルティーノは、刃を放った。

●定めた終着に向けて
「チッ……さすが痛いね」
 呟きつつも、どこか楽しげな表情でカナメは呟いた。
 薙ぎ払う近接攻撃の後、ペレスヴェートは多数の機銃を用いて前衛たちを攻撃してきたのである。
 威力は打撃とは比べものにならないが、命中精度は高い。
 打撃とは全く異なる攻撃手段だと感じながら、彼は続く敵の動きに注意した。
 深々見も敵の動きに注意しつつ、精度を優先してペレスヴェートに攻撃を加えている。
 こちらは敵を狙い易いようにと位置取りを行っている為、命中率には多少なりとも余裕があった。
 攻撃を見切られぬようにと注意しつつ、彼女は威力も考えて使用するグラビティを選択していく。
 役に立ちそうであれば、どんな事であろうとも把握する意味はあるのだ。
 ケルベロス達の攻撃を更に耐え抜くと、戦艦竜は後衛たちを狙って甲板上の砲塔を旋回させた。
 発射音ですら身を揺すぶられるような衝撃を感じる一斉射は、幸い全て外れに終わる。
 打撃と砲撃の間に機銃掃射を行った事を考慮するなら、やはり近接打撃と多数を狙う砲撃は似た能力を用いているのかも知れない。
(「狙われやすくなるポジションとか行動なんかもあれば把握したいな」)
 そんな事を考えつつ、深々見は攻撃を行いながら……一応、状況を確認した。
 味方は兎角ボートの方は、殆んどが攻撃に巻き込まれ……残骸、漂流物と化している。
 玉穂はそれらも足場に利用して位置を調節しながら、搦め手優先で攻撃を行っていた。
 竜の一部を氷で覆い、それを拡げるように攻撃を幾度か加える。
「さて、あまり痛くはしませんからね」
 呟きつつ刃を構えると、彼女は真空波を伴う斬撃を放った。
 奇剣・縫代(キケン・ヌイシロ)
 身体ではなく魂の足的部分を一部傷つけることにより、対象の動きを一時的に封じる技である。
 どのような技が効果があるのか? 効き易いのか?
 戦艦竜を観察しながら、彼女は次に繰り出すべき攻撃について考える。
 儚は敵の動きを見落とさぬようにと警戒を続けながら、味方の回復を行っていた。
 複数への回復手段が準備できなかったが、それ以外は不足していない。
 とにかく今は守り手への回復である。
 ペレに癒されつつ自分で応援動画をガン見するてれの体力を、青年は魔力を用いた強引な緊急手術で更に回復させた。
 そして、再び戦艦竜の挙動に注視する。
 彼が特に注目したのは、集中砲火の際の前兆があるかどうかだ。
 その間にも攻撃は続く。
 織櫻は敵の攻撃を警戒しながら一気に距離を詰めると、雷の霊気を籠めた刃でペレスヴェートに向け神速の突きを繰り出した。
 刃は戦艦竜の体だけでなく、その装甲も僅かにだが傷付ける。
 そのまま背に取り付こうとした青年を弾き飛ばすように、戦艦竜は向きを変えた。
 背の砲塔が一斉に動き、砲弾を一つの目標に向けて放つ。
 織櫻はその砲弾の嵐を、ボートを足場に跳躍して回避した。
 無数の砲弾が海面を沸き立たつように乱し、残っていたボートを残骸に変える。
 気にせず青年は、ノーフィア、玉穂に続くように再攻撃を仕掛けた。
 連携攻撃を耐え抜いたペレスヴェートが、再び砲塔を旋回させ後衛たちを狙う。
 その射線のひとつを遮るように……ディルティーノは身を躍らせた。

 爆音と共に弾き飛ばされ、海面に叩き付けられた身体から力が抜けていくのを、彼女は他人事のように実感した。
 機銃によるダメージが無ければ、耐えられたかも知れない。
 或いは、ダメージを軽減するエンチャントの効果がタイミング良く発動していれば……
 妙な笑いがこみ上げてきて、惜しかったなと思いながら彼女は笑った。
 守りを優先し、防具の耐性を借りて……もう一歩。
 敵は強力だが、道は見え始めている。
 ケルベロス達が攻撃し、耐え抜いた戦艦竜の攻撃が命中するたびに味方が傷つき、或いは倒れる。
 だが、それで残った者たちは戦艦竜を攻撃する事ができるのだ。
 そしてそのダメージは、絶対に回復される事は無い。
 砲撃からノーフィアを庇ったペレが消滅し、薙ぎ払いの直撃を受けた玉穂が戦闘不能に陥った。
 機銃掃射の後に続いた近接打撃を耐え抜いたカナメは、自身の動きが鈍らされたことを確認する。
 ペレスヴェートの薙ぎ払いには、対象の回避能力を下げる足止め効果があるようだ。
 効果そのものは儚からの癒しで解除されたが、ダメージの回復までは追い付かない。
 それでも、身体は自然と動いた。
 砲撃を受けた儚を庇うようにして、青年は戦線を離脱する。
 戦闘不能者を出しながらもケルベロス達は戦い続けた。
 一行が撤退を決意したのは、砲撃によって深々見が戦闘不能となった時である。

●そして、次に託すために
 ボートは破壊され半数が満足に動けない危険な状態だったが、戦艦竜からの追撃は無かった。
 ペレスヴェートの注意を逸らす為に、てれが戦闘を続行した故である。
 撤退を考慮せずに済む戦闘要員がいるというのは、今回は極めて有効だった。
 稼いだ時間は僅かだが、その時間でケルベロスたちは戦艦竜から何とか距離を取る事ができたのである。
 領海から離れた一行の視界に、やがて停泊していたクルーザーが姿を現す。
(「調査や目的は果たせたでしょうか?」)
「どちらにせよお疲れ様でした」
 痛みを堪えた玉穂が、そういって穏やかに微笑んでみせた。
「後は未来にお願いしちゃいましょう」
 その言葉に頷きながら、儚は仲間たちに肩を貸し船へと近付いた。
 ノーフィアやロウガが翼を広げて仲間たちを運び、織櫻も防具の力を活かして動けない者を引き上げる。
 防具の耐性のお蔭か、砲撃を受けて倒れた者の中に重傷者はいなかった。
 一斉射と近接打撃、加えて機銃の方も、ペレを含め幾人かがダメージを軽減できた事で判別できた。
 第一陣の情報を参考に、詳細を確認できたと言って良いだろう。
 ある程度のダメージも与える事が出来た。
 後は……次の者たちに任せよう。
 泳いできた方角を眺めながら……
「異国より来たりし戦艦の名を持つ竜よ」
 もう見えないペレスヴェートに向かって、儚は呼びかけるように呟いた。
「番犬の牙の痛みを沈むまで覚えておいてくださいな」

作者:メロス 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年2月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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