廃倉庫の紳士協定

作者:蛸八岐

●廃倉庫の戦い
「反則も降参も無し。先に石ころになった方の負け。負けた奴は勝った奴の下につく。それで文句ねぇな、宮本?」
 二人の少年が廃倉庫で対峙していた。キャットウォークに据えられた、どこかの工事現場から掠めてきたであろう照明器具によって、彼らだけが暗い倉庫内でスポットライトを浴びるように照らされている。
 煌々と照らしだされる二人を囲む暗闇からは大勢の人の熱気と興奮が伝わってきていた。
「佐々木……それだけじゃないはずだ」
 宮本と呼ばれた少年は覇気のない弱々しい声で応えた。
 だが彼の見た目は、その声とは裏腹に尋常のものではない。肌は樹皮のように固くひび割れていて、枝にしか見えない器官が服の至る場所を突き破って出ている。
「おっと、そうだった」
 異形の宮本の前に立つ佐々木は、からかうように鼻を鳴らした。佐々木も宮本と同じような見た目をしていたが、彼はより巨大で威圧感を伴っていた。
「邪魔が入ったら、とりあえず勝負はお預け。邪魔してきた奴からぶっ殺す。それでいいんだろ?」
 首を鳴らしてから佐々木は肩を竦める。
「襲われるだのなんだの、わけわかんねぇ御託並べて、散々渋りやがってよ。俺がお前相手に囲むように見えるか?」
 自分の優位を見せつけるように佐々木は拳でトントンと自分の胸を叩く。そして周囲をぐるりと見渡してから、宮本を睨めつける。 
「お前にとっちゃ、ここはアウェーだから気持ちはわかるぜ。でも安心しな。こいつらは、お前が俺に気持よくぶっ殺されるところを見たいだけだからよ……そんじゃ、始めようぜ」
 攻性植物の果実を受け入れ異形化した少年達が、己の身体から生える枝や蔓を激しく蠢かせて互いに襲いかかる。
 その光景に、ギャラリーとして集まった少年少女は興奮した歓声をあげ始めた。
 
●若者同士の紳士協定
「相手は二体の攻性植物。その両方を倒してほしいっす」
 茨城県かすみがうら市。
 この街では、かねてより若者のグループ同士による抗争事件が頻発している。若者の中には、力を追い求めて攻性植物化してしまった者も少なくない。
 彼らは攻性植物化を肯定的に捉え、あろうことかグループの代表者として攻性植物化した者同士が決闘して、敗者が勝者のグループの傘下に納まるという戦いを始めた。
 この事態を放置しておけば、かすみがうら市の攻性植物は、いずれ一つの集団にまとまり、強力な組織としてなってしまう危険がある。
 それを何としても食い止めてほしい。と、黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)はケルベロスに告げた。
「攻性植物を二体同時に相手にするのは避けるほうが吉っす。けれど、決闘してる二体が消耗した時を見計らって……というのは、ちょっと意味が無いかもしれないっす……」
 争っている二体の攻性植物化した少年、宮本と佐々木。
 彼らには明確な実力の差があり、決闘が何事も無く推移すれば、佐々木が難なく勝利するのは明らかであった。
 強力な佐々木に無策でぶつかれば、最悪の場合、決闘に破れて宝石化した宮本のコギトエルゴスムの破壊すら困難になる。
「彼らがどうして決闘することになったのかも、わからないっす。だから片方に同調して協力するってのも無理だと思うっす……」
 ダンテは申し訳無さそうに項垂れる。
 けれど、とダンテは顔を上げる。
「場所は暗い廃倉庫で、攻性植物同士の決闘を見ようって集まった人がたくさんいるっす。この中に紛れ込んで、決闘を何とかして長引かせれば……」
 ダンテはそこで言葉を切って首を振った。
「いえ、こういうのは釈迦に説法って奴っすね……とにかく、攻性植物が組織化されるなんて考えただけでも恐ろしいっす。最悪、グループが拡大することがないように一体だけでも確実に倒してほしいっす。皆さん、頑張ってほしいっす!」


参加者
白神・楓(魔術狩猟者・e01132)
七種・酸塊(七色ファイター・e03205)
ブレイブ・ファントム(暗殺者・e05423)
レフィス・トワイライト(死神奏者・e09257)
除・神月(覇天哮・e16846)
龍身寺・繚花(ドラゴニアンの鎧装騎兵・e20728)
九頭龍・夜見(ハラキリハリケーン・e21191)
ミリオン・コッキンドール(見習い大魔導師・e21429)

■リプレイ

●作られた狂宴
「こーいう盛り上がリ、あたしは好きだナ。アウトローの血が滾るゼ」
 決闘開始直前の廃倉庫に難なく忍びこんだケルベロス達。その一人である除・神月(覇天哮・e16846)は弾むような声を漏らした。
「攻性植物を使って決闘ねぇ……」
 それとは対照的に、佐々木と宮本を呆れたように眺めているのは白神・楓(魔術狩猟者・e01132)。
 歓声が湧き上がった。
「簡単に決着がつくのはつまらない。そうでしょう?」
 決闘の開始と共にレフィス・トワイライト(死神奏者・e09257)がフェスティバルオーラを放ちながら、周囲を焚き付ける。隣人力にも後押しされた言葉は、周囲の観客に賛同の声を上げさせた。
「すぐ決着つけるんじゃねえぞ、楽しませろよ!」
 観客に紛れながら七種・酸塊(七色ファイター・e03205)も声を張る。
「そのとおりだ」
「そうだーそうだー、でござる」
 ブレイブ・ファントム(暗殺者・e05423)も九頭龍・夜見(ハラキリハリケーン・e21191)も仲間の声に同調するようにして煽った。
「お前がどうせ勝つんだからゆっくりと宮本を嬲り殺すのはどうだー」
 半ば冷ややかに決闘を見守っていた楓も野次を飛ばし、
「佐々木ー! もっと宮本と戦う姿みせてくれヨ! 一瞬で終わっちゃつまんねーゼ!」
 神月は純粋に決闘を楽しんでいるようであった。
 決闘がすでに始まっているにも関わらず、佐々木は片手をあげて歪んだ笑みを観客に見せつける。
 佐々木の背に宮本が襲いかかったが、佐々木は難なく避ける。隙を晒した宮本に攻撃を叩き入れる絶好のチャンスではあったが、佐々木はあえて宮本の足を払って情けなく転倒させるだけで済ませた。
 観客は余裕を見せつける佐々木に喝采を送る。
 ケルベロス達の、決闘を長引かせて消耗を強いる作戦は順調のようであった。
 彼らは一先ずの成果に満足して、熱狂の海に身を潜め、決闘の決着がつくのを静かに待ちはじめた。
 
●廃倉庫(ガンリュウシマ)の戦い
 周囲を焚き付け、決闘を長引かせることに成功したケルベロス達は、宮本のコギトエルゴスム化を避け、確実に仕留めるために奇襲を行いやすい場所へと移動を続ける。
 しかし、言うは易し行うは難し。
 激しい決闘を行っている宮本を狙うためには、奇襲を行う側も自ずと最適な場所が変わってくる。興奮する観客の中を移動するのは困難を極めた。
「それにしても皆、元気よねぇ~」
 龍身寺・繚花(ドラゴニアンの鎧装騎兵・e20728)は、そう言いながらもスイスイと観客の中を進む。隠密気流をまとった彼女は観客に認識されることなく、そのために邪魔されることがない。それは楓、酸塊、ブレイブの三人も同様であった。
「ちょっと、押さないでよ!」
 ミリオン・コッキンドール(見習い大魔導師・e21429)の抗議は熱狂に包まれた観客に届かない。神月も夜見も思うように身動きがとれなかった。特に作戦上、フィスティバルオーラを放ったレフィスは完全に人混みに呑まれて、他のケルベロスからは、レフィスの姿を窺うことすら出来ないほどであった。
 思うように足並みが揃わず、このままでは全員が奇襲をかけることが出来なくなるかもしれない。そんな焦りが生まれる。
 決闘の様子も、その思いに拍車をかける。
「あれ、まずいんじゃねぇの?」
 宮本に追従して難なく奇襲に最適な移動をし続ける酸塊は、思わず呟いた。
「もう終わりか、宮本? こんなんじゃ見てる奴等もつまんねーだろ。もっと抵抗してみろよ?」
 佐々木と宮本、二人の実力の差は予想以上であった。
 決闘は長引いている。確かに長引いているのだが期待したほど佐々木が消耗していないのだ。
 積み重なった【捕縛】によって、宮本の攻撃は稀に佐々木を捉えるのだが、傍からみても手応えの無さが伝わってくる。
「言ってろ!」
 宮本は佐々木の嘲りに攻撃で応えた。
 埋葬形態をとった宮本の攻撃は佐々木だけではなく周囲の観客にまで危うく被害が及ぶほど無差別で苦し紛れのものであった。
 巻き込まれる寸前であったというのに、観客はますますヒートアップしている。佐々木も宮本の諦めの悪さを歓迎するかのように手を叩く。佐々木の脚には侵食された床から突き出した枝が突き刺さっていたのだが、佐々木は興奮のあまりか全く気付いていない。
 それらの熱狂を見たケルベロス達は、気付かれぬようにヒールをかけるどころか、宮本のグラビティに紛れさせて佐々木に攻撃を密かに叩き込むことすら可能であったかもしれないと思案する。
 とは言え、それは間違いなく気付かれる可能性のあるリスキーな選択であった。リスクを避け確実な消耗と撃破を狙った作戦と、どちらが良かったなどと論評できるような代物ではない。
 ケルベロス達は決闘の行方を見守る。
 宮本は先ほどの攻撃で精魂尽き果てたように地面に膝をついていた。これ以上続ける必要はないと判断した佐々木は手を叩くのを止め、宮本にとどめを刺そうと近づく。
 二体の攻性植物の影が交差した時、息を潜めていた地獄の猟犬達が一斉に牙を剥いた。
 
●折れた枝は二本に留まらず
 最初に仕掛けたのは楓。
 観客によって奇襲の足並みが揃わぬことを見て取った彼女は、宮本のトドメを刺させぬように佐々木の足止めを優先した。
「それ、美味しく頂きな」
 油断していた佐々木は思わぬ方向から放たれたレゾナンスグリードに苦悶の表情を浮かべる。
 奇襲に成功した様子は、動揺する観客に揉まれながら見ていた神月に、何を思わせたのか。彼女は混乱する観客を押し退け跳ね除け、強引に決闘の場へと乱入していく。
「背中はあたしが守ってやっかラ、一発派手に決めていこーゼ!」
 神月のブレイブマインは、本格的な戦闘の開始を告げる狼煙となった。
 爆煙を背にブレイブが宮本へ一息で近付いてブレイズクラッシュを叩き込む。
 さらに酸塊が宮本へ追撃をかけていく。
「タイマン張ってるとこわりぃんだが」
 酸塊の旋刃脚が宮本を貫き、その場へと縫い止める。
「な、なんだお前ら! 邪魔する気か!」
 ようやく事態を把握した佐々木が咆えながら、手近な相手を狙って蔓を伸ばす。
「まぁ、あまりオイタはしちゃだめよ~?」
 佐々木の攻撃は、繚花の諭すような声と共に阻まれて届かなかった。
 正確を記せば彼女のサーヴァントである小黄龍が代わりに攻撃を受け止め、吹き飛ばされた。ゆえに彼女の、のんびりとした口調に陰りは一切見れない。
 ブレイブと酸塊から、立て続けに攻撃を受けた宮本は、乱入者が自分を優先して狙ってきていることに気付いた。
 観客の多くは殆ど恐慌状態で我先にと出口へと駆け出している。そのため、宮本は埋葬形態をとって躊躇なく無差別に攻撃を仕掛ける。だが直前に同じ技を見ていたケルベロスにとって避けるのは造作も無いことであった。
「獅子王丸、抜かるでないぞ!」
 そればかりか、多少の効果を上げそうであった攻撃すら、観客の波から抜けだした夜見と村雨虎徹獅子王丸によって防がれる。
「攻めるばかりが戦いではござらんぞ」
 夜見は紙兵散布によって自身と村雨虎徹獅子王丸の治療、そして味方の耐性の強化を行う。
 宮本は自分の攻撃がほとんど無意味だったことに歯噛みする。
「くそ……佐々木にも変な連中にもいいようにされて……一体、何なんだよ!」
 攻性植物の力に魅入られた自分を棚上げするような非難。
「悪いけど、今日の試合でブッ飛ばされるのは両方ともなんだよねぇ~……♪ ふっふっふ、卑怯とは言うまいデウスエクス!」
 実際卑怯だけどね。と、小さく付け加えた言葉をチェーンソーの駆動音で掻き消すミリオン。
 小さな少女がチェーンソー片手に、明らかに自分を狙っているような素振りで近づいてくる。
 そんな光景に宮本の非難の声を続けることは出来ない。角材となった自身の未来を想起せざるを得ない絵図に、宮本は堪らず佐々木へと駆け寄ろうとする。
 宮本は乱入者がケルベロスであるということを理解していた。だからこそ、佐々木にトドメを刺してもらえば少なくとも死を免れることができる。そう考えての行動であった。
「コギトエルゴスムなんて逃げ道はないよん☆」
 だが、その行動こそケルベロス達がもっとも警戒していた事。
 宮本の行く手を遮り、トドメをささんとチェーンソーを振り下ろすミリオン。彼女のズタズタラッシュは、蔓や枝を引き裂きながら宮本を吹き飛ばした。
 宮本は文字通りズタズタになった身体を引きずり、地面を這って出口へ向かって逃げようとする。
 地面に伏せる宮本の視界に直立する脚が飛び込んでくる。恐る恐る見上げると、冷ややかな視線が彼を射抜いた。
 そこには逃げる観客の波に流されながらも、機転を利かしてフィスティバルオーラと隣人力でスムーズに避難誘導することで人混みの渦から脱して廃倉庫に戻ってくることが出来たレフィスが立っていた。
「ボクの前に立ち塞がるというのならば、誰であろうと容赦はしないッ!!」
 顕現した闇が宮本の体を持ち上げ纏わりつく。レフィスの合図とともに闇の処女は宮本を情熱的に抱擁する。
 無数の棘に刺し貫かれた宮本の身体は、重力の鎖に引かれ風化するように朽ちていった。コギトエルゴスムになることなく。
 塵となった宮本を見て、佐々木は得心するように不気味に頷いていた。
 
●シマ争いの決着
「宮本が散々渋ってたのは、俺じゃなくてお前らみたいなのに襲われるのが怖かったってことか……ま、俺としちゃ何でもいいぜ。どうせ邪魔した奴を殺すことには変わりないんだからよぉ!」
 佐々木は有無を言わさずケルベロス達へと躍りかかる。その打撃を受け止めた繚花(の、サーヴァントたる小黄龍)が、あまりの攻撃の重さに苦痛の声を漏らす。
 酸塊は佐々木の攻撃を見て、旋刃脚によって【パラライズ】の付与を狙う。佐々木の攻撃の鋭さに消耗が見て取れなかったためにバッドステータスの蓄積を最優先としたからだ。佐々木の隙を見事についた酸塊の攻撃ではあったが、手応えが軽い。
「なんだよ、こんなもんかよ! まだ宮本の方が張り合いあったぜ!」
 決闘を長引かせ消耗を強いて、決着直前の乱入。
 目論見通りに事を進めて宮本を仕留めたケルベロス達であったが、やはり佐々木の消耗は期待したほどではなかった。
 だが決闘の消耗だけをアテにしていたわけではない。むしろ宮本を撃破した後の佐々木戦を見据えてケルベロス達は入念な準備を行っていた。
「惑え!」
 ブレイブは幻影によって佐々木の攻撃を誘導していく。
 戦闘の中で彼は絶空斬に大きな手応えを感じていた。佐々木の弱点は事前の推測通りであったとブレイブは確信する。しかし怒れる佐々木の攻撃は、強引にブレイブの体力を削り切る。
 ブレイブは佐々木の弱点を味方に伝え、そのまま意識を失った。
 その情報を受けて楓は、レゾナンスグリードを軸として攻撃を組み立てる。弱点に合致しているだけでなく、斬撃を主体したグラビティ構成で効果的なダメージを与えているミリオンを補佐するためだ。
「さっきからお前、鬱陶しいんだよ!」
 戦闘が長引くにつれて佐々木は明らかに焦燥していた。身を焼く【炎】も纏わりつくような【捕縛】も彼は解除する術を持たない。
 だからこそ、佐々木はジャマーである楓を強引に排除しようと、レゾナンスグリードを受けながら強力な一撃をカウンターとして叩き込んだ。
 既に戦闘から開始から幾度と無く交わされた攻撃の応酬。
 何度もヒールを受けて耐え続けていた楓の身体がついに崩れ落ちた。
 邪魔者は片付けた、と言わんばかりに佐々木は地面に伏せる楓を見下ろす。彼女の意識を失っていることを確認した佐々木は、ケルベロス達を睨みつける。その鋭い眼差しは憔悴こそしていたが、未だ好戦的にギラついていた。
 二人の戦闘不能者に満身創痍の前衛。村雨虎徹獅子王丸も小黄龍も懸命に主人の命を果たして既に倒れている。後衛も無傷ではない。
 ケルベロス達の脳裏に撤退の二文字が、微かにちらつき始める。幸いにしてブレイブも楓も意識を失っているだけで重傷を負っているわけではなさそうであった。だからこそ、ジリ貧のまま被害を拡大させるくらいならば早々に決断したほうが良いのではないだろうか?
 突如として、そんな考えを吹き飛ばすような咆哮があがった。
「お前じゃこの拳は追えねーだロ、そんな植物なんかで強くなった気でいやがんだからヨ!」
 重苦しい雰囲気を破り、今までメディックとして味方を支え続けてきた神月が佐々木に殴りかかっていく。その背中は、このまま押し切って佐々木にトドメを刺す、と雄弁に語っていた。
「デウスエクスである以上、手加減の余地は無し……せめて安らかに逝かれよ!」
「意地もあるんでしょうね、男の子にはさ~」
 夜見、そして繚花も神月の背に続く。
 ディフェンダーにメディック。
 防御の要が一斉に攻勢に回ったことで、酸塊とレフィスの両名ともバッドステータス重視ではなく威力重視の攻撃で佐々木に仕掛ける。
「綺麗に華麗に風魔法!行くよあたしの分身's☆ レッツダーンス!」
 新緑の風によって生まれたミリオンの分身が号令と共に佐々木に詰め寄る。だが勢いがあっても精彩に欠ける動きは、戦闘の疲弊を如実に示す。
 ケルベロス達の怒涛の攻撃に歯を食いしばって耐え切った佐々木は、ゆっくりと迫り来る攻撃をせせら笑う。
「そんな、すっトロイ攻撃、当たるかよ!」
 佐々木は油断していた。ケルベロス達を甘く見ていたと言うべきか。
 決闘が長引き、体力の消耗はなくとも確実に蓄積していったバッドステータス。貧弱な宮本の攻撃を、佐々木に僅かと言えど届かせるほどに至ったもの。楓が倒れる最後まで付与し続けていた【捕縛】。
「脚が……重てぇ!?」
 推測通りの弱点を見抜いたブレイブ。佐々木の攻撃を見極め、耐性を持って臨んだケルベロス達。
 あと一歩及ばなかった……そうはならぬように、その『一歩』を埋めるためにケルベロス達が積み重ねてきたものが、ついに実る。
 ミリオンと分身たちに斬り刻まれ、地面に倒れて宮本と同じように朽ちていく佐々木。
 佐々木を未だに信じれないといった様子で目をギョロつかせてケルベロス達を見る。
 その瞳が、佐々木を見下ろしていた神月の姿を映す。それに気付いた神月は、少し考えるような素振りを見せたあと、不敵な笑みを見せつけ、勝利を確信した声音で言い放った。
「こーゆー時はあれだロ、コジロー破れたリ! って言えば良いんだロ?」

作者:蛸八岐 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年2月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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