凍てる秘色 二波

作者:志羽

●凍てる秘色
 頭上を走る、船の音。その音に秘色色の鱗もつ戦艦竜は瞳開け、視線向ける。
 それは戦艦竜にとっては自分の気を逆撫でするものに他ならない。心地よく過ごしていたというのに、この騒音。
 ゆるりと海中で踊るように身をくねらせ、戦艦竜はその腹にある砲身を向けた。
 放たれた砲弾は海中を進み、船を捕らえる。砲弾を受けた船はばらばらに砕け、海面を揺蕩うものとなる。

●予知
 ついこの前、情報を集めてきてもらった秘色色の鱗もつ戦艦竜が再び現れると夜浪・イチ(サキュバスのヘリオライダー・en0047)は集まったケルベロス達へと告げた。
 狐村・楓(闊達自在な螺旋演舞・e07283)さんの調査より城ヶ島の南の海にいた『戦艦竜』が相模湾で漁船などを襲い被害を出していることが判明し、退治が今、行われている。
 戦艦竜は城ヶ島の南の海を守護していたドラゴンで、体に戦艦のような装甲や砲塔があり、非常に高い戦闘力を持っている。数は多くはないが、非常に強力な相手だ。
「今回もクルーザーを用意したので戦艦竜と戦ってきてほしいんだけど」
 前回の戦いでダメージは負っているが、まだぴんぴんしており体力は半分以上残っている。相手に与えた、状態異常はすでに解けているようだ。
 強力な戦闘力と引き換えにダメージを自力で回復する事ができない為、一戦ずつのダメージは蓄積している。
 それを重ねていくことで、撃破できるはずなのだ。
「皆が持って帰ってくれた情報のおかげで、色々、対応できることもあると思うよ」
 先の戦いで判明したのは、複数めがけ放たれる氷柱の攻撃、毒をもつ牙での攻撃、そして腹の下にある砲身よりの砲撃だ。
 また、毒をもつ牙での攻撃を仕掛けるときは、頷くような、そんなそぶりを見せる癖がどうやらあるようだ。
 そして戦艦竜が自らのために作った氷上で戦う事ができたが、どうやら今回はそれがない。つまり海面、海中での戦いとなる。他にも、画像など持って帰ってくれたものはあとで見せるとイチは続けた。
「多分、視認したらすぐに攻撃仕掛けてくると思うから、クルーザーは今回……片道切符かな」
 おそらく、視界に入れば攻撃を仕掛けてくるだろう。
 戦艦竜は海中にいるようだが、頭上を走るものは攻撃対象だ。戦艦竜が海上に顔を出していたとしても、同じことだろう。
 また、前回は攻撃に重きを置いていたが今回もそうは限らないとイチは付け加える。
「戦艦竜は攻撃してくると迎撃する、って感じなんで戦闘始まれば撤退することはないよ。深追いもしてこないから、こっちが撤退すれば追いかけてくることもないよ」
 水中でも、いつもと変わらず動くことができ、攻撃の命中率や威力などはもちろん変わらない。
 前回、何も情報がない状態で向かい、三割程度相手の力を削いだ。それは十分な成果だとイチは言う。
「この戦艦竜との戦いは二度目だけど、まだ相手は十分余力を残してるから、今回も無理せず、次に繋げるための戦いをしてほしい」
 まだ、仕留められる状態ではないとイチは言う。
 けれど、攻撃重ねればいつかはその時が来るのだから、我慢も戦いだよと紡いだ。


参加者
獅子・泪生(鳴きつ・e00006)
ディバイド・エッジ(金剛破斬・e01263)
オレーナ・アーヴァイン(キュールプリンツェス・e03395)
時浦・零冶(幻鬼刀雷・e03656)
芳賀沼・我奴間(探求者・e04330)
ゼノア・クロイツェル(仰ぐ黒猫・e04597)
鏡月・空(蒼の弓兵及び刀剣士・e04902)

■リプレイ

●秘色と見え
 クルーザーは海を進んでゆく。この相模湾にいる戦艦竜の一体は、海中のどこから現れてもおかしくはなかった。
 そろそろかしら、とオレーナ・アーヴァイン(キュールプリンツェス・e03395)は持ち込んだビーチマットに空気を入れ始める。それらは後々、撤退する時の助けになればと持ち込んだものだ。他にも浮き具はクルーザーに積んであった。
 海での巨躯を持つドラゴンを襲撃か、とゼノア・クロイツェル(仰ぐ黒猫・e04597)は零す。
「中々に面白い舞台、楽しめそうだな」
 その言葉に高らかと響く声。
「はっはっはぁ、遂に竜を斬れる時が来ようとはな!」
 ディバイド・エッジ(金剛破斬・e01263)は快活に笑い声あげる。
 これから強敵と戦うが決して怯む事はない。
「任されよ任されよ、この金剛破斬が皆の盾となるで御座るよ、はっはっはぁ」
 その声を聴きながらシュリア・ハルツェンブッシュ(灰と骨・e01293)は海面、その下へと視線落とす。この下のどこかに、それはいるのだ。
「2戦目だな、秘色。次はもっと違った楽しみを味あわせてやるぜ」
 見えるのは二回目。先に戦った者達から色々と情報はもらっている。
 クルーザーの穂先近く、時浦・零冶(幻鬼刀雷・e03656)は警戒していた。
 予知されたポイントが近づく程に気を引き締まってゆく。
「竜との戦い……どんな時間になるかな」
 零冶は手にしていた懐中時計をコートに捻じ込みながら言葉零していた。
「また新たな情報を掴めれば、きっと次回役に立つし」
 そのあたりも意識しようと獅子・泪生(鳴きつ・e00006)は紡いで視線を海の中へ。
 すると、くるりと海の青が揺らぐのが見えた。
 それと共にクルーザーに走る衝撃と轟音。
 その衝撃が何なのかは――海中にいる戦艦竜から以外はない。
 クルーザーはその衝撃で破壊され、砕ける。積んでいた荷物の、浮き輪などは散らばって海の上へと浮かんでいた。
 クルーザーから投げ出され、ここからが本当の戦いだ。
「戦艦竜じゃな」
 いつぞやとは別の個体じゃが、あの強さはおぼえておるのじゃと、芳賀沼・我奴間(探求者・e04330)は海中に見える姿に零す。
 皆と話し合った防具が準備できず、心苦しいと我奴間は思っていた。
 けれどその身を包むのは日頃の愛用の防具。
「さて、このことが戦闘に影響が出ねばよいのがのう」
 今回の目的は戦闘継続、次に繋いでゆく事。だが、本音を言えば。
「わしの手で止めをさしたいが、後続に譲ってやるのじゃ」
 我奴間はチャームポイントの銀の髭揺らし、海中へ。
「いざ出撃ですわ」
 それに続くように、オレーナは言って息を吸い込み海中へ。
「……やれやれ、これは骨が折れそうだ」
 鏡月・空(蒼の弓兵及び刀剣士・e04902)はそう零し、ボクスドラゴンの蓮龍には、海上にいるように伝え、海中の竜を追う。
 ゆるりと、海中で動く影。それはわかりやすいものだ。
 ケルベロス達はその竜へと向かって潜った。

●海中での攻防
 竜は巨体くねらせて泳ぐ。海中に氷柱を生み出し、ケルベロス達へと放った。
 後列の三人の方へ向いていたその一柱をディバイドは受け止めた。己の為すべき事は攻撃役の者達を優先して庇い、敵に隙を与えぬよう立ち回る事と、思っている。
 それと同時に零冶も氷柱を代わりにうけていた。
(「……重さは伊達じゃないな」)
 受けた衝撃は重い。交差させた刃の二つから伝わる衝撃に零冶は紫色の瞳細め、改めてこの竜の力を感じ取っていた。
(「さぁ、……骨の髄まで楽しもうぜ?」)
 ニヤリと笑う。自慢の八重歯を見せつつ、シュリアはゆるりと泳ぎ、自分にとって有利な位置をとる。
 それはシュリアにとって、遊ぶ準備が整ったという事。
 後は楽しむだけだ。
(「中衛の役目とは本来は遊撃。前衛と後衛を繋ぐ柱じゃ」)
 ほんのわずかな綻びでも見つけたら即、フォローを念頭に我奴間は動く。
 陣形の維持は戦闘の基本と頭に置きながら、我奴間は半透明の御業を傍らに召喚する。
 その御業は炎弾を生み出し、そして放つ。
 炎は竜の身の上を這いまわり、じわじわと痛手を与えてゆく。
(「さあさあ、今度は泪生たちが相手だよ!」)
 少しでも多くのダメージを竜へ残せるように、泪生のやる事は皆のサポート。攻撃よりも、回復。
 泪生の縛霊手より離れ、水中をひらひらと泳ぐ紙兵は竜から受けた攻撃の影響を解けやすくする為のもの。
(「……外さんぞ、鈍重。 俺は狩る側、お前は狩られる側だ」)
 泪生からの恩恵、その一端を受けつつしなやかに身を海中で踊らせて、竜へ腕向ける。その袖口から鎖状のエネルギーが蛇の如く、飛び出した。
(「縛り、逃さず、絡みつけ」)
 音もなく海中を伸びたそれは竜の身に絡みつき、傷口へと神経毒を送る。皆の攻撃を受け、生まれた傷口より送り込まれるそれは竜の身の自由を一時でも奪うものだった。
(「倒しきれぬのは分かっておる。後に続く者達が、必ずや倒すで御座ろうよ」)
 その為の活路を切り開くヒトタチを――ディバイドが構えた空蝉丸、それは霊力によって万物を纏い刃と成す神秘の霊剣だ。その刃に纏う雷を持って、竜に繰り出す月はその身の鱗を削ぎ守り柔くするもの。
 海上では竜が近づけボクスブレスを吐いて蓮龍が牽制しと守りの姿勢で戦っていた。
 だが竜にとっては、海上の敵よりも海中の敵のほうが気に入らないらしい。
 空は海中を進み、武器に雷を乗せ、竜を攻撃する。鱗の一部を貫き、傷つけすぐはなれとヒットアンドアウェイ作戦。
 竜が泳ぐのは足下だ。海面近く、頭上を取るような位置を零冶は心がける。頭上を取るのは戦術の一つだ。
(「……さぁ仕掛けて来いよ」)
 足元の竜を見つめながら零冶は構える。己の、その記憶の地獄の炎を顕現しその掌で遊ばせた。
(「得意じゃないが、少しでも効果があれば……」)
 炎弾として零冶は飛ばす。水中で踊る炎が竜の上で生命力を奪い零冶の力としてゆく。その炎を嫌がるように、竜は身をくねらせる。
 感覚が増幅する。オレーナは自らを高め、その竜の様子をよく見るべく、視線向けた。
(「戦闘の中で見極めて行きましょう」)
 まだ戦いは始まったばかりと己に言い聞かせて。

●攻勢
 戦いは長い。竜が守りに身を置いていることもあり、一撃でぎりぎりまで追い込まれるということは無かった。だがそれでも、威力があることに変わりはない。
 泪生が癒し、それで間に合わないのなら自分で。
(「放つは一撃、見舞うは疾風、今こそ放とう金剛破斬!」)
 けれど今そうする必要はない。ディバイドは空蝉丸を構えた。
 この空蝉丸でしか、放つ事出来ぬ独自に編み出した機人剣技――金剛破斬剣。
 手首ごと高速で回転し、刀身に纏った風を霊力によって剣先に収束する。海中であれば、それは一層目に見えて明らか。水が渦を巻き集うのだ。
(「見るがいい、これが我が金剛破斬、我が一撃で御座る!」)
 それを裂帛の気合と共に放つ。金剛石すら穿つそれは竜の身を貫くように突き刺さる。竜は突き刺さる一撃に身をよがらせ、くるりと円を描くように泳ぎ態勢を立て直す。
 そして砲身をディバイドに向け、やり返すかのように放った。だがそれをディバイドは相殺し、打ち崩す。
 攻撃は重なり、敵の身にはいくつも傷がついている。敵の砲身を空は狙ったが、そこを爆破で破壊することはできなかった。けれど、その先程の攻撃は、竜にはしっかりと効いていた様子もあった。
(「さて、これでどうですか!!」)
 空が構えるのは、2メートルの弓。それを左手に召喚し、そして神殺しの伝承を持つ槍を右手に召喚した。
(「神は穿たれ、滅ぶ……さあ、終わりの刻です!!」)
 それは蒼く鋭い魔弾と変じ、竜の、空自身がつけた傷跡目がけ放たれた。その傷えぐり、穿つべく、貫くべく。
 水を切り突き刺さるそれは深く、竜の身に刺さる。
 その間に水中を泳ぎ、零冶は竜の身へと刃向けた。緩やかな弧を、その刃は描く。
(「その鱗、刃で削り取ってやるよ」)
 竜の身の上を滑る切っ先。切り裂く感覚はその手にあり、ダメージは与えられているのだと感じられた。
 まったく衰えは見えないが、ダメージは確実に募っているのだと。
 オレーナは援護するように弾丸をばらまく。だが竜はすい、とその弾丸を避けてしまった。格上相手、オレーナの命中率は半々といったところだった。
 そのかわす様を見て、シュリアは気付いた。
 竜は円を描くようにずっと泳いでいる。それはこちらの様子を伺いやすいからというのもあるのかもしれない。攻撃する時も一番間近なものを狙っているようだった。
 シュリアはおそらくやってくるろ思われるその先に、巨大な斧を振り上げ向かう。
(「いい加減、目がまわるんじゃねぇの?」)
 竜の頭上から、水を蹴って鼻先を狙う。くるりと身を回転させ、そこに落ちる攻撃。
 突然のことに竜は身構えとれず強烈な一撃がそこに入った。
 身をくねらせて踊るのは痛みをかわしきれないからだ。
 その様子に自然とシュリアの口端は上がる。戦う事は楽しい。戦闘狂というわけではないが、この時間に、空気に楽しみを抱くのがシュリアの常だ。
 その竜へと、さらに攻撃がかかる。
 我奴間の手にある九股のケルベロスチェイン、九尾の鞭が水を切り裂くように払われた。その一本ずつが伸び、竜の身を締め付けるようにとらえてゆく。締め上げられ、竜は苦しそうなそぶりをわずかに、見せた。
(「ふむ……御業のほうが相性よさそうじゃ」)
 同じ魔法、けれど敏捷と理力の違いがある。命中をみつつ、我奴間は次の攻撃を考えていた。
 竜との攻防、癒す術ない竜は傷を負うばかりだ。目に見えての衰えはまだないが、その身に与えられた傷は増えていた。攻撃し、動きを縛り、守り、そして癒しとそれぞれの役割はうまく機能している。
 そして首を振る、竜の動き。その様子は先の戦いで聞いていた情報だ。
(「ふわぁっ、毒牙だみんな避けてぇっ……!」)
 水中では声にならない。後方からその動きを目にした泪生は伝えようとするが届かない。
 ゼノアもその動きは理解していた。けれど、竜の動きは思ったより素早く完全にかわし切る事はできなかった。
 竜の牙はその身をかすりゼノアに痛みを残してゆく。そして毒は熱を持ち、ゆっくりと身体に染みようとしていた。
(「――水の音が奏でるままに」)
 水の精霊、オンディーヌの幻影が泪生の傍に。そして泪生が示した先、ゼノアへとオンディーヌは溜息を。
(「水の中ならオンディーヌだって負けないよ!」)
 清らかな癒しの滴を溜息に乗せてゼノアへと届く。
 先ほど受けた毒牙の一噛み。じくじくと傷口にある不快感がその滴で取り払われてゆく。
 ゼノアはその変化を感じながらオーラの弾丸を生み出し、放った。
(「鼠も猫を噛む様に、猫も竜を噛むとな。お前は噛まれるだけで済みそうにないが」)
 その攻撃は深く竜に喰い込んでいた。
 竜は海中をくるりと巡り、再び襲い掛かる。
 まだ十分に戦える余力があるうちは、誰も引くことはない。

●終わりはまだ
 守り厚い竜はなかなか体力を削らせてはくれない。けれど根気よく、その力を落としながら、動きを縛りながら向けた攻撃は確実に募っていた。
 けれど竜は強敵。まだ十分に戦う余力を持っていた。
 その逆に、ケルベロス側はその攻撃を何度も変わりに受け、皆を守っていた二人、ディバイドと零冶は戦いをこれ以上続行できない。
 ゼノアとオレーナと我奴間も限界は近かった。後列の三人はまだ余力はあるが、最初から半数倒れれば撤退と決めてある。
(「……そろそろ撤退も視野にいれる頃合いじゃな」)
 陣形もいびつになってきておると我奴間は思う。
(「まさにこの戦の正念場じゃ。 気合いを入れ直さねばなるまいて!」)
 竜よりの砲撃を我奴間は九股の、九尾の鞭にていなす。
(「そのような攻撃では、わしには掠りもせぬぞ?」)
 わしに当てたくば、1から修行をやりなおすべきじゃと我奴間は思いつつ、竜と相対する距離は保ったまま。
 そして撤退、それを思ったのは我奴間だけではなかった。泪生は周囲を見回し一度海面にあがり、逃げる方向を確認。
 浮き輪になんとか捕まっている二人へと撤退が近い事を告げる。
「必ずみんな共に帰ろう!」
 その声に、傷を負いながらもディバイドは笑み、零冶は頷き返した。
「潮時か……」
 まだ戦える身であれば殿を務めようと、そう零冶は考えていたがそれも今はできない。けれど、倒れるまで皆を庇い、その攻撃を受けたからこそ、長く戦いは続いたのは事実。
 水中では、牙向けられたオレーナがその一撃に倒れた。竜は噛み付きそのまま投げるように話す。その方向にいたシュリアは、彼女を受け止めて竜と距離を取った。
 戦い続ける事が難しいのは、明白だ。
 撤退の動きをみて、それぞれが動き始める。
「引き際を見極め、次に繋げるのも戦術の1つか……その首洗って待ってな」
 零冶は呟きを、海中の竜へ向ける。
 やがて竜からの攻撃は収まり、無事に戦闘圏外までケルベロス達は泳いで離れる事ができた。
 逃げようとしたところに加えられた攻撃は一度。氷柱の攻撃で狙われたのは後列の三人だが、なんとかそれを堪え戦う力がすでにない仲間つれて離れる事ができた。
 遠く、追う事をやめて一層深い場所へともぐりゆく竜。それは向かってこないのならば、もう用はないと言っているようだった。
 その姿をシュリアは仲間に手を貸しながら瞳の端に映していた。
(「楽しかったぜ、次は天国か地獄で会おう」)
 竜の姿はもう見えないが、またすぐに出会う日は訪れるはず。
 誰も失ってはいない。竜を倒せる見込みは、この戦いではまだなかいのだと知っていた。
 それでも、次に繋がる戦いであったことは明らかだ。けれど、次はおそらく手が届くと、戦い終わった誰もが思っていた。
「ふう、まあなんとかなりましたね」
 一安心と、海面に空が顔出せば、蓮龍が傍に。
「今回もしんどかったのう」
 じゃが次あたりにて、と我奴間は呟く。早く帰って次の戦の準備をせねばの、と。
 その言葉にゼノアは小さく頷いて、それよりもと零す。
「……冬の海は傷に沁みるな。早く陸に上がりたいもんだ」
 このままでは冷え続ける。陸へ連絡をとったので迎えはくるが、まだもう少しこのままだ。
「これにて一見落着、とはならんか。皆の衆ようやったで御座るな、はっはっはぁ!」
 その気持ちを感じてディバイドは笑う、冬の空を見上げながら。

作者:志羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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