多摩川防衛戦~崩せ紅鎧の波

作者:緒石イナ

 踏み出した一歩ごとに、大地が揺れる。
 杭打機がおもちゃに見えるほど巨大な脚の行く先にあった不運なビルは、砂の城を手で崩すがごとく無残に粉砕された。
 その巨体は夏の積乱雲より暗い影を東京都八王子市に落としながら、破壊を振りまき、進む。
 断続的な小地震が起きるたびにほうぼうへ避難する市民たちは、心を端々からやすりで削り取られる恐怖を味わった。足元が揺れているのか、それとも自身の足が震えているのかもわからないまま、謎の動く巨大要塞が視界に入らなくなるまでの長い退避路をたどっていたのだった。
 高尾山方面へと逃げた市民たちも例外ではない。あの恐ろしい動く城から一刻も早く遠ざかりたい一心で、ゆるやかに傾斜する道路を黙々と足早に歩いていた。
「ろぼっとぉ、ろぼっとー!」
 何も知らない小さな子供が、父親の背中できゃっきゃと手を叩いた。
「もうちょっとだからな。静かないい子でいるん――」
 我が子をねぎらおうと、背後を振り返ったのがいけなかった。彼は見てしまったのだ。
 四本の脚で進む構造物。秋のスズメバチのように威嚇的に飛び回る、見知らぬ侵略者。それらが今まさに踏みにじり、黒煙を、火の手をあげさせているその地点は、彼ら一家が暮らしていたところだった。
 
「お集まりっすか、みなさん!」
 ケルベロスたちの前に現れた黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)は息を切らし、手に持ったファイルから紙切れが落ちていくのも構わず矢継ぎ早に話し始めた。
「エインヘリアル第一王子からタレコミのあった情報はみなさんもうご存じっすね。連中、さっそく動き始めたみたいなんす――アレっすよ、人馬宮ガイセリウム! 例の移動要塞が、さっそく東京に現れやがったんすよ!」
 人馬宮ガイセリウムは都心へ向けて進軍を開始している。迎撃して進攻をやめさせようにも、ガイセリウムの周囲はヴァルキュリアの軍勢が警戒を強めている。彼女らに気づかれれば、要塞を護るエインヘリアル隊『アグリム軍団』が差し向けられてしまうという。うかつな接近はかえって危険なのだ。
「ガイセリウムを動かしたのは、エインヘリアルの第五王子イグニスみたいっす。奴さんときたら、第一王子の暗殺を邪魔されておかんむりなんすよ。だから、直々に第一王子を手にかけたうえでケルベロスさんたちへ報復し、さらにグラビティ・チェインを奪っていこうって魂胆なんすね。まったく、信じられねえ身勝手っすよ!」
 ガイセリウムの進路に住む市民へは、緊急避難勧告が通達されている。ただし、あくまで進路が予知できる範囲内の話だ。もしも、ガイセリウムの進攻を止められず、予知の範囲を外れた東京都心部――具体的には、多摩川以東の都心部へ侵入を許せばどうなるか。予想のつかない、壊滅的な被害をこうむるに違いない。
 そんな暴挙を許してはならないものの、さきの話を聞くに、ガイセリウムには接近さえままならない状態なのではないか。そんな疑問に先んじて答えるように、ダンテは説明を進める。
「大丈夫、皆さんに勝ち目のない戦いはぜってーさせねえっすから。というのも、いまのガイセリウムには十分な力を発揮するだけのグラビティ・チェインが足りてないみたいなんすよ。きっと、このまえシャイターンを送り出したのは、ガイセリウムを動かすグラビティ・チェインを確保させるためだったんすね」
 しかし、知ってのとおり、シャイターンによる襲撃事件はケルベロスたちが阻止している。彼らはグラビティ・チェインを持ち帰ることなく撤退していった。その一件が、強力無比な移動要塞に瑕疵を生じさせたのだ。すると、第五王子イグニスの目標は自明だ――周辺市街の襲撃、そしてグラビティ・チェインの回収が第一の行動となる。都心部襲撃はその次の段階だ。
「出現地点である八王子市への避難勧告が済んでいる以上、ガイセリウムは間近な人口密集地を狙うはずっす――つまりそれが、多摩川対岸。皆さんには多摩川を背にする形で配置してもらって、ガイセリウムへ数百人がかりの一斉射撃を試みるっす!」
 ただし、ガイセリウムの守りを突破するには、この攻撃でもまだ不足。それなのに一斉射撃を決行するのは、ガイセリウムに残存するグラビティ・チェインでこの攻撃を相殺させるためだ。ただでさえグラビティ・チェインの不足にあえぐ中でのこの防御行動は、敵にとってあまりに手痛い浪費となるだろう。
「もちろん連中だって黙ってないっす。ガイセリウムの防衛部隊『アグリム軍団』のお出ましってわけっすね」
 ガイセリウムを封じても、アグリム軍団に多摩川を越えられてしまえば、やはりグラビティ・チェインの略奪は避けられない。しかし、逆に軍団を撃退することができれば、そこに残るのは丸腰に近いガイセリウムだ。ガイセリウムへの突入作戦を決行する、またとない機会を得ることができる。
「つまり、ガイセリウムから出てくるアグリム軍団の撃退が作戦の第一段階なんす。軍団長は、四百年前も地球で暴れまわってたエインヘリアル・アグリム。あまりの残虐さに同属からも疎まれるような奴っす。そんな奴の軍団っすから、団員もそろって作戦なんていらない、命令も聞かない、己の力がすべてって感じの荒くれ者の軍団っす」
 連携を嫌い、己の腕だけを頼りに戦う軍団。それだけに、個々の戦闘能力は粒ぞろいだ。全員が深紅の鎧でそろえた暴虐の軍団が並び立つさまは、まさに戦禍の象徴。きっと、第五王子イグニスが地球進攻のために呼び寄せた切り札のひとつが彼らなのだ。
「楽に勝てる相手じゃないことは確かっす。でもみなさんなら、ここで連中の出鼻を叩き折って、地球がダテじゃないってことを思い知らせてやれるって信じてるっす!」
 ダンテは力強く目の前のケルベロスたちを鼓舞し、ヘリオンを多摩川へと向かわせるのだった。


参加者
生明・穣(鏡匣守人・e00256)
望月・巌(鍛冶師・e00281)
テオドール・クス(渡り風・e01835)
伏見・万(万獣の檻・e02075)
嘉神・陽治(武闘派ドクター・e06574)
ミオ・リリエンタール(拳で語る独国産大和撫子・e09678)
八島・トロノイ(あなたの街のお医者さん・e16946)

■リプレイ

●裂ける大気
 その日、ケルベロスの大軍勢が多摩川の堤に降り立った。実に五百を超える視線はすべて、ある一点に注がれている。林立する住宅街のあいだに見え隠れする、巨大移動要塞・人馬宮ガイセリウム。進路上の建造物を四本の脚で踏みしだき、突き崩し……とうとう、その巨体をあらわにした。多摩川流域の開けた視界を前に、ガイセリウムを出迎えたのは――低く垂れこめた雲をも引き裂かんばかりのグラビティ集中砲火!
「壮観だな、こいつは!」
 ベルナドットの白い毛皮をなでながら、八島・トロノイ(あなたの街のお医者さん・e16946)はひゅうと口笛を吹いた。弱敵ならば跡形も残らないほどの一斉射撃だ。たとえ相手が要塞の名に偽りのない鉄壁を誇るとしても、歩みを止めさせるには十分。
「参りましょう。この場を、私たちの背中を守りきるために」
 彼らの背負う多摩川の対岸には、日本有数の人口密度を誇る東京都心部が広がる。みずから動き・考え・戦う防波堤となるべく集った彼らが保有し、いままさに襲い来る敵にない力――それを体現すべく、生明・穣(鏡匣守人・e00256)は仲間たちへ向けて手を差し出した。
「いっちょ暴れてきてやらァ。後ろは任せたぜ」
 伏見・万(万獣の檻・e02075)は好戦的な笑みを浮かべながら黒い毛皮の腕をのばし、
「よろしくお願いします。勝利の女神が、私たちにほほえまんことを」
 ミオ・リリエンタール(拳で語る独国産大和撫子・e09678)は手袋を脱いで握手に応じる。ウイングキャットのネロと藍華も、尻尾をよせあって挨拶を交わした。
 その時、サラフディーン・リリエンタール(蒼き大鷲・e04202)がすっと手を挙げて仲間たちの注意をうながす。静止した要塞を周回する衛兵の背に黒光りする翼があることを、猛禽の瞳がとらえたのだ。護衛役はヴァルキュリアだったはずだが、いまシャイターンに交代したのか。ならば、迎えうつべきアグリム軍団も砦を発っているにちがいない。
「意気軒昂、大いによし! 俺たち八人の連携戦、見せつけてやろうや!」
 激励の一声とともに、望月・巌(鍛冶師・e00281)が一歩進み出る。「負ける気がしないね、こいつは」
 その隣に嘉神・陽治(武闘派ドクター・e06574)も並び立ち、ともに戦う面々を見渡した。勝手知ったる仲である巌や穣をはじめ、だれもが強い絆を力に変える戦士たちだ。
 最前線を務める者たちが次々と前へ踏み出していく。そのなかで、テオドール・クス(渡り風・e01835)の存在をふと肩の後ろに感じ、サラフディーンはそっと呟いた。
「この間のプロポーズのことは……考えておいてくれ」
 一方のテオドールは、そんなことをいま言うかと小突きたくなる気持ちを抑え、
「わかってるっ……! ちょっと待てって!」
 と、あくまで冷静さを装う。そして思うことは――答えを告げるためにも、この死線を越えて未来を迎えなければという、強い覚悟。
「兄さん……私が一緒に住んでいると邪魔とか思っていない?」
 ミオがいたずらっぽくこっそり耳打ちする間にも、敵が疾走する地響きが近づいてきている。
 そして、八人が固唾をのむ中、彼らが臨む街路の交差点。信号機が音を立てて吹き飛び、道路標識が小枝のように宙を舞った。
「ケェエルベロォオスゥゥゥウウ!!」
 歓喜に満ちた咆哮とともに、深紅の星霊甲冑が姿を現したのだ。
 
●震える大地
「ハァーッハァアア! 会えて嬉しいぜ、俺の敵ッ!」
 交差点を曲がって走るザイドラの拳にはすでに、覇気の塊が極限まで密度を高めていた。出会い頭に拳を離れた気咬弾は電線を焼き切り、ブロック塀を削り取り、ケルベロスめがけて殺到する。
「待ちに待った出撃命令なんだ、楽しませてくれ、なあ!」
 炸裂、閃光。爆発的に解放されたオーラの威力が河川敷のアスファルトに大穴を開け、虹色の煙を吹きあがらせた。
 ……虹色?
 ザイドラがいぶかしむよりも速く、ミオのハートクエイクアローが煙を裂いて飛来し、鎧の上で弾けた。さらに一人、また一人と最前線を受け持った者たちが果敢に煙を抜けてくる。
「茹で蟹みてーな鎧しやがって、頭ン中まで茹だってンじゃねェだろうなァ!」
 万の旋刃脚が鎧の間隙をえぐるさまを見下ろし、ザイドラはまた片眉を吊り上げる。さきの攻撃の狙いはこのウェアライダーであり、たしかに直撃したはずだ。それにしては、いささか威勢がよすぎるのではないか?
 疑問は煙の霧散とともに氷解した。彼を迎撃しに来た八人と三匹の中に、白衣の男が二人。
「さっそくこいつの出番とはな、まったく、やってくれやがる!」
 叩き割られた瓶の破片を一蹴し、トロノイは並走するもう一人の医師――陽治を一瞥した。千切れかけた白衣の一部を苦々しげににらみながら、フレームごとひしゃげた眼鏡をぐいと押し上げている。気咬弾が炸裂する直前、彼はとっさに万を押しやって矢面に立ったのだ。
「なんてことはねえよ。おかげで助かったぜ」
 生業が同じだとグラビティの発想も似るのかもしれない。嗤う小瓶と強化丸弾、ふたつの発煙薬が混じりあって生まれたのが、あの珍妙な虹色の煙だ。ただでさえ副作用が心配な薬を、別の薬品と併用してしまったが……ふとよぎった心配事を振り払い、陽治は目の前の敵を毅然と見上げる。
「なるほど、それが貴様らの集団戦……強者に群がる弱者の発想!」
 ザイドラの声に邪悪な嘲笑がにじむ。その一言一句を文字通り切り捨てんばかりの勢いで、巌は日本刀を振り抜いた。
「余裕こいてちゃいけねえ……オタクはそいつに負けるんだよ、俺たちの結束の力にな!」
「それをこの両腕でねじ伏せてこそ、アグリム軍団・頭蓋断ちのザイドラよ!」
 月光斬の狙いが腱の切断と見るや、ザイドラは巨躯の重量を思わせない機敏さで飛びすさる。その時すでに、穣が練り上げた魔力の奔流は背後に回り込んでいた。
「小賢しい、抜け目ない敵どもよ!」
 丸太のような剛腕の一振りが間一髪で急所への直撃をさえぎったものの、刺すような冷気がじわりと鎧の下に忍び込む。
「弱者の発想、結構です。それが貴方を凌駕して余りある力になるのですから」
 油断なく敵を見すえながらも、穣は口元に不敵な笑みをたたえていた。
 
●頭蓋断ち
 火花散る接戦の地に、ときおり稲光がほとばしる。戦禍に招かれた雷ではない。サラフディーンが操る賦活の電撃だ。最前線を俯瞰できる立ち位置から敵味方の余力を推し量ろうとめまぐるしく動く蒼い両目が、不意に見開かれた。
「ミオ!」
 日常では聞くことのない兄の鬼気迫る一声に、傾いた電信柱を駆け上るミオは弾かれたように急ブレーキを踏む。まさにその瞬間、彼女のほんの数歩前を音速の拳が通過していった。
「なっ――」
 警告が一瞬でも遅れれば、あの破滅的な威力が直撃していただろう。しかし、肝を冷やしている暇はない。拳に砕かれた足場からひらりと飛び降り、次の一撃のために瓦礫を蹴りだし進む。
「貴様の頭、ちょうどいい高さにあったんだがなあ! 盛大に砕いてやれたのに……残念だったな、女ァ!」
 おもちゃで遊ぶ子供のように笑いながら戦っていたザイドラが、ここにきて始めて苛立ちをあらわにした。頭蓋砕きを妨害されたせいか。それとも、弱敵に消耗させられていることを自覚しはじめたせいか。きっと両方だろうとだれもが感づいた。
 手厚く数を備えた前線維持に、トロノイがばらまく小瓶が頑強さを加える。ザイドラの攻撃は直撃すれば体幹ごと砕かれそうな破壊力を持つものの、狙える対象は一度に一人。最前線と後方支援が双方ともにリカバリ手段を備えることで、狙われたひとりを再起させられる。これらの策が、強大な敵と互角に渡り合うだけの力となっているのだ。
「こいつッ、ミオに手ぇ上げたな!」
「アタマをカチ割られンのはテメェだぜェ! さぞ不味い蟹味噌が詰まってンだろうなァ、テメェのアタマには!」
 壁を蹴って高く飛んだテオドールは首筋めがけてナイフを振り下ろし、全身をバネにして撃ち放った万の掌拳は顎を揺らしにかかる。それでもなお、圧倒的優勢には遠い。
「ああ、さっきは本当に惜しかったなァ……あの優男、あいつが邪魔だなア!」
 無尽蔵にも思われるザイドラのバトルオーラが一点に凝縮し、拳を離れた。天を走る光球は、最前線のケルベロスたちのはるか頭上を走り、炸裂。オーラの奔流が吹き飛ばしたのは、サラフディーンその人だった。怒り任せの八つ当たりばかりではない。支援、連携、作戦……アグリム軍団が忌み嫌う戦い方の象徴、彼こそが後方支援の要だと悟ったうえで、明確な意志をもって狙い撃ったのだ。
「サラフ……サラフ?」
 砂埃の向こうを見つめるテオドールの表情が一瞬白くなったかと思えば、みるみるうちに血の気が逆上していく。膨れ上がった怒りがカチカチと奥歯を鳴らしはじめたころ。
「テオ。前に集中しろ」
 二本の脚で砕けた道路を踏みしめる長躯。その一言はあくまで冷静で、未だ力強い。愛すべき人が小さくうなずいて前線に戻っていくのを見届け、彼は改めて上体を支える両ひざに力を込めた。
 
●引き波
「ここが正念場だ! 気ィ張っていくぞ!」
 降りかかった電線を乱暴に振り払い、トロノイは喉が割れんばかりに叫ぶ。主人に負けじとベルナドットもせいいっぱいの遠吠えで仲間たちを鼓舞した。
 後方が重点的に狙われはじめたことを機に、中衛の彼もウィッチオペレーションをふるっていた。前線の盾を受け持った藍華とネロは力尽きたものの、支援手段はまだ残されている。とはいえ、戦いが長期化して不利を引くのはこちらのほうだ。対するザイドラも、気力をためて態勢を整える頻度を減らしつつある。手数の多い妨害効果の前には気休めの回復などジリ貧を招くだけ、ならば敵の頭数を減らすべきだと考えたのだろう。
「貴様らァ……いい加減、つまらねえ!」
 思うようにいかない焦燥感、そして、うっすらと頭をよぎり始めた死という未知の恐怖。この二つが、数々の戦場を渡り歩き、頭蓋断ちという異名さえほしいままにしたザイドラの動きから精彩を奪っていた。
「この期に及んで、まだ娯楽のつもりか……笑止! 俺達はケルベロス! お前は地獄の番犬に睨まれた獲物でしかないと知れ!」
 息絶え絶えながらも戦意いまだ健在なサラフディーンへの反論がてら、苦しまぎれに撃ちだされた何度目かのオーラ。その射線を大の字の人影が遮った。全身を打ち据える衝撃も、白衣が焼き切れるのも、ひしゃげた眼鏡がついにねじ切れて吹き飛んでいくのも、陽治は顧みない。ただ、敵へと殺到していく仲間たちの背中へ吠えた。
「今だ、ぶちかませ!」
 パァン。
 乾いた空気が破裂したような軽快な打撃音は、ミオの目にもとまらぬコンボアーツが決まった証。
「ネロ様の無念のぶんまで、身をもって味わいなさい!」
 擦り切れた手袋、折れたブーツのヒール、そして砕け散った深紅の破片が空で錐もみ回転する。その破片たちを、紫色の翼と漆黒の毛皮が弾き飛ばした。
「オレたちの世界から出ていけッ!」
「ブッ潰れろォオオ! 茹で蟹ィイイッ!」
 気合一閃、万とテオドールがほぼゼロ距離から叩き込んだのは、いままで手を焼かされた気咬弾。自身の得意技をもってして、深紅の巨体は大地に叩き伏せられたのだ。
 ザイドラは、なんとか上半身を起こしかけた。しかし、それもままならなかった。動きかけた胸の上に、男二人の脚が全体重をかけたからだ。無残にひび割れた兜の上に、巌の銃口と穣の剣先がつきつけられる。
「…………」
 この構図には覚えがある、それなのに、なんということか。これでは、立場が反対ではないか――。
「懺悔は済んだか? 因果応報だな、あばよ」
 頭蓋断ちの名を持つ一人のエインヘリアルは、皮肉にも、何十何百もの敵に下してきた処刑方法で絶命したのだった。

作者:緒石イナ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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