海中に棲む混沌、氷結の極竜

作者:千咲

●真白き氷結の銛、ふたたび
 ――相模湾周辺。
「社長……なんか、妙に静か過ぎじゃねーですか?」
「何がだ? いーじゃないか。静かな海、結構。たっぷり獲って、悠々と帰ろうじゃねぇか」
「いや、そうじゃねーんすよ。ほら、この辺りは最近、海難事故が多発してるって……」
「妙な事を言うねぇ。事故ってのは荒れた海で起こるもんだ。こんな静かな海の上じゃ、せいぜい、お前ェが海に落ちるくらいだろうがよ!」
「そんなぁ……勘弁してくださいよ。落ちたのはもう3年も前の事じゃないっすか!! もう、あの頃みてぇな ヒヨっ子じゃねーんですから」
「へいへい、そうだったそうだった。もうヒヨっ子じゃなく、3歩あるきゃ自分の努めも忘れちまう、にわとりだったなぁ」
「社長~っ!」
「ま、待てっ! 何だ、こりゃ!?」
「しゃ、社長?」
「おい、取り舵いっぱい! 即、反転! この海域から脱出するぞ!!」
「へっ?」
「へ、じゃねー。お前の言ってたのが正しかった……スマン」
 漁船『海流号』。そのオーナー社長が、ようやく自らの否を認めたが、それは時既に遅し……。
 直後に放たれた白き銛。氷で形作られたそれが、海流号を下から斜めに貫て、木っ端微塵に粉砕したのだった。 
 
●ラハブ討伐依頼
「この間みんなが戦ってから暫く大人しかった氷結竜ラハブ――かの竜が、再び活動し始めたみたいなの」
 赤井・陽乃鳥(オラトリオのヘリオライダー・en0110)は、集まったケルベロスたちに、そう切り出した。
 かの竜、と言うのは『戦艦竜』――体に戦艦のような装甲や砲塔が据えられたドラゴンで、非常に高い戦闘力を持った存在なのだが、中でも今回のは、真白い躯の美しき竜、ラハブ。
 そう命名したのは陽乃鳥自身だったけれど、その個体が持つ氷の力はまさに疑いようのないほど強力なもの。
「それが再び漁船を襲うようになった以上、一刻の猶予もないわ。これ以上の被害が発生する前にかの水域に移動、クルーザーを利用してもう一度、ラハブに挑んで欲しいの」
 そう言う陽乃鳥の表情は、まさに真剣そのもの。
「分かっていると思うけど、戦艦竜はその強大な戦闘力と引き換えに、ダメージを自力で回復する事ができないという特徴があるの。前回同様、メインは海中での戦いになると思うけど、さすがに今回で撃破まで持っていくのは難しいかも。でも、これを幾度か繰り返せば、いつかきっと……」
 いずれにしても命懸けの戦いになる――予言でもするかのようにそう告げて、陽乃鳥は小さく頷いた。お願いします……と。
 次いで陽乃鳥が語ったのは、前回までの戦いでの分析結果と、ラハブの特徴について。
「前回はみんなの決死の活躍で3割超のダメージを与えたと思われるわ。後半は回復が追い付かなくなったので退くしか出来なかったけど、工夫次第ではもう少し戦えたかも知れない……それに、明確な弱点と迄は言えないのかも知れないけど、敏捷系の攻撃が通りやすいかも。それと、斬撃系がいくぶん良いみたい」
 前回の戦いの中で、その辺りが多少なりと効果が高いと思われる攻撃だった。
「気を付けたいのはやはり、銛の攻撃かしら? 敵は癒し手を確実に潰す行動に出る傾向にあるわ。それが身を守るのに効果が高いことを経験則で学んだみたい。命中は決して高くないとは思うけど、当てられればタダじゃ済まないことは言う迄もないわね。体力と破壊力に特化した相手だけに、簡単じゃないとは思うけど……」
 それに……。
「敵は決して逃げないし、自分から積極的に敵を追うようなこともない筈だから、あまり無理しない程度に引き上げてきて。まだ今回で終わらせるのは難しいかも知れないから、次に繋がる戦果を意識して臨んだ方がいいかも知れないわ」
 そう言って陽乃鳥は、何より大切にすべきは自身の命だからね、と念を押すのだった。


参加者
アーシェス・スプリングフィール(よんじゅうきゅうさいの銅鑼娘・e00799)
風峰・恵(地球人の刀剣士・e00989)
小鳥遊・優雨(優しい雨・e01598)
ヴァジュラ・ヴリトラハン(戦獄龍・e01638)
茶屋・真咲(アルマキナリア・e01809)
ユイ・オルテンシア(紫陽花の歌姫・e08163)
ヒナタ・イクスェス(愉快型決戦存在・e08816)
神山・太一(弾丸少年・e18779)

■リプレイ

●氷結の海へ
「再戦は構わんが、まーた寒中水泳とか、何とかならんかのぅ?」
 アーシェス・スプリングフィール(よんじゅうきゅうさいの銅鑼娘・e00799)が、サーヴァントのカイザーにちょっかいを掛けながら、海上を見据えて呟いた。
 寒中水泳か~、……改めて言われればと、ヒナタ・イクスェス(愉快型決戦存在・e08816)は、さっそくクルーザーから片足を海に突っ込んでみる。
「くぁ~海~寒い。海~寒い。あばばばば」
 震えながら、なんでこんなことに……と言いかけたが、氷結竜に戦いを挑むことを決めたのが自分だったと思い出し微かに後悔。
「かんぷまさつでもすれば良いんかのー? なー、カイザー?」
 手出しされているボクスドラゴンは、主(?)のちょっかいのレベルを見切っており、偉そうな態度のまま見事に躱す。言わば、準備運動のようなものだろう。
 一方で真剣な表情を湛えながら海を見やっていたのは、茶屋・真咲(アルマキナリア・e01809)。
「リベンジ、とは言わないよ」
 前回の戦いでは、ラハブの氷結の銛に狙いすまされ斃れてしまったものの、決して負けたとは思っていない……飽くまで、船乗りたちの仇を取るための一過程なのだから。
「ただ……仇はすぐに、と言えないのが口惜しいよ」
「そうですね、できるならこの一戦で決着を付けたい所ですが、堅実に削る事の方が重要でしょうね」
 今回の戦いに於いては、攻撃偏重で臨む覚悟を決めた、風峰・恵(地球人の刀剣士・e00989)が頷きながら告げた。が、それを真っ向から否定するかのように首を振る、小鳥遊・優雨(優しい雨・e01598)。
「いいえ、今回で倒しましょう」
 さすがにそれは……と、驚く面々に優雨は、
「……そういう気持ちを持って挑んだほうが、良い結果に繋がるんですよ。きっと」
 と、清楚な笑みを湛えながら続ける。
 するとユイ・オルテンシア(紫陽花の歌姫・e08163)も、そうですよね……と、笑みをこぼす。
「被害も広がっていますから、出来るなら此処で倒したいところです……がんばりましょう♪」
 そんな前向きな仲間たちの様子を目の当たりにして、神山・太一(弾丸少年・e18779)はようやく自身の身体の震えが収まってきたと感じていた。
「初めてだからって、怖がってばっかじゃいけないね……てっくん! みんなといっしょに頑張ろう!」
 と、サーヴァントにぎこちなく笑いかけると、そのテレビウムの顔には、次々と色んな笑顔が映し出された。
 そして、クルーザーが目指す海域近くにたどり着く。帰りの足を確保すべく少し離れてはいたが、なんとなしに温度が1~2度下がってきたような気も。
「はははははっ!」
 その寒さを肌で感じているうち、ヴァジュラ・ヴリトラハン(戦獄龍・e01638)が思わず大きな声で哂い出した。
 ――戦闘狂。そう呼ばれることすら、ある種の誇りに思いながら、ラハブとの再戦に臨む。
(「待っていたぞ、愛しき敵……。真白き混沌よ……」)
 歓びを隠そうともせず真っ先に飛び込むヴァジュラ。それに続くように次々、冬の海に飛び込んでゆくケルベロスたち。
 その極寒の海中で彼らを待ち受けているのは……。

●ラハブ、再び……
 ――それは、純白の装甲に覆われし竜。
 先の戦いに出る前に陽乃鳥が美しいと評したその躯には、この前の傷がくっきりと刻まれたまま残っていたが、それは失った美しさの代わりに、他への畏怖となってその巨躯を包む。
 冷たさを増してゆく海の中、そんな竜の姿を目の当たりにして身震いして見せた太一を、サーヴァントが心配気に覗き込む。
(「うう、う……だ、大丈夫だよ、てっくん。皆がいるから怖くはないし……」)
 太一は、大丈夫と態度で示したものの、些かの緊張が身を包んだままなのは致し方あるまい。
(「さあ、氷結の極竜ラハブよ、今一度……俺と殺し合え!」)
 ヴァジュラが、己が傷跡に宿りし地獄の炎を鎧装に注ぎ込む――必殺級の銛を受け切る、ただその為だけに。
 そのすぐ脇を、宙を舞うように流麗な泳ぎを見せていた優雨が擦り抜ける。そしてそのままの体勢で背から肩にかけてバスターライフルを構え、グラビティを中和するエネルギー光弾を放つ。
(「少しは痛みを感じていますか? それが、あなたの傷付けた人たちの痛みです」)
 声になっていれば、優しさの中に厳しさを併せ持つものに違いないその言葉と代わりに、サーヴァントのイチイがブレスで追撃。
 次いで水を掻く手を止め、しっかりと地上に立つかのような姿勢を取ってバスターライフルを構えたのはアーシェス。その長大な砲身から放った魔力の光線が、白き装甲に小さな穴を穿ち、彼女のサーヴァントまでもがブレスでラハブの傷口をさらに痛めつける。
「今のうちかな……El alma noble a las armas」
 真咲の左手が銃口のように変形、詠唱と共に漆黒の弾丸を放った。白い装甲に吸い込まれるように、新たな傷痕を創り出す。
 その時、ラハブの砲口に白き渦が集う。前回も見た砲撃の予兆だった。
(「どちら……でしょうか!?」)
 ユイが僅かな緊張感を迸らせつつ、六角鱗の光壁を紡ぐ。
 直後に放たれた氷結の槍が、前衛の面々を通り越し、後衛の3人を襲う。銛を警戒し過ぎた故か、予兆を掴みながらも躱し辛い。
(「くぁーっ、寒い、寒い~っ」)
 通り過ぎてゆく冷気にも寒気を感じつつ、ヒナタのハイドロジェットが勢いを増し、一気にラハブとの距離を詰める。
(「くぁ! 全員、撃て撃て撃て撃て~~~! のオチ!!」)
 身振りで示す号令と共に、1/8スケールの小型赤ペンギンの群れが海中を泳いで方々から殺到。いずれも身の丈に合わぬ重火器を手にしており、それらがラハブに向かって至近距離から一斉砲火。
 近くとは言え、ヒナタ自身は何もせずその様を眺めているだけ……。故に、それを睥睨するように鋭い視線を向ける竜の顎の下を、太一が立て続けに狙い撃つ。
(「無駄だよ、たとえ時間が掛かろうと、僕たちはキミを追い詰めて、必ず斃す!」)
 相手を絶望の淵へと追い込む言霊の弾丸。そこに込められし呪詛の力は、巨大なラハブ相手にはあまり届かない模様。
 泰然自若のラハブに対し、恵はこれまで以上の力を込めて立ち向かう。
(「哭かせて見せます!」)
 ――太刀『煌翼』に纏わせた雷が、水を切ってバチバチッと海水を爆ぜさせる。それは長い恋慕か恨み骨髄か……待ちに待った想いが解き放たれるかの如く強大な力となってラハブの外装を貫いた。
 音波のような『声』をあげるラハブ。その声が海水を大きく振るわせる。
 と同時に、太刀を抜いたばかりの恵を凶悪な爪撃が貫いた――噴き出すと同時に流れてゆく赤。
 すぐに海水に紛れていったせいで、一見、傷の深さは分からないけれど、かつて被ったことのない痛みが、生命を脅かしていた。

●氷結の銛
 それでも声を立てない――いや、声すら出せないのだと気付いた優雨が、急ぎ、憂いの雨を施し、試験管に込められた薬を直接傷に吸収させた。
「狙いは絞らせないのじゃ!」
 次いでアーシェスがサカサマの【月】を呼び出した。カイザーが陽動代わりの攻撃をしているうちに、水中に現れし月の光が傷を癒す。
 さらにユイが想いと祈りを込めて、歌う。
(「咲き誇れ 想いを胸に 満開に♪」)
 たとえ声にはならずとも、想いを込めた詩が恵の身体に活力を呼び起こした。
 その間もヴァジュラや真咲が敵の視線を奪うべく、全力で攻撃――暴風龍ルドラに宿りし地獄の炎、そして胸部の射出口から放つ光線がドラゴンを灼く。前回、敵は癒し手を的確に狙ってきたが故に。
 そして、その最も警戒すべきラハブの砲塔に、冷気が集まりだす。
(「攻撃、大きいのが来るよ!」)
 真咲が叫んだ。もちろん癒し手に警戒を促すための筈だったが、なぜか敵の放った銛は彼女に向けて放たれた。
 それを、0コンマ何秒という反射で躱す。
(「前回ああもやられたんだ、警戒はするさ。しかし、まさか先の戦いを憶えて……いや、陽動が上手くいったのかな」)
(「逆に狙いは絞り辛くなったのかな……なら一層気を付けないと」)
 太一がケルベロスチェインで魔法陣を描き、先に傷付いた後衛の面々を癒す。
 そしてヒナタは、ワタシの仕事は変わらないのオチ、とゼログラビトンを放つ。さらに傷を庇いながらも、攻撃の手を止めない恵。
(「断ち―――――――斬る!!」)
 戦艦竜の懐深くまで詰め、渾身の力で斬る。あらゆる物を断つ金剛の刃。
 攻撃と治癒――次第に治癒の頻度が上がってきたものの、まだ戦線は維持できる。
 再び氷結の槍が今度は中衛の面々に。癒し手が多いと踏んだのだろう。だが、それをヴァジュラとヒナタが身を以て防ぎ、カイザーとイチイはそれぞれで躱す。
(「物足りんな。あれを、氷結の銛を射って来るがいい。あの惚れ惚れする程の破壊力を見せてみろ! あれを受け切って立ち続けるのが俺の仕事だからな」)
(「くぁ! 効かん効か~ん!! のオチ」)
 とは言え、傷付かぬ訳ではないゆえ、必死に耐えていたのだけれど。
 再び、【The Moon】の短い詠唱が月を召喚。さらに海水に紛れた薬液の雨がすかさず傷を癒してゆく。
 だが、やはり癒しの手がやや不足気味。
 真咲はヒナタと共に、太一もヴァジュラと共に攻撃を重ねる。アームドフォートの射撃、そして絶望の呪詛――個々の攻撃が僅かずつでもラハブの体力を着実に削ってゆく。
 それでもラハブは、ものともせずに砲撃を放ち治癒の主力と見紛うアーシェスを貫いた……。
「ここで銛に貫かれるとは……痛いもんじゃのぅ」
 斃れゆくアーシェス。これには、すべての砲撃から仲間を庇うつもりでいたディフェンダー2人ですらも間に合わなかった。
 それから先も2発に1発は躱し、庇いながら攻撃を重ねはするが、如何せん回復が追い付かない。次第に攻撃よりも回復に回る頻度が高くなる。
 そんな中、攻撃の主力たる恵の、雷の突きが決まり、続いてヴァジュラが膂力と腕力を限界まで駆使して叩きつけた斬撃が竜の装甲を陥没させた。
(「今こそ、撃て、撃て〜、のオチ!」)
 さらにヒナタの一斉射撃。
 すべては優雨とユイのバックアップがあってこそだったけれど、一撃でも多く……。
 誰もが同じ気持ちでラハブに立ち向かっていた。
 しかし、砲撃の躱される頻度も高くなってきたと察したのか、ラハブの砲撃が槍の範囲攻撃中心にシフトする。しかも、ダメージが蓄積してきたことを受けてか、前衛の面々を中心に。
(「くっ……、これまで、ですか……」)
 恵が斃れる。そしてヴァジュラも。
(「例え、指一本動かせずとも意識だけは手放すまい……」)
 かろうじて立っているヒナタとの違いは僅かな体力の差に過ぎなかった。

●溢れる氷~氷海に至る途
 戦いの代償は決して少なくはなかった。正直、これ以上の戦線維持は望めまい。斃れた面々を最寄りの仲間が回収して撤退を始める中、ラハブからも強大な体力の半分以上を奪い取った筈……と、太一が賭けにで出る。
(「一か八か……。てっくんは皆の治療を!」)
 サーヴァントには治癒に回るよう合図しつつ、決死の覚悟でラハブの傍まで一気に泳ぎ切る。そして放つは達人の域に達したものだけが放てる渾身の一撃。チェインの先に付いた刃が、これまでの戦闘で傷ついたラハブの砲塔にある、ただ1点を狙って貫いた。
 ピシッ……ピシピシッ……巨大な砲塔が軋みをあげる。それは次第に大きくなり、ついに砲塔全体にヒビが走った。
(「もう少しだったのに……」)
(「いえ、十分な成果ではないでしょうか。さぁ、退きましょう」)
 悔やむ様子を覗かせた太一の肩を、優雨が叩いた。
 ――他の面々はもう、戦闘不能になった仲間を回収し、離れたはず……と。
 頷き、退こうとする太一。
 だが、ラハブの方に戦いに幕を引こうとする意図はまだ無かった。
 冷気の渦がまたしても砲口付近に集まってゆく……。
 恵を回収し、十分に距離を取った真咲が、その気配を察して振り返る。
(「……戦艦竜にも感情があったということかな。ならまだ美しいと思えるけれど、さすがに無茶、かな。今撃ったら、砲身が持た……」)
 ついに砲身から冷気が漏れ、崩壊を始めた。その途端、砲の中に凝縮されていた冷気は行き場の方向性を見失い、周囲一帯を氷の海と化した。
 ――言わば、リミッターの外れた冷却炉のごときそれが、太一に残っていた体力を根こそぎ奪い去った。
 一方で優雨は、寸前でイチイが身を挺して主を庇ったことで辛うじて命を拾った。
(「ありがとう」)
  身代わりとなったサーヴァントに短く感謝を示すと共に、倒れた太一を回収し、急いで距離を取る。
 ラハブは、己から溢れた冷気によって、躯の一部が氷に封じられている模様。
「良かった……今のうちに離れましょう」
 すぐに動けずにいるラハブを背に、ケルベロスたちは今回もまた、ギリギリのところで戦果をもぎとっていた。
「7割は削ったんじゃないかな……のオチ」
「歯がゆい……ね」
 ざっと戦いの様子を思い返し、戦果を計ったヒナタに、真咲は正直な感想を漏らした。正直、今回はもっとイケると踏んでいたにもかかわらず、砲塔を破壊してこんなモノとは。
 しかも、氷結竜にとって頼みの綱であるはずの砲塔を破壊したことが吉と出るか、凶と出るか。
「今から心配しても始まりませんわ。まずは疲れを癒し、次に備えましょう。おつかれさまでした♪」
 ユイは、いち早く切り替えティーセットを並べると、戦闘不能を脱した者たちを待って、ポットのレモンティーを注ぐ。
 その程良き温かさが冷え切った身体を温め、かすかな酸味が気持ちを安らげる。
「そうじゃな、次……なのじゃ」
 アーシェスは短く語ったその一言に、他のケルベロスたちは、一様に頷いてみせるのだった。

作者:千咲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年2月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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