赤い戦艦竜とのリベンジ、再び

作者:なちゅい

●またも現れる赤い戦艦竜
 神奈川県南部に広がる相模湾。
 そこでは、多数の漁船が操業している。ここで獲れる、カツオ,マグロ,アジ,ブリなどの海の幸は、日々の食卓でおなじみの食材だ。
 そのうちの一隻。今日も大漁と意気込む乗組員達だったが……。
「ちっ、またかよ!」
 水中で光る瞳に気づき、舌打ちする乗組員。彼らはその船体に見覚えがあった。
 現れたのは、赤い戦艦竜。その船体の所々には傷がついている。
 この乗組員達は、以前にも同じ戦艦竜に襲われていた。その船体は、どうやらケルベロスによって引き上げられてヒールを施されており、所々に植物が巻きついたような箇所が見られる。
 一方の戦艦竜。この海域で漁を行う漁船が気に食わないそいつは、すぐさま船目がけて炎を飛ばす。
「さすがに、2度も船を落とされてたまるか!」
 船長はなんとか逃れようと、舵を大きく切る。……ただ、悲しいかな、ヒールを施されたからといって、船の機能が向上したわけではない。
 漁船は全砲門から発射された炎を避けることができず、船体に引火し、船首や動力部を破壊されてしまう。
「また、こうなるのか……!」
 乗組員達は悔しそうに船を放棄し、海へと飛び込む。
 かろうじて、乗組員全員が無事ではあったが、船は瞬く間に沈没してしまう。
 戦艦竜はそれを確認することもなく、海の底へと戻っていったのだった。
 
 ヘリポートで待っていたリーゼリット・クローナ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0039)は、ケルベロス達の姿を認め、破顔する。
「ようこそ。いつもすまないね。初めての人はよろしく頼むよ」
 彼女はある程度人が集まったのを見計らい、話を始める。
 狐村・楓(闊達自在な螺旋演舞・e07283)の調査で、城ヶ島の南の海にいた『戦艦竜』が、相模湾で漁船を襲うなどの被害を起こしている事が判明したのだ。
「戦艦竜は、城ヶ島の南の海を守護していたドラゴンだね。戦艦のような装甲や砲塔を持つこのドラゴンは、非常に高い戦闘力を持っているようだよ」
 城ヶ島制圧戦で、南側からの上陸作戦が行われなかったのは、この戦艦竜の存在が大きい。
 実際、この戦艦竜は強行調査時にとあるチームが出くわし、逃がしてしまった戦艦竜だ。
「全体数でいえば、戦艦竜の数は多くないけれど、個々の力は非常に強力だね。このままでは、相模湾内を安心して航行できなくなってしまうよ」
 現場まではクルーザーを利用して相模湾へと移動し、戦艦竜を撃退してほしいと彼女は語る。
 そこで、撃退という言葉に、ケルベロス達は首を傾げた。
「海中での戦いということもあるし、冬場とあって水温も低いからね。一度の戦いで戦艦竜を撃破することはさすがに不可能だよ」
 ただ、戦艦竜は、強力な戦闘力と引き換えに、ダメージを自力で回復する事ができないという特徴がある。城ケ島という拠点を失った敵は回復する手段が乏しい。ダメージを積み重ねる事で、撃破する事が出来るはずだ。
 今回は2度目。すでに手傷を負っている戦艦竜を倒すことができるかどうかは、今回参加するケルベロスの手腕にかかっている。
「厳しい戦いになると思う。でも、皆ならきっとやってくれると信じているよ」
 場所は相模湾。操業中の漁船が襲われていることから、沖合での戦いになる。
 以前戦ったこの赤い戦艦竜は、炎を操る敵であることが分かっている。グラビティの力も手伝い、水中でも火炎を放って攻撃してくるので、気を付けたい。
「あと、前回戦ったケルベロス達の報告で、前足を使った爪での攻撃、それに、複数の砲門を一斉発射した業火を、狙った1人に対して浴びせかけてくることが分かっているよ」
 放たれた業火で、前回、ケルベロスの1人が重傷を負っている。この攻撃には注意したいところだ。
「ここで倒せるかどうかは分からない。仮に倒せなくとも、次に繋がる戦果を残せるように、頑張って欲しい」
 前回のチームがこの戦艦竜を痛めつけてくれている。作戦次第で、あるいは……。
「それじゃ、皆、よろしく頼んだよ」
 リーゼリットはそうして、ケルベロス達を相模湾へと送り出すのだった。


参加者
フロエ・コトブキ(アマランタイン・e00266)
天津・千薙(天地薙・e00415)
宗像・孫六(刀犬士・e00786)
ドローテア・ゴールドスミス(黄金郷の魔女・e01306)
エステル・ティエスト(紅い太陽のガーネット・e01557)
千軒寺・吏緒(ドラゴニアンのガンスリンガー・e01749)
大御堂・千鶴(幻想胡蝶・e02496)
神宮時・あお(夢想ノ華・e04014)

■リプレイ

●巨大な敵に備えて
 相模湾上を、1艇のクルーザーが行く。
 それに乗ったケルベロス達は、現場海域に到着するまでの間、作戦について話し合っていた。
「別の戦艦竜も強かったが、こっちも強いんだろ。無茶は承知、撃破狙ってやんぜ!」
「前に頑張った皆の為にも、相模湾に生きる人達の為にも、頑張るの」
 甲板上で、千軒寺・吏緒(ドラゴニアンのガンスリンガー・e01749)、フロエ・コトブキ(アマランタイン・e00266)が海を眺めつつ意気込む。
「多少の無理は覚悟の上。攻撃寄りの電撃作戦。短期決戦で一気に畳み掛けるワよ!」
 ドローテア・ゴールドスミス(黄金郷の魔女・e01306)も改めて、仲間と話し合って決まった作戦を確認するように叫ぶ。
「ディフェンダー各員、あなた達がどれだけ保つかが勝負。頼りにしてるワ」
「まー、何とか落ちんように耐えて見せっからよ。攻撃は任せた」
 ドローテアの言葉を受け、壁役となる唯一の男性、吏緒は仲間達へと胸を張るのだが……。
「耐えるとは言ったものの、倒せねー場合、確実に俺ダウンしてんだろうな」
 彼は仲間には聞こえぬよう、小さな声で自嘲していた。
 さて、全体作戦だが。前回、赤い戦艦竜と戦ったメンバーからの報告を元に、組み立てられている。
「敵を指したら、攻撃指示」
「水面を指したら、撤退指示」
「狙われた味方を指したら、防御もしくは回避指示」
 このハンドサインは前回から踏襲し、さらに、ドローテアが新たなサインを提案する。
「手を振りながら指さしたら、弱点指示」
 前回の戦闘でつけられた傷が弱点である可能性を検討しようと、彼女は考えていたようだ。
 限りある時間の中、綿密な打ち合わせを行った一行は、現場に到着すると、早速海へと飛び込む。
「Oops. 泳ぐのは割と得意なのよ。子供の頃は先生にほめられたワ」
「運動でボクに苦手なモノなんて無いんだよネェ。寒中水泳は初めてだけどネェ!」
 真っ先に飛び込んだドローテアは、得意げに泳いで見せる。大御堂・千鶴(幻想胡蝶・e02496)も持前の運動神経で問題なく泳いでいた。
 エステル・ティエスト(紅い太陽のガーネット・e01557)も、北海の島国、デンマーク生まれということもあって、寒さも泳ぎも難なくこなす。
 フロエは可もなく不可もなくといった泳ぎだったが、ケルベロスの中には泳ぎが苦手なメンバーもいて。
 例えば、水着の上からパーカーを羽織っていた天津・千薙(天地薙・e00415)。レプリカントの彼女は機械の身体を持ち、特に脚が沈んでしまう為、両手の巨大なバトルガントレットのブースターを使い、機敏に動く。
「大変だが、根性見せてこうぜ!」
 女性陣へと拳を向け、吏緒は全員に気合を入れつつ、最後に海へと飛び込んだ……のだが、泳ぎが若干苦手な彼である。
(「海、やっぱ冷てー。寒冷適応あってよかったぜ、本当に」)
 いまいち決まらず、不格好な吏緒。がんばれ、男の子。
「皆、準備はできているかしラ?」
 年長者でもあるドローテアは、チームの指揮官のように呼びかける。先陣が切り開いた道。ここまでお膳立てをしてもらって、負けるわけにはいかないと。
「必ず奴の喉笛に我らが牙を突きつけるワよ!」
 掛け声を合わせるケルベロス達は、海底から赤い物体がこちらに迫ってきているのを発見する。
「戦艦竜! でかいでござるな! 強そうでござるな!」
 宗像・孫六(刀犬士・e00786)は接近する敵の姿を見て、捌き甲斐がありそうだと考える。もっとも、食べたいとまでは思わなかったが。
「ボクってば、強敵の魔術鹵獲が大スキだからさァ。チョー燃えちゃうネェ?」
 ある意味で、相手を食べようとしているのが千鶴。ハイテンションな彼女は、己からにじみ出る狂気を前面に出して笑う。
 千鶴の視界の端には、関わりは少ないものの、顔見知りではある神宮時・あお(夢想ノ華・e04014)の姿。
「……あれが、戦艦竜……。……出来る限りの、最上の、結果を、出しましょう……」
 ぼんやりとしたあおだが、冷たい海にも反応をまるで見せずに泳ぐ。
「狙うは速攻! ダメだったら、さっさと逃げてしまいましょう」
 『速きこと風のごとし』とは、攻めだけでなく、うまくいかないと思ったら追撃を受けないようにすることも指すようだから。あおはそう考える。
 ケルベロス達が刹那考える間にも、敵影はどんどん大きくなってくる。
「さァ、――始めましょう! Rock'n'Roll!」
 声は水中では響かないが、ドローテアの掛け声は全員に聞こえた気がして。
 対して、ケルベロスの言葉などお構いなしに、戦艦竜は船体の砲門から火炎を放ってきたのだった。

●巨大な敵と様々な想い
 みっちりと打ち合わせを行い、戦艦竜との戦いに臨むメンバー達。
「なぎが倒れるまでは、絶対に守り抜きますから」
 前に出る千薙。しかし、彼女はクラッシャーとして位置取ってしまい、実際の認識とずれてしまっていた。飛んでいく炎は千薙の真横を通り過ぎる。
 炎を受け止めたのは、孫六のオルトロス、弥七。主の命で盾として前に出てきたのだ。
 これは、孫六の指示でもある。弥七は孫六にとって、『悪を許さぬ峻烈な心」の具現。そして、自身の一部。仲間を守る為ならば、その身を投げ出してでもと孫六は考えていたのだ。
 仲間達は戦艦竜を指差す。それを見ていた千薙は自身のミスを悔いながらも、全力で攻撃を行う。
「やらせません!」
 千薙は叫び、両腕に付けたバトルガントレットを敵に叩き込む。その狙いは的確に、相手の傷口を狙って叩きつける。それは単なる殴打ではない。
「私だけを見ていればいいんです。ずっと、ずっと……」
 千薙はその一撃ごとに自身の魔力を相手へと流し込み、相手の意識をかき乱す。さらに攻めたてる千薙。結果的に、相手を自身へと向ける結果となっていたようだ。
 戦艦竜に対するケルベロスの想いは様々。
 あおはメンバーの後ろで爆発を起こし、それによる爆風で仲間を鼓舞する。
「是非ともキミの魔力は強奪したいなァ、キャハハ!」
 爆風によって力を得た千鶴は、テンション高く敵へと迫る。普段は地面に踵を打ち鳴らすのだが、生憎と海中。千鶴は両足を叩いて鳴らすことで代替とした。
「強欲なる柊よ、無垢を棄てる兇刃と成れ」
 彼女は水底から柊木犀を召喚する。そして、それは、千鶴の視線の先にいる戦艦竜を敵と見定めて伸びて。鋭利な棘を持つ柊木犀の葉がその血を求めて戦艦竜の体を切り裂く。血を吸った白い花はゆっくりと紅く染まっていった。
 仲間がダメージを与える敵をフロエはじっと見つめる。それだけでなく、フロエ自身も重力を宿した蹴りで襲い掛かった。いくら巨体とはいえ、グラビティの力が加われば、戦艦竜の動きも鈍る。
 それでも、刹那の後、敵は再び動き出す。そこで、エステルがバスターライフルを携え、冷凍光線を放射した。
「まったく、これ以上寒ブリが高くなったら困るじゃないですか!」
 漁船が戦艦竜に襲われて漁獲量が下がると、魚の価格が高くなる。エステルが言っているのはそういうことだ。これ以上、漁船を襲われるわけにはいかない。
「手こずらせてくれたでござるが、今回でキッチリ仕留めるでござるよ!」
 ケルベロスとしては、すでに3度目の相手。ここで仕留めようと、前回のチームが付けてくれた傷を狙う。弥七が口にくわえた剣で斬りかかり、さらに孫六が斬霊刀に雷を纏わせ、その切っ先を傷口へと突き入れる。
 ドローテアは戦闘が始まれば、仲間達に指示を飛ばしつつも、自らは仲間が足止めしたことで、ほぼ確実に当たるクイックドロウを選択し、ゾディアックソードからオーラを素早く放つ。狙いは仲間に合わせ、相手の積極的に傷口を広げようとする。吏緒が攻撃を重ね、エアシューズで流星の如き蹴りを繰り出す。
 ダメージとしては、残念ながら、他の部分との差が分かりづらく、効果的だとは言い難く、弱点指示のサインは誰からも出ない。
 戦艦竜は前足の爪を振るってくる。それを、吏緒が積極的に受け止めた。彼も千薙も異変に気づいてはいたようだが。それを知ってなお、彼女に負担をかけじと肩代わりする。敵の大きな爪を、彼は自身のルーンアックスで受け止めた。
 海の中の攻防。それはまだ始まったばかりだ。

●敵の全力攻撃!
 ドラゴンの攻撃は変わらず、猛攻と言うべき威力。
 その多くを受けていた、吏緒。彼はルーンを発動させ、光と共に斧を振り下ろし、そのまま、またも斧の柄で敵の攻撃を止めようとする。さすがに広範囲にわたる突撃を全て止めるのは難しかったが……。
 千薙も敵の怒りを買うことで、攻撃の一部を受けてはいたが、敵の攻撃を受け止める体勢が整ってはいない。吏緒やサーヴァントの弥七が肩代わりすることで、攻撃を分散させる。
 あおはブラックスライムやマインドリングでの攻撃を行っていたが、前衛に立つメンバーの負担は相当なもの。唯一のメディックだということもあり、彼女は指輪から浮遊する光の盾を展開することで、仲間の支援に当たる。
 千鶴も時折、あおからの支援を受けている。可愛らしい彼女をちらりと見ながら、両手に持つ惨殺ナイフを使い、戦艦竜の周囲を舞いながら、船体を傷つけていく。
「ほらほら、思いっきり抉っちゃうよォ!」
 一撃を与え、その傷を広げるように千鶴はナイフを突き立てた。
「薙ねえ!」
 千鶴に応じた千薙。彼女はこくりと頷き、降魔の一撃を自らの拳で叩きつける。自らにできることを。彼女は自身の全力をぶつけていく。
 敵の動きに大きな変化は見られない。敵は首を動かす動作の後、攻撃を仕掛ける動作を行う。フロエはそんな敵の挙動に気づきながら、ブラックスライムを捕食モードにして相手へと食らいつかせる。丸ごと飲み込むには大きすぎる相手だったが。腕を飲み込み、その動きを阻害することには成功した。
 敵の動きが鈍ったその隙に。孫六が空の霊力を斬霊刀に帯びさせて、斬りかかる。
「堅いでござるが、刃が立たぬほどではないでござる!」
 戦艦竜の身体は弾かれる堅さではない。問題ないと感じた彼は、オルトロス、弥七にも装甲を破らせるようにと容赦なく巨大な敵へとけしかけていく。
 氷結の螺旋を放つエステル。身体を凍らせた戦艦竜が、船体前方の砲門を一斉に広げ始めた。これは……。
 敵の砲門を爆破させていたドローテアはそれに勘づき、仲間を指差す。狙われたのは……敵の怒りを買っていた、千薙だ。
 ディフェンダーとして立つメンバーが彼女を庇おうとしたが……間に合わない。千薙も意を決してバトルガントレットを大きく広げ、身構える。
 戦艦竜の全砲門から噴射された地獄の業火が彼女の身体を燃やす。
「無事で、良かった……。後は……」
 千薙は身体が燃えるのを自覚し、一瞬、意識が途絶えかけた。
 しかしながら、彼女の魂は肉体を凌駕する。運よく、意識を保つことができたのだ。
 そのおかげもあり、敵は大きな隙ができた。
 敵に斬撃耐性があるわけではなさそうだと判断した千鶴は、またも、柊木犀の葉で敵を切り刻み、その体力を削り取る。
 オルトロスの弥七も健在。若干息は上がっていたが、果敢に地獄から湧き出る瘴気を敵へと撒き散らす。
「火遊び火傷じゃ済まないでござるよ!」
 孫六がさらに、両手に握った斬霊刀に火炎を纏わせ、真っ赤な戦艦竜すらも燃やし尽くそうとする。
 船体の所々が燃え上がる敵。しかし、戦艦竜が堪える様子は見られない。
 敵の強力な攻撃に仲間を庇い損ねた吏緒。その後も積極的に前へと出て、敵の炎を浴びていたようだ。
「まだまだやられねーぞ、ゴラァ!」
 仲間が足止めしてくれたことで、戦艦竜の動きは鈍ってはいる。吏緒は2本のルーンアックスを高く掲げ、正面から敵の身体をクロスに斬りつけた。
(「……誰一人として、欠けることなく……」)
 やってきた戦艦竜との戦いを全員で乗り切る為に。あおは前に立つ仲間を光の盾で守る。
「……盾になって、でも、全員で、帰還、する、のです」
 感情のこもらない言葉で呟くあお。痛みを感じることのない彼女だが、身を挺してでも仲間を守ろうと考えるのだった。

●戦況を変える一手
 ケルベロスがどんなに攻めても、戦艦竜は一向に墜ちる気配を見せない。
 やはり、ダメなのかとエステルは考える。相手を攻めあぐね、消耗戦になってしまうならば、撤退もやむをえないのではないか。
「……いくワよ。『蠍の星剣/Scor-Spear』!」
 ドローテアは蠍座の星剣に織り込まれた術式を展開する。魔法を宿したその一撃は、赤い軌跡を描きながら戦艦竜の機関部を貫かんとする。だが、敵は体を動かすことで、致命傷を逃れていた。
 ジリ損になりつつある戦いを冷静に見定める。どれだけ攻めても崩れない戦艦竜とケルベロスを交互に見たドローテアは、いつ、撤退のサインを出そうかと考えていた。
 さらなる攻撃を続けるケルベロス。2つの妖精弓を重ねたフロエは、敵の機関部を狙い、神々すらも殺める漆黒の巨大矢を放つ。
 フロエのその一矢から逃れようとする敵へ、エステルが仕掛ける。巨大矢に首を貫かれた敵の前足を、エステルはむんずと掴みとった。彼女は海底から真上に伸びる岩場を見つけ、それを足場として蹴り上げる。
 彼女の『宵待月』に引力など関係ない。彼女は自身よりもはるかに大きな敵を水中ですくい上げ、円錐曲線のような不自然な軌道を描き……投げ飛ばす!
 海底へと激突した戦艦竜。かすかではあったが、ついに、船体から黒煙が噴き出す。
 しかし、戦艦竜はそこで反転し、ジェット噴射を使い、その場から去っていく。追撃はできなくもなかったが、無理をすれば、いつ現れるとも分からない戦艦竜の群れから、奇襲を受けてしまう可能性もある。水面を指差すメンバーも多く、チームの総意として撤退を行うことにする。
 水面へと上がるメンバー達はクルーザーへと戻る。甲板に上がった孫六は、弥七を労い、頭を優しく撫でる。
 倒すことはできなかったが、戦艦竜の傷はかなり深いはずだ。
 さらに、今回の作戦で、敵は前回とは別の攻撃を行っていないこともわかった。今回と前回。あの複数砲門からの業火以上の攻撃はない。メンバー達はそう断じる。煙が噴き出すほどに傷んでいるのに、対処がないことがその証拠だ。これ以上、敵に打つ手はないことを感じさせる。
 ……次こそは必ず。
 ケルベロス達はそう言い聞かせつつ、クルーザーを走らせてこの海域を後にするのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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