多摩川防衛戦~flood is coming

作者:天草千々

 それがなんなのか、初めは誰も理解できなかった。
 理解したところで認めることは難しかった。
 高い壁があり、突き出た塔があり、無数の窓がある。
 周囲には輝く翼を持つ乙女が飛びまわっている。
 ――それは4本の脚を持つ巨大な『城』だった。
 見上げるような動く城が音を立て前進してくる。
 おとぎ話のような光景と、身を震わせる振動。
 どこか曖昧な恐怖は、それでも人々を走らせた

「ザイフリートの情報にあった人馬宮ガイセリウムが動き出した」
 東京焦土地帯にあらわれた直径300M全高30Mの移動要塞は、現在東京都心部に向けて移動中だと島原・しらせ(サキュバスのヘリオライダー・en0083)は緊張した声で説明した。
「ガイセリウムの周囲ではヴァルキュリアが警戒を行っているため、迂闊に手はだせない」
 また最終目的地も不明なため、市民の避難も多摩川以西の完了に留まっていると言う。
「ガイセリウムを動かしている第五王子イグニスの目的は、恐らく先の暗殺に失敗したザイフリートの命、失敗の原因となったケルベロスへの報復、それからグラビティ・チェインの収奪――即ち一般人の虐殺だ。そのどれ一つとて思い通りにさせるわけにはいかない」
 問題のガイセリウムだが万全の状態ではないと見られている。
「先のシャイターンたちの失敗により、要塞を動かす為の充分なグラビティ・チェインが確保されなかったのだろう。それを補給する為に都心部までの市街地で虐殺を行うはずだ」
 それに対し、防衛ラインに選ばれたのは多摩川西岸だ。
「まず多摩川を背に、ガイセリウムへ向けて集まった全ケルベロスによるグラビティの一斉砲撃を行う。恐らくダメージを与えることは出来ないだろうが、防御の為に少なくないグラビティ・チェインが消費されるはずだ」
 その結果、ケルベロス達を排除する為に、要塞内から勇猛なエインヘリアルの軍団『アグリム軍団』が討って出てくると予測される。
 これの撃破に成功すれば、ガイセリウムへの突入機会が得られるだろう。
 逆にもし敗れればガイセリウムは多摩川を渡り、避難の完了していない市街地で多くの一般人の命が奪われる事になるだろう。
「アグリム軍団は、四百年前の戦いでも地球で暴れ周り、その残虐さから同属であるエインヘリアルからも嫌悪されるエインヘリアル・アグリムが率いる集団だ」
 深紅の甲冑で全身を固めた彼らは、第五王子イグニスの切り札の一枚と見られている。
「長であるアグリムにならうように、個人の武を誇り、連携を嫌い、命令無視も行う傍若無人な連中のようだが、その戦闘能力は本物だ」
 今回の相手はそのアグリム軍団の1人、テオドアと言うさそり座のゾディアックソードを扱うエインヘリアルだと言う。
「まさに背水の陣の戦いになる、相手は強敵だがどうか力を振り絞って欲しい」


参加者
繰空・千歳(すずあめ・e00639)
サンドロ・ユルトラ(サリディ・e00794)
マニフィカト・マクロー(ヒータヘーブ・e00820)
ラックス・ノウン(マスクドニンジャ・e01361)
吉柳・泰明(青嵐・e01433)
天月・光太郎(月星繚乱・e04889)
マユ・エンラ(継ぎし祈り・e11555)
ムツキ・ミストルティン(不壊の壁・e21152)

■リプレイ

「本当、嫌になるぐらい大きいわね」
 多摩川西岸、堤防道路に陣取ったケルベロスの1人、繰空・千歳(すずあめ・e00639)が、曇った午後の空を見上げて零した。
 視線の先には高くそびえる建築物。
 だが、それは人の手によるものではない。
 進路上の全てを踏み潰しながら歩く城など、どんな酔狂な建築家も考えつかないだろう。
 エインヘリアルの王子イグニスの人馬宮ガイセリウム。
 その進軍を阻止する為に千歳たちはここにいる。
「こりゃホンマろくでもないなぁ」
 フードをかぶった仮面の男、ラックス・ノウン(マスクドニンジャ・e01361)があきれた声で同意した。
 彼は投げクナイを弄びつつ、距離を測るようにあれこれと指差し確認している。
「ま、影でこそこそやられるよりは分かりやすくていいさ」
 相手が誰であろうと、何であろうと関係ない、との天月・光太郎(月星繚乱・e04889)の言葉に皆が頷く。
「頃合だな」
 静かに時を待っていた吉柳・泰明(青嵐・e01433)が斬霊刀を抜き放ち、振るった。
 時を同じくして、他の戦場からも天に向かって雨が降るように無数のグラビティがガイセリウムへと飛んでいく。
 衝撃波が、なないろの弾丸が、破壊の光が空を駆け、砲火の華が咲いた。
 それらがおさまったあと、現れたのは無傷の移動要塞だった。
「見掛け倒しではないようだ」
 マニフィカト・マクロー(ヒータヘーブ・e00820)の声は、品定めするようだった。
 あらかじめ聞かされていた通り、損害を与えた様子はない。
 それでも600人に届こうかというケルベロスが集まったのだ、期待しなかったといえば嘘になる。
「ま、足止めには成功したみてえだし、こっからが本番だろ」
 だが、落胆を覚えるほどではない。
 マユ・エンラ(継ぎし祈り・e11555)の言葉通り、ガイセリウムは元より鈍かったその歩みを完全に止めていた。
 シスター服に似た黒衣に身を包んだ少女は、身の丈ほどのルーンアックスを構え、今や遅しとその時を待っている。
 敵はあくまで要塞内から打って出てくる一団。
 ガイセリウムの足止めに成功した今、すでに動き出しているはずだ。
 しかし、いかに巨躯の軍勢と言えどこれほどに離れていてはその姿は確認できない。
 かわりに聞こえる音があった。
 ――――ォォォオオオ!
 エインヘリアルたちの鬨の声か、あるいはどこかでいち早く始まった戦闘の響きか。
 それは低く、うねりをあげながらも段々と近づいてきている。
 
 そうして程なく、それはやってきた。
 赤い鎧を身にまとった、大きな大きな影。
 右手にゾディアックソードを持った、その姿こそアグリム軍団が一、テオドアという名のエインヘリアルのはずだった。
「随分待たせてくれたわね」
 ムツキ・ミストルティン(不壊の壁・e21152)は、気負わぬ声で言うと手にした爆破スイッチを押した。
 ウィングキャットの禊は、巻き起こった風にのって宙返りすると強く一度羽ばたいた。
「限定解除開放、短期予測強化、展開!」
 ムツキのブレイブマインが力を、光太郎の観測者の瞳が先を見る目を、後衛陣に与える。
「さぁ、気合を入れていくわよ、鈴」
 千歳が足下の相棒に声をかける。
 日本酒樽のミミック、鈴は頷くように体を傾け、立縄を締めなおす素振りを見せた。
「剣豪に倣ったわけでもあるまいが……」
 泰明が強化された瞳で観察すれば、敵がこちらに気づいているのは見て取れた、さりとて急ぐ様子もない。
 グラビティの射程内には捉えている、みすみす敵の間合いに飛び込むこともなかろうと斬霊刀が再び閃く。
「まさしく傍らに人無きが如しか、ふてぶてしいことだ」
「そんじゃドカンと一発、挨拶がわりや」
 仲間たちが強化を続ける中、マニフィカトの気咬弾が飛び、ラックスのサイコフォースが弾ける。
 それに、テオドアが一つの反応を見せた。
 右手の剣をケルベロスたちを指し示すように持ち上げる。
 直後6匹の幻のサソリが前衛たちの前に姿をあらわし、その尾が輝いた。
「――――っ!!」
 くぐもった声が漏れる。
 身を貫いた衝撃にサンドロ・ユルトラ(サリディ・e00794)が口元をゆがめた。
(「こりゃ気合入れねェとな」)
 備えは近接戦闘にあわせているとはいえ、これだけの人数を相手に放った遠距離からの攻撃がこの威力。
 だが想定外というほどではなく、彼は痛みに怯むような男でもなかった。
「へっ、サソリってよりアリに噛まれたみてェなもんだ!」
「そうだ声を張れてめえら! ここをアイツの道の終わりにしてやろうぜ!」
 ヒールドローンを展開しながら、大きく声を挙げてうそぶく。
 力を与える魔力と共に放たれたマユの声はそれをかき消すほどに力強かった。
「――2人が兄妹だとは聞いていないが?」
 ルーンアックスを振り回す姿に、マニフィカトがまじめくさって言った。
『似てねえだろ!』
「そっくりやん」
 異口同音の抗議に、絶妙の間でラックスが続けた。
 声をあげるほどではないが、わずかに笑いの気配が広がる。
 良い緊張感だ、とムツキは思う。
 誰もが負けられない戦いと覚悟の上でここにいる。
 しかしそれだけで、勝利が近づくわけではないのだ。
 
 再度、遠距離のグラビティがテオドアに飛び、その足元で星座が輝く。
 歩みの速度は変わらないが、その一歩は大きい。
 激突の時は間もなくだ。
 何か思いついた顔でサンドロが口を開く。
「おう、なんか言ってやれよ。偉そうなのァ得意だったろ」
「弁が立つ、と言ってもらおうか。だがそうだな――」
 訂正し、しかし要望に応えようとマニフィカトは言葉を捜す。
「あたしが援護してやってんだ、だらしない戦いするんじゃねえぞ!」
 だが、彼よりも早くマユが叫んだ。
 白の翼を大きく広げ、金の髪に咲いた千日紅が揺れ踊る。
 斧を高く掲げる乙女の叫びを口火として、皆が動き出した。
 羊角の美丈夫は無言で肩を竦め、自らも前へ出る。
「息ぴったりね、その調子でお願いするわ」
 千歳が柔らかな笑みと共に残した言葉に、仕返しに成功した2人は微妙な表情をした。
「悪いけどこっちも引かれへんねん、勘弁してな」
「こっから先には進ませねえ!」
 先駆けはラックスがつとめ、光太郎が続く。
 ふたつの流星が赤の鎧に傷をつけた。
 すかさず間合いをとる2人を追いもせず、更に前進を続ける。
 そこへ、泰明が真っ直ぐに行った。
「貫き徹す――」
 斬霊刀が一直線に突き込まれる、それは鎧に阻まれたかに見えた。
 しかし、悠然としたエインヘリアルの歩みはついに止まった。
 直後、その背で鈍く破裂音が上がる。
 グラビティの一撃は、確かにそれを貫いたのだ。
「この一撃、我らが意思と心得よ」
 これより先には決して進ませないと、黒狼の剣士は告げる。
 しかしそれを兜の奥でテオドアは一笑した。
「成程つまり――とるに足らん、と言うわけだ」
 言葉と共に、叩きつけるような剣の一撃が来る。
 それをガトリングガンと化した千歳の左腕が受け止めた。機械の右ひざがギシリと音をあげる。
 鈴が大きく口を開けてテオドアの脚に噛み付いた。
「本当にそうかは、すぐに分かるわ」
 圧が弱まったところで剣を流し、声の調子は変えないままに千歳は内心の汗を拭った。

 激戦になった。
 覚悟の上ではあるが、それは少しの楽観も許されないという事態に他ならない。
 攻撃に回る余裕などはなく、味方や自身の回復で手一杯だ。
(「だけどそれは、できることをやればいいってことよね」)
 苦しくはあっても、難しいことではないとムツキは思う。
「強ェのに勿体ねェな、纏まってこられりゃひとたまりもなかったケドよ!」
 挑発するサンドロをはじめ、誰ひとり傷を避けようという気はない。
 自分が、この仲間が盾として立ち続ける限りきっと戦い抜けるとそう信じられた。
(「焦るな、焦るなよ」)
 繰り返し言い聞かせながら、光太郎は機を待っていた。
 外す気はしないが、もっとも効果的な一撃を叩きこまなくては。
 今のところ仲間たちは上手く壁になってくれている。
 しかし長身のサンドロやマニフィカトでさえも、大きく見上げるような相手だ。
 ムツキも千歳も間合いをとるのにも苦労していた。
 まして、もっと小さな鈴や禊がいるのだ、気持ちは逸る。
 その鈴が、蹴り飛ばされて無防備な姿を晒した。
(「焦るな――!」)
 そこへムツキが、割って入る。
 彼女はアームドフォートを盾に、突きこまれた一撃を受け止めた。
 同時に身を振って、絡めた砲身で引き戻す動きを遅らせる。
 刹那、光太郎は飛び込んだ。
 円弧を描く日本刀の一撃は、右腕の鎧の隙間を通った。
「いつまでも好き勝手はさせねえよ!」
「あぁ、その通りだ」
 泰明の声は、随分と近かった。
 同じく好機と見て飛び込んだ彼の斬霊刀は胴の隙間を貫いている。
「個人の武だかなんかしらねえが、それだけしかねえ手前なんざにゃ負けねえよ!」
 前衛陣の傷を癒しながらマユが声をあげた。
 光太郎以上に我慢をしていることが見て取れる彼女はしかし、自らの役割に徹して、仲間を鼓舞し続けている。
 テオドアが剣を持ち上げる、サソリの幻影が光太郎たち3人を襲った。
「はっ、この程度か!?」
 身を刺す痛みに、それだけ仲間は楽になるのだと笑う。
 積み重ねた攻撃が動きを鈍らせる一方で、ケルベロスたちの『盾』にも少しずつ綻びが生じていた。
 最初に倒れたのは鈴だ。
 小さな体で戦場を駆け回っていたミミックは、剣の一撃で地面に縫いとめられその動きを止めた。
 更に追い討ちの動きを見せたテオドアをラックスのブレイジングバーストが襲い、マニフィカトが殴り飛ばす。
「鈴、お前は根性ある奴だ! でももう下がっとけ!」
 なおも立ち上がろうとする姿に、サンドロが叫んだ。
 駆け寄ってきた千歳に鈴はそっと手を伸ばす。
 助けを求めてのことではない。
「ええ、鈴。あとは任せなさい、しっかりやるわ」
 ずっと一緒にいる妹分だ、言葉をかわすことは出来なくても心は通い合っている。
 エクトプラズムの手が親指を立て、鈴の姿が掻き消えた。
「――っ!」
 それは死を意味するものではない。
 だとしても、受けた衝撃は喪失のそれといかほども変わらなかった。
 金の瞳を決意と怒りで燃やし、左腕の銃身にそっと手を添え千歳は立ちあがる。
 今はまだ、役割を放棄するわけにはいかない。
 だが、そのときが来たなら。

 守りが崩れたあととなっては、ラックスを庇いきれなかったのは無理もなかった。
 横薙ぎの刃が仮面の男の胴を両断せんばかりに食い込む。
 くの字に折れたあと、数メートルも吹っ飛ばされて地に倒れた。
「っ、ぐあ……!」
 彼が中衛に陣取ったのは搦め手も無論だが、的の分散の為でもある。
 攻守でいやらしく効いてくる、これぞ忍者の仕事と思っていたのだが。
(「正直キツイで……!」)
 覚悟や備えを嘲笑うような衝撃に、仮面の存在をかつてないほど有難く感じた。
 地に這いつくばらされ、苦痛に顔をゆがめるなど彼の忍者像からかけ離れた姿だ。
 到底許容できるものではない。ゆえに彼は立ち上がり、土ぼこりを払って言った。
「……残念やったな、今やられたのは残像や」
 声は震えていなかった。脚も動く、戦える。
 みえみえの強がりでも構わない、虚と実の間で踊るものこそが忍者なのだから。
「ほんじゃお返しや、傷口えぐったるわ!」
 空の霊力を乗せた一撃に、光太郎がスターゲイザーで続き、泰明の二刀斬霊波が飛ぶ。
「――しぶとい」
 当たっている、効いているはずだ。それでもまだ、倒れない。
 流石にそんな声が漏れる。
 さそり座の幻が、泰明たちを襲った。
「畜、生……ッ!」
 光太郎のそれは恨み言ではなく、自分自身へ向けた悔しさだった。
 地に倒れた彼を泰明が抱えあげ後方へ下げるのを、マユはじっと見つめていた。
(「目を逸らすな」)
 彼が危険な状態なのは分かっていた、これは自分の選択の結果だ。
 すでに誰かが倒れるのも計算に入れなくてはならない状況だ。
 誰にも任せることの出来ない、自分の責任。
 それでも湧き上がるものを、歯を食いしばりかみ殺す。
「……絶対負けねえ!」
 そう、仲間たちに謝らなくてはいけないときが来るなら、それは敗北したときだ。
 剣の一撃にムツキが倒れ、禊が主人に続いた。
 敵の鎧が憎い、どんな状況だかわかりゃしない。
 泰明が吼えるように声をあげ、マユは自分に最後のマインドシールドを展開した。
 腹は決まった。
 あとは攻撃役を残すべきだ、撤退するだけならメディックは必要ない。
 視線を向けたマニフィカトの前にサソリの幻影を認め、あ、と声が漏れる。
 彼を引き倒して、サンドロが2人分を引き受けた。
「もう少し丁寧に頼む」
「どんだけ贅沢いうんだよお前」
 言いながら、彼は自身ではなくマニフィカトの傷を癒した。
 他意はあるまい、ただそのほうが勝算が高いというそれだけだ。
「一撃一殺狙い撃ち。俺の忍術とくと見よ!」
「いい加減お引取りを願いたいわね」
 ラックスのクナイが爆炎を上げ、千歳のガトリングガンが音をあげる。
 泰明の剣は、ここにきて冴えに冴えた。
 しかしなおテオドアは立っている。
 ぶん、と振るわれた剣の一撃が傷の癒えぬサンドロの胸に突きたった。
 ぐらりと揺れた体を支えようとしたマニフィカトの手が、振り払われる。
 小さく、朦朧とした風な呟きが聞こえた。
「――我らが誇りの為に」
 それは自分たちを示す複数形ではない、と直感的に思った。
 ときに子供じみて見えるほど、陽気なこの男の中にも決して軽々しく触れてはならない尊い何かがある。
 限りある時、限りある生、だからこそ輝くものが生まれる。
 今日の戦い、それに臨む覚悟もまたその一つだ、と自らの首と腕の枷をつなぐ鎖に触れるとマニフィカトは口角をわずかにあげた。
「後は任せろ、私が必ずこれを打ち倒すと約束しよう」
 当然だ、とばかりに手を振ってドラゴニアンの男は倒れた。
 テオドアと向き合う。
 牽制の剣をいなし、腰ごとを払うような蹴りをかわす。
 動きは拳士のそれだ、ゆえに敵も拳を警戒している。
 それに加え仲間たちの積み上げてきた布石、今ならば十分に当たる。
 横薙ぎの一撃をあえて受け、距離をとった。
「――吾が海神の不滅の神話に、不滅なる祝福のあれ」
 力ある言葉を唇がつむぐ。
 乾いた風があたりに吹いた。
 生み出された巨大な水球は無慈悲な水牢となり、エインヘリアルを鎧ごと押し潰した。
「手札を先に切ってしまえばこうなるものだ」
 乱れた前髪をなおし、魔術師は大きく息を吐いた。

 ――他の防衛戦の面々、そしてガイセリウムへ突入した仲間たち。
 気になることは幾らもあるが、加勢に向かう余力などない。
 無事を願いつつ満身創痍のケルベロスたちは、ひとまず多摩川を越えるべく撤退を始めた。

作者:天草千々 重傷:天月・光太郎(満ちぬ暁月・e04889) ムツキ・ミストルティン(不壊の壁・e21152) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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