転戦――其の名は咆竜

作者:のずみりん

「大丈夫、大将? この辺って事故多いんだろ?」
「なーに、相模の海は広いんだぜ、そうそうは……」
 戦艦竜が相模湾に出現してから一ヶ月弱。その駆逐は未だならないまま、今日も船は海に出る。
「へぇ、それで大将……あの影はなんなんだよ!」
 そして犠牲は増えていく。
「ガ……アァァァァァー!」
 戦艦竜『咆竜』の、分厚い装甲に護られた巨体が船を叩きつぶす。叫ぶ船員と船頭の姿が波に飲まれていくなか、背負った砲がダメ押しと火を噴いた。
 
「先日に交戦した戦艦竜『咆竜』の行方が判明した」
 リリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)が相模湾の海図に追加したポイントは、過去の地点から随分と離れていた。
「過去の二戦で『咆竜』は少なくない傷を負った。戦艦竜は傷を癒すことはできないが……奴なりに警戒を強めたのかもしれない」
 縄張りを広げたのか、変えたのか。目撃情報や予知ではダメージを回復した様子はないそうなので、このまま攻撃を続ければ数度目には撃破はできるはずだが……。
「前に戦闘したケルベロスたちも言っているが、短期決戦で消耗を狙った方が無難かもしれないな」
 リリエはベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)からの提案を紹介し、気を付けてくれと言う。
「今回も船の準備はできているが、気を付けてくれ。敵に変化がなかったとしても、『咆竜』の戦闘力は全く失われていない」
 船は破壊されても直せるが、命はそうもいかない。決定打を与えるには危険に飛び込む勇気と同じくらい、情報と作戦が大事なのだからとリリエは言う。
「現在わかっている『咆竜』の情報だが、ずば抜けた火力と強固さ、攻撃は主砲と周囲を薙ぎ払うミサイル、そして体当たり……このあたりは初戦で調べられたところだな」
 火器の特徴はアームドフォートのものに酷似しているが威力は桁違いに高い。主砲は熟練のケルベロスを重傷に追い込んでおり、ミサイルも接近戦を挑んだ者たちの多くが手ひどい傷を負わされている。
 戦いは水中、水中戦が主となるが、前二戦とも息が切れる前には撤退を余儀なくされている。長期戦は考えない方がいいだろう。
「防御と損傷状況についてだが、武器と装甲への防御ははっきり言って無敵。状態異常は多少効果があったようだが……頼りすぎるのは危険だろう」
 一方で装甲に隙間のある腕や脚、尻尾の付け根なども決して脆いわけではない。戦艦の集中防御と同様、守られていない部分は『一撃で致命傷とならない、戦闘力を失わない部位』なのだ。
「先の戦いでは攻撃を集中させ、相討ちに近い状態で後脚を一本奪っている。ただ戦力の低下には繋がるほどではないし、こちらの動きや火力を把握し始めている感じもあったそうだ」
 与えられているダメージは三割弱ほどだが、咆竜も警戒し始めている。残る命を削りきるまで、更に苦労させられそうだ。
 大胆な戦術の変更も、あるいは考えるべきかもしれない。
 
「撤退についてだが『咆竜』には攻撃してくるものを迎撃するような性質だ。逃げる敵を深追いはしてこないが……後退の隙を狙う程度の知恵はついているようだ。何かしら手は打っておいた方がいいな」
 ダメージは溜まってきたが、今回の一戦でも倒しきれるかは怪しいところだ。身を退く余力を失わないよう気を付けるようにとリリエは忠告をつけ加える。
「倒れても傷を癒して立ち上がれる、何度でも挑めることが私たちの強みなんだ……命だけは持ち帰るんだぞ、ケルベロス」


参加者
天導・十六夜(境界を越えた天を導く妖月・e00609)
リーフ・グランバニア(サザンクロスドラグーン・e00610)
ニーナ・トゥリナーツァチ(死神を食べた者・e01156)
ベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)
神崎・晟(アドバーサリー・e02896)
天塚・華陽(簒奪縛鎖・e02960)
ラームス・アトリウム(ドルイドの裁定者・e06249)

■リプレイ

●相模湾海戦、開幕
 遭遇戦も三度目となれば、慣れてくるものもある。ケルベロスたちも、恐らく戦艦竜の側も。
「相変わらずデカイな……」
 甲板の縁に足をかけた天導・十六夜(境界を越えた天を導く妖月・e00609)は迫ってくる海中の影に呟く。10mはある胴体と四肢……縦長の菱状に見える影の一角がいびつに欠けて見えるのは、先の戦いで仲間たちが奪った後脚の部分だろう
「脚一本失って三割、どれ程の強靭さだ!?」
「なるほど強大な相手じゃな。ここで倒し切るのは難しそうじゃ……では幾たびもの我慢比べと征こうか?」
 リーフ・グランバニア(サザンクロスドラグーン・e00610)は荒げた声を嗜めるような天塚・華陽(簒奪縛鎖・e02960)に頷き、先んじて翼を開いた。
 初撃は敵に利のある遭遇戦。脆いクルーザーを守ってはいられないが、そこにケルベロスたちは更なる策を練った。
「正面は引き受けます。お気を付けて」
「了解」
 無名の日本刀を鍔鳴りさせて飛び込むリモーネ・アプリコット(銀閃・e14900)にラームス・アトリウム(ドルイドの裁定者・e06249)は言葉少なに頷き、神崎・晟(アドバーサリー・e02896)と共に船を離れた。爆発と共に船が裂けるのはほぼ同時。
「お久しぶりですね。望まずともお元気そうで」
「私は初めてだけど……あれほどの巨体で年季が入ってるのだもの、魂は美味しそうね」
 飛び込んだ水中で見えた戦艦竜『咆竜』の巨体に、二度目となるベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)とニーナ・トゥリナーツァチ(死神を食べた者・e01156)は、その心境を感じさせる感想を漏らした。
「しかし、この季節には辛い戦いですね……」
 ベルノルトが挑んだ昨年末から、更に気候は厳しさを増している。ケルベロスなら耐えられないものでないといえ、寒いものは寒い。
「敵も知恵をつけるのであれば……戦いの回数を重ねるのは得策ではないようです」
 砲を振り切るように旋回しながら、勢いを乗せて古傷へとナイフを叩きこむ。鱗の剥がれた肉から鮮血が飛ぶが、それ以上の反応は薄い。敵も戦いなれてきているのだ。
「ならば、こうだ。竜気の海へ沈め、天導流……竜雷穿」
 間をおかず上方向から十六夜が仕掛ける。数多の妖刀魔剣を打直した曰くつきの妖刀が、さながら落雷のごとく背の傷を突いた。皮から肉へと抵抗が増したところで、柄から掌底を打ち込み更に深く。
「ガァ……?」
「手応えあり、だ」
 首を回してにらみつける咆竜へ不敵に笑い、十六夜はその身を蹴って離れる。生身でも十分程度は息の続くケルベロスだが、念を入れ『水中呼吸』を用意した彼の動きは更に自在。打ち出された無数のミサイルをかいくぐり、そして合図に離脱する。
「久しいな、強敵(とも)よ! 様子見の前回とは違う、いい加減、一泡吹いてもらう!」
 怪訝に首を巡らせた竜の頭を強襲するのは星が描く伝説の大英雄。リーフの呼び出した『13の試練(ヘラクレス・タスク)』の巨腕が、頭蓋装甲から突き出た鼻面を強烈に殴り飛ばした。
「……彼の者の罪と徳を量り取り、その身に等しく裁きと祝福を与えよ」
 ラームスの手にした天秤が傾き、その一打を追撃する。戦艦竜に向けた徳と罪の天秤が傾く方向は当然のように『罪』。こぼれた鼻血が更に搾られるように量を増す。
「ほう! 戦艦竜と言えど人の子、いや竜の子よの!」
 赤く染まる海洋に華陽は年に似合わぬ……外見的には、年相応な快哉をあげた。この奇襲もけして痛打ではないだろう。だが竜の顔は今までに報告されたどの記録より、苦痛に歪んで見えたのだ。
「機械じみた強さと見えたが……その顔は何やら他竜のような気がしないな」
 晟はボクスドラゴン『ラグナル』の属性を身に纏いつつある自分と、怒り狂う咆竜を見比べてふと思う。
 仲間たちに続き強襲をかける彼の姿は2m弱のドラゴニアンではない。全ての武双をアームドフォートと一体化し、サーヴァントと自身のグラビティ・チェインを結集した外装は戦艦竜の如き巨竜である。
「どうした、怖気づいたか? 図体の割に随分と小心者だな?」
 突如として現れた強大な敵へと身構えた咆竜めがけ、雷の吐息を伴った『砲戟龍の雷咆』一斉砲撃が火を噴いた。

●意志と技と
 咆竜の火砲、ミサイルが滅茶苦茶に放たれる。海中に降る鉄火の雨を悠々と泳ぎ、外装を脱いだ晟とラグナルは離脱する。
「っと……見た目に騙されるようでは、当たらんぞ?」
 茶目っ気を見せる晟だが、心中はそれなりにひやりとさせられた。最初は呼び起こされたトラウマにパニック状態だった咆竜だが、攻撃はすぐ正確さを取り戻しだした。
 前の対戦では状態異常を与えた隙に離脱したと記録されていたが、攻撃の隙を作るには少々短い時間だ。それでも果敢にリモーネは踏み込んだ。
「いかに強固な肉体を誇ろうとも、攻撃を続ければ打ち砕くこともできるはず!」
 それはさながら雨垂れが石を穿つように。必殺の三段突きは彼女の雅な声と対照的な荒々しさで前足を連打する。
「グゥ……」
 既に深手を負わされている後脚に比べ、戦艦竜の反応は鈍い。深手ではないという慣れと慢心ゆえに、打ち込みやすい部位でもあった。
「こんなものか? 舐められたものじゃの」
 水の精に抱かれるような無駄のない動きで旋回していく華陽は打ち出されようとしたミサイルのサイロに掌を一振り。現れた幻影の竜がサイロごとミサイルを焼くが。
「……難しいところですか」
「色々と考えられておるようじゃの」
 ベルノルトの分析に華陽は顔をしかめる。ミサイルサイロは派手に爆発した……爆発したが、一区画だけだ。垂直にミサイルの詰められたサイロは細かに区切られ、誘爆を限定する隔壁としても機能しているらしい。やはり武装を潰すのは難しいか。
「まぁ私は私の戦い方をするだけ……やるからには殺す覚悟で行きましょう」
 結果を確認し、冷静に淡々と飛び出していくニーナ。それを見送りつつ、ベルノルトは先人の経験を助言として渡す。彼女もわかっているだろうが、これは攻撃精神だけで倒せる相手ではない。
「この戦艦竜にブレスはないようです。ただ、火力には気を付けて」
「ありがとう、ならこちらね」
 彼の言葉にニーナは反射の境界『正義の在処を探し求めて』をミサイルの側に向けて撃ち返すが、決定打にはほど遠い。装甲に散ってしまい、有無を言わさず弾かれる攻撃も少なからずある。
 リモーネの与えた傷に食らいつかせた『レゾナンスグリード』は順調に傷を広げてくれているが、こちらも長くないうちに振りほどかれた。初めて見た時から変わらず、敵は兄弟である。
「……!」
 ラームスの星辰の結界が飛んでくるミサイルの炎を弱め、仲間たちを守る。だが絡みつく炎を打ち払ってなお、ミサイルは運動エネルギーだけでケルベロスを叩き落とす威力。隙の許されぬ薄氷の戦いは続く。
「戦い続ける事がこうも難解とはな……此奴で如何だ……Create、Medousa!!」
 気を持ち直し、十六夜は『竜魔闘装【リンドブルム】』の闘気を乗せた石化の光を放つ。鋭い輝きは前足を捕らえかけるも、半分は分厚い装甲の前に弾かれた。
「……意識しなければな、奴の脆い部分を」
 十六夜は気を引き締める。無敵の戦艦を倒すには必勝の意志と、守りを分析し躱す技の双方が必要だ。「憤りで心を濁らせるな……それは打ち込む瞬間、乗せて届けてやる物だ……!」
 会敵前に心中で唱えた自制をリーフは改めて口にする。両手の刀を駆使して突き込まれた『破鎧衝』が、石化した表皮を抉り砕いた。

●突破
「どこかにあるはずなのだ……弱点は……死点を喰らえ、なければ創れ。アカシャ!」
 華陽の使役する狐の精が戦艦竜をつつく。弱点を探るように視界を横切るそれを戦艦竜はいらだたしげな首振りで払った。
 至近に炸裂した砲弾が小柄な華陽を跳ね飛ばす。
「年寄りをいたわらんか……この暴君め!」
「……間一髪だったな」
 悪態をつく華陽だが、その口角からは血の泡がこぼれる。盾となったリーフのヒールドローンがいなければ戦闘不能どころではすまなかっただろう。
 そのドローンを飛ばしたリーフ自身も、そこかしこに火傷をこしらえ無残な姿。早々に戦線は咆竜の暴力へ押され始めている。
「すまない、頼む」
「わかった。少し堪えて」
 十六夜の差し出した方の傷をラームスが施術する。
 砲弾の破片が痛々しく裂いた肩を更なる激痛が襲うが、握る獲物の感覚が一気に戻ってきた。十六夜は礼と共に白銀のロングコートを羽織り直し、再び戦場へと舞い戻る、これが何度目か。
「そろそろ、散らさせてほしいものだがな」
 踏み込むことで砲撃をかわす。後方で炸裂した徹甲榴弾の爆風を追い風に、十六夜の剣舞が幻惑の桜吹雪をまき散らす。
「綺麗な華を咲き散らせ……天導流、桜華一閃」
 狙うはリモーネが見定めた前足、蓄積した傷を更に深くえぐっていく。長居は無用の一撃離脱、すかさずリモーネが氷結の螺旋で打ち出されるミサイルごと増えた傷を突きさした。
「私に出来ることは些細なことだけですが……!」
 遠く及ばぬ力としても退けない時がある。生まれは違えど、育ての親と大地が培った魂は彼女に肉体を凌駕する力を与えている。
「少々臆病風に吹かれすぎか……一打を与えるには死の覚悟が必要という事か」
 仲間たちの心にあてられたか、晟はともつかぬ事を口にし、首を振って考え直す。破損した動力甲冑の部品がぼろりと落ちた。
「深追いは禁物だ。だが、慎重と臆病をはき違えてはいけない……」
 考えるのだ、倒す方法を。自分にできることを。つなぎ目、古傷……仲間たちが狙っていない場所へとアームドフォートの砲を連射する。
 まだだ。もっと効果的な場所はないのか?
「グ、ガァーッ!」
 うっとおしい攻撃に咆竜が吠える。至近弾がドラゴニアンの蒼鱗を打ち据える。相棒のボクスドラゴンから属性をインストールしてもらって持ちこたえる彼に、後ろから声がよんだ。
「……続けてもらえますか。手は浮かびましたが、隙が欲しい」
「長くは保たんが、いいか?」
 振り向く晟に声の主、ベルノルトはわかっていると頷いた。

●竜、咆える
 砲戟龍が再び相模の海に姿を現す。傷つき消耗してはいたが、その巨体がもたらす威容は変わるものではない。
「右砲塔損傷、装甲に亀裂あり……十全とはいかんが、持ちこたえるぞ。ラグナル!」
 相棒の名を叫び、晟は『砲戟龍の雷咆』を放つ。迎え撃つのは咆竜の一斉射。激突するグラビティは押し切られ、損傷したキャノンが身体から脱落する。
「悪いが、他の者に手出しをさせる訳にはいかんのでな。最後まで相手をしてもらうぞ……?」
「いいわね、私も付き合わせてもらおうかしら」
 巨体に護られたニーナはマイペースに微笑むと、畳みかけようと迫る咆竜に大鎌を振るった。斬撃に前進する戦艦竜の勢いの威力が加算され、災厄の大鎌は首筋につき立った。
「死は誰でも平等に迎えてくれるわ……もちろん、あなただって」
 突進に弾かれながらも、死神を食べた少女は笑う。すぐに刈り取れないのはわかっていたが、布石は打った。それで十分。
「ゴ、アァ……」
「待っていましたよ、それを」
 そう、それは咆竜が叫ぶ瞬間。ベルノルトは極限まで集中させた精神を口腔へと突き付けた。
「ゴァッ!?」
 爆発。叫びは中断された。
「苦しいか? 強敵(とも)よ! まだ終わらぬぞ……もらっていけ!」
 閉じようとする顎にリーフと十六夜が食らいつく。初手で鼻面を殴りつけた大英雄の剛腕が、今度は万力となり、強引に頭部をこじ開ける。十六夜の銘を冠した刀がねじこまれた。
「さぁ、綺麗な華を咲かせてくれ」
 刹那に打ち込まれる竜気の多段切り。飛び散る血が蓮華の花弁を形成し、戦艦竜に早々の花を咲かす。
「天導の一端を放つ……其の知識吸い尽せ、天導流神殺し、蓮華」
「……散花!」
 砕ける大英雄の星座、身を退く十六夜。閉じる口、一瞬の連続に滑り込むようにリモーネの氷結の螺旋が蓮華を散らす。
 氷と血華の爆発が咆竜の頭部に起こり、予想される惨状をしばし覆い隠した。
「効果あり、じゃな。兵器と化しても元は生物、守れぬ部分は……痛つ……!」
「無理しないで。傷が開く」
 ラームスに抱えられた華陽は痛みに悶えながらも愉悦する。超常の存在と言え、戦艦竜も生物なのだ。守り切れぬ部分の多い頭部は中枢と並ぶ致命の部位、まして内部からの一打となれば。

「……フーッ……ゥー……」
 その時、風鳴きが聞こえた。
「いかん、下がれ!」
 咄嗟、刀を十字に構えたリーフへ火球が襲い掛かる。まだ動けるというのか? 炎に包まれ、跳ね飛ぶリーフは強敵の姿に目を見開いた。
「本当に、生きのいいこと……」
 ニーナも薄く笑う。咆竜はまだ動いていた。頭半分を無惨に吹き飛ばされ、露になった肉と骨から鮮血を滴らせながらも、裂けた下顎で声にならぬ咆哮をあげる。
「まだ、戦うというのですか……?」
 得物を探し、構えられる砲門にリモーネは修羅を見た気がした。その姿は見るに堪えない、だが今の自分たちに倒しきれるのか?
「……退こう」
 答えたのは終始無口であったラームス。既に当初定めた限界は超えている。傷つきながらも攻撃の意志を緩めぬ咆竜に挑み続けるのは危険の方が大きい。
「逃げたい人はさっさと逃げればいい……と、いいたいところだけど」
 かすめ飛ぶ砲撃にニーナは鎌を投げつけた。欲求以上に冷徹な理性が危険を告げている、このままでは喰われるのは自分たちの方だと。
「……次は頂くぞ、貴様等の知識と経験」
 離脱する仲間たちを確認し、殿に立つ十六夜は咆竜へと殺意を宣告する。砲撃という答えを避けながら、白銀の竜人は海上へと駆けた。

 辿り着いた海上は晴れやかだが、随分と波だっていた。
「死傷者は!?」
「案ずるな、死んではおらぬ」
 修復された船上で癒されたリーフの第一声に華陽が辛そうにも笑。今回も何とか無事もどれたようだ。
「……早く、平和な海が戻るといいな」
 船の不穏な揺れにラームスはポツリと呟いた。次は恐らく、決戦となるだろう。

作者:のずみりん 重傷:リーフ・グランバニア(サザンクロスドラグーン・e00610) ニーナ・トゥリナーツァチ(追憶の死神・e01156) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 11/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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