多摩川防衛戦~赤き者よ

作者:真鴨子規

●人馬宮ガイセリウム、侵攻
 巨大な存在というものは、ただそこにあるだけで恐怖を刻み込む。
 直径300メートル、全高30メートルの巨大な城塞が、その巨体を揺るがし侵攻していた。
 その光景を目撃した市民たちは、蜘蛛の子を散らしたように逃げ始めた。まだ距離はある、だというのに視界を汚染するその巨大な影に、本能的な恐れを抱いたのだ。
 遠くへ。ほんの少しでもいい、遠くへ。でなければ踏み潰されるか、周囲を飛び交うヴァルキュリアたちに殺されてしまうから。
 そうして逃げ惑う人々を睥睨する赤い影が、人馬宮ガイセリウムから降り立つのだった。

●勝利を掴め
「ケルベロス諸君、集まってくれてありがとう。早速だが悪い知らせだ。八王子の焦土地帯に、人馬宮『ガイセリウム』が出現した」
 ガイセリウムと言えば、巨蟹宮『ビフレスト』と並び、かのエインヘリアル第一王子が語った魔導神殿群ヴァルハラ12神殿の1つだ。そんなものが突如現れたという事態に、ケルベロスたちは驚きを禁じ得なかった。
 説明を続ける宵闇・きぃ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0067)は、ケルベロスたちの緊張した表情を満足げに見渡してから頷いた。
「ガイセリウムは出現地点から東京都心部に向けて進軍している。進路上の一般人の避難は進んでいるが、完了しているのは多摩川までの地域だ。それ以降は、敵の進路が確定していないため、遅れている。どこへ逃げればいいか分からないからね。このままでは、都心部はガイセリウムによって壊滅してしまうだろう」
 一般人をどこかへ逃がしたところで、その避難所を襲撃されては意味がないのだ。これを防ぐためには、避難が完了した多摩川までの地域で、敵の侵攻を阻止するしか方法はない。
「首謀者はエインヘリアル第五王子イグニス。目的はザイフリート王子の殺害とグラビティ・チェインの奪取。そして、シャイターン襲撃を阻止したケルベロスへの報復。こんな作戦に出るとは、かの王子は相当にお冠ということだね」
 困ったものだと、きぃは溜息を吐いてみせる。
「ガイセリウムを動かすためには、多量のグラビティ・チェインが必要だと思われる。先のシャイターン襲撃を君たちが阻止したおかげで、充分なグラビティ・チェインの蓄えはないはずだが、人間の虐殺が始まれば問題にならない」
 自給自足が成立した時点で敗北は確定だ。なんとしてでも阻止しなければならない。
「君たちに託す任務は2つだ。1つ目、まず多摩川を背にして布陣し、全軍のグラビティ一斉射撃でガイセリウムを消耗させること。2つ目は、ケルベロスを排除すべく現れるエインヘリアルの軍勢『アグリム軍団』を撃退すること。これらの任務によって、ガイセリウム攻略作戦の口火を切る訳だね」
 Vサインを突き出して、きぃは茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべた。
「『アグリム軍団』――その残虐さからエインヘリアルの中でも異端とされるアグリムと、その配下のエインヘリアルで構成される者たちだ。連携を嫌う反面、個としての強さは折り紙付きだ。君たちの戦うことになるだろう配下相手でさえ、8人のケルベロスが力を合わせても勝てる保証はない」
 達成難易度は決して低くはないということか。
「しかし私は、諸君ならば勝利してくれると確信している。必ずやかの暴虐王子の蛮行を食い止めてくれるとね。
 さあ、いざ発とう。この事件の命運は、君たちに握られた!」


参加者
イグナス・エクエス(怒れる獄炎・e01025)
浅川・恭介(萼開く・e01367)
西水・祥空(クロームロータス・e01423)
ビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339)
香坂・雪斗(スノードロップ・e04791)
タニア・サングリアル(全力少女は立ち止まらない・e07895)
鏑木・郁(傷だらけのヒーロー・e15512)
ドラーオ・ワシカナ(採点が渋い・e19926)

■リプレイ

●ガイセリウム
 巨大な建造物が歩を進めているのが見えた。それは悪魔的な、というようでもあり、神話的な、というような情景のようでもあった。常軌を逸した景色。神か悪魔か、人知を超えた何某かの意向が働いたかのような、そんな光景であった。
 人馬宮『ガイセリウム』によって太陽の遮られた地域は、昼夜が逆転したかのように暗く沈んでいた。その多くは焦土地帯だったが、すでに幾らかは、健在の市街地に及ぼうとしていた。
 その夜が、近づいてくる。
 断続的に聞こえてくる地鳴り。揺れる大地。
 移動を続ける闇の先には、隆々と流れる多摩川。
 その川を背に、実に500を超えるケルベロスたちが布陣していた。

「ひゃー。こーんな大事になるなんて、ほんとビックリだよね」
 並び立つケルベロス――もちろんその全てが視界に収まる訳ではないが――を眺めながら、タニア・サングリアル(全力少女は立ち止まらない・e07895)は歓声を上げた。背中の小さな羽を元気に動かしながら、興奮したように頬を桃色に染めていた。
「そして、あれがガイセリウムですか。無駄に邪魔ですね。とっとと落としましょう」
 押し寄せる人馬宮を前に、テレビウム『安田さん』を従えた浅川・恭介(萼開く・e01367)が意気を高めた。この班の最年少である彼は、しかしこの場の誰にも劣らぬ意志でここに立っていた。
 安田さんもまた、恭介の前に仁王立ちし、巨大な人馬宮に対する負けん気を露わにしている。
「焦るなよ、恭介。今回はアレを食い止めるまでが任務だ」
 諭すように、黒衣のドラゴニアン――ビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339)が言った。大戦を前に興奮を隠せない者も多い中で、ビーツーは落ち着き払った態度で佇んでいた。
「相手は強敵やけど、大丈夫、俺らならできる。ここから先は一歩も進ませへんよ。絶対に、守り抜いてみせる」
 香坂・雪斗(スノードロップ・e04791)は幾らか緊張の面持ちで、それでも胸を張った。凜と咲く柊の花が、その心境を表しているようだった。
「しかし、こうも派手に攻めてきおるとは、敵さんは随分とこちらを舐めておるようじゃな。あのでかい足を掬ってやるわ」
 顎に手をやり、ドラーオ・ワシカナ(採点が渋い・e19926)は自信ありげに笑みを浮かべた。その片手には望遠鏡があり、侵攻するガイセリウムを監視していた。
 この距離で判断できることは多くないが――敵が出入りする場所と言えば、正面の雄大な城門だろうか。
「そうだとも。敵の侵攻はなんとしても食い止める。例え強敵だろうと、俺たちなら絶対に負けない」
 真っ直ぐに城を見つめ、鏑木・郁(傷だらけのヒーロー・e15512)は拳を握る。その視線は、踏み潰される焦土の地にあった。
「そろそろ時間です。皆さん、準備はよろしいですか?」
 時計から目を離し、西水・祥空(クロームロータス・e01423)はそう周囲に呼び掛けた。
 鋭く光るその瞳が辺りを見渡し、全員の頷く姿をしかと映した。
「もちろん万全だ。相手が何であろうと焼き尽くしてやるッ! イグニッション!」
 声を高く張り上げるイグナス・エクエス(怒れる獄炎・e01025)。その右腕に炎を宿し、その指先で人馬宮ガイセリウムを指し示す。
 その動作につられるように、全員が視線をガイセリウムへと集中させる。神妙な面持ちで、あるいは好戦的な笑みで。なおも接近する人馬宮へと、意識を集めたのだった。

●一斉攻撃
 それはさながら流星群のような砲撃だった。
 多摩川に沿って布陣した全ケルベロスからの遠距離攻撃が、散り散りの線状の閃光として、ガイセリウムへと降り注ぎ始めたのだった。
「さあ、俺たちも続こう」
 言いながら、郁は掌を城へと向け、その手を握り潰す。その動作で、遙か遠いガイセリウムの一角を爆散させた。
「この花を、キミへ。――もたらされるのは、『希望』でも『慰め』でもないけれど」
 雪斗は手にしたペーパーナイフを握り締めながら、『春告ノ花』の詠唱を口にする。光が束となりスノードロップの花弁に変じると、そのままガイセリウムへと奔った。
 続けて、タニアのフレイムグリード、ビーツーの殺神ウイルス、祥空のフォートレスキャノン、恭介のペトリフィケイション、そしてイグナスのコアブラスターが追従する。幾筋もの光線が弧を描き、ガイセリウムへと迫っていく。
「やぁ! やぁ! 祭りだ祭り龍のお祭り! 手拍子口笛囃し合い、飲み食い騒げ、飛び吠え歌え! 湧きたて湧きたて観衆よ、共に騒ごう龍のお祭り!」
 川から間欠泉が吹き出し、溢れ出た蒸気が白の竜頭を形作る。
 ドラーオの『蒸気龍の祭典(スチームドラゴンカルナバル)』が、一団の最後の一筋として殺到する。
 数百人規模にまで至ったケルベロスたちによって一斉に放たれた攻撃は、次々とガイセリウムに直撃し、幾つもの爆発を生み出した。
 轟音と共に、凄まじい風圧が返ってくる。
「どうだッ!」
 腕で風から目を守りながら、イグナスは叫んだ。
「……! これは」
 靄が晴れていき、ガイセリウムが再びその姿を現す。
 標的を注視していた祥空は思わず一歩退いた。
 ――まったくの無傷。
 ガイセリウムは、この場から確認できる範囲ではあるが、一切の欠損を見せなかった。超人たるケルベロス500人以上の攻撃を受けてなお、である。
「いや、しかし……止まったのではないか?」
 ビーツーが目を凝らして言う。
 確かに、先程まで続いていたガイセリウムの進軍が止まっているように見えた。
「流石に疲れちゃったのですよ、きっと」
「ああ、恐らく」
 タニアの言葉を郁が受け継ぐ。
「こちらの攻撃を相殺するのに、グラビティ・チェインを大量に消費したんだろう。見た目では大した損害はないようだが、消耗はさせられた、はず」
「ならいいんですが。……いや、待ってください、何か出てきました」
 恭介が指差す先で、ガイセリウムに変化が生じていた。
 城門が、開いた。かと思えば、その隙間から幾つもの赤い輝きが零れ落ちた。
「――アグリム軍団!」
 何人かの声が重なる。
 遠目でまだ個体の判別はできないが、間違いない。
 人馬宮ガイセリウムを守護する群雄、残虐なる敵将アグリムの手勢である。
「数は?」
 ドラーオの問いかけに、祥空が応える。
「10、20……最低でも50は下りませんね」
 その実、70を超える赤い軍勢が、多摩川沿いに座すケルベロスたちに迫りつつあった。

●双斧のグレイムア
「ここを突破させてたまるかよ! 食い止めるぜ」
 イグナスの身体がぶれる。『加速幻影(アクセラレーションファントム)』による超速化――莫大な熱量の放出に空気が燃える。
「安田さん。みんなをよろしくね」
 親指を立てる動作をする安田さんを前に、恭介は補助の構えを取った。強敵を相手に、自分は支援に徹する腹積もりだ。
「グレイムアはどいつだ!」
「正面右! 斧2本持っとる奴や!」
 ビーツーと雪斗の掛け合いで、この班のターゲットが絞られる。
 アグリム軍団の証である赤色甲冑を身に纏う偉丈夫。
 左右の手に身の丈ほどの巨大な斧を携えている。右は鎧と同じ赤、左は夜闇のような黒、どちらも禍々しい装甲を備えた魔具であるように見える。
 その姿――こちらへ一直線に向かい飛ぶ赤き者が、自分たちの戦う敵なのだと認識する。
「これより私の権限において、あなたを投獄します」
 祥空が『グラビティプリズン』によって先手を取る。
 グラビティ・チェインによって作られた封鎖領域に敵を閉じ込める技で、敵の機動力を削ぐ算段か。確かに幾らか、敵の速力を殺したようだった。
「そこだ! 先制――もらう!」
 郁が一気に距離を詰め、ブラックスライムの顎(アギト)を突きつける。敵を正面から捉えたその攻撃とまったく同時に、ビーツーと雪斗の蹴撃が左右から挟み込んだ。
 グレイムアを襲うのは、示し合わせた完璧な挟撃であった。機動力を足止めされた状態で回避できる連撃ではない。
(「とった――!」)
 そんな確信さえ抱く郁を前にして――
 時間は極限まで収縮し、コマ送りのような一瞬を垣間見るほどに感覚が研ぎ澄まされる。
 ――グレイムアは、確かに口にした。
「小賢しい羽虫どもが」
 突如、黒い風が吹き荒ぶ。発生源は、黒い斧か。その中心に刻まれた単眼の意匠から生まれた風力が逆巻いて、雪斗たちに不意打ちを行ったのだ。
 接近していた3人の攻撃が相殺され、弾き飛ばされる。だから彼らは、何かしらの攻撃をされたのだと考えたのだが。
「――弱き者どもよ」
 グレイムアが双斧を上下に構える。2つの斧の不吉な瞳が怪しげな輝きを放ち、紫色のレーザーとなって後衛全体を襲ったのだった。
「ぐ――! ボクス!」
 ビーツーが自らのボクスドラゴンに身振りで防御の指示を飛ばす。だが間に合わない。後衛は攻撃をほぼ直撃で受け、次の攻撃へ移ることさえできない状態になった。
「誰1人としてやらせはしない! ――その輝きは夜明けを告げるッ!」
 恭介がオラトリオヴェールを全開する『えーおーす・ふぉりうむ・ふろーりす』で回復にあたる。
 それでも回復量が足りない中で、最もダメージ量の多いと見えたドラーオにタニアが駆け寄る。
「大丈夫ですかっ!? 今治すのですよっ!」
 秘中の秘『パナケアの秘薬(ヒールゼリー)』を惜しみなく塗し、ドラーオの傷を癒やす。
 それを、グレイムアは冷たい瞳で見つめていた。
「ヌシは何故イグニスに従うのじゃ! 何を思うて戦い、何に喜び、何に悲しむ!」
 塞がった直後の傷跡を撫でつけながら、ドラーオが問いかける。
「愚問なり。我が戦いは、我が双斧が戦を求めるが故にある」
 重苦しく低い声でグレイムアは言って、その斧を振り下ろすのだった。

●証を刻め
 1つ。
 2つ。
 異形の斧が振るわれるたび、空間がねじ曲がり、大気が悲鳴を上げる。
 3つ。
 4つ。
 真っ向から振り下ろされた斧を、タニアが鉄塊剣で防ぐ。150センチに満たない小さな身体が数メートル弾き飛ばされる。ガードは間に合った、だというのにそれを通り越して与えられるダメージが尋常ではない。
 グレイムアのポジションはメディックである。それは終始変わりない。メディックの特性は3つ、回復量の増加、キュアとブレイクの付与、それだけのはずだ。だが、その双斧の破壊力は、攻撃力を倍加するクラッシャーのそれと比べても遜色ないように思える。それほどに、グレイムアの攻撃性能は桁が外れていた。
 しかし、ケルベロスとて防戦一方というわけではない。
「グレイムア――!」
 ビーツーの騒音刃。けたたましいモーター音と共に斬り付けるチェーンソー剣の一撃が、グレイムアの脇腹の装甲を削る。
「絶対――! 倒したるッ!」
 鎧の胴体へ雪斗のルーンディバイドが叩き付けられる。
 押し退けられ、グレイムアの両足が地面を噛む。
「はっ。どれだけ傷付こうが、最後に立っていた方が――」
 勝者なのだと。覇気を吐く郁のレゾナンスグリードが敵に食らい付く。
「止まれ――!」
 祥空のグラビティプリズンがグレイムアを拘束する。
 重力の鎖に絡め取られた敵は、ついに片膝を付いた。
「侮るな――番犬風情が!」
 斧の双眼から発せられる光線――『クラキヒトミ』の範囲攻撃が、またも後列を襲う。
「安田さん!」
「ボクスッ!」
 攻撃を肩代わりしたサーヴァントが次々と消滅していく。
「まだじゃ! 倒れるにはまだ早い!」
「大丈夫――まだやれる!」
 ドラーオと恭介が目一杯の回復を施す。攻撃も防衛も全力だ。全力でなければ、一息で飲み込まれると分かるから。
「ここは絶対! 抜かせないのですよ!」
 懐に入り込んだタニアがデストロイブレイドの一撃を見舞う。双斧で防がれたその攻撃も無意味ではない。
 グレイムアが苛立たしげに斧でタニアを振り払う。その隙を――傷だらけの赤い鎧が曝け出されたその一瞬を――!
「オオオオオッ!」
 知らず絶叫するビーツーの渾身の『炎礫射撃(ガイザーショット)』――灼熱の礫が突き上げる。
 くぐもった呻きが敵から漏れ出す。
「お、のれ、この程度で……!」
「ここは退きません!」
「みんなを守るために――!」
 すかさず祥空のフォートレスキャノンが、雪斗の『春告ノ花』が、敵を正確に狙い撃つ。
「一気に刺し貫く――!」
 バスターライフルに装備されたブラックスライムで穿つ『地獄の寄生木(ブレイズ・オブ・ミストルティン)』を放つ郁。
 その魔槍が敵の装甲を貫き、血潮が飛ぶ。
「ぐっ……! ガァァァァッ!」
 黒い風がグレイムアを覆い始める――だがその目前で、イグナスが飛翔する。
「これが俺のアクセラレーションファントムッ! そしてこの一撃で――」
 その身は残像を残すほどのスピードで加速を続け、グレイムアに肉薄し――
「焼き尽くすッ!」
 イグナスの右脚に怒れる獄炎を纏い、全身全霊の一撃を見舞った。
 穿たれた傷口に叩き込まれた蹴撃によって、赤い鎧に次々と亀裂が入っていく。
 黒い風が霧散する。
 金属の砕ける音と共に、乾いた笑い声が、ぞっとするような響きで鳴った。
 振り上げられる赤い斧。
 全力を賭した攻勢を耐えきられたのかと、ケルベロスたちは驚愕のうちに身構える。
 次の瞬間振り下ろされるだろうと予見された一撃は、しかし――
「見事――」
 赤の鎧は粉々に打ち砕かれ、崩壊していった。
 その中にあるはずの本体は既になく、後に残された物は、粉砕された赤き鎧だけだった。
「勝った……?」
 恭介がうわごとのように呟いた。
 接戦であった故に、疑問符が湧くのも詮無きことだが、それでも。
 敵将グレイムアとの戦いにケルベロスが勝利したことは、紛れもない事実だった。
「――ならば、ここは退こうぞ。皆、存外平気な顔をしておるが、とても継戦できる状態ではあるまい」
 ドラーオの言葉通り、全員が満身創痍であった。あのままグレイムアが戦いを続行していたら、負けていたのはこちら側だったかも知れない。
 各々が足を引き摺りながら撤退していく中で、タニアがガイセリウムに一瞥をくれる。
 人馬宮ガイセリウム、そして第五王子イグニスの思惑は、必ずや阻止してみせると。
 この場にいた数百のケルベロスの意志を、代弁するかのように。

作者:真鴨子規 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 11/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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