多摩川防衛戦～移動要塞の恐怖

■リプレイ

●移動要塞の影
　八王子市に突如として現れた、巨大な巨大な移動要塞。
　四本脚で歩く巨大要塞から逃げ惑う一般人……其れを横目に、ケルベロス達は多摩川を背に、最終防衛戦を築いていた。
「あれか……巨大要塞は」
「ええ……なんて大きな要塞……あれが人馬宮ガイセリウムですか……」
　武田・克己（雷凰・e02613）とアシュレイ・クラウディ（白翼の騎士・e12781）が、目前の巨大移動要塞に呟く。
　遥かに大きな体躯は、威圧感に押しつぶされそうにもなる。
　でも……ケルベロス達が構える多摩川。
　ここを越えられてしまえば、大量の一般人達が被害に遭う事になる。
「歴史に残る大規模防衛戦か……生き残れるかね……？　いや、死にたいと言ってるわけじゃないぞ？」
　と、神楽坂・遊（揺蕩う未熟な自由意志・e02561）が言うと、克己、ガナッシュ・ランカース（マスター番長・e02563）、四之宮・徹（炎の刀剣士・e02660）が。
「そうだな、エインヘリアルの襲撃もあるんだろ？　それも強い奴らしい……こいつは楽しみだ。奴らを倒して、大将の所まで一気に攻め込ませて貰おうぜ！」
「うむ。わざわざ向こうから来てくれてるとは手間が省けるぞい。じゃがその前に、邪魔なもんを片付けんとの」
「そうだな。さて……全力で守り通して、そして勝って生きて帰るぞ。生きて帰らなければ、泣いてしまう人がいるからな……っ！」
　そう言いながら、バルムンクを抜刀する徹。
　そして他の仲間らも、同様に武器を構え、戦の準備。
　百花・白雪（真白の竜騎を継ぎしもの・e01319）、春華・桜花（シャドウエルフの降魔拳士・e00325）、チャチャ・クオン（断罪の剣・e09229）が。
「では……戦を始めましょうか」
「ええ。この戦い……護り切ってみせます……！」
「残虐なるものたちをこの先へ進ませる事は許しません。今迄の罪を清算してあげましょう」
　と、それぞれ気合いを入れる。
　……そんな仲間達の言葉に、アシュレイは。
「しかし……この防衛戦は、厳しい戦いになる事でしょうね……しかし、待つ人達がいる限り、無事に帰らなくては……仲間達を泣かせたくありませんからね」
　と、ぐっと拳を握りしめた。

●紅い戦人
　そして……時が来る。
「……一斉射撃、開始です！」「おうさ！！」
　居並ぶケルベロス達が、一斉に人馬宮ガイセリウムへとグラビティを叩き込む
　様々なグラビティ、大量のエフェクトがガイセリウムを包み込んでいく。
　……しかし、そのエフェクトが収まると、そこには……傷一つ無い、ガイセリウムの姿。
「……っ……これは、失敗したのでしょうか？」
　と、桜花が唇を噛みしめる……が、ガイセリウムの侵攻は止まる。
　そして、そのガイセリウムの中から、次々とエインヘリアルらが飛び出してくる。
　赤い、深紅の鎧のアグリム軍団が次々と、ケルベロス達の元へと飛来してくる。
　そんなアグリム軍団の一兵が射程に入るまで、じっと見据えるケルベロス。
　そのオーラは、明らかにケルベロス達を殺す意気込みが垣間見える。
　……しかし、決してそれに威圧される事無く。
「さあ、ガイセリウムにアグリム軍団、と……楽しめそうだ。俺を熱くしてくれよ」
　と、ニヤリ笑みを浮かべる克己に。
「……ともに、頑張りましょうね……シキ」
『ゥゥ……』
　軽く頭を撫でられ、唸りながら頷くオルトロスのシキ。
　……そして、アグリム軍団の一兵が、こちらへとターゲットを定め接近……遠隔射程に入った所で。
「先手必勝です！」
　と、桜花、チャチャ、遊がブレイブマインとフォートレスキャノンを叩き込む。
　先手の一撃を喰らったエインヘリアル。
　ただ、勢いは止まらずに、ケルベロス前に着地。
　その手のゾディアックソードを構え、威圧。
「っ……守護の力を……仲間を、傷つけさせませんよ！」
　と、早々にアシュレイが仲間の盾アップを付与するために、サークリットチェイン。
　更に白雪のボクスドラゴン、吹雪がボクスブレスを吹き放つと、シキも地獄の瘴気。
　サーヴァントの攻撃に続けて。
「さぁ……続けて参りましょう」
「ああ。これでも喰らえ！　伊達や酔狂でこいつを持ってる訳じゃないぞ！！」
　主人の白雪が月光斬の一閃を嗾けると、クラッシャーに属するガナッシュ、克己、徹も続いて、ドレインスラッシュ、月光斬、雷神突。
　そんなケルベロス達の先手の一巡が、確実にエインヘリアルの体力を削る。
　しかし、ケルベロスの攻撃が一巡した程度では、まだまだ全然堪えているような状態ではない。
　寧ろ……彼は、攻撃を受けて、その燃えたぎる血に、更に火が付いたようで……その手に持ったゾディアックソードで、一気に押し込んで来る。
　一撃一撃かなりの打撃。
　重い一撃を受け止める白雪。
「っ……！！」
　百花白雪が、ゾディアックブレードと交錯し、激しい火花が飛び散る。
　……しかし、勢いはエインヘリアルの方が上。剣戟の結果、白雪ははね飛ばされ、多摩川に。
「白雪さん、大丈夫？」
「ごほっ……だ、大丈夫です……この勢い、油断、なりませんね」
「ああ……そうだな。流石だぜ。だがよ、俺達だって負けらんねえんだ……絶対に此処は通さねえぜ！」
　桜花の言葉に頷きつつ、克己が威勢良い言葉で宣戦布告。
　……でも、エインヘリアルは、軽く笑った様な動きを見せると、一歩二歩の距離を取り、またゾディアックブレードを構えて、対峙。
「威力は高く、動きも素早い……これは中々歯応えのある相手の様じゃのう」
「ああ……だが、だからと言って退くわけには行かない。俺達の背中の先には……一般市民達が居るんだからな」
「うむ。さぁ、続けて行くとするかの」
　と短く会話を交わし、次の刻。
　相手の素早くも重い攻撃……下手に対応しようとすれば押し切られてしまいかねない。
　だから……ケルベロス達も、その勢いに負けぬよう、対峙。
　前衛、クラッシャーに配するガナッシュ、克己、徹は、とにかくエインヘリアルの体力を削る作戦。
「行くぜ、踏み込みの速さなら負けん！！！」
「この達人の一撃、受けて見ろ！」
「蔓草よ……奴を捉えるのじゃ」
　と、絶空斬、達人の一撃、ストラグルヴァインを立て続けに嗾けると、続くスナイパーのチャチャは足止め狙いのスターゲイザー。
　一方メディックの桜花、吹雪は、先ほど白雪が受けたダメージを、ウィッチオペレーションと属性インストールにて回復。
　そして……ディフェンダー陣は前線を上げ、エインヘリアルを囲むように陣を構える……そして、敵の攻撃を敢えて誘い込む様。
「何処を見ている！　貴様が見て良いのは、この俺だけだ！！」
「ええ……余所見なんてしている暇など無い位、仕掛けさせて戴きます」
　と遊、白雪が挑発しながら血襖斬りと、絶空斬。
　そんな仲間の一歩後ろから、アシュレイは。
「油断は禁物です……しっかり対策をしなくてはなりませんね……」
　と紙兵散布でＢＳ耐性を付与、そしてシキがパイロキネシスで炎のバッドステータスを付与する。
　……そして、挑発されたエインヘリアルは、ゾディアックソードをまた大きく構えた後、その剣の重さを利用した強力な一撃を叩き込む。
　……でも、その一撃は、ギリギリの所で攻撃を交わす。
『っ……！』
　悔しそうに舌打ちするエインヘリアル。
「ふん、どうした？　止まって見えるぜ？」
　と更に挑発し、ニヤリと笑う。
　……そして、その挑発に乗ったエインヘリアルは、ターゲットを完全に遊にシフトする。
「中々、頭に血が上りやすい性格の様ね」
「ええ……そうみたいですね。まぁ、その方がやりやすいと言えば遣りやすいですが」
　と桜花、チャチャが言葉を交わす。
　ターゲットが一人に向いて貰えれば、回復する方は楽になる。
　とは言えその攻撃の応酬は、桜花と吹雪の回復量を凌駕する事になる訳で……。
「っ……！」
　数撃は躱しつつも、一撃一撃の大きさに、次第に押されていく遊。
　援護するよう、仲間達からの攻撃……確実にエインヘリアルの体力は削れていくが、その勢いをも上回る、エインヘリアルの攻撃。
　……十数分の猛攻の後、遊の頭上から、エインヘリアルの一閃。
　その一閃に、遊の身体は地へと伏す。
「遊さん！」
　と白雪が声を掛けるが、手を上げるので精一杯。
　そんな仲間を護るよう、白雪がカバーリングで敵の前に構えていく。
　……エインヘリアルの身体には、たくさんの傷。
　最初に対峙した時のような身のこなしは、もはやかなり鈍っている状況。
「どうやら、おぬしもかなり響いている様じゃのう」
　とガナッシュが、その状況を鋭く察知した言葉を投げかけ、それに克己が。
「ああ……良し。それじゃあ一気に押し込んでいくぜ！」
「うむ」
　と克己とガナッシュ、徹が頷き合う。
　アシュレイが白雪の体力維持に、オラトリオヴェールを使用し、白雪はそれに軽く頭を下げつつの、ハングフィスト。
　そして、チャチャが断罪の剣でその足下を掬えば、シキがパイロキネシスの炎で燃やす。
　深紅の鎧が、炎に包まれる。
　それと共に、エインヘリアルは片膝からガクリ、と体勢を崩す。
　それが絶好のチャンスとばかりに、徹は背中より炎を噴出、翼の形となり、空へ飛翔……そして、作り出した炎を、上空から叩き込む無限の炎の剣製。
　合わせてガナッシュが、地上より破鎧衝で服破りを加えると。
「これが俺の、乾坤一擲の一撃だぁぁぁぁ！！」
　と克己が一刀の強力な一閃。
　その一閃は炎を斬り裂くと共に……エインヘリアルの身体も、一刀両断。
　炎に包まれたエインヘリアルは、言葉にならない絶叫と共に、崩壊した。

●祈りと共に
　そして……エインヘリアルをどうにか仕留めたケルベロス。
「さすがは、歴戦の戦士でしたわね……」
　と、軽く息を切らしているチャチャに、克己、ガナッシュ、徹、遊が。
「ああ、そうだ。風雅流１０００年。神名雷鳳。この名を継いだ者に、敗北は許されてないんだよ」
「とりあえず邪魔者は排除出来たの。さて、他の所はどうなったかのう？」
「そうだな。他の所での戦闘……どうなっているんだ？　いや……信じるしかないが……」
「……そうだな。まだ、戦闘が続いているところもあるみたいだ……皆、生き残ればいいが」
　まだまだ他の所からは、仲間達の戦う声、武器の音が聞こえてくる。
　しかし、加勢に行くには、流石に自分達の消耗の方が激しい……下手に加勢すれば、足手まといになりかねないだろう。
　と……そうしていると、そんな仲間達の間を駆け抜けていく仲間達。
　螺旋忍軍を仕留めるための突入作戦も、やっと始まる……そんな仲間達に。
「帰ってきたら、パーッと高いお酒で祝賀をあげるためにがんばってねー！！」
　と桜花が手を大きく振って、送り出す。
　そして……ガイセリウム内部に消えていく仲間を見送り終えると。
「……ゴホ、ごほっ」
　と軽く咳き込む白雪に、チャチャが。
「ん……大丈夫ですか？」
「ええ……大丈夫です。さて……ここに長居してても迷惑でしょう。私達は、一端離脱するとしましょうか」
「ええ……他の場所で戦う皆さんは心配ですが……無事、成功して帰ってきてくれる事を祈るとしましょう」
　アシュレイの言葉に皆、頷く。
　そして……傷を負った者へ肩を貸しながら、ケルベロス達は、多摩川を越えて、戦場を離脱していった。

作者：幾夜緋琉	重傷：神楽坂・遊（二心・e02561）  死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2016年1月22日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 1／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 1
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