人馬宮突入~緋色の山茶花

作者:りん

●隙を窺うは……
 遠くの戦闘音を聞きながらケルベロスたちは静かに行動を開始していた。
 アグリム軍団との攻防はどうなっているだろうか。
 仲間たちの安否は気になるものの、彼らの任務は別の所にあった。
 人馬宮ガイセリウム内への侵入……それが彼らの役割だった。
 どうにかガイセリウムの周りを警戒しているヴァルキュリアたちの目を盗んで入り込めればと、隙を窺っていると、ふいにヴァルキュリアたちの動きが止まり……そして彼女たちは一斉にガイセリウムへと帰還を始めたのだ。
「今だ!」
 好機だった。
 ケルベロスたちは一気にガイセリウムの足へと走り、そしてザイフリート配下のヴァルキュリアから聞いていた点検用ダクト……4本の足のうちの一つに飛びつき、その中へと潜り込む。。
 それと時を同じくしてシャイターンたちがガイセリウムの周りを飛行し始めた。
 
●開始。
 どうやら間一髪、間に合ったようでケルベロスたちはほっと胸を撫で下ろす。
 しかし本番はここからだ。
 防衛戦での防衛が成功すれば、イグニス王子は失ったグラビティ・チェインをヴァルキュリアたちをコギトエルゴスム化させることで補うだろうと予測されていた。
 つまり、辺りを警戒させているヴァルキュリアが中に撤退し、新たにシャイターンが警戒に飛び立つまでの間がガイセリウム潜入のチャンスだったのだ。
「じゃあここからの行動だけど……」
 一人のケルベロスが声を潜めて改めて潜入した目的を確認する。
 目的はこのガイセリウムの中枢であり、ヴァルキュリアたちを操っているアスガルド神・ヴァナディースの暗殺だ。
 ヴァナディースを暗殺することができればガイセリウムの機能は30%が使用不可能となる。
 そうなれば一時的に、ではあるが、敵は大混乱に陥るだろう。
 ヴァナディースの暗殺を終えた後はその混乱に乗じて脱出する……それが今回の作戦だった。
「何とか、成功させよう」
 ケルベロスたちは静かに頷くと、移動を開始したのだった。
 
●緋色の忍者
「いいなー、アタシも行きたかったなぁ」
 ぷぅ、と頬を膨らませて螺旋忍軍の一人、螢火・山茶花はダクト内を歩いていた。
 外ではアグリム軍団がケルベロスたちと戦いを繰り広げているはずだ。
 殺伐とした空気、ぶつかり合う金属の音、流れる血……その様子を想像し、山茶花はぶるりと一つ身震いをした。
 一応こうして警戒するのもお仕事の一つだとわかってはいるが、先ほどは配下として任されていたヴァルキュリアたちをシャイターンがどうせ敵など来ないからと引き連れて行くし、山茶花は本当に暇を持て余していた。
 警戒くらい一人で大丈夫だろうと言われた山茶花は、まぁ確かにと納得しつつも、来てくれたら楽しいのにという気持ちを捨てきれず、ダクトの外へ向かって歩を進め……そしてある音を聞きつける。
 それは、山茶花が待ち望んでいたケルベロスの姿。
 相手はまだこちらに気付いていないようで、仲間たちと会話をしている。
 山茶花はにぃ、と唇の端を釣り上げると緋色の螺旋手裏剣を取り出したのだった。


参加者
ゼロアリエ・ハート(妄執のアイロニー・e00186)
アンノ・クラウンフェイス(ちっぽけな謎・e00468)
アシュヴィン・シュトゥルムフート(月夜に嗤う鬼・e00535)
シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)
泉明寺・綾(和殴折衷釘バッ娘・e03646)
リズナイト・レイスレィ(腹ペコエルフ・e08735)
ミュシカ・サタナキア(新城さんちの娘・e11439)
時雨・乱舞(サイボーグな忍者・e21095)

■リプレイ

●緋色の山茶花
 複雑な形状のダクトをケルベロスたちは出来る限りのスピードで移動していく。
 なるべく音をたてぬようにでっぱりに手足をかけて登って行けば、開けた場所にたどり着いた。
 どうやらここは足の可動部らしく、しっかりとした足場がある。
 安定した足場はあるものの、周りは乱雑としており遮蔽物も多い。
 ケルベロスたちは辺りを警戒しながら順にその足場へ乗り上げる。
 そして時雨・乱舞(サイボーグな忍者・e21095)が足場に手をかけた瞬間、それは飛んできた。
 真っ直ぐに乱舞へ向かう手裏剣の軌道に飛び出したのはミュシカ・サタナキア(新城さんちの娘・e11439)。
「っ!」
 緋色の手裏剣は彼女の腕を斬り裂いてその身に毒を残すと、一人の少女の手元に戻る。
「あー、惜しいっ! 腕一本くらい行けるかと思ったんだけどなー」
 ちぇー、と唇を尖らせるその少女……螢火・山茶花は幼い顔に似合わぬ台詞を吐き、ケルベロスたちに笑いかけた。
 その笑みに答えることなく、シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)はミュシカに風精の祝福を贈る。
 柔らかい風は彼女の傷を包み込んで癒すと、集中力を高めて行く。
 シルのその風が止む前にアンノ・クラウンフェイス(ちっぽけな謎・e00468)とアシュヴィン・シュトゥルムフート(月夜に嗤う鬼・e00535)が前に出る。
「女の子をイジめる趣味はないんだけど……」
「大人しくしててもらおうか」
 流星の煌めきを宿した蹴りが山茶花の身体を捉えて動きを鈍らせれば、ゼロアリエ・ハート(妄執のアイロニー・e00186)とミュシカはヒールドローンを展開し、ドローンの隙間を縫って泉明寺・綾(和殴折衷釘バッ娘・e03646)が放ったエネルギーの矢が山茶花の左肩に突き刺さった。
 それを待っていたのはリズナイト・レイスレィ(腹ペコエルフ・e08735)。
 変形させた惨殺ナイフはしっかりと山茶花の傷口を抉り、その動きを鈍らせていった。
 その間に乱舞は自分を庇ったミュシカの傷を回復していた。
「時雨、久しぶり! 会いたかったよォ」
「山茶花ァ……決着をつけるぞ!」
 両者の視線が絡み、そして二人は同時に笑みを零した。

 血飛沫が飛び、床を汚していく。
 山茶花の攻撃は一撃一撃が重かった。
 それぞれ傷の具合には気を使っているものの、じわじわと傷は増えていく。
 再び放たれた螺旋手裏剣が後衛に襲いかかる。
 ライドキャリバーのシラヌイが時雨を庇い姿を消せば、戻ってきた手裏剣を手に、山茶花はぷぅ、と頬を膨らませた。
「また外れちゃった。でも簡単に死んじゃ楽しくないから、これでいいのかなぁ?」
 心底残念そうに言う彼女の身体はすでに傷だらけではあるが戦意は全く衰えず、瞳は爛々と輝いている。
 消えたシラヌイにシルは回復が間に合わなかったことを悔やむが、回復手として彼女は精一杯のことをやっていた。
 彼女が狙うのは主に時雨。
 そしてその余波で彼の近くに居るシルとアンノにも手裏剣は飛んでくる。
 ディフェンダーのゼロアリエとミュシカ、そしてシラヌイがなるべく庇ってはくれたのだが、それでも庇いきれなかった攻撃は後衛の三人に浅くない傷を負わせていた。
 列を跨って怪我人が増えたことが、彼女の回復の判断を迷わせた原因だったろう。
 怪我の度合いを確認し、シルは霊力を帯びた紙兵を呼び出すと前衛二人を守るように飛ばせば、ミュシカは見下すような笑みを浮かべる。
「そんな程度なんですぅ?」
 山茶花の意識を惹きつけることが目的だったが、そう易々と挑発には乗ってくれない。
 そんな彼女に向かい、ゼロアリエのバスターライフルからエネルギー光弾が放たれた。
 エネルギー光弾は彼女の左足を捉え、そこに形成されるのはアンノの作り出した魔法領域。
「星喰らう影、天を蝕む黒き水泡、因果を捻じ曲げ、理を歪めよ」
 歪む空間にアシュヴィンの放った影の弾丸と綾の放った漆黒の巨大矢が飛び込み、山茶花の体を掠めて行く。
 吹き出る血に、山茶花の口が弧を描く。
「いい、すごく、楽しい!」
 心底楽しげに笑う山茶花にリズナイトの呼び出した邪龍の影がかぶりつく。
 ぶつり、と皮膚の裂ける音がして、さらに多くの血が流れ出すが、山茶花の表情は変わらなかった。
 怪我の具合から見るに倒れてもおかしくないのだが、彼女は楽しげに笑って時雨に向かって走り出す。
「ふふふ、楽しいね、時雨!」
 こうして命のギリギリで殺し合えるのは本当に楽しい。
 迎え撃つの時雨もまた、山茶花を楽しげな笑みを浮かべて迎え撃つ。
「来い、山茶花!」
 二つの影が交差し、一瞬の後に倒れたのは山茶花であった。
「……もっと、戦いたい、の……に……」
 崩れ落ちた体は赤い影となり、やがてその場から消えたのだった。

●共闘
 ヴァナディースがどのあたりに居るのかはわからないが、中枢である以上、中心部に居るはずだ。
「このまま中央に向おう」
 ゼロアリエの声に頷き、彼らは再びダクト内の移動を開始した。
 這うように狭い通路をどうにか抜けると、小部屋のような場所にたどり着く。
「行き止まりかな?」
「いや待て、ここから中が覗けるぞ」
 アンノの声にアシュヴィンが足元の鉄格子を指さす。自分たちが居るのはどうやらどこかの部屋の天井部分であるらしい。
 音を立てぬよう格子の隙間から中を見れば、広間の中央には台座に組み込まれた女性の姿が見えた。あれが女神ヴァナディースか。
 だとすればここが目的の部屋と見て間違いないだろう。
 部屋には虚ろな瞳をしたヴァルキュリアたちが集まっており、その数はぱっと見ただけでは数えきれない。
 操られているヴァルキュリアを台座の前に並べているのは4体のシャイターンだ。
 彼らはこちらに気付いた様子もなくヴァルキュリアを整列させると、ヴァナディースの目の前で次々とコギトエルゴスムに変えて行く。
 彼らの足元には無数のコギトエルゴスムが散らばっており、すでにかなりの数のヴァルキュリアがグラビティ・チェインにされたのだろう。
「酷いな……」
「早く助けてあげたいですぅ」
 様子を覗き見たゼロアリエとミュシカの手に力が入る。
 下の様子を見ながら他の三班と連絡を取り合っていたアシュヴィンは、床下の班に敵の配置を最後の班に伝達した後、全員の顔を見回した。
「各班、シャイターンを1体ずつやる。タイミングを合わせていくぞ」
 全ての班が揃い、カウントの声が聞こえてくる。
 それがゼロになった瞬間、綾は格子を力任せに蹴落としていた。
 ガコン、と格子が外れ、派手な音を立てて床に落ちる。
 それを追うように飛び降りれば、他の班の面々もほぼ同時にその広間に素たがを現していた。
 突然現れたケルベロスたちに、シャイターンは大いに慌てた。
 警備はどうした、アグリム軍団が向かったのではと口々に言いながら、彼らはヴァルキュリアたちを放置しケルベロスたちに背を向ける。
「よっしゃ、いっちょやったるか!」
「逃がしませんよ」
 言葉と共に綾とリズナイトは逃げる背中を追いかけた。

●女神ヴァナディース
 シャイターンを手早く倒し終えたケルベロスたちは、部屋の中央に視線を向ける。
 そこに居るのはこの作戦の最大の目的、女神ヴァナディース。
 下半身を中央の台座に埋め込まれた彼女は倒れたシャイターンに一瞥を向けた後、ケルベロスたちを見回した。
「あなた達がケルベロスですね。……だから、地球を侮るべきではありませんと言いましたのに」
 若干の含みを持たせた後半の台詞は倒されたシャイターンたちに向けた言葉だろうか。
 気になりはするがそれよりも大事なことがあると、ケルベロスたちは彼女に思いの丈をぶつけていく。
「私たちはヴァルキュリアを助けたいの!」
 シルはそう断言した上で、ヴァナディースと戦うことは本意ではないということを主張する。
 彼女に続き、アンノとリズナイトも言葉を尽くしていく。
「シャイターンとイグニスはヴァルキュリアを宝具で洗脳した挙句、捨て駒同然に扱っているんだ。
 それどころか同族のザイフリートくんでさえ暗殺しようとしたって事を伝えてその凶行を止めるために、貴女の力を貸してほしい」
「ヴァルキュリア達はまるで消耗品のように扱われ、心を踏みにじられているのではないですか?
 そしてそれを彼女達に強いらざるを得ない貴女の心も傷ついているのではないですか?
 この提案がケルベロスに利がある事は否定はしません。……ですが一人の人間として、見過ごしてはいけない事だと思っています」
 他の班の面々も自分たちと同じ気持ちで、出来る限り戦いは避けたいと口にした。
 ケルベロスたちの言葉をヴァナディースは静かに聞いていた。
 恐らくヴァナディースとしても争う意思はないのだろう。
 そのことを読み取ったミュシカはヴァナディースに疑問を投げかける。
「ニーベルングの指環を無効化したいんですぅ。できますかぁ?」
 ヴァルキュリアを無理やり操っているニーベルングの指環。
 それさえどうにかすれば、彼女たちは自分たちの意思で戦える。
 ミュシカの問いにヴァナディースは目を伏せ、
「ニーベルングの指環は、全盛期の神力で作成した宝具。ガイセリウムに繋がれた今のわたくしでは、それを無効化するような宝具を作ることはできません。
 ……また、ガイセリウムに繋がれたわたくしは、ガイセリウムが破壊されない限り、コギトエルゴスム化する事はありません。ガイセリウムが蓄えたグラビティ・チェインは、最優先にわたくしに供給されるので、もしわたくしがコギトエルゴスム化したとしても、すぐに、復活することでしょう。ガイセリウムを破壊せずに、わたくしを滅ぼすことが出来るのは、デウスエクスを滅ぼすケルベロスの力だけなのです」
 ヴァナディースを滅ぼすしかないと知り、ケルベロスたちの表情は曇る。
 定命化すれば……と問いかけるが彼らの言葉にヴァナディースはゆっくりと首を振る。
「わたくしは、この地球に来てまだ殆ど時が過ぎていません。
 人馬宮ガイセリウムがグラビティ・チェインを供給し続ける限り、ガイセリウムと繋がっているわたくしの定命化が始まる事は無いでしょう。
 仮に、定命化が始まったとしても、人馬宮ガイセリウムを1年も自由にさせては、地球自体が滅びてしまうかもしれません」
 確かに、この城を一年も自由にさせてしまえば、どうなるかわからない。
 ずっとガイセリウムだけを監視し続けられるのならばともかく、敵はエインヘリアルだけではない。
 助けたいのは本心だが、こればかりはどうしようもない。
「……ここで貴女を滅ぼした場合……どうなりますか」
 リズナイトの問いにヴァナディースは凪いだ瞳で答える。
「わたくしを滅ぼせば人馬宮ガイセリウムは、他の宮との連携能力を全て失い、ゲートへの帰還も不可能となります。そうなれば『第五王子イグニス』にとって、人馬宮ガイセリウムの価値は無くなるでしょう」
 ガイセリウムが止まる。
 それは喜ばしいことだったし、彼らケルベロスにとってはこの作戦の成功を意味する。
 ヴァナディースの言うように、彼女を滅ぼすことが一番早いのだろうが、乱舞はそれでは納得できない。
「私は前に依頼でシャイターンに操られたヴァルキュリアの皆さまと戦い、重傷を負いました……でも!
 そんな私よりも戦いたくもない彼女達の方が辛かったはずです。……ですが、あなたを殺すので、解決でいいんですか? 他にも方法はないのですか?」
 彼らだけでなく他の班の面々も他の方法はないのかと考えるが、いい案は浮かんでこずただ時間だけが過ぎて行く。
 監視として居たシャイターンは倒したものの、長く留まれば留まるほど敵に見つかる可能性も高くなる。
 見張りに立って居るメンバーがどうするのかと視線で問う。
 彼らの視線に応えたのはアンノ。
「……救う手段がないなら、ボクが殺すよ」
 それくらいの覚悟はしてきている。
 アンノの声に同意した数名が各班から名乗り出て、彼らはヴァナディースにグラビティをぶつけていく。
 ぐらりと、ヴァナディースの上半身が力なく揺れ、柔らかい光がその体を包み込む。
 彼女は最後の力を振り絞り、ケルベロスと、そしてヴァルキュリアたちに向かって声をかけた。
「人馬宮の楔からわたくしを解き放ってくれてありがとう。わたくしが死ねば、わたくしのこしらえた宝物もその力を失う……。
 ……ヴァルキュリア達よ、あなた達はもう自由です。あなた達が今、本当にしたい事を為しなさい……」
 ヴァナディースがゆっくりと瞳を閉じれば、その体は一瞬で花びらへと変わりひらひらと舞い落ち、消えたのだった。

●戦乙女たちの願い
 ヴァナディースが消え去り、代わりにヴァルキュリアたちの目に光が戻る。
 彼女たちは口々にケルベロスへの礼を述べると、こう言った。
「私達が血路を開き、シャイターン達の目をひきつけよう。その隙に、逃げおおせてくれ」
 監視としていたシャイターンは倒したものの、ヴァナディースによって供給されていたエネルギーはストップしている。
 異常を感じ取ったシャイターンたちがこの広間に来るのも時間の問題だろう。
 しかしそれを彼女たちだけで押しとどめるなど危険すぎる。
「一緒に逃げよ?!」
 綾の声にヴァルキュリアたちは首を振る。
 留まるという彼女たちに危険だと諭すものの、コギトエルゴスム化するだけで死にはしないと言われればゼロアリエとしても他に説得の手立てはない。
「でも……!」
「そんなに気にするならば、私達のコギトエルゴスムを、取り返してくれればそれで良い」
 女神は最後に、ヴァルキュリアたちに言ったのだ。
 したいことを為せと。
「これは、私たちの意志です。さあ!」
 どこかから声が聞こえ、足音がこの部屋へと向かっている。
 迷っている時間はなかった。
「……行こう。それが、彼女たちの願いだ」
 アシュヴィンの言葉をきっかけにケルベロスたちはヴァルキュリアたちの手を借りて先程出てきたダクトへ戻っていく。
 全員がダクトに入り込んだすぐ後、広間では戦闘が始まったのだろう。
 鋼がぶつかり合う音と怒号が聞こえてくる。
 ヴァルキュリアたちの無事を祈りながらケルベロスたちは走り出した。
 ずきりと治りきっていない傷が痛むが、立ち止まるわけには行かない。
 来た道を戻り山茶花と戦った場所まで出れば、自分たちについて来ていたヴァルキュリアたちが立ち止まる。
 聞こえてくるのはそしてシャイターンの声と足音。
 恐らく彼女たちは追ってきたシャイターンたちをここで足止めする気なのだろう。
「……助けに来てくれてありがとう。また、いつか会いましょう」
「うん、必ずまた……!」
 ヴァルキュリアの言葉を背に、ケルベロスたちはガイセリウムの外へと駆けたのだった。

作者:りん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月29日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 33/感動した 5/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。