白魔の苛立ち、燦然

作者:彩取

●燦然
 白魔と呼ばれた、一体の戦艦竜。
 相模湾の海域を泳ぐその竜が、再び一隻の漁船の前に現れた。
 その手段は、以前のように水柱を立てる突進ではなかった。
 白い巨体を見せつけるように現れ、尻尾を振り切って繰り出された砲撃。衝撃波による激しい爆発音が、人々の悲鳴を飲み込むさま。白魔はその光景を前に、天を仰ぎ咆哮した。
 無数の傷が刻まれた白い巨躯は、もはや新雪とは程遠い。
 喩えるならば、人に踏み荒らされ、春の光に溶け行く残雪の如し。
 それでも、その力は健在だと誇示するような咆哮。それは決して、虚勢ではない。

●第三戦、あるいは
 二度に渡る、戦艦竜『白魔』との戦い。
 これから皆に伝えるのは、十六人のケルベロスによる努力の成果である。
 ジルダ・ゼニス(レプリカントのヘリオライダー・en0029)は眉一つ動かさなかったが、先の戦陣に加わった者達への感謝を胸にそう言い、説明を始めた。
 非常に高い攻撃力を持つ反面、自力での回復が出来ない戦艦竜。
 体力も高い為に、一度の戦いでは撃破が不可能な強敵だ。
 よって、ダメージを積み重ねて撃破するべく、既に二度の戦いが行われている。
 
 まず、一同にはクルーザーで、白魔の出る海域に移動してもらう。
 予知によると、今回白魔は船体には衝突せず、眼前に現れるようだ。
 しかし、前回同様海面と、海中の浅い部分での戦闘となる為、全員海へと飛び込んで戦う事になるのは変わらない。冬の海での水中戦だが、地上での戦いと遜色なく立ち回れる事は、前回までの戦いで証明されているので、クルーザー上で粘る意味はないのだ。
 戦艦竜は、攻撃するものを迎撃するので、撤退の心配はない。敵を深追いする事もない為、こちら側から撤退すれば、速やかに戦いは終わるだろう。
 すると、ジルダは現在の白魔の負傷度を口にした。
「現在白魔の体力は、六割半程削られています」
 つまり、前回と同じ、あるいはそれ以上の成果をあげれば、撃破に至るだろう。
 当然、それは白魔も理解し、故に前回と同じ方針で応戦するとは思えない。前回は火力を重視していたが、今回は可能性として考えるなら、防御力を重視するか、一同の行動を阻害する方針に切り替えて立ち回ってくるだろう。
「勿論、油断は禁物であり、無理をする必要もありません。ですが――」
 情報は揃っており、勝利の可能性があるのなら、
「存分に戦って下さい。第三戦、あるいは最終戦の成果を、お待ちしております」
 そうしてジルダは、深く一礼して皆を見た。
 仲間達への信頼を胸に、これが白魔との、最後の戦いとなるように願って。


参加者
イェロ・カナン(赫・e00116)
ハンナ・リヒテンベルク(舞詩う薔薇乙女・e00447)
八柳・蜂(械蜂・e00563)
ギヨチネ・コルベーユ(ヤースミーン・e00772)
飛鷺沢・司(灰梟・e01758)
千世・哭(麁鉛・e05429)
ロロ・ロー(新緑の森守・e09566)
伽羅楽・信倖(巌鷲の蒼鬼・e19015)

■リプレイ

●白魔
 曇天の下。相模の海に、白き荒波が立っている。
 その只中を悠然と進むのは、ケルベロス達を乗せた一隻のクルーザー。徐行からその動きが完全に停止すると、搭乗していた一同は船首の先、青の海面をつぶさに見つめた。
 水柱が立ち、白魔が現れたのは直後であった。だが、彼らに驚く素振りはない。
 代わりに淡々と、飛鷺沢・司(灰梟・e01758)は呟いた。
「――聞いていた通り、どうもご機嫌斜めのようだ」
 白き双眸が放つ極上の殺意。
 だが、傷付いて尚美しい白鱗とその巨躯は、目を瞠るものがあった。
 既に二度の激戦で衰弱しているとは思えぬ程、強い覇気。
 それを肌で感じながら、伽羅楽・信倖(巌鷲の蒼鬼・e19015)は左腕を覆う長手甲を外し、地獄化した竜の腕を露わにしながら声を発した。
「さあ、三度の戦。今度は我等がお相手しようではないか!」
「そして、これ以上の手を煩わせぬ為にも、ここで撃破いたしたく――」
 海原を翔ける、信倖の宣誓。そして、ギヨチネ・コルベーユ(ヤースミーン・e00772)が継いだ言葉を聞いた途端、白魔は空を仰ぎ、咆哮した。
 その声は、轟音と共に地を滑る雪崩のよう。
 しかし、千世・哭(麁鉛・e05429)は意に介さず、軽い屈伸を終え言った。
「こっちも準備運動良し、っと。ここまで繋いでくれたんだから頑張らないと」
 これは、自分達八人だけの戦いではない。既に十六人もの同志が、眼前の竜と戦い成果を挙げている。それを知るが故に、ハンナ・リヒテンベルク(舞詩う薔薇乙女・e00447)は胸元に添えた手に力込め、視線を竜に定めた。
「――先の番犬たち、努力、つないで。でも、無理、しないように」
 仲間達の努力を無駄にするつもりなど、ハンナ達には微塵もない。
 必要なのは、機を見極める冷静さと、竜に屈さぬ強い心。
 やがて、一同が真冬の海に入っていく。
 白魔もそれを待つかの如く、海面に浮上したまま沈黙している。
 それは竜の気紛れか、語られぬ矜持の一つであるのか。すると海に入る直前、ロロ・ロー(新緑の森守・e09566)は武器飾りに目を向けた。金糸を織り込んだ飾り紐。その端で両翼をひらいた琥珀の瞳を持つ錻の鳥は、禍福を告げる信の印。
 やがて、ロロは送り主の少女を浮かべて、囁いた。
「頼りにしてるぜ――」
 それは共闘する彼らへの、直には言わぬ思いでもある。
 焦りに負け、判断を誤れば、帰路さえ危うい竜との戦い。しかし、イェロ・カナン(赫・e00116)は気負いを感じさせない声で言った。
「春にはまだ早いが、雪解けの時になるか否か」
 そう告げ、戦列に就く為に前進するイェロ。
 対し、八柳・蜂(械蜂・e00563)は淡々と手袋を外した。
 現れたのは、二の腕より先を覆う影のような黒い左腕と、腕が纏いし紫の炎。
 程なく支度が済むと、蜂は白い竜にこう問うた。
「――さて、蜂達と遊んでくれますか? ドラゴンさん」

 こうして、戦いに身を投じたケルベロス達。
 対するは、踏み固められた白き魔物、戦艦竜『白魔』。
 越えるべき相手であり、溶けかけの雪の如き竜に対し、一同が願い、目指す事。
 それは残雪を海に沈め、白魔との戦いに勝利する事、ただ一つである。

●第三戦
 二度の戦いでは、クラッシャーだった白魔。
 しかし、此度の第三戦では、異なる戦法が予期されていた。
 三度同じ戦法を取れば、当然ケルベロス達も前回を踏襲してしまう。そうして白魔が選んだのは、氷や麻痺を最大限駆使する戦法。つまり、ジャマーである。 
「――イェロさん達と遊びに行こうっての、まさか海水浴になるなんて」
「しかも真冬の沖とはねぇ。チセちゃん俺達元気すぎだなー」
 初撃は海面、竜尾を振るう衝撃波砲。
 その麻痺が前列を襲う中、衝撃による水飛沫を浴びながら嘯く哭と、哭の盾となったイェロ。一方、信倖を庇ったギヨチネは即座に治癒へと動いた。
 対象は己を含む、同等の呪縛を付与された二人の盾役。
 しかし、ギヨチネは迷わない。
「憂悶の娼婦らを慰むる、目合いの褥に」
 詠唱と共に、ギヨチネの胸元に浮かんだ聖女の紋章。
 癒しの象徴たる印は、イェロの麻痺の一部を祓い清める力となった。
 ギヨチネの援護によって治癒から一転、攻撃に向かうイェロ。個体こそ違えども、竜には並々ならぬ借りがあるが故、誘う言葉には甘さ以上の熱を込めて。
「――近くに、おいで」
 白鱗に吐息を送り、掲げた鈍色の銃口。
 瞬間、胸に炎が灯ると、肌を焼き焦がす痛みに白魔は吼えた。
 巨躯をうねらせ、浅い海中に身を沈めた標的。
 そこに歌を重ねたのは、陣の中心ハンナである。透徹たる祈りの詠、それが涼やかに淑やかにみなもを撫でると、前列に舞い降りたのは純白の羽根。天よりの煌めきは癒しと力を仲間にもたらし、その結びの言葉としてハンナは告げた。
「ここで、終わらせる。わたしたち、なら、できる……きっと」
 準備は万全。後は、体現するまでである。
 すると、哭も両手に鉄塊剣を構えた。己が翼で水を切り、竜の飛沫の真似事を。直後、海中を前進した視界には、巨大な竜の姿があった。
(「大きいの格好良いな。俺も砲台とかのせたい」)
 抱くのは、子供のような眩しい憧れ。だが、過度の突出を戒める思いを胸に、哭は剣を大きく掲げた。火力の担い手として、早々に倒れる訳にはいかない。
(「それに、はっちーさんもロロさんもいるから、へたなとこ見せらんないね」)
 直後、巨大な刃を振るう哭。刻むは深く無骨な十字の傷。毒を伴うその斬撃はハンナの力によって更に力強く、桁違いの威力が白魔を襲った。
 水面を挟み、波を立てながら攻撃を浴びる白魔。
 その姿に、信倖と司は海風を頬に浴びながら言った。
「成程、ジャマーか。ならば短期決戦を狙いたくはある」
「確かに守りに入られるより、攻撃は通り易いな」
 短く意志疎通を済ませ竜を追う信倖に、後方から頷き敵を見据える司。
 すると、蜂も仲間達に続くべく、攻性植物を手に直進した。真白の竜へと絡み、尾を締め付ける蔓の力。元より高くはない戦艦竜の機動力だが、低いに越した事はない。
(「寒いのは苦手ですが、仕事と割り切るまでです」)
 目標は、あくまで白魔の撃破である。
 そして、初撃から察するに、白魔は前列を先に落とすつもりだろう。
(「それなら、後列の俺達が休むわけにはいかない」)
 故に、こちらは少しでも多く、一撃を重ねるまで。
 そう己に銘じると、司もナイフを手に竜へと迫った。水をも掻き斬る刃に、薄い炎の膜を這わせた司。瞬間、吹雪の如くうねる竜の鱗に、司は十字の傷を刻んだ。
 斬撃は火花と共に、傷痕に同じ色の炎を残して。
 絡み付く連撃の前に、目を細めて苛立ちを示す白魔。だが、一同の連撃は止まらない。長い首を海面に上げた竜に対し、信倖は海中より空を仰いで、掌より凝縮した螺旋を放った。荒波を貫き、竜の顎へと直撃した氷結の螺旋。
 すると信倖もすぐ浮上し、首を仰け反らせた竜を見た。
「竜が竜退治とは、なかなかに滑稽。だが、それも良し!」
 竜の名を冠する一族として、信倖は思う。
 人に仇名す竜であろうと、その体力と精神は敬意に値する。
 故に、屠る者として、己が持つ全力でぶつかり合う事こそ道理であると。
「さあ、戦いは始まったばかり。いざ尋常に勝負!」
 高らかな宣誓が響く中、首を戻して一同を睨む白魔。その眼下に注がれていたのは、ミモザの花を彷彿とさせる聖なる光。ロロの攻性植物が実らせた黄金の果実が、白魔の散布した麻痺を清めゆく光景だった。
「今日のお前らも可愛いな」
 やがて光をおさめ、懐くように身を寄せる植物に囁くロロ。
 しかし直後、白魔はロロを一瞥した。
 次の狙いは後方か。皆がそう考えた次の瞬間――、
「――! こいつ」
 吹き荒れたのは、前列を襲う氷の吐息。
 再び刺さる竜の視線。それをキッと睨み返すとロロは告げた。
「挑発のつもりかよ……いいぜ。お前はここできっちり、俺達が撃破してやる」
 だから如何に煽ろうと、要らぬ波は心に立てない。
 己が思うまま。仲間を支え、一撃でも多く竜を殴りつける為にも。

●燦然
 竜の砲撃と氷の吐息は、確実に彼らを追い詰めていった。
 序盤こそ、前列への攻撃が目立った白魔。しかし竜は彼らの役目を見極めながら、後列へも列攻撃を仕掛けていった。それは一貫した彼らの行動を乱し、綻びを見出だす為。
 だが、思惑通りになどいかせない。
 それを示すように、蜂への吐息を防いだイェロ。
「あら、かっこいい……なんてね。無茶は駄目ですよ? お互い」
 瞬間、白魔が翻した尾に遮られる形で、イェロの視界から蜂の姿は見えなくなった。波立つ音の只中で、耳に残るのはお互いという締めの言葉。
「――ま、正直大人しく守られてなんてくれないよなぁ」
 それでも、可愛い子達に無茶はさせられない。
 身体動く限りは、皆の盾となり戦うまで。
 そう己に告げ、重力を宿す蹴りを繰り出すイェロ。
 一同の中で特に負傷が目立つのは、盾役たるイェロとギヨチネの二人である。
 クラッシャーとスナイパー陣が攻撃に集中する為にも、ロロと共に治癒を放ちながら、仲間への直撃を防ごうと尽力する二人。しかし隙あらば、彼らも攻め手に回った。
「大丈夫。こちらは、まかせて……」
 ハンナの魔方陣より注がれた、星々の燦めき。
 その力が持続する中、ギヨチネは後方のロロに治癒を任せ前進した。
「では私も、この好機に続きましょう」
 狙いは海中で唸る白き竜。翼と尾こそ見せはしないが、男もまた竜と名のつく種族の一人。鍛え上げた肉体。その拳に気を集約し、音速の拳を竜の身体へ打ち放つ。
 だが、ギヨチネの身体には、多くのダメージが蓄積していた。
 当然、それを察した上で尚、傷を癒し続けるロロ。しかし――
「――コルベーユ卿……っ」
「――っ、心配は無用でございます。参りましょう」
 迫り来る竜の一撃。それを正面から防いだギヨチネの言葉に、きつく口を噤んだハンナ。彼女の傷も深きもの。だが、好機が巡れば逃さない。
「諦めない、の……わたしたち、まもりたいもの、取り戻すの……!」
 望むのは、雪解けの時。平穏なる海を、人の手に戻す為。
 その決意を秘め、水面に浮かぶ竜へとハンナは迫る。高速演算の導き出す一転へ放つ、痛烈な一撃。その鋭き突きの瞬間爆ぜた水飛沫は、白薔薇の花弁の如く少女の身体を包み込み、攻撃手は技を畳み掛けた。
 だが、白魔はまだ倒れない。
 遂には痛みを抑え、衝撃砲を放ち続けた。
 傷付いて尚、その力に感じる凄まじさ。
 そんな竜に哭が微かに心逸らせる中、司は抑揚のない声で呟いた。
「……こうも、堅い。戦艦の名は、伊達じゃないな」
 とても、三度目の戦いを迎えた竜とは思えない。
 覇気は衰えず、瞳に携えた殺気も肌を刺し、畏怖すら感じるその姿。
 だが、衰え知らずは彼らとて同じだ。
「何、まだこの双斧、振り足りぬと感じる程だ!」
「それに、今回はいつもよりもっと、ずっと――負ける気なんてしないから」
 豪気なる一声を放つ信倖と、内に熱を秘める哭。
 瞬間、哭は息を吸い、告げた。
「千を薙げ、百を穿て……」
 海面に浮かぶ竜の身体を足場として、頭上目がけて踏み切る哭。
 黒い焔が刃に伝うは、地獄の片鱗。そして、唱えし言葉を暗示として、
「万の刃に貫かれ、一つの拍動を、止めるまで――」
 哭は瞳に映す竜を斬り裂いた。その衝撃の元、堪らず咆哮する白魔。そこに間髪を入れず続いたのは、信倖だ。掲げるは両の手に構えたルーンアックス。彼もまた竜の身体を基点として跳躍し、白い竜の身体の前で交差するように、偉大なる斧を振り落とした。
「全力でお相手すると言った以上、その言葉、違えはせぬ!」
 開戦前とは異なり、彼らも数多の傷を負っている。
 だが、未だ全員戦場に留まれている以上、撤退は選ばない。
 何より、もし誰かが欠けていても、彼らはこの場から引かなかっただろう。
 理由は一つ、終わりの時を感じているから。それでも、今はあくまで予感である。故に勝利を引き寄せるべく、蜂はこう囁いた。
「……貴方は、これがお好きと聞きましたので」
 それは先の戦場にいた仲間達が得た、竜の弱み。
 頑健なる魔術を嫌う竜を刺すのは、蜂の左手に息づく紫炎。
 その火花は花弁の如く揺れ、
「――貴方に、花を」
 術者の言葉と共に、灼熱をもたらす花となった。
 守護と灼熱の力を持つ蜂の炎術、泥犂の花(ナイリノハナ)。
 彼らの中にはもう一人、二面性を持つ技の使い手がいた。
 その力の守護の一面を示すべく、詠唱を始めたロロ。
「秩序を癒し、無秩序を貫く光となれ――」
 魔法の木の葉を通し、森の息吹を海原に。その力は仲間を癒す羽根と化し、戦場の空から舞い降りた。より傷付いたギヨチネに注がれた森の神託(スピリタス・ムンディ)。直後、 竜は再び海中にて、ハンナに一撃を繰り出そうと迫ったが――、
(「へいき、これだと……あたらない」)
 度重なる呪縛により精度の落ちた突進が、ハンナに届く事はなかった。そこに追い打ちをかけるべく、ガトリングガンの照準を竜の正面に据えたイェロ。
(「ここまで来れば、回復なしでも無茶ではない――よな」)
 水を通しても尚、激しく轟く連射音。
 へらりと軽い笑みを浮かべ、イェロは竜の姿を瞳に映した。
 眼前が霞む程の傷を得ても、竜の姿は目に飛び込む程に、白く眩しい。
 しかし、それも見納めだ。途切れずに続く連撃の嵐。やがて最期を予感しながら、司はナイフを両の手に構えて前進した。
(「この吹雪は、止めさせる」)
 寸分の狂いもなく、舞い踊るように竜を斬り裂く司の斬撃。
 瞬間、白魔は水の中で絶叫し、
(「――海に還れ」)
 司の言葉を餞に、水底へと沈んでいった。
 最期を見届ける一同の前で、次第に輪郭を失う白き巨躯。
 彼らが雪解けと喩えたように、白魔は海の底へ向かい、溶けるように消滅した。

●結び終え
 白魔を撃破して、海面に浮上した一同。
 乗って来たクルーザーも少し流されていたが、泳げば届く距離にある。やがて船に辿り着くと、司とハンナは先程までいた海面を見つめて言った。
「……眠ったか」
「――でも、島、取り戻す日、まだ、遠い」
 城ケ島には残党が。海にも、多くの戦艦竜が残っている。
 故に、荒波の予感はこれからも。それでも今だけは、静かな海に心を委ねて。
 いつか必ず、真の平穏を取り戻すと胸に誓い、彼らの船は進んでいく。
 すると哭は遠のく海を見て、命尽きた竜へと思い馳せた。
「――おやすみ」
 白波の立つ相模の海原。
 その中を悠然と泳ぎ揺蕩う、雪のような竜の姿を。

作者:彩取 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 13/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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