椿堂、最後の足掻き……?

作者:質種剰

●戦艦竜、みたび
「ついに、戦艦竜『椿堂』との決着が、着くやもしれないであります……!」
 その日、小檻・かけら(サキュバスのヘリオライダー・en0031)は、興奮した様子で説明を始めた。
 戦艦竜とは、城ヶ島より南に位置する海域を守っていたドラゴンで、ドラゴンそのものの身体に戦艦のような装甲や砲塔を有し、非常に高い戦闘力を誇るという。
 この『椿堂』も、他の戦艦竜同様に狐村・楓(闊達自在な螺旋演舞・e07283)の調べにより、城ヶ島の南の海から相模湾へ入って漁船を襲っていると突き止められた。
「これまで二度に渡る皆さんと椿堂の激闘の結果、ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)殿の見立てによりますと、椿堂の体力は残り3割ぐらいだそうであります。それ故、次の戦闘で椿堂を仕留められる可能性が大いに出てきたのでありますよ!」
 そんなわけで、今回もケルベロス達はクルーザーを利用して相模湾へと赴き、戦艦竜『椿堂』との戦いに挑んで欲しい。
 戦艦竜は、強力な戦闘力と引き換えに、ダメージを自力で回復する事ができないという特徴がある。
「何分海中での戦いでありますから、実際に戦艦竜を撃破するのはなまなかのことではありませんでしょうが、根気よくダメージを積み重ねていけば、きっと倒せると信じてるでありますよ!」
 かけらはケルベロス達を激励するや、笑顔で続ける。
「皆さんに戦って頂く戦艦竜は椿堂1体であります。そして、前回や前々回戦った際に集めて下さった情報では――」
 椿堂は、背ビレにある沢山の砲台から、椿堂をそのまま縮小したかのような形状の砲弾『子戦艦竜』を、複数人に対し乱射してくる。
 この子戦艦竜は破壊力と敏捷性に長け、時に相手を威圧する事もあるらしい。
 さらに、頭に生やした2本の角からは、赤い子戦艦竜の姿をしたミサイルを、1人に対して撃ち込んでくる。
 こちらは火傷を残す可能性があり、威力の大きく頑健さに満ちた魔法攻撃である。
 そして、毒を飛散する緑の子戦艦竜をばら撒いてくる事もある。
 理力に長けた斬撃であるようだ。
「椿堂の能力値は、理力が他よりも低く、斬撃に耐性を持つであります。繰り返しますが残り体力は約3割……皆さんの頑張り次第で倒せる目も出てきましたね!」
 また、戦艦竜は攻撃してくる者がいると必ず迎撃行動に移る為、戦闘が始まれば撤退する可能性は無い。
 同時に、敵を深追いしないという特性もあるので、ケルベロス側が撤退すれば、追いかけても来ないようだ。
「椿堂との戦いが厳しいものになるのはもはや避けられませんが、皆さんのご活躍をお祈りするであります」
 この戦いで椿堂を撃破できるように、頑張ってください!
 かけらは改めて皆を激励し、説明を締め括った。


参加者
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)
レイ・ヤン(余音繞梁・e02759)
タンザナイト・ディープブルー(流れ落ち星・e03342)
アルタ・リバース(穏心の放浪者・e05478)
矢武崎・莱恵(オラトリオの鎧装騎兵・e09230)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
相馬・碧依(こたつむり・e17161)

■リプレイ

●遭遇
 相模湾。
「またやり合う事になるとはよ」
 水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)は、クルーザーの甲板から凪いだ水面を眺めつつ、インディゴブルーのハットが海風で飛ばされないよう片手で抑えた。
 ふわっとした白いくせっ毛とやる気の無さそうな表情から、ぼんやりした印象を受ける青年で、実際に無気力人間だそうな。
 だが、やるべき事はしっかりやる性格でもある鬼人。
「さて、行きますかね」
 前回椿堂と戦った時同様に、白いウォーターパターンの入ったサーファーパンツを穿いて、潔く海中へ飛び込んだ。
 元より面倒見が良く、戦闘中は働き者になる故、壁役として頼もしい限りだ。
(「油断無く、驕り無く。私達全員の力をもって、ここで貴方を仕留めます」)
 アルタ・リバース(穏心の放浪者・e05478)は、僅かな緊張をも気力に変え、真剣な表情で水面を見つめている。
 サラサラした灰色の髪と穏やかな瞳を持つ、整った面差しのレプリカント。
 過去の記憶を持たないせいかその佇まいはどことなく儚げで、破壊の絶えぬ世界を憂い自然をこよなく愛する慈愛に満ちた性格と相俟って、物静かなアルタの魅力をいや増している。
 白いロングコートの内に革のプロテクターを着用した出で立ちで、決意を胸にクルーザーから飛び降りるアルタ。
 煌めく藍色の瞳が見据えるのは、仲間達と掴み取る勝利に他ならない。
「椿堂と戦うのはこれで二回目だけど、奴はデカくて強い。それだけは確かだ」
(「けど、それを乗り越えない限り相模湾に平和は戻らないのだし――それを乗り越える事でみんなに希望を与えてみせる」)
 ドッバーーン!
 と、気合充分で海へ突っ込むのは、ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)。
 ちなみに、彼の穿くスプラッシュダウンに描かれているのは派手なファイヤーパターン。偶然にも鬼人と統一感がある。
 ロディは、この日も愛用のリボルバー銃ファイヤーボルトと消防車型アームドフォートであるファイヤー炎神を携え、椿堂目指して泳いでいく。
 一見派手好きで猪突猛進タイプに感じられる彼だが、前回は細かに神経を張り巡らせて椿堂の挙動を観察していた。
 今回もその注意深さをきっと発揮してくれるだろう。
「今度こそ悪い竜を倒すんだからね! 悪い竜を懲らしめる為ならちょっと息苦しくても我慢するよ!!」
 矢武崎・莱恵(オラトリオの鎧装騎兵・e09230)も、元気いっぱいといった様子でクルーザーから海へ躍り出る。
 どぼ~ん!
 莱恵のトレードマークである金髪が、小柄な身体にそぐわない重武装の隙間から、ゆらゆら揺れた。
(「うっ……息苦しくても我慢我慢……!」)
 苦しげに眉を顰めて泳ぐ莱恵を、ボクスドラゴンのタマが追いかける。
 この日の彼女は、椿堂の圧倒的な火力に耐え切る為か体力を重視し、水中呼吸を捨てて聖職服を選んでいる。
 前回、自分の能力値を全て同値に揃えた成果として、子戦艦竜の猛攻に負けず赤ミサイルの詳細や椿堂の能力値を見極めた莱恵。
(「敵の前衛、中衛への攻撃をなるべく減らすように怒り付与すれば、痛そうな赤ミサイルの来る確率が減るはず……!」)
 今回も椿堂を安全に叩く為、策を練っているようだ。
「あー……冬の海に飛び込まなきゃいけないとか、めんどくさい……」
 さて、水面を眺めて思案に耽っているのは、相馬・碧依(こたつむり・e17161)。
 毎日の生活ほぼすべてを炬燵の中で過ごしているという、究極の怠惰人間だ。
 しかも主食はポテトチップスなどのスナック菓子で、気が向いた時でも保存食を食べる徹底ぶり――とはいえ、完全に引きこもりな訳でもないらしい。
 見た目は、金色のくせっ毛と赤い瞳が可愛らしいボーイッシュな少女である。今は水中呼吸する為にスクール水着着用中。
「仕方ないなぁ……」
 果たして誰かが彼女を餌づけしたのかは定かでないが、碧依は素直にドボンと海へ飛び込み、椿堂のいる方へ泳ぎ出した。
「確かにな……真冬の海水温がどの程度かとか、考えたくはないよな……」
 一方、グラディウス・レイソン(蒼月・e01063)は、妙に光を失くした瞳で海面を睨みつけていた。
 どうやら寒がりであるらしい彼は、甲板へ潮風が吹きつけた時点で既に自らを両手で抱き締め、ブルブルと寒さに震えている。
「行くか……」
 だが、自分へも他人へも厳しい性格故か、ぐっと自らを律して甲板から飛び降りるグラディウス。
 女性と見紛う端整な顔が、水の冷たさで僅かに歪んだ。
「竜か。自分に近いから気になるな」
 レイ・ヤン(余音繞梁・e02759)は、ぽつりとそう呟いてから、
「彼らにも心はあるだろうけれど……太郎もドラゴンだもんね」
 傍らにいるボクスドラゴンの太郎を見やる。
「竜同士仲良くやれればなんて思っちゃうけど、同じ竜でもこっちはあまりにも脆弱だもんね」
 自身もドラゴニアンであるレイの、どんな命に対しても分け隔てなく想う優しい心が滲み出た言葉。
 しかし、当人も自覚している通り、戦艦竜である椿堂は、ケルベロス達が束になってかからねばならない程に強い。
(「以前戦った竜との経験を活かせると良いけど……」)
 それ故、レイはあくまでも冷静に、気を抜かないで戦おうと誓うのだった。
 また、彼も水中呼吸つきの防具を使わず、自力で耐え抜く構えである。
 他方。
「新年早々海中水泳なんてついてないです……それにしてもなんで海? 人のいない所でチェイン集まるですかね?」
 タンザナイト・ディープブルー(流れ落ち星・e03342)は、かような疑問を口にして首を傾げる。
 白くふさふさしたたてがみを持つウェアライダーで、どことなく幼さの感じられる口調や、無邪気な表情が愛嬌のある少年だ。
 そんな彼は競泳水着を身に着けているお陰で、海の中へ入っても楽に呼吸をしながら、獣人形態の雄々しい風情で水を掻いている。

●再戦
 海底。
「射程内に入った瞬間、先手を取られる可能性に留意しましょう」
 アルタが仲間達へそう伝えるのは、前回の椿堂との戦いについて調べたが故だろう。
 実際、この日の椿堂は出会い頭に子戦艦竜をぶっ放してきた。
「黒だっ!」
 背ビレをぶるぶると震わせるその姿から、ロディが警告を発する。
 もっとも激痛と威圧への心構えが出来る程度で、余程運が良くなければ避けられはしない。
「ンガァァァァッ!!」
 ドドドドドド……!
 椿堂をそのまま小さくしたような黒い子戦艦竜が、後衛陣へ襲いかかった。
 辛うじて碧依を太郎が庇う。また、後衛達は全員破壊に耐性を持っていたお陰で、大きなダメージを受けても誰1人倒れずに済んだ。
「今回、でかいのを持ってきたからな。取り付いて殴る事も出来るぜ」
 椿堂の正面へと躍り出た鬼人は、雷の霊力を帯びた斬熊刀を向ける。
 ズブッ!
 神速で繰り出された突きが、椿堂の首の皮を破って血を噴き出させた。
「流れを引き寄せます!」
 アルタは、機構名-Let it be-を嵌めた拳から、降魔の一撃を見舞う。
 ガスッ!
 椿堂の魂の一部を喰らう事で、自らの体力を回復させた。
「あーあ、先制攻撃したかったのに。やっぱそう簡単にはいかないか」
 ロディは軽口を叩くような調子で呟くも、ファイヤーボルトの照準を椿堂に合わせるその眼は真剣そのもの。
 それだけ、ロディが椿堂の底知れぬ強さに対して敬意を払っているのかもしれない。
 ――バァン!
 なればこそ、目にも止まらぬ速さの弾丸を椿堂の背ビレへ撃ち込み、砲台一つを砕いて火力を削いだのだろう。
「回復するよっ!」
 と、仲間達へ声をかけてから、小型治療無人機を射出するのは莱恵。
 重火器の隙間からわらわらと散らばるヒールドローン達が、後衛陣の深手とのしかかる威圧感を癒していく。
 また、再行動の際にはドラゴニックフュージョンを仕掛けて、狙い通りに椿堂の怒りを煽った。
 タマは属性インストールで太郎の傷の治癒に務めている。
「これで終わりにしちゃいたいけど、あんまり痛いのは嫌だなー」
 どこかぼんやりした物言いで憂うのは碧依。
 足元に展開したケルベロスチェインで魔法陣を描き、前衛陣の守りを強固にする。
 彼女のウイングキャットで縞模様のはっきりしたララは、清浄な趣きの翼を羽ばたかせ、彼らの異常耐性を高めた。
(「今回で倒すことを目標に頑張るか」)
 グラディウスは、青い燐光が零れ落ちるかに見える斬霊刀を正眼に構える。
「鋭!」
 裂帛の気合いと共に繰り出された雷刃突が、椿堂の顔を容赦無く抉った。
「強いと燃えてくるよね、本当」
 レイは魔人降臨で自らを強化したのち、ブラックインヴェイジョンを繰り出す。タンザナイトと攻撃の属性をバラけさせる為だ。
 バシャアッ!
 椿堂の巨体を覆うかのようにブラックスライムを広範囲へ解き放ち、魔法防御ごと分厚い鱗を喰らいつかせた。
「うぅ……体毛が水で濡れて……」
 ぺったんこになったたてがみが顔に張りつくのを煩わしく思いつつも、星天十字撃を放つタンザナイト。
 ――ドスドスッ!
 2つの星座の重力宿りしゾディアックソードで、超重力がこもった十字斬りを叩きつけ、椿堂の背中へ少なくないダメージを与えた。
「グギャアアアア!!」
 怒りに我を忘れたかの如き大音声で、頭を上下に振る椿堂。
「赤ミサイル来るです!」
 タンザナイトの読み通りに、頭の角の砲塔より赤い子戦艦竜を射出してきた。
 ボーー……ン!
「うっ」
 着弾したミサイルの爆ぜる衝撃に、グラディウスが呻く。
 莱恵の思惑通りに怒り狂って彼女を狙っては来なかった訳だが、こればかりは確率が五分五分な為仕方ない。
 実際、椿堂は戦闘が長引くにつれて、莱恵のいる後衛陣へ向けて黒や緑の子戦艦竜を何度か放っていた。
「盾役たるもの、全員、守り切ってみせるぜ」
 そうなると、鬼人も椿堂の背中に乗るかの如く跳び上がって、斬熊刀を叩きつける。
 単純かつ重厚無比な一撃が椿堂の背骨をも砕く勢いでザックリと身へ減り込み、鬼人への怒りを増幅させた。
「在るべき者に、在るべき報いを――!」
 アルタは、両腕より二筋の雷に似たグラビティを放射する。
 ――ビシャァアアァン!
 裁きのシンボルたる赤いオーロラを纏った雷が、椿堂のみを狙って命中、裁きという名の強い苦痛をもたらした。
「誰1人倒れさせない。その前に決着を着ける!」
 ファイヤー炎神の主砲を一斉発射して、椿堂の太長い身体を爆炎で包むのはロディ。
「行くよ、タマ! 融合だぁ~!!」
 莱恵は、ガバッとボクスドラゴンのタマを肩車しながら、武器を振り回して突撃する。
 バキバキバキドカボコッ!
 彼女が一所懸命に攻撃する最中、上に乗ったタマも必死の鳴き声で挑発していた。
「唄え、闇結鴉」
 グラディウスが携えし刀の青き燐光が、黒き羽根へと姿を変える。
 黒き羽根は終焉を告げる静寂を生み、椿堂へ終焉の片鱗を見せ、術者へも癒しを与える。
 静寂の終焉、癒しの時を齎した黒き翼は、音もなく光に姿を変えて、海面へ向かい融けていった。
 ダメージを与えれば与える程に、椿堂の反撃は激しさを増して、緊張感のある戦いが続く。
 莱恵へ攻撃する時は黒か緑の子戦艦竜を撃ち出すものの、怒りが緩んだ瞬間にはやはり赤ミサイルも交えてくるのだ。
 それ故、碧依やララは仲間達の治癒にかかりきりになった。
 だが、この2人の献身的な治療が無ければ、何人かは自己回復でも賄えずにやられていたかもしれないだけに、メディックの回復力は有難いものだ。
「はは、ここまで強いと笑えてくるかも。――でも、負ける気はないから。絶対」
 レイは中華風軍服が似合う身のこなしで、連撃を椿堂へ繰り出す。
「連撃行くぞ! 一の拳苦諦! 二の拳集諦! 三の拳滅諦! 四の拳道諦! 四つの真理を拳に宿し、終脚撃をもって終幕とせん!」
 4つの真理である『苦・集・滅・道』を宿し、悟りを極めた拳を連続で素早く決めると、最後は足技で強烈な一撃を叩き込んだ。
 そして、椿堂との戦闘が開始されてから、9分経って。
「これで決めるです……先の2グループさんの努力、ここで実らせるですよ!」
 渾身の力で地獄の炎弾を飛ばすのはタンザナイト。
 ゴォオオォオォ!
 生命力を喰らう炎が椿堂の巨躯を派手に取り巻いて、奴の体力を着実に削りとった。
「こたつの威力、思い知って! ……あ、ララ。いつもの頼むねー」
 碧依は、極限まで強化されたコルチェヒーターを至近距離から敵に翳し、大火傷を負わせた。
 ――極度の面倒臭がりな碧依ゆえに、ララがヒーターを支えている事は公然の秘密である。
 さらに、ララは碧依の動きに合わせて、尻尾のキャットリングも飛ばしていた。
「我流剣術『鬼砕き』、食らいやがれ!」
 左切り上げ・右薙ぎ・袈裟掛けと流れるように椿堂へ斬りつけるのは鬼人。
 ――ドブシュッ!
 その刃筋が重なる箇所を刺突でぶち抜き、ダメージを与えた。
「私一人では貴方の足元にも及びません。だからこそ、これが『ケルベロス』の力です……!」
 アルタもそう力強く言い放って、旋刃脚を見舞う。
 ゴスッ!
 電光石火の蹴りが椿堂の腹を貫いた。
「持ってけ、俺達全員のありったけ!」
 と、神業めいたファニングで何発もの弾丸を刹那の内に椿堂へ叩き込むのはロディだ。
 ――ダァァン!!
 あまりの連射の速さゆえ銃声が一発に聞こえるも、その実、椿堂の胸へは数発の弾丸が貫いていた。
「アグ……ッ!」
 椿堂は突然緑の子戦艦竜を乱射すると、頭をぶんぶん苦しげに振り回して、そのまま海底にゆっくりと墜落した。
「やったですか……?」
 タンザナイトが恐る恐る近づいて確かめる。椿堂は息絶えていた。
「やったんだね、ついに」
 レイが太郎と顔を見合わせて笑った。
「水底に眠れ、戦艦竜ってな。流石にこの季節の海中はこたえるぜ」
 鬼人は海底に身を横たえた椿堂を眺めて、安堵した風に呟くと、
「早い所、あったかい所に戻りたいもんだ」
 仲間達の気持ちを代弁し、海面へ向かって泳ぎ出した。
「皆、本当にお疲れ様……海から上がったらあったかいココアと焼き菓子で一息つかないか」
 グラディウスも仲間達へ向かって激闘を労うや、得意な菓子作りの腕を振るって用意した焼き菓子を奨める。
「冬の海はもう遠慮したい……」
 これもまさに、全員が思ってる事に違いなかった。
 ロディは、海面へ向かって泳ぎ出す前に、椿堂の遺骸へと振り返って、
「強かったぜ、あんた」
 そっと呟いた。
 帰りのクルーザーでは、グラディウスの焼き菓子とココアの他に、鬼人も珈琲と人数分のタオルを用意していた。
「これだけの強敵が数限り無く存在するとは。ドラゴン勢力……未だ力及ばず、ですね」
 一口珈琲を飲むや暫し瞼を伏せて、取り残された椿堂へ思いを馳せるアルタだった。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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