植物の力は己が最強の力！

■リプレイ

●攻性植物同士
　茨城県はかすみがうら市。
　近年急激に発展してきている、若者達の町において、若気の至りという訳では無いが、若者同士の抗争事件が多発してきているという。
　それがただの抗争事件なら、余りケルベロス達が介入する意味は無いのだが……攻性植物の力を手に入れた二人が、威勢良く勝負だ！　と言っているのだから……それを止められるのは、ケルベロス達しか居ない訳で。
「まったく……若者というのは困ったものですね……しかし、このような事態を放っておく訳にもいきませんし……」
「ああ……植物を寄生させて戦うだなんて元気だよなぁ、彼奴ら……面倒だ。一般人が軽はずみに力を使うんじゃねぇよ」
　アシュレイ・クラウディ（白翼の騎士・e12781）の溜息に、ロア・イクリプス（エンディミオンの鷹・e22851）が吐き捨てる言葉。
　思うのは、この二人の未熟さ……力が欲しいからと言って、攻性植物の力を手にしてしまう事自体おかしい。
　でも、それが今、このかすみがうら市に起きている事件。
　このままこの事態を放置しておけば、攻性植物がリーダーとなった集団が淘汰されていき、いつかは一大集団になりかねない……だから、止める。
「彼らが力を身につける方法も、その力の使い方も、間違っているのです。誇らしいものじゃないって事を広めないと、犠牲者が増える一方ですね……」
「そうだね……互いに戦うみたいなんだけど、穏便に……なんて無理だよね。それならしっかり対処しないと。みんな、今日はビシッと頑張ろうね！！」
「うん。二人ともとっても愉しそうなの！　本当はふわりも近くで一緒に遊びたいけど、今日は我慢するのー」
　機理原・真理（フォートレスガール・e08508）、蒼威・翼（空に憧れる少女・e13122）、盟神探湯・ふわり（悪夢に彷徨う愛色の・e19466）三人の言葉。
　と、それにアシュレイ、ロア、鹿門・零菴（地球人の刀剣士・e19020）にジェミ・フロート（紅蓮風姫・e20983）も。
「まぁ、このまま野放しにすれば、組織化して手に負えなくなり危険……今の内に対処しなくてはいけませんね」
「ああ。とりあえず片方はぶちのめして、もう片方はやれたらで良いや」
「うむ。何時も通りだ。唯斬る」
「そうだねー。ま、何にせよこの攻性植物さん二人が頭良い訳もないし、さっさと倒しちゃおー！」
　そんな仲間達の言葉に頷きつつ、天神・世羅（紫唐揚羽師団のセイントマザー・e00129）が。
「よーっし、それじゃ早速だけど、攻性植物の元へ急ごう！」
　と良い、そしてケルベロス達は、攻性植物の現れる所へと急ぐのであった。

●二つの力比べ
　そして、抗争事件の起きている所へと辿り着くケルベロス達。
　……到着するなり、すぐに響き渡る叫び声。
『てっめぇ、ざけてんじゃねーぞ！　オレに刃向かおうだなんて、千年はえーんだよ！』
『なんだとこらぁ！！　おめーこそ仲間の後ろに隠れてばっかりじゃねーかよ！　へへっ、違うって言うんなら、向かって来いよ！』
　……と、少々子供のようなやりとりを、大声で真っ昼間からしている二人。
　全く以て、その言葉の端には知性がない。
　……まぁ、攻性植物になって、脳みそまで筋肉と化しているのかもしれない。
　そして二人の言葉争いは段々とエスカレートしていき。
『クッソ、てめぇ絶対許さねぇ！！　てめぇをこの蔓でけちょんけちょんにしてやろうじゃねぇか！！』
『こっちこそそうしてやらぁ！！　勝った方が負けた方の軍門に下るって事でいいよなぁ！？』
『あったりめぇだ！！　殺してやらぁ！！』
　対するもう一人の攻性植物は、地面に足をズボッと嵌めて……地面と同化し始める。
　そんな両者の言い争いに……既に周りの一般人達は、半分恐怖、そして半分……呆れと共に、そこから逃げていってしまう。
　そんな抗争事件を繰り広げる両者のピリピリとした雰囲気……諍いの火ぶたが、切って落とされる。
「……ケンカを始めたな。それじゃあ、半分ぐらい疲弊するまで、待機といきましょうか」
「そうですね……ちょっとずるい作戦になるかもしれませんが、ここで倒しておかなくてはいけませんからね」
　真理に頷くアシュレイ。
　敢えてケンカさせる事で、両者の疲弊をさせる事を狙う。
　ケンカする二人が見える所で、戦況を確認しながら、二人の体力の推移を見守る。
　……一方が蔓で殴りかかれば、脚元から拳をにょきっと出して、反撃。
　鞭のようにしならせ、出てきた拳を締め付ければ、地面をぐわわわっと隆起させて、それを回避したり。
　各々の攻性植物としての力を最大限発揮しての攻防を繰り返す二人。
　当然回りの壁や生け垣等は、その攻防に見事に壊れていってしまう。
「……壊れていくのを黙って見ていないといけないのは、中々堪えるな……」
「んー……まぁ、ヒールで治しちゃえば良いから、いいんじゃないのかなー？」
「まぁ、そう言われればそうなんだがな……」
　ふわりの言葉に、零菴は肩を竦める。
　……ともあれ、体力半分程度になるまでは、手出ししないことを決めたんだから、息を潜めて、じっと待ち構える。
　……そして、十数分が経過し、傍から見て結構体力が削れてきた所で。
「そろそろ……ですかね？」
「ん……そうだね。みんなも、準備はいいかな？」
「ええ、いいですよー」
　と、微笑むふわりに、他の仲間達も頷き……そして、一斉にケルベロス達は、二人のケンカしている元へ足を踏み入れる。
『なんだよてめぇ！　邪魔すんじゃねーよ！』
　と、怒りの声を上げる地面同化攻性植物。
　そんな彼の言葉を半ば無視しながら。
「リーダー、助太刀に来ましたよ！」
　とアシュレイの言葉。
　突然のリーダー、という言葉に、はぁっ？　とした表情を浮かべる蔓攻性植物。
　でも、更に。
「ふふふー。あなた格好良いから、ふわりはあなたの味方するの……ダメ？」
　ちょっとだけ妖艶に微笑むふわり……そして零菴、真理が。
「助太刀しよう。俺もあいつは許せないからな」
「そうだね。敵の敵は味方、ってやつなのですよ」
　と、更に蔓男に対して仲間の宣言。
　それに地面男は。
『てめぇ……ふざけんじゃねーよ！　仲間と一緒に戦うなんて反則だろうが！！』
『うるせーよ、これも俺の人徳の為せる技だろうが！　てめえのような地面と一緒にウジウジやってる奴なんて仲間来てねーじゃねーか！！　お似合いだぜ、地面と混じってろ！！』
『ぐぬぬ……くそっ、てめえら、絶対許さねえ！！』
　と怒りが頂点に達する地面男。
　地面からがすっ、がすっ、と拳を次々と放ち、ケルベロス達を攻撃してくる。
　そんな地面からの攻撃に、ロア、ジェミは。
「おう、やる気あんな……ほどほどにやってこうぜ？　気楽にさ」
「そうね。私の鍛えた身体、負けやしないわ！　行くわよばるとぅーる！」
　と気合いを入れると都問、ツインテールをぴこりと跳ねさせながら、フロストレーザーを放つ。
　勿論ターゲットは、地面男。
　地面と身体を繋ぐ辺りにその一閃を叩き込むと、続けて世羅、零菴が。
「いくぞ」「ええ！」
　とペトリフィケイションにダブルバスタービーム。
　そして。
「ふふっ、あなたの全部をふわりに見せて欲しいの」
「いっくよー、喰らえー！」
　と無邪気に笑いながらふわりが熾炎業炎砲、翼のケイオスランサー……更にディフェンダーの真理、アシュレイは。
「攻性植物の力を使って暴れてたら、現実世界に戻れませんよ？　……出来れば、あなたを人間に戻してあげたいですが……難しいかもしれませんね」
「そうですね……ともかく、リーダーに刃向かうなら、確実に倒して上げますよ……シキも頼みますよ」
『ワウウ！！』
「ええ……プライド・ワンも宜しく頼みますね」
　真理の言葉にエンジン音を鳴らして反応を返すライドキャリバー。
　……次々とケルベロス達の攻撃は、地面男に嗾けられていく。
　勿論、蔓男も攻撃するので、１対９と、サーヴァント四体。
　圧倒的な数の差に、地面男も反撃するが……全く効果的な反撃を返すことも出来ない。
　数分抵抗するが……結果。
『く、くそおおお……！！』
　と、唇を噛みしめ、悔しさを叫びながら崩れ去っていく地面男。
「ふふん、どう？　鍛えた私の、そしてケルベロスの力！」
　ニッコリ笑うジェミ、そして。
「一先ずは終了……と、二回戦はいくのかねぇ……」
　とロアが呟く。
　……幸い、その言葉を蔓男は聞いていなかった様で。
『ヘヘ……おめえら、中々強ぇじゃねえか。その強さ、俺の為に使わねえか？」
　と笑いながら、ケルベロス達の肩を叩く。
　勿論、戦い続けた彼の体力は、もう結構少ないので……その肩を叩く力も、何処か弱々しい。
　……そんな蔓男に。
「ふふ……そうね、もう一戦、いこうじゃない！」
　とジェミの言葉。
　その言葉に速攻で、翼が。
「敵を貫く神速の風！　いっけー！！」
　と、躊躇する事無く翼が神速の風を叩きつけると、更にふわりが。
「ねぇ、ふわりの眼を見て。暴れん坊なあなたに、不思議な景色を見せてあげるの……あなただけ、特別なの」
　と言いながら、蔓男の目を見つめ、『かみさま、おねがい』を発動。
　彼の身体が、どんどんと崩壊していく。
　そして……真理が。
「出来る事なら、あなた達を人間に戻したかったですが……これで、最後です」
　と告げて、蔓へマインドガンを叩きつける。
　その一撃は、彼の脳天を貫くと……蔓の攻性植物は、崩れ墜ちるのであった。

●頭痛の種
　そして……攻性植物二体を倒したケルベロス達。
「ふぅ……どうにか終わった様だね」
　と微笑む世羅に、アシュレイも微笑み、頷きつつ。
「そうですね……皆さんも、怪我はありませんか？」
　と、仲間の怪我の心配をする。
　……幸い大怪我は無いし、完全勝利に対する満足感。
「流石に辛い……けど、達成感はあるわね！！　みんな、お疲れ様！」
　とガッツポーズを取るジェミに、他の仲間達も笑う。
　そして……。
「それにしてもこいつ……自業自得にも程が在るよな」
　とロアは言い捨てながらも、死んだ二人に手を合わせる。
　そして手を合わせた後に、後始末……攻性植物二人が壊したものを、ヒールで回復。
　アシュレイなども、一緒になって周囲をヒール。
　一通り、ヒールし終わったら、ロアが。
「あー……さっさと帰ろうぜ。寒いし酒のみてえ」
　とロアは言いながら、さっさと先に帰って行ってしまう。
　……そして、世羅が。
「まぁ……そうだね。余りここに長居してても仕方ないし、私達も帰ろっか♪」
　と言い……そしてケルベロス達は、かすみがうら市を後にするのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2016年1月25日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 1／感動した 0／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 2
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