暴かれた禁忌の恋慕

作者:塩田多弾砲

 とある女子校の、放課後。
「……あんたの愛って……」
 場所は、生徒会会議室。
 そこに突然現れた黒コートの『少女』は、手にした鍵と言葉で、一人佇んでいた生徒会副会長……恩田那奈の心臓を穿っていた。
「……気持ち悪くて、壊したくなるわ」
『気持ち悪い』、そう言われる事は予想していたが、実際に言われると胸が、心が更に抉られる。
 那奈の脳裏に浮かぶは、生徒会副書記の後輩……梅原優海。
 那奈は言葉少なで、やや厳しめの顔をしている。そのため、よく誤解されていたが……。優海は別だった。彼女を怖がらず、最初から普通に接してくれた。
 そんな優海に心惹かれた那奈は、彼女に対し親切に接し、次第に特別な想いを抱くように。優海がいつも楽しく幸せそうなら、何も見返りは要らない。女の子同士だし、何より優海には既に恋人がいる。当然、優海も那奈の想いなど気づいてはいない。
 けど……隠していた那奈の諦めきれない気持ちを、目前の『少女』は晒してしまった。
「でも、触るのも嫌。だから……」
『自分で、壊してしまいなさい』と告げる少女の声。意識が遠のき、那奈は崩れ落ちる。
 そして、優海……ツインテールの髪型を持つ、美少女の姿を模したドリームイーターが、那奈の傍らに現れていた。
「それで、那奈さんの通う学校やその周辺地域で……ツインテールの髪型をした少女を殺そう……という事件を起こさんと企んでいるようです」
 その犯人は『陽影』という名のドリームイーターらしい。ヘリオライダー、セリカ・リュミエールが君たちへとそう告げる。
 見返りのない、無償の愛を注いでいる人が、ドリームイーターにより愛を奪われてしまう事件が起こる、というのだ。
「おそらくは……ドリームイーターは被害者に最も近しい、そして親しい人間を最初に襲うものと思われます。その姿がツインの髪型の少女を模しているため、同じ髪型の少女をまずは最初に狙うでしょうね」
 放課後の学校ゆえ、すぐには被害者は出ないだろう。しかし……校外に出たらどんな悲劇が起こるか、想像に難くない。
「愛を奪われる被害者を、これ以上増やさないためにもこのドリームイーターを倒さねばなりません。もしも倒せば……那奈さんは目を覚ましてくれるでしょう」
 このドリームイーター……仮称『ツインテール』が徘徊しているのは、住宅地を見下ろす位置にある女子校。
 坂を上った場所にあるため、住宅地からは若干離れている。そして、裏側は雑木林が茂る小さな丘。仮に校内で交戦したとしても、住宅街の人々を巻き込む可能性は低い。
「ドリームイーター『ツインテール』は……その髪をモザイクに変形させて、それを武器として攻撃するようですね。ツインテールを振り回し、モザイクにして飛ばしたり、相手を包み込んで攻撃したり、時には体ごと回転させてプロペラのように斬撃を放つ事もできるようです」
 その姿は、『胸部にモザイクがついた、ぬいぐるみのようにデフォルメされた姿の女の子』だという。
 そして、人の少ない放課後の校内ゆえか、まだ犠牲者は出ていない。すぐに駆けつけて、囮になるなどして誘き出せれば、被害を出す前に倒す事ができるかもしれない……と、セリカは付け加えた。
「……『陽影』は、那奈さんの言い出せない気持ちを利用して、恐ろしい怪物を作り出しました。人の心を弄び、そして命すら弄ぶ。……これは、『邪悪』以外の何物でもありません。この『邪悪』を叩き潰したいと願うなら、すぐに参加をお願いします」
 静かな怒りをにじませ、セリカは君たちへとそう言った。


参加者
烏夜小路・華檻(夜を纏う・e00420)
リスティ・アクアボトル(ファニーロジャー・e00938)
ジゼル・クラウン(ルチルクォーツ・e01651)
久瀬・彰人(地球人のガンスリンガー・e04430)
イリュジオン・フリュイデファンデ(堕落へ誘う蛇・e19541)
ヴォルフラム・アルトマイア(ラストスタンド・e20318)
メイセン・ホークフェザー(この声は呪のために・e21367)
八方結・環(高潔なる血脈・e22002)

■リプレイ

●いざ、学び舎という名の花園へ
「やれやれ……」と、久瀬・彰人(地球人のガンスリンガー・e04430)は何度かの溜息をついた。
 今回の仕事の舞台は、女子校。加えて、今回の仕事仲間は自分を除き皆女性。未知の場所にこうやって居るのは、少しばかり居心地が良くない。
 だが、彰人の視線の先にいる八方結・環(高潔なる血脈・e22002)、長い黒髪が美しいドワーフの美少女はそうではなさそうだった。通学の体験が無い彼女にとって、学校という場所は彰人同様に未知の場所。であるのに、彼女は物おじせず、記憶に焼き付けんとばかりにあちこちに視線を向けている。
 そしてそのたびに、ツインテールに結んだ長く美しい黒髪が愛らしく揺れる。
「ふむ……短い髪の、童の時以来じゃのう」
 そうつぶやく彼女の側に居る、他の五人の仲間たち。彼女たちもまた、同様に髪の毛を両側頭部に結んだツインテール姿に。
「うふふっ、似合ってましてよ。お人形さんみたいですわ」
 清楚にも妖艶にも見える、学校の制服に身を包んだサキュバスの美少女。
 彼女の名は、烏夜小路・華檻(夜を纏う・e00420)。長い黒髪と豊かな胸が醸し出す雰囲気は、どこか『学内で人気の女子生徒会長』を思わせる。
「……あら、いかがしまして?」
「いえ。ちょっと、この歳でこの髪は、些か、その……」
 イリュジオン・フリュイデファンデ(堕落へ誘う蛇・e19541)。華檻と同じサキュバスだが、対照的に恥ずかしげな様子。
 その側には、彼女のビハインド・長髪の美少女姿のイヴ。彼女またも、今は主人と同じくツインテール姿。
「あら、恥ずかしがる事はないですわ。とってもお似合いでしてよ」
「ああ。少なくとも私より似合っているな。髪も長いし、髪質もいい感じだ」
 と、華檻に続きイリュジオンに語り掛けるは、ドラコニアンの少女。
 ヴォルフラム・アルトマイア(ラストスタンド・e20318)。彼女もイリュジオン同様に、自分の長い銀髪をツインテールにしており、側にビハインド……アレクを従えている。アレクの髪もまた、ツインテール。
「アレクとお互いにこの髪に結んだけど、正直あんまり似合わん気がしてな。むしろ、メイセンやリスティの方が私よりも似合ってるんじゃあないか?」
 ヴォルフラムの言葉通り、ドワーフのメイセン・ホークフェザー(この声は呪のために・e21367)と地球人のリスティ・アクアボトル(ファニーロジャー・e00938)。この二人のポニーテール姿は、それなりに似合っていた。
「まっ、アタシは前から似たような髪型だからな。んな事言われても、ちょいとピンと来ないなあ」
 小柄で赤髪のリスティは、何でもない事のように述べるが。
「はー、早くすませて、いつもの髪型に戻したいです」
 逆に、メイセン……鹵獲術士の彼女は、若干落着きなさげ。いつもと異なる髪が気になる様子で、しきりに結んだ髪の毛をいじっていた。
「……って、マルゾ! 何見てるんですか!」
 脇に立つビハインドのマルゾは、まるで戸惑っている彼女を笑うかのように、肩を震わせている。
 見ると、いつの間にかマルゾもツインテールの髪型に。いつもは長い白髪を長いポニーテールにしてるのに、わざわざそれをお揃いの髪型に直していたのだ。
「……見なかった事にしましょう。全く、こんの悪戯マーチヘアーがっ!」
 今日の夕食抜きだと声に出さず決めたメイセンは、ぐぬぬ……と言わんばかりに顔をしかめる。
「まるで、本物の女子高校生たちのようだな」
 彰人とともに、離れた場所から皆を見守っているジゼル・クラウン(ルチルクォーツ・e01651)が、その様子を見つつつぶやいた。男装している彼女が彰人と並んでいるその様子は、『女子のグループを見守る男子二人』のよう。
「ああ。実際、本当にかしましいぜ」
 そうつぶやいた彰人は、ジゼルとともにその6人、ビハインドを入れれば9人へと再び視線を向ける。
 彼女たちが囮になり、学園内のあちこちを歩き回る。
 そうする事で、那奈の生み出したドリームイーターを誘き出し……これを倒す。
 うまくいけばいいんだが。

●花園の探索、花園の秘密
 ツインテールの女子高生たち、そしてそれを追う二人の男女。
 既に校内は放課後ゆえに、人はほとんどいない。
 が、それでもゼロではない。学内を探索するケルベロスたちは、時折、まだ学内に居る下校してない学生たちと出会ったり、すれ違ったりしていた。
 中には、人気のない教室で、肩を寄せ合ったり、抱き合ったりしている女子生徒たちの姿も。
「きゃっ! ……だ、誰ですか!?」
 今もまた、人気のない教室で抱き合い、口づけ……する寸前の女子生徒二人を発見していた。
「私たちにお構いなく、続きをどうぞ。……あらあら、二人とも真っ赤になっちゃって。うふふっ、かわいらしいこと」
「まあまあ、若いっていいわねえ」
 華檻とイリュジオンは、そんな二人にくぎ付けに。
「そろそろ行きますよ。って、何じっくり見てるんですか」
「ほれ、早く行くぞ。あんまりじっくり見るのは悪趣味だろうが」
 メイセンとリスティが、二人を促す。そんなやり取りを、環は興味深く見つめていた。
「……のうヴォルフラム。女子校というところは、このように女子同士で睦み合う場所なのか?」
「いや……私も良くわからん」
 などと返答するしかないヴォルフラムだった。

「ったく、何やってるんだ」
 そして、離れた場所から頭を抱える彰人とジゼルだった。

●花園を汚す者、花園に出現す
 半時間ほど歩き回り、学内を一回りしたケルベロスたちは……。
 校舎の三階に出た。
「どうやら、ここにも」
 おらぬようじゃな。環がそう言いかけたその時。
「!?」
 長く続く廊下の先に、一人の生徒の姿を見た。
 が、彼女は……ケルベロスたちの姿を見て、即座に駆け寄ってくる。
 髪型は長いツインテール。だが、その体つきは……どこか、人であって人ではない。
 既に全員が、それがドリームイーター『ツインテール』だという事を理解した。顔と胸部とツインテールに、その証であるモザイクがはっきりと認められたのだ。
 即座に環が、携えた絡繰武具・銃之型『花火』を構え、狙撃する。
『ツインテール』は被弾し、たたらを踏んだ。それはほんの数秒間。が、その数秒で……全員が心と体を『戦闘態勢』に移行させる。
 華檻は、学校の制服を脱ぎ捨ててフィルムスーツ姿に。バトルガントレットを装着した両拳が、戦いの場で握られる。
 その隣に進み出るは、彰人。二秒かけて、周囲に一般人や生徒の姿が無い事を確認し、一秒かけて戦いの構えとともに前衛に立つ。
 その後ろを、ビハインド・アレクを従えたヴォルフラム、そしてリスティ、イリュジオン、メイセン、環、ジゼルと続いた。
「さあ、行くよ! 援護はアタシがする、気合入れて当てていきな!」
 力強いリスティの言葉。それを聞きつつ、メイセンは自分のツインテールを解き……。
「やっぱり、いつもの髪型が一番落ち着くね」
 魔女の帽子をかぶりなおした。
 ヴォルフラムはゾディアックソードを用い、廊下の床に守護星座を輝かせる。
『スターサンクチュアリ』の加護を受け、華檻は……。
「さあ……わたくしと……」
 ……接近した『ツインテール』へと跳躍した。
 その豊かな胸に、ドリームイーターの顔を包み込むようにして抱き付くと、そのまま……相手の周りを回転した。
「……わたくしと、楽しい事、致しましょう♪ 『惑夜の誘い(ジェイル・トゥ・ナイト)』」
『ツインテール』は、そのまま首を回転させられ、首の骨が折れたかのように……だらりと頭部を垂らして転倒するが、すぐに立ち上がった。
「次は、俺の番だ!」
 間髪入れず、彰人が鋭い蹴りを……『旋刃脚』を放つ。
 その一撃は、ドリームイーターをきりきり舞いさせつつ、後方へと吹き飛ばした。
「思ったよりも、打たれ弱い? このまま畳みかければ……!」
 後方でジゼルがそう考えた、その時。
 ドリームイーターの、その特徴的な髪が蠢き、動きだした。
 
●花園の戦い、散らされる花びら
 攻撃を畳みかけんとしたその時に、『ツインテール』は。
 その『髪の毛』で床を蹴り、弾丸のように廊下を突進。体当たりを食らわせてきた。
「なっ……!?」
 その体当たりを左右に避けた彰人と華檻だが……左右両方の『髪の毛』がくねり、二人を打ち据える。
 それだけでなく、触手は前衛の二人に固く絡みつき……そのまま叩き付けるようにして投げつけた。
 その先に居たのは、ヴォルフラム。突進の勢いそのままに仲間二人を叩き付けられ、その勢いで彼女もまた廊下の床にたたきつけられた。激痛が、三人を襲い苛む。
「ぐあっ!」
「くうっ!」
「ぐっ! ……アレク!」
 だが、血反吐を吐きながらも、ビハインドに下す攻撃命令は忘れてはいない。すぐに忠実なるアレクは、『ツインテール』の後方から攻撃する。
 それに対し、『ツインテール』が本体を回転させた。
 それとともに、『髪の毛』もヘリコプターのローターのように回転し、アレクを襲う。そのパワーの前にビハインドは弾かれ、教室側の窓へと叩き付けられた。
 前衛の者たちを床にたたきつけた『ツインテール』は、回転を止める。
 そのモザイクに覆われた顔が見つめるのは、リスティのツインテール。間髪入れず……ドリームイーターは、自身の髪をモザイクと化し。
 リスティへと襲い掛かった!
 くるか! さすがは旅団の仲間の宿敵が作ったドリームイーター。半端じゃないね。
 けれど、アタシもそうヤワじゃあない。来るなら来てみな!
 リスティは、自身の武器……フリントロック・リボルバーと、ブラックスライムとを用い、迎え撃たんと身構えたが……。
「行きなさい、イヴ!」
 イリュジオンの叫びとともに、彼女のサーヴァント……ビハインドのイヴが、『ツインテール』の背後に現れ、切りつける。
 イヴの武器が、ドリームイーターの背中にしたたかな一撃を与え……。
「『ケイオスランサー』!」
 同時に、イリュジオンの攻撃。槍のように鋭く変化したブラックスライムが、『ツインテール』の前方からヒットし、怪物を新たにきりきり舞いさせる。
「マルゾ! お前も行け!」
 その様子を見て、メイセンも前に進み出つつ……自身のビハインドへと命じた。
 マルゾからの一撃が、『ツインテール』にヒット、その進撃が止んだ。
 確実にダメージを食らっている。今こそ好機!

●花園を守りし、花の戦士
 しかしそれでも、『ツインテール』は倒れない。再び立ち上がり、再び回転した。
 それはまるで、回転する凶暴なコマ、あるいは……殺人鬼が凶器として使いそうな、回転刃を備えた工具のよう。
 イリュジオンとイヴ、マルゾを、回転で弾き飛ばし……。
 ドリームイーターは、次なる獲物に標的を定めた。美しい黒髪の、環。
『ツインテール』が回転しつつ、雑草を刈るように環へと迫る。
 だが、環は臆することなく……。『ツインテール』へと駆けだした。
 その手に握られるは、絡繰武具・刀之型『流水』。……銃の『火花』が変形した刀剣。
「いざ……参る!」
 環の『流水』と、『ツインテール』の髪の毛。
 その両者が、互いに切りつける。
「……『絶空斬』!」
 環の剣の一閃。それが軌跡を描き……。『ツインテール』の、髪の毛の片方が、はらりと落ちた。
 声にならぬ声で、ツインでなくなった『ツインテール』は、痛みに苦しむかのように痙攣する。そのまま、環から離れんとしたその時。
「あら、だめですよ。……もう少し、ご奉仕させてくださいな」
 ジゼルの『気力溜め』で復活した、華檻の姿がそこにあった。
 それを見た『ツインテール』は、片方だけになった髪とともに回転し、サキュバスへと迫る。
 それに対し、サキュバスのケルベロスは、艶っぽい笑みを浮かべつつ……静かに呟いた。
「……ドリームイーターとはいえ、これは那奈様の夢。そして、想い人を模した姿。ゆえに……」
 その言葉とともに、敵の懐に踏み込んだ華檻は、
「ゆえに……優しく攻撃致します。……『降魔真拳』」
 ガッ。
 強烈な打撃音とともに、ドリームイーターの回転が消えた。
 華檻……サキュバスの鎧装騎兵の、腰の入ったバトルガントレットの一撃。それが、『ツインテール』の胴体部、ないしは心臓のモザイク部へと。
 深く、深く沈んでいた。
『ツインテール』の、残った片方のツインテールが、狂ったようにくねり、のたくり、暴れまわる。明らかに苦しんでいるドリームイーターに、華檻は微笑みを浮かべていた。
 それでも、ふらふらになりつつ華檻から離れて逃げようとするが。
「おおっと、逃がさないぜ。これで……終わりだ!」
 同じく復活したヴォルフラムの拳が、とどめとばかりに放たれる。
「『破鎧衝』!」
 ストレートのパンチが、『ツインテール』へと決まり……引導が渡された。

●守られた花園、その花びらへ……
「……私、は……?」
「大丈夫か?」環の声に促され、会議室の床に寝かされていた那奈は……目を覚ました。
 瞼を開くと、華檻、環、ジゼル……三人の顔が視界に入ってくる。
 生徒会の役員室。何かに胸を刺され、自分の優美への思いをばらされて……。
「わ、私! わたし……」起き上がる那奈だが、
「大丈夫。もう、終わりましてよ?」
 華檻が、そんな彼女の顔を、優しく……抱きしめた。華檻の双丘の柔らかさに、更に慌てた様子を見せる那奈だが……やがて、落着きを見せ、静かに。
「那奈よ。此度のこと、主の想いが招いたなどと思うでないぞ」
 環が、励ますように那奈の肩に手を置く。
「人を想う気持ちは悪ではない。大切な宝石じゃからのう」
「ああ、その通り。今回の事で君が気に病む事は何一つ無い」
 環に続き、ジゼルも言葉をかける。
「所詮、不死者の戯言だ。大方、妬みか八つ当たりのどちらかだろう。どんな結末を望むにせよ、君の心は君だけのモノだ。大事にしてあげなさい」
 だが、ジゼルの言葉を聞いても、那奈の顔は晴れない。
「……で、でも……。女の子同士、ですよ? そんなの……」
「那奈様。少しだけ、よろしいですか?」
 華檻が、那奈の言葉をさえぎり……静かに……口を開いた。
「……女性が女性に抱く恋慕……それはこの世で最も美しい感情の一つ」
 そして……勇気づけるように、那奈の目を見据え、微笑んだ。
「そんな美しいものを持つ那奈様は……恥じる事はありません。ご自分のその想い、どうか……大切になさって下さい」
 その言葉をかけられたのち、那奈は眼を閉じた。
 那奈が涙を流し、頬を濡らしていくのを……三人は見ていた。

 やがて、事後調査を終え、ケルベロスたちは学園を後に。
「秘めた思いは、そのままに。けれど……」
 どうか、幸せになって欲しい。華檻は那奈の幸せな未来へと、想いを馳せていた。

作者:塩田多弾砲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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