多摩川防衛戦～真紅の戦士と巨大城

■リプレイ

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「これでもくらってください！」
　きらきら光るオレンジのドレスを身に纏ったルーチェ・プロキオン（魔法少女ぷりずむルーチェ・e04143）が魔法の閃光を、
「行くんだ、氷結の槍騎兵！」
　館花・詩月（咲杜の巫女・e03451）が召喚した氷の騎士を放つ。
　数百人のケルベロスたちが放った攻撃は、曇点を切り裂き巨大城――人馬宮ガイセリウムを襲い、爆炎に包まれる人馬宮ガイセリウム。
　やったか、と多摩川防衛に集まったケルベロスたちは、固唾をのみ見守る。
　しかし、やはり予想は当たる。
「無傷ですか……」
　村雨・ベル（エルフの錬金術師・e00811）は、全く傷のない人馬宮ガイセリウムを目に、感嘆にも似た表情を浮かべる。
　そして、人馬宮ガイセリウムから真紅の鎧に身を包んだ戦士たち――アグリム軍団が次々と現れる。
「魔法少女ウィスタリア！　シルフィ参上っす！」
　シルフィリアス・セレナーデ（魔法少女ウィスタリアシルフィ・e00583）は可愛くポーズを決める。
「これ以上の暴挙は許せませんし、私達で止めていけないとですね」
　カイム・リーヴェルト（シャドウエルフの刀剣士・e01291）が右手に斬霊刀を、左手にリボルバー銃を構え、柔らかい口調で言う。
「今回のエインヘリアルがどれほどのものか……この手で確認させてもらうぞ」
　八枚翼の天使――クオン・テンペスト（黒炎天使・e00165）は降りてくる、真紅の戦士を見据え言う。
「背水の陣……私たちは戦うだけ。シンプルでいい」
　グレタ・ヴェルサーチェ（壊れかけの聖女・e17375）は、身の丈以上ある鉄塊剣を抜き、その時を静かに待つ。
「赤き鎧魔アグリム、そしてその配下たち。ここで止めてガイセリウムごとご退場願いましょう！」」
　 メイド服に来た青年――リリキス・ロイヤラスト（庭園の桃色メイドさん・e01008）は、そう言うと地獄の焔を燃え滾らせる。
　そして、ここにアグリム軍団との死闘の幕が開かれるのだった。

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　悠々と余裕を見せるように、真紅の鎧に身を包んだアグリム軍団の戦士が舞い降りてくる。
「ここで止めるよ」
　それを見据えるグレタは全身を地獄の炎で覆い尽くし、
「やってきたっすね、まずは前哨戦といこうっすか」
　シルフィリアスは自身に電気ショックを放ち、各々が戦闘能力を高めアグリム軍団の到来を待つ。
「ケルベロスチェインよ、皆さんを護ってください」
　ベルが地面に展開させられたケルベロスチェインが、ケルベロスたちに守護を与える。
「余裕を見せていられるのもここまでです」
　と、カイムが影の弾丸を、
「突破されると大惨事、だね。これ以上は進ませないよ」
　詩月が召喚した騎士が、真紅の戦士の許へ、
「エインヘリアルの騎士が翻弄されるとは……やはりその程度なんだな」
　嘲笑混じりに、クオンが物質の時間を止める弾丸を、
「邪悪な意思を吹き飛ばす、正義の旋風！」
　ルーチェが両腕に内蔵された内蔵モーターを高速回転させ、二つの竜巻を起こし、真紅の戦士へと放つ。
　真紅の戦士はあえて避けない。ケルベロスたちが放った力をその身に受け、凌駕するために。
　これは戦闘をこよなく愛するアグリム軍団の性分なのかもしれない。
　体を浸食する影の弾丸が、その体の時間を止める弾丸が、次々に襲い掛かり、その間隙を縫うように氷の騎士が襲いかかる。そして、二つの竜巻が圧倒的な破壊を真紅の戦士にもたらす。
　しかし、平然と真紅の戦士はそれらを受け、大地へと降り立った。
「これならどうですか！」
　肉薄するリリキス。鎌に地獄の炎を纏わせ、真紅の戦士を斬りつける。しかし、そのリリキスの斬撃は鎧によりエインヘリアルには届かない。
　ニヤリっと不敵な笑みを浮かべ、次はこちらの番だ。と言わんばかりに、真紅の戦士が高々と宙を舞い、そしてその手に持つ斧を力の限り、クオンに振り下ろす。
　間一髪のところで、躱したクオン。斧の一撃を受けた地面はその衝撃に、抉れ、その一撃の破壊力を物語る。
　ただケルベロスたちは退くことはない。相手が強敵であることはわかっている。だが自分たちの後ろには、守るべき者たちが、街があるのだから。

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　同族からも畏怖されるアグリム軍団の戦士は、その実力をまざまざとケルベロスたちに見せつける。
　しかし、ケルベロスたちは一歩も退かない。
　真紅の戦士に肉薄したグレタが、鉄塊剣を力の限り振るう。重厚な鉄塊剣と、真紅の鎧がぶつかりその衝撃で真紅の戦士の体が揺らぐ。
　二撃目を放とうとするグレタ。それよりも早く斧が光輝き、グレタを襲う。
「攻撃したときに隙ができるっす」
「シルフィちゃんの言う通りです」
　シルフィリアスが、ライトニングロッドをクルクルと回し、ポーズを決めると態勢整わぬ真紅の戦士に雷を迸らせ、雷とともにルーチェが爆炎の魔力が籠った弾丸を連射する。
　弾幕が晴れるとともに駆け込むのは、詩月とカイム。
「ここで止めるよ」
「行きます」
　詩月の炎を纏った激しい蹴りが、カイムの雷の魔力を宿した神速の突きが真紅の戦士に突き刺さる。
　動きの止まったカイムを、必殺の一撃が襲う。
「やらせません」
　リリキスにより投げられた鎌は、斧を握る真紅の戦士の腕を跳ね上げリリキスの手へと戻り、空いた脇腹にクオンが非物質化した斬霊刀での一撃を見舞う。
　そして、出来た一瞬の隙に二人はその場から飛び退く。
「大丈夫ですか、今、治します」
　ベルが斧の一撃を受けたグレタに魔法の木の葉をまとわせ、その傷を癒す。
　真紅の戦士の動きが止まる。それは、あまりにも不気味で、ケルベロスたちは一度態勢を整える。
「グレタさん、傷は大丈夫ですか？」
「ベルに治してもらった。だから大丈夫」
　カイムの問いかけに、グレタが答える。
「アグリム軍団、さすがに強いですね」
　リリキスが苦々しそうに言う。
「でも、僕たちの攻撃は効いてるみたいだよ」
　詩月が真紅の戦士を指さすと、
「あちしもわかった。あの鎧――」
「ヒビが入ってきてますね」
　シルフィリアスとルーチェが言う。
　ケルベロスたちの耳に不気味な笑い声が届き、その笑い声は次第に大きなる。笑い声を上げているのは真紅の戦士だ。
　力をこそ全てのアグリム軍団にとって、強者との戦闘ほど心躍るものはない。
　それも自分と互角の戦闘を繰り広げ、あまつさせアグリム軍団を象徴する鎧にヒビをいれるほどの強者と出会えたのだ。
　心が躍って仕方ない。
　真紅の戦士は斧の柄を握り、感触を確かめるとゆっくりを構えをとる。
「お喋りはここまでだな」　
　クオンの言葉に、ケルベロスたちの顔が一段と引き締まる。
「皆さん、来ます」
　ベルの声とともに、真紅の戦士がケルベロス目掛け突撃を駆けるのだった。

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　突進してくる真紅の戦士は、その巨体からは想像できない速度でケルベロスたちに肉薄する。
　両手に持たれた斧が、シルフィリアスに向け振り下ろされる。その一撃に誰よりも早く反応したのは詩月。
「シルフィリアス！」
　強引にシルフィリアスを突き飛ばし、割って入る。
　しかし割って入るので限界。
　振り下ろされた斧が詩月の両肩を切り裂き、鮮血が巻き上がる。
　力なく膝を着く詩月に、止めとばかり真紅の戦士が光輝く斧を振りかざす。
「させません」
　ルーチェが真紅の戦士の懐に飛び込む。
　ルーチェの電光石火の蹴りが、真紅の戦士の急所を貫き、あまりの激痛に一瞬動きを止める。
　その隙にベルが詩月の許に駆け寄る。
「これは本当に不味いです」
　詩月の両肩の傷を魔術切開し、強引に手術を始めるベル。しかし、その姿はあまりにも無防備。
　凶刃がベルへと標的を変える。
「詩月さんをよくも……これでもくらえっすー！」
　シルフィリアスがマジカルロッドに膨大な魔力を集め、エネルギーの塊を真紅の戦士へと放つ。
　真紅の戦士はエネルギーの塊を斧で受ける。が、その巨体は衝撃により後方に吹き飛ぶ。
「砲戦、用意。全力で潰すよ。全砲門、開け！　全弾あげるよ、おつりはいらない!!」
　シスター服を脱ぎ捨てたグレタは、重武装形態となり体中に内蔵された火器、アームドフォート、ガトリングガンの一斉射を行う。
　そのあまりの火力に大地が揺れ、辺りは灰燼とかす。
　しかし、真紅の戦士は健在。
　そこに駆けるカイム、クオン、リリキス。カイムは右、クオンは左、リリキスは正面だ。
「私の本気、見せてあげるよっ！　……絶影・双激乱舞っ！」
「避けられるなら避けてみせろ……」
「地獄の紫焔にて、貴方を焼き払い、葬り……その存在ごと奪って差し上げましょう！
　カイムが跳躍し、それを迎え撃とうと斧を振り上げた真紅の戦士の無防備になった胴を、リリキスが見逃さない。
　リリキスは、紫色の焔を纏わせた鉄塊剣で胴を薙ぎ払う。そのあまりにも重い一撃と喪失感に、顔をしかめ膝を折った真紅の戦士の頭上から、カイムの刃が襲う。
　しかし、カイムの刃は寸前のところで空を斬る。が、着地したカイムは胴に一閃を加える。次いで、クオンが両手に持った刀の連撃を放つ。
　真紅の戦士は、それを右手に持つ斧でかろうじて捌くが、何合か打ち合う中、カイムの至近距離から銃の連射によりその均衡は崩れ、クオンの連撃が真紅の戦士を捉える。
　ケルベロスたちの攻撃により、真紅の鎧は砕かれ、真紅の戦士は致命的なまでのダメージを受けた。
　だが、倒れない。
　その眼には闘志が宿り、斧を持つ手には今まで以上に力が籠る。
「村雨ベルの名において眼鏡に問う！　答えよ、そは何ぞ！」
　突如、暗闇が真紅の戦士を覆い、浮かび上がるのは眼鏡と狂気すら覚える生暖かい笑顔。
　真紅の戦士を取り囲んだ、それらは問う。『お前は眼鏡だな、眼鏡っ漢だな？　眼鏡っ娘だろう』と。
　真紅の戦士が答えようとした瞬間、襲う閃光。
　そして、閃光の先に真紅の戦士が目にしたのは、自分が倒したはずの詩月の姿。
「玲瓏たる輝きとて照覧せよ我が氷刃。その魂散るが如く閃きを」
　舞うように詩月は真紅の戦士へ、刃を振るう。苦し紛れに振るわれる斧をひらりと躱し、刃を返す。
　舞が終わりを、迎えるとともに真紅の戦士の命の灯も消えるのだった。

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　戦いを終えたケルベロスたちは傷も癒えぬまま、多摩川の防衛線から後退していた。
　実際のところはケルベロス優位。後退の必要はないのだが、これも作戦。
　第五王子イグニスにケルベロスが敗れ、後退を開始したと思わせるためのだ。
　そして、今、人馬宮ガイセリウムには突入部隊のケルベロスたちが潜入している頃だろう。
　撤退するケルベロスたちは『この暴挙を企てたイグニスを絶対に倒してくれ』と、思いを託し、傷ついた体を引きずり後退するのだった。

作者：缶屋	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2016年1月22日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 5／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 0
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