浮島戦艦竜を撃沈せよ第二戦!

作者:雪見進


「……」
 相模湾の沖で、空に黒い煙が上がっていた。その煙の元は、20メートルほどの浮島……ではなく、戦艦竜だった。
 煙はケルベロスによって受けた傷痕。背中に生えている樹木や、身に纏っている流木がくすぶっていた。
「グルルルル」
 その傷に対する怒りなのだろか。突如、背中から樹木が空へ飛び上がり、それがミサイルのような軌道を描きながら、近くで漁をしていた漁船へ降り注ぐ。
「な、なんだぁ!?」
 突然降りかかる厄災に悲鳴を上げ、逃げる余裕もなく漁船は沈没するのだった……。

「浮島戦艦竜の居場所が確認できたっす」
 そう説明するのはダンテ。以前に調査及びダメージを与えた戦艦竜の居場所が判明した。
 戦艦竜はダメージを自力で回復出来ないという特徴があり、前の戦いで負った傷はそのままの状態であった。このままダメージを蓄積させていけば倒す事が出来るだろう。
「それに、調べて貰った調査の結果も出たっす」
 そう言いながらダンテが説明してくれたのは、前回戦ったケルベロスの皆からの情報。前回は分からなかった攻撃方法や、弱点などが判明している。さらに、木々に覆われ確認出来なかった大きさだが、他の戦艦竜と同様の10メートル程度。特徴的には木々が生えている地面のようなものは亀のような甲羅の上に生えているようなのだ。
「今回は前回と違って、静かに近寄っても攻撃してくると思われるっす。ただ、それでも多少鈍感のようっす」
 前回のように水上バイクで近づくのは無理だろうが、手漕ぎボートや泳いで近づく分には発見されない可能性が高い。近寄って、前回と同じように周囲に漂う流木に乗れば戦いやすいと思われる。
「……それでも、とても危険な相手っす」
 色々情報を仕入れ、後は撃沈させるだけだが危険な相手である事に変わりは無い。ダメージを負っているとはいえ、攻撃力が低下している訳ではないのだ。
「この戦いで撃破は不可能でも、次に繋げるように頑張って欲しいっす」
 そうダンテは締めくくり説明を終えるのだった。

「二回戦でござるか……」
 連戦という事で、兜の緒をしめるように気合いを入れなおす。そして、静かに出発の準備をするのだった。


参加者
ガルディアン・ガーラウル(ドラゴンガンマン・e00800)
フランツ・サッハートルテ(剛拳のショコラーデ・e00975)
森沢・志成(なりたてケルベロス・e02572)
エア・イミテーション(虚飾レプリカントドール・e04985)
神代・瀬奈(森を愛する者・e06127)
スズナ・スエヒロ(ぎんいろきつねみこ・e09079)
カナメ・クレッセント(羅狼・e12065)
リカルド・アウベス(女々しき凶拳・e21989)

■リプレイ

 ここは相模湾の湾岸線。ここで浮島戦艦竜への第二戦のためにケルベロスたちが準備をしていた。
「前回痛い目に遭わされてしまった故、リベンジだ」
 エア・イミテーション(虚飾レプリカントドール・e04985)は第一戦にも参加したケルベロスの一人。リベンジの機会を得て、気合いを入れている。
「私も二度目の対戦ですが、前回は情報収集が目的でしたし、今回は沈めるつもりでいきますか」
「そうだな、今回は攻撃主体、多少の傷は皆で堪える作戦だ」
「その作戦で、前回のお返しをさせていただきます」
 カナメ・クレッセント(羅狼・e12065)もエアたちと前回の戦いを共にした者だ。
 他にも森沢・志成(なりたてケルベロス・e02572)やサポートに駆けつけてくれた者たちの中にも二戦目の者もいる。
「ここにおらぬ前任のケルベロスたちに泥を塗らぬ様、しっかりと戦わせてもらうとしよう!」
 そんな話を聞き、ガルディアン・ガーラウル(ドラゴンガンマン・e00800)が前任のケルベロスたちの分まで戦う意気込みを見せていた。

「噂の戦艦竜とやら、この拳で経験させてもらうぞ」
 フランツ・サッハートルテ(剛拳のショコラーデ・e00975)は拳を握りながら呟く。今まで、相対してきたデウスエクスの中でも戦艦竜は独特の相手だ。その巨体もあるが、通常の方法で傷を癒せないという弱点がある。だからこそ、連戦で削り倒すという作戦が実行される事になったのだ。
「できるだけ、削りたいし、倒したい、けど……」
 そんな相手だから、素直な想いを口にする神代・瀬奈(森を愛する者・e06127)。
「まぁ、別に俺達でブッ壊す必要もねぇんだしな」
 少し肩に力が入っている雰囲気の瀬奈に、軽く声をかけるリカルド・アウベス(女々しき凶拳・e21989)。
「弱点も分かってる以上、何とかなるんじゃねぇの?」
 前回の調査の結果、弱点が判明して前回より戦いやすくなっている。
「うん……無事に帰ることを、最優先」
 そんなリカルドの言葉を聞いて、少し肩から力を抜いて応える瀬奈。しかし、強大な相手だからこそ、注意しなければならない。
 今回、使用する乗り物は手漕ぎボート。前回は大きなエンジン音に反応したから、今回はより静かな手漕ぎという選択を選んだ。それが、『凶』と出るか『吉』と出るか……今は分からない。しかし、その『凶』に備え、救命胴衣の準備と、さらに濡れても使える発煙筒を準備しているのは志成。さらに、フランツも動力付きゴムボート。さらにサポートに駆けつけてくれた者もいる。
 多重に備えをしたケルベロスたち。しかし、そんな相模湾は生憎の曇り空。水に浸かる可能性があり、スズナ・スエヒロ(ぎんいろきつねみこ・e09079)などは水着の準備をしているのだから晴れの方がありがたい。さらに天気予報は雪の予報。
 しかし、それで怯んだりするような者はここには居ない。
「たおせるかわかりませんが、全力でがんばります!」
「そうでござるな」
 礼儀正しいスズナの言葉に応えるウィリアム・シュバリエ(ドラゴニアンの刀剣士・en0007) 。そんな言葉で戦艦竜二戦目に出発するケルベロスたちだった。


「おっきなドラゴン、です……」
 手漕ぎボートで近づくケルベロスたち。その先に見えてくるのは浮島戦艦竜。前回と同様に周囲は流木などに包まれ、相変わらず蓑虫のよう。もっとも、その流木のおかげでケルベロスとしては戦い易かったりするのだが。
「アレが戦艦竜か……。アレでも相当損壊している状態なのか……」
 リカルドが戦艦竜を見ながら静かに呟く。遠くから見ると、周囲の流木もあり損壊している状態には見えない。ある意味色々な場所が壊れているようにも見えるし、逆に全く壊れていないようにも見える。
「大丈夫そうだね」
 志成がゆっくりとボートを漕ぎながら接近する。しかし、それでも浮島戦艦竜は反応せず、ゆっくりと漂っているだけだった。
 そのまま慎重にゆっくりと浮島戦艦竜に接近し、流木を確認したり前回と同じように背に乗ったりするが、それでも反応は無かった。
「相変わらずゴミだらけだ」
 前回、上陸した際に沢山のゴミを見ていたエアは、こっそりゴミ袋などを持参。出来れば掃除をしたいところだが、ちょっと難しいだろう。まずは、この相模湾を脅かす戦艦竜を片づける必要がありそうだ。

 ケルベロス全員が浮島戦艦竜に乗ったり、近くの流木に乗ったりと戦闘態勢を整える中、戦艦竜は特に反応も無く、ゆっくり浮き流れていた。しかし、このまま遊覧を楽しむ訳にはいかない。このままでは無関係な漁船へ攻撃を開始するだろう。
「……」
 ケルベロスたちは目配せをし、奇襲を行う。戦いの開始だ!


 最初に動いたのは志成。バスターライフルを構え、狙い済まして発射。放たれた魔法光線が戦艦竜を貫く。
 その光が火蓋を切るように、ケルベロスたちは攻撃を開始した。
「……!?」
 突然の衝撃に驚く戦艦竜。 しかし、その巨体故か相変わらず反応が微妙に悪い。
「フランツ・サッハートルテ、我流にて地獄へ案内いたす!」
 フランツの気迫の声と同時に放つのは地獄の炎を纏う拳の一撃。同時に命中した箇所が地獄の炎で燃え上がり始める。
「炎のあつかいなら、それなりに自信がありますっ!」
 御業を使役し、炎の弾丸を放つスズナ。
「……」
 火炎弾は戦艦竜に命中。二人の攻撃を受け戦艦竜の体がグラビティの炎で燃え上がる。さらに、周囲の流木も燃え上がるが、その炎はケルベロスも含めダメージは無い。
「うえはおおかじ、したはおおみず、です?」
「上手い言い回しでござるな」
 そんなスズナの言葉に笑うウィリアム。本来は『上は大水、下は大火事』というなぞなぞで、答えはお風呂。でも、目の前の光景は逆さまなのだった。
「ゴゴゴゴゴッ!」
 そんな攻撃を受けると、それに反応して反撃してくる浮島戦艦竜。背中の樹木をミサイルのように発射し、空中で旋回しケルベロスたちに襲い掛かる。
「鉄であろうが、木であろうと、斬ってみせます!」
 今回狙われたのはカナメたち。その樹木ミサイルを二本のゾディアックソードで迎撃の構え。
 ゾディアックソードが星の軌跡を描くたびに破壊される樹木ミサイル。しかし、雨のように降り注ぐ樹木ミサイルをすべて切り落とすのは至難の技だった。
「弾幕の厚さは相当。それだけ相手も警戒しているという事ですか」
 少し後退し距離を取るカナメ。しかし、その距離をすぐに詰める。
「我が剣を受けてみよ!」
 ミサイルの発射が終われば、攻撃が終了すれば、隙となるのが必定。そのまま懐に潜り込み、達人の剣さばきで斬撃を繰り出す。
「無理はせず、けれども堅実にだ!」
 カナメたちへ祭壇から霊力を帯びた紙兵を散布して、仲間たちを守護させるガルディアン。
「……やれやれ、大したデカブツだ」
「きっちり働けよ!」
 サポートで駆けつけてくれたジョージ・スティーヴンス(偽歓の杯・e01183)と楚・思江(楽都在爾生中・e01131) 。思江がジョージを含め回復に活躍する中、ジョージは瀬奈やカナメを庇いながらの我が身を盾にした戦い方。
「おい、少しは傷の事も考えやがれ!」
「……回復? それを考えるのはお前の仕事だろう」
 そんな会話をしながらの戦う二人はとても息の合った動きである事は傍目にも分かるのだった。

「むっ!」
「大丈夫ですか、ウィリアムさん!」
 後方で遠距離攻撃を繰り出していたウィリアムたちを狙い発射された樹木ミサイル。それを大原・大地(元守兵のチビデブドラゴニアン・e12427) が駆け込み庇う。
「これで防ぐ!」
 さらに大地はウィリアムを守るように盾を大きさと重さを二倍いして仁王立ち。
「感謝するでござる」
 ウィリアムも大地に礼を返し背中を預け、炎の息で反撃する。
「もっと盛大に燃やしてやってもいいんだぜ?」
 グラビティの炎に包まれ、全身を焼かれる戦艦竜に炎の追撃を繰り出すリカルド。大きく息を吸い込み、吐き出すのは竜の炎。さらにビハインドのマルタが、周囲に浮かぶ流木に念を込め、戦艦竜へ飛ばしリカルドを援護する。
「樹木ミサイルが避けれないならばいっそ気合いでそのまま押し通る!!」
 樹木ミサイルの攻撃を受けながら、エアはガトリングガンを構え、炎の弾丸を放ち続ける。そのエアの乱射に重ね、ヴィクトーリヤ・ビェールイ(レプリカントの鎧装騎兵・e08606) もガトリングガンを構え、炎の弾丸を乱射し続ける。
「……グググゥ」
 燃え広がる炎に微妙にくぐもった唸り声を響かせる戦艦竜。
 瀬奈は流木の揺れを利用して戦艦竜の背中に移動。そこから戦艦竜の甲羅を踏み台にして、大きく跳躍。
「ふぅ、っ……」
 空中で大きく息を吸い込みエアシューズの力を解放。脚に流星の力と重力を込める。
「はぁ、っ……!」
 そこから流星のような輝きを放ちながら戦艦竜へ急降下。
「ガガッガァ!」
 瀬奈の放つ流星の一撃は、幸運の後押しもあり見事に戦艦竜の弱点部分へ。戦艦竜が今までにない反応を示す。
 しかし、戦線は押しているのか押されているのか判断に困る状況だった。
「少々、手が足りないのか?」
 オーラを癒しの力に変換し、エアの傷を癒しながら大忙しなフランツ。ぎりぎりな前衛の人へ単体回復を施すのがやっとだった。
「そうであろう」
 フランツの問いに答えるようにガルディアンが答える。
「命の力を汝へ!」
 同時に散弾銃のような武器から、散弾状のエネルギーを発射。そのエネルギーで仲間の傷を癒していく。
 ガルディアンも回復に回るも、戦艦竜の樹木ミサイル攻撃は激しく、回復の手が足りるとは思えない。
「ならば、攻撃に移る」
「そうだな」
 すでに戦艦竜へのダメージは想定以上与えている。ならば、明らかに攻撃を優先した方がいいだろう。このまま行けば撃沈も可能に思える。
 ガルディアンとフランツは撤退を考慮しながら、回復から攻撃に移るのだった。


「もえさかれ、りんか!」
 狐の妖力を発揮して、戦艦竜に燃え盛る狐火の弾丸を放つスズナ。放たれた炎は周囲の流木も巻き込みながら、戦艦竜を燃やしていく。さらにミミックのサイはエクトプラズムで作り出した武器でスズナを庇いながら攻撃を行う。
「地球の裏側からプレゼントだ!」
 リカルドが大きく息を吸い込む。それを見て、他のドラゴニアンたちがタイミングを合わせる。
「受け取り拒否は通らねぇぞ!」
「竜の息吹であるよ!」
「受けるでござる、炎の息吹!」
「火柱立てて燃え尽きろ!」
 連携して放つのは竜の息吹。リカルド、ガルディアン、ウィリアム、そして、サポートに駆けつけてくれたヴァジュラ・ヴリトラハン(戦獄龍・e01638) が波状攻撃でドラゴンブレスを放つ。放たれた竜の炎が戦艦竜を包み込むほどの範囲を炎で覆い尽くす。
「グググッ!」
 激しく燃え上がる戦艦竜。炎が燃え広がり、苦しそうな様子を見せ始める。それでも樹木ミサイルを発射して反撃を繰り出す戦艦竜。
「ミサイルは厄介ですね」
 降り注ぐミサイルに、最初は失敗した迎撃を再び試みるカナメ。最初よりも早く、そして鋭く剣を振るう。
 そして今回は自身を狙ったミサイルを全て切り落とし、そのまま距離を詰める。
「騎士の誇り、今こそ見せよう!」
 そのまま無数の斬撃を繰り出す。無数の斬撃の中、星の軌跡が瞬くように光り散る。
「グガガ!」
 戦艦竜が悲鳴のような苦しそうな声を上げる。その声は紛れもなく、追いつめてきた証拠。

「ー奏でてー」
 瀬奈の静かに……囁くような言葉と同時にグラビティが反応。次の瞬間、服が緑青の燐光を輝かせ、囁くような歌を奏でる。
「グググ!」
 囁くような歌は葉擦れのような音を呪詛と共に謳い上げ、戦艦竜を呪縛する。
「せっかく撃ち放題殴り放題大喝采なのであるし楽しくいこうではないか!!」
 激しい攻勢の中、エアが放つケルベロスチェインが戦艦竜を縛り、動きを阻害していく。
「ガガガァァアアア!」
 縛られた鎖が不快なのか、激しく身体を揺すり、振り解こう暴れる。
「シャキっとしろ、駄竜がッ!!」
 そんな戦艦竜も、鎖に縛られれば駄竜に墜ちる。その隙に連携攻撃を繰り出すケルベロスたち。
「隙ありだ!」
 フランツが叫んだ次の瞬間、地獄化した翼を禍々しく変化させたかと思うと、凄まじい勢いで戦艦竜に突撃を行う。
「ここだ!」
 さらに志成がガトリングガンから無数の炎弾を放ち、激しい火柱を打ち上げ追撃を行う。
「グガガガガァ!」
 それほどの連携を受けながらも戦艦竜は樹木ミサイルを乱れ発射。これだけ追い詰めても弱体化しない樹木ミサイル……いや、最初と比べればケルベロスたちの猛攻で多少の弱体化はしていた。
「ごめんなさい……」
 それであっても、強大な相手だからだろう。そのミサイルの雨で瀬奈がついに膝を付いて立ち上がれなくなってしまう。だが、不幸中の幸いというべきか、重傷には陥っていない。
「グルルルルゥ!」
 しかし、戦艦竜も虫の息だった。それを理解したエアがミサイルの攻撃に耐えながら距離を詰めていく。
「たとえ真実は一つでも、それが変わらぬとは限るまい?」
 静かに言葉を紡ぐ。言葉に重ね過剰稼働させたナノマシンを展開、同時に収束させていく。
「さぁ、目の前を見ろ!」
 紡がれた言葉が収束すると同時に、『現実』が捻じ曲がっていく。
「ぐぐぐ……」
 状況を正しく理解出来ている様子の無い浮島戦艦竜。ただ、激しく苦しそうなうめき声を上げ、同時に周囲の装甲が跡形もなく消え……いや、違う。元々、そこに装甲など無かったかのように改竄されてしまった。
「……ごぉごぉごごご……」
 そして、装甲と共に浮力を失ったかのように、そのまま動きを止め漆黒の塊となり水中へ沈んでいった。ケルベロスたちの勝利だった。


「おいおい……」
 戦艦竜は倒れ、そのまま沈んでいった。しかし、その後……戦艦竜を中心に巨大な渦巻きが発生した。巨大な質量が浮力を失い沈んでいく影響だろうか、それとも沈んだ先で何かが起こっているのだろうか。詳しい原因は不明だが発生した渦巻きは現実。
「あれに飲み込まれたら面倒でござるな」
 巻き込まれてもケルベロスならば無事だろう。しかし、それでも苦しいし辛いし寒い。
「使わないで済むかと思ったんだけどね」
 志成は即座に発煙筒に着火。色付きの煙が空に向かって昇っていく。
「怪我人はこっちだ!」
 不慮の事態に用意していたゴムボートとが役に立った。水流で一緒に近寄ってきたゴムボートに瀬奈を乗せる……が、動力を全開にしても渦に吸い込まれていく。
「手を出して!」
「こちらにも!」
 ドラゴニアンが多いの幸いした。ガルディアン、フランツ、リカルド、ウィリアム、大地、ヴァジュラ、思江と翼を広げ飛べない者に手を貸す。
「この方が運びやすいかしら」
「助かるでござる」
 そんなウィリアムに救出されたスズナは動物変身で狐の姿に。でも、濡れるのが避けられなかったから濡れネズミならぬ濡れ狐になってしまっていた。
 そんな状況に悪い事は続く。曇っていた空から降り始めたのはなんと雪。むろんケルベロスだから凍傷などの危険は無いけど、寒いものは寒い。

「助けに来たぞっ! 早くこっちにっ!」
 そこへ駆けつけてくれたのは木下・昇(永遠のサポート役・e09527)と矢武崎・火衣(オラトリオの鹵獲術士・e10563)。志成の発煙筒を目印に、準備していた足の早いボートで迎えに来てくれたのだ。
「助かった」
「ありがとう」
 口々に感謝を口にしながら、皆を収容していく。
「あれは……なんだ?」
 皆を収容し、怪我人に応急処置をしながら、ケルベロスたちが戦艦竜が沈んだ方向を見ると……何か空気が重いのような、言葉に言い表せないような不気味な感覚。
「収容したら、急ぎ距離を取れ!」
 誰の声だったかも分からないほどの声に、ボートのエンジンを全開し、急ぎ距離を取る。
「伏せろ!」
 誰かが叫んだ、次の瞬間……激しい爆発音が響いた。同時に誰もが爆発によって生じるであろう波に備え伏せるが、その波は来なかった。
「渦が……」
 その爆発音の後、 渦巻きは消滅していた。まるで、そこには何も無かったかのように……。
「お疲れさん」
 そんな一瞬の光景に言葉を失うなか、リカルドの声が響く。
「ああ、お疲れ様でござる」
 その言葉でやっと勝利を実感したケルベロスたち。皆傷だらけだが重傷の者はいない。快勝といっていいだろう。
 その勝利を胸に、ケルベロスたちは船で帰還するのだった。

作者:雪見進 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。