
●迷惑博士の大改造
ある森奥深くの遺跡では、その昔強力なダモクレスが大暴れしたという話が残されていた。
その遺跡に一人のダモクレスが気まぐれに訪れた。
「やっぱりおる様じゃな」
そのダモクレスは、半日ほどかけてそれを見つけると満足そうに声を上げる。
「こいつじゃ、こいつじゃ。ボロボロになっておるが、わしにの手にかかればすぐに、ナイスでビューティフォーな戦闘機械になることじゃろう」
そして、そのダモクレス……『スチームドクター・フタバ』は、一晩かけて、それ……機能停止したダモクレスの修理強化を完了させた。
「やはり、わしは天才じゃな! さあ行くのじゃ! ダークセイバーグレートよ! 大暴れして、人間共のグラビティ・チェインを奪ってくるがよい!」
フタバにダークセイバーグレートと呼ばれたダモクレスは、黒く輝く大剣を天にかざすとその紫色の瞳を輝かせた。
数時間後、ある市街地が漆黒の剣を振るい、その眼からレーザーを発射する紫色のダモクレスに襲われた。
人々は逃げ惑いながら、救いを願った。
●街の人を救え正義のケルベロス!
「みんなー! 至急、頼みたいお仕事だー! 説明始めるぞー!」
大淀・雄大(オラトリオのヘリオライダー・en0056)の声がヘリポートに響く。
「かつて地球上で機能停止に陥ったダモクレスが修理強化され、野に放たれる事件が起こっている。修理強化を施しているのは、ダモクレスのスチームドクター・フタバ。名前以外の詳細は不明。フタバの調査は続行するけど、既にフタバが修理強化したダモクレスが、ある街を狙っている。惨劇が起こる前にこれを撃破してほしい」
雄大の話では、フタバに改造されたダモクレスは現在、改造された場所から市街地を目指しているそうで、今から向かえば虐殺が始まる前に現着出来るらしい。
「みんなに倒してほしい、ダモクレスは『ダークセイバーグレート』。その名の通り漆黒の剣を装備したダモクレスだ。フタバによって、戦闘に特化され、外見も悪のロボットって感じになってる」
外見は禍々しい紫色で、アメジストの様な妖しい瞳をした、全長5メートル程の巨大ロボットだと言うことだ。
「攻撃方法はその手に持った、巨大なゾディアックソードでの攻撃。目からのレーザー。そして、発射までエネルギー充填に数秒かかるみたいだけど高威力の、胸部グラビティ・レーザーキャノンだ」
フタバの手によって、その戦闘能力は機能停止する前より、強力かつ派手になっているらしい。
「市街地だから、市民も当然いる訳だけど、避難は警察等に任せて皆には、ダークセイバーグレートとの戦闘に集中してほしい。こいつを倒せるのはケルベロスだけだから、被害を減らす為にも、撃破に全力であたって欲しい」
雄大の話では予知できた時点で避難指示は出してあるとのことで、警察等も迅速に行動に移ってくれているそうだ。
「ダークセイバーグレートを放置すれば、ダモクレス側にグラビティ・チェインを搾取されるってのもあるけど、それ以上に街や人々に大きな被害が出てしまう。そうなる前に、みんなの力で、こいつを絶対に倒してほしい。よろしく頼むな!」
そう言って雄大は拳を握った。
参加者 | |
---|---|
![]() ユウ・イクシス(夜明けの楔・e00134) |
![]() 天谷・砂太郎(地球人のブレイズスリンガー・e00661) |
![]() 源・那岐(疾風の舞剣士・e01215) |
![]() ルイ・コルディエ(菫青石・e08642) |
![]() 八雲・要(英雄志望のドラゴニアン・e14465) |
![]() ジルカ・ゼルカ(ショコラブルース・e14673) |
![]() アテナ・エウリュアレ(オリュンポスゴルゴン三姉妹・e16308) |
![]() プラーミャ・バーニャ(蒸気魔人・e16576) |
●邂逅! 巨大ロボ
高層ビルが立ち並ぶ街を、逃げ惑う人々とは逆に駆ける男女が居た。
この街には、今、巨大ダモクレスロボの襲撃と言う危機が迫っていた。
警察官や自衛官が避難誘導している真っ只中だ。
そんな中、駆ける男女のうちの一人が口を開いた。
「悪の巨大ロボットは、テレビの中だけにしてもらいたいですね」
銀糸の髪を一つにまとめたシャドウエルフ、源・那岐(疾風の舞剣士・e01215)だ。
「森から出て来たばかりで、最近になってテレビの特撮って言うんですか? そういう番組で、巨大ロボットを見る機会はありましたけど、実際戦うことになるとは思いませんでした」
ダモクレスの侵攻と言うこともあり口にこそしないが、那岐の心は、初めての巨大ロボットとのバトルに好奇心が揺さぶられ、ドキドキしっぱなしである。
(「やっぱり、ワクワクしますね」)
「住民の避難は、任せて大丈夫。相手は巨大な敵に強力な武器。腕試しにはもってこいってところだね!」
快活に言うのは、翼から地獄を放ち続ける赤髪のドラゴニアン、八雲・要(英雄志望のドラゴニアン・e14465)である。
「負けなければいい、単純でいいね!」
負けなければいい、シンプルだがケルベロスにとってこれほど重要なことも無い。
ケルベロスの負けは、地球がデウスエクスの手に落ちると同義だ。
だからこそ、要も己が腕を鍛え続けているのだ。
「巨大ロボットですか。いいですね。ロマンですね。合体とかはしないのかしら? どう思います、ジラント?」
横を走る、相棒のボクスドラゴンに問うのは、プラーミャ・バーニャ(蒸気魔人・e16576)だ。
だが、そんなことを問われても、ジラントは困るしかない。
「それにしても、巨大ロボットさんはまだでしょうか? 私、走っていたら熱くなってきてしまいました」
言いつつ、周りの視線も気にせず、胸元に風を入れようとする。
一緒に現場に向かっている男性陣は思わず視線をプラーミャと真逆の方へ泳がせる。
欠陥を抱えていたダモクレスだった頃の名残なのか、プラーミャの冷却機関はあまり働きがよくないようで、プラーミャ自身熱が貯まりやすく、本人も暑がりだ。
その為軽装を好むが、本人の意識しない所で色気を振りまいてしまっている現状だったりもする。
「……見えて来たね」
赤い鉢巻をはためかせながら走る、天谷・砂太郎(地球人のブレイズスリンガー・e00661) が走る仲間達に知らせる。
確かに砂太郎の視線の先に、悪の巨大ロボットと言う風体のダモクレスが見える。
全身、紫の身体に、邪悪なイメージを持たせる装飾、そして漆黒に輝く長大な剣。
『スチームドクター・フタバ』が復活させた、『ダークセイバーグレート』に間違いないだろう。
「5メートル級の大型ダモクレスか……。今までにもいなかった訳じゃあ無いから、驚きゃしないけど、確かにこんなのが暴れたら、大変なことになるな。……何としても。此処で止めないとな」
言いつつ、走りながら腰に帯びたゾディアックソードを引き抜く、砂太郎。
「それじゃみんな行くとしようか」
得物である斬霊刀『氷纏舞刀・結祈奏』を構え、集中を始める、ユウ・イクシス(夜明けの楔・e00134)。
(「巨神狩りと言うのも希有な体験だ。精々、死力を尽くすとしよう」)
そう思った次の瞬間、ユウは、時の概念を忘れ、静寂の中に眠る真白の世界を思い描く。
「眠れ。永久の世界ーユメーの中で」
冷気を帯び一振りの槍と成ったそれをユウが『ダークセイバーグレート』にぶつけた瞬間、ケルベロス達と『ダークセイバーグレート』との戦いが開始された。
●激闘! 巨大ロボ
「炎の一撃行くわよ!」
黒髪をなびかせ、ルイ・コルディエ(菫青石・e08642)がグラインドファイアを撃ち出す。
今回、彼女のポジションは、メディックだが折角の巨大ロボットとの戦闘だ。
雰囲気に合わせて格好を付けなくては勿体ない!
折角ケルベロスになったのだから!
だが、ルイが見栄だけで戦場に立っていると言うことは、決して無く、その瞳はこの戦場を全体的に見渡せるポイントを探していた。
(「回復は、効率よくやらないと駄目だからね。相手には、大ダメージのレーザーキャノンもあるって話だし」)
考えながらバトルヒロインよろしく、ルイは戦場を蝶のように跳ねる。
「……アメジスト。奇遇だね、俺の目もそう言われた事ある」
言いながら、てのひらを前に出すのは、ジルカ・ゼルカ(ショコラブルース・e14673)。
ジルカがふうと、てのひらを吹けば小さな蝶が蒼い影を残しながらケルベロス達の回りを舞い、麟粉によく似た銀色の光をケルベロス達に振り撒き、ケルベロス達に加護を与える。
「……アメジスト同士……因縁の対決っぽくて、ステキじゃんね」
挑発するように笑うジルカ。
その言葉を理解したのか、『ダークセイバーグレート』のアメジストの瞳がジルカに向きギラリと光る。
その瞬間、ジルカの背中に何かが奔る感覚を覚えるが、ジルカは一言。
「……こ、怖くないよ」
と地を踏みしめ言った。
『ダークセイバーグレート』が振りかざす巨大な漆黒の剣をかわしながら、アテナ・エウリュアレ(オリュンポスゴルゴン三姉妹・e16308)が時空を凍らせし弾丸を放ち、彼のダモクレスを観察する。
「このダモクレスが、噂に聞くスチームドクター・フタバからの刺客……。御義父さ……大首領様からわたくしに与えられた使命は、秘密結社オリュンポスの威光を示せと言うもの……ハッ!」
アテナは、そこまで言って気付く、あの方の本心を。
(「……流石は、大首領様……この様な事態も以前から既に想定済みだったと言う訳ですね……。つまり! この使命の本当の意味はスチームドクター・フタバに対して『大首領様の存在』を示し、来るべき戦いへの布石とすること!」)
大首領の意思に辿り着き、自分の使命を見定めたアテナは、此処でこの敵を倒すことを心に誓う。
その考えが見当外れだったとしても、ダモクレスを倒すのは、ケルベロスとして正しいことなので結果オーライである。
「とりあえず、ここから先に進みたきゃ、俺を倒してから行くんだな。だが、俺はそう簡単には倒れないぜ?」
砂太郎が、体内のグラビティ・チェインを引き出し、『盾』と成る障壁を生み出す。
そしてその陰から、プラーミャが『ダークセイバーグレート』の身体を駆け、流星の如き蹴りを頭部に喰らわせる。
その時、『ダークセイバーグレート』のアメジストの瞳からレーザーが発射され、フラーミャの身体を焼き、その拍子にフラーミャは地上へと落ちて行く。
だが、フラーミャの身体に伝わって来た衝撃は、アスファルトの硬いものではなく、ひんやりと冷たい柔らかなものだった。
「あらあら、ありがとう。ジラント。助かりました」
咄嗟にカバーに入った相棒のジラントに緩くお礼を言うフラーミャだったが、フラーミャの下敷きになっているジラントにしてみれば、早くどいて頂きたいのが本音である。
「これだけ、巨大だと戦いがあるね!」
カナメがバスターライフルを構えると重力のエネルギーをビームとして放つ。
巨体な為、命中はしやすいが効果の程が判断しづらい。
「倒れるまで、何発でも撃ってやるよ!」
そう言って要は、バスターライフルにエネルギーの再装填を始める。
「森の中にこもっていては、会えなかった敵ですね」
裂刀『架愚羅』を手に『ダークセイバーグレート』の装甲に傷を入れて行く那岐。
(「武者修行に出されたのも悪くなかったかもしれませんね」)
そんなことを考えながら、軽快に装甲を蹴って、アスファルトに着地する。
そんな時、戦場に星の輝きが満ちる。
全体を見回す最後衛で、ヒールグラビティを使いながら、ルイは興奮していた。
「本物の巨大ロボだよ! 折角なんだし、変形とか合体はしないのかしら? スチームドクターって言うのが作ったのよね? 会えたら、変形合体ロボ作れないか、聞いてみたいわね。私が、格好良く倒しちゃうんだけど」
そんなことを考えている時、ルイは『ダークセイバーグレート』の異変に気付いた。
胸部に光が集中し始めたのだ。
「みんな! 散って! レーザーキャノンが来るー……」
ルイの叫びは強烈な光と猛烈な爆音でかき消された。
●決着! 巨大ロボ
『ダークセイバーグレート』が放った、グラビティ・レーザーキャノンは前に出ていた四人を一瞬で薙ぎ払う程の威力だった。
すぐに、ルイがヒールグラビティを放つが皆すぐには立ち上がれない。
ユウは、膝を付きながらもゆっくりと呼吸を整え、一切の雑念を払い全てを断ち切ることで、自らのヒールグラビティを発動する。
「僕が気を引く! 射撃で援護を!」
ユウが傷ついた身体で、果敢に敵へと向かって行くと、ジルカの石化の魔力が援護する。
「……これは、ホントひどいや。……だけど、大きいから……俺も、逃がさない!」
ジルカの瞳は真っ直ぐに前を見据えていた。
「胸部レーザーキャノン……脅威ですね。秘密結社オリュンポス、ゴルゴン三姉妹が一人、聖騎士アテナ参ります!」
アテナは名乗りを上げると、『ダークセイバーグレート』へと接敵し、真言を呟く。
「十二神アレスの名の下に、邪悪なるモノを貫き穿て……」
言葉と同時にアレスの手に大型の機械槍が現れる。
アレスは、その機械槍を『ダークセイバーグレート』の胸部へと投擲する。
機械槍は神の力を借りたかのような輝きと共に、『ダークセイバーグレート』の胸部へ吸い込まれると、『スガァァアン!』と言う爆音の元、大爆発を引き起こす。
「……最大火力が無くなったなら!」
砂太郎が、力を振り絞りゾディアックソードを横薙ぎにすると、『ダークセイバーグレート』の漆黒の剣がそれを受け止めるが、一部が刃こぼれを起こす。
その時、砂太郎の手の中のゾディアックソードがほんの一瞬だけ、漆黒の剣と共鳴とでも言えばいいのだろうか……引き合う何かを感じた。
「この鉄クズ! もう許さないよ!」
要のバスターライフルからレーザキャノンが放たれると同時に、銀糸の神の乙女と赤髪の乙女が動いた。
「さて披露するのは我が戦舞の一つ。必殺の銀色の剣閃!!」
「太陽は翳る。大地は沈む。輝く星は天から失せる」
那岐が風を操る精霊の様に舞えば、銀色の風は刃となり、剣戟と共に、『ダークセイバーグレート』の装甲をズタズタにする。
装甲を剥がされた『ダークセイバーグレート』は、次の瞬間、プラーミャから放たれた、紅炎に包まれる。
その炎は、灼熱の終焉の炎……。
その炎が消えた時、紫の巨兵『ダークセイバーグレート』は、機能を停止していた。
●……次なる敵は!
「こういう巨大ロボが現れるんだから、ケルベロスにも巨大ロボが必要だと思うわ! 三つ首の犬型で頭部に一人ずつ乗る形とかがベターよね! オルトロスとかガルムとかも加えて、変形合体するとかどうかしら?」
ルイは、被害のあった街にヒールグラビティをかけながら、そんなことを呟いているが、返ってくる言葉は無い。
それでもルイは、延々『第三クールで追加ロボットがあってね、そのパイロットとは最初仲が悪いんだけど、友情を確かめ合って、最強合体をするのよ!』などと呟いている。
「けど、こう言う巨大ロボ倒すとか……へへ。ちょっとヒーローみたいだね」
そう言ってジルカは、ほんのり笑う。
「ちょっとだけ……誇らしいって、こんな気分なのかな」
自分と同じアメジストの瞳のダモクレスの亡骸を見つつ、ジルカは自分がケルベロスなのだと再認識する。
「さて、次のデウスエクスを捜しに行かないとな……」
ユウは、刀の手入れを済ませると風に流れる様に戦場を後にする。
「皆さん、お疲れじゃないんですか? 私は、熱くて、暑くて……」
フラーミャはそう言って、相棒を抱きしめ身体を冷却……いや、冷やすことで癒していた。
「痛くもなんともないと言いたいところだけど、思いっきり戦ったから、かなりボロボロだよ」
要が笑みをこぼしながらも暗に疲れたと言うと、那岐が微笑み。
「あれだけの巨大ロボットと戦ったんですものね、私達。これからも、見たことも無い敵と戦うことになるんですよね……きっと」
デウスエクスが居ると言うことは地球が危機にさらされると言うことだが、それでも、折角森を出て来たのだからと、好奇心のままに生きてもいいよねと、那岐は思う。
「さっきのは何だったんだ?」
命を失った、『ダークセイバーグレート』を自分の剣で突きながら砂太郎が呟く。
「こいつの漆黒の剣と俺の剣が、何か共鳴した様な気がしたけど、気のせいじゃないよな? 俺のゾディアックソードと何か関係でもあるのかな?」
その時、砂太郎の目に『ダークセイバーグレート』の巨大な漆黒の剣のひび割れた欠片が映った。
欠片と言っても、砂太郎が持つ剣の刃の長さ程ある巨大な欠片だ。
「調べてみるのもありか……」
そう言うと、砂太郎は、その巨大な剣の欠片を拾い上げた。
「大首領様! わたくしはやりました! スチームドクター・フタバの尖兵を見事、倒しました! これもひとえに大首領様の為! 大首領様! スチームドクター・フタバさえ大首領様の手の平の上で踊っているにすぎないのです! 次は、大首領様がご自身の手でスチームドクター・フタバを倒されることをわたくしは信じております!」
そう言う、アテナの想いのこもった叫びは巨大ロボが暴れまわったビル街にいつまでも響いたらしい……。
作者:陸野蛍 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2016年1月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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