
とある地方都市の片隅にある、小さな公園。
ここでは毎年この時期、近所の中小企業が主催する『早起き乾布摩擦の会』が開催されるのが恒例となっていた。
「うう、この寒いのに脱ぐとか、何の罰ゲームだよ……」
「伝統のこれさえなきゃ、悪くない会社なんだけどなあ」
もっともこの寒い中、朝っぱらから上半身裸になる行事に好き好んで参加する者は少ない。イベントの参加者は主催企業の若手社員が数名のみなのもまた、恒例だった。
数少ない参加者たちが、しぶしぶと上着だけを脱ぎ、形ばかりの乾布摩擦を始めようとした……その時。
「けしからん……ズボンを穿いたままの乾布摩擦など、言語道断!」
突然の野太い声と共に、羽毛を逆立て怒り心頭のビルシャナが公園に乱入してきた!
「男子たるもの、乾布摩擦に臨むなら、男らしくパンツ一丁になるべし!」
「なるべし!」
ビルシャナの背後には、賛同者らしきパンツ一丁の男たちが立ち並び、シュプレヒコールを上げている。
ビルシャナとパンツ一丁の男たちは、一方的な主張と視覚的な暴力をふりまきながら、不運な社員たちに襲いかかった……!
「押忍! ケルベロスの皆、よう集まってくれた。新年早々、はた迷惑なビルシャナが人を襲う事件が予知されたんじゃ。面倒かけて済まんじゃが、力を貸してつかあさい」
円乗寺・勲(ウェアライダーのヘリオライダー・en0115)は、彼にしては珍しくちょっとうんざりとした様子で、集まったケルベロスたちに事件の説明を始める。
「事件を起こすんは、『乾布摩擦でパンツ一丁にならない奴絶対許さない明王』とでも言うんかのう……そのままの主張をこじらせてビルシャナになってしもうた、元体育教師のおっさんじゃ」
勲によると、ビルシャナは、その主張に反する『軟弱な』乾布摩擦が始まろうとしている公園に乗り込み、参加者たちを襲おうとしているとのことだ。
「理解しがたいことじゃが、こんビルシャナの主張に感化されて、既に配下になってしもうた一般人もおってのう。10人ほどのパンツ一丁の野郎どもが、ビルシャナの取り巻きとして付き従っちょる」
所詮は一般人なのでほとんど攻撃力はないが、うっかり攻撃に巻き込むと死なれて後味の悪いことになる可能性もあるので、できれば彼らは助けてやって欲しい……と、勲はケルベロスたちに頭を下げる。
「野郎どもを助けるには、説得してビルシャナの洗脳から解いてやるんが早道じゃ。とは言っても、普通の説得じゃあまり効果は期待できん」
一見どんなにおかしなものでも、ビルシャナ化した人間の言葉には強い説得力があるため、言葉だけでその影響を取り去るのは難しいだろう、と勲は言う。
「大切なんは、インパクトじゃ! 変な主張にもパンツ一丁の姿にも負けん、強烈な何か……そんなアピールができれば、野郎どもも目が覚めるじゃろう」
それが正気に戻す方向であれ、他のナニかに目覚めさせる方向であれ、とにかくビルシャナの主張さえ覆してしまえば、彼らが襲ってくることはないそうだ。
「万が一説得に失敗しても、ビルシャナさえ倒すことができりゃあ、野郎どもは元に戻る。とは言っても、ビルシャナ1体だけと戦うんと、邪魔な配下つきで戦うんは、えらい違いじゃ」
確実にビルシャナを倒すためにも配下たちを頑張って説得してほしい、と、勲は複雑な表情で皆を激励する。
「さて、ビルシャナの能力じゃ。主な攻撃手段を、3つ持っちょる」
1つ目は、気合いさえあれば寒くないという主張を物理で飛ばしてくる攻撃。遠くまで届き、炎の追加ダメージを与えてくる。
2つ目は、どこからともなくパンツ一丁の男たちの野太い叫び声を響かせる攻撃。こちらは複数のケルベロスを巻き込んで遠くまで届き、トラウマに陥らせることもある。
3つ目は、乾布摩擦の気持ち良さを具現化した癒しの光。光に触れた者を癒し、状態異常も回復する。
「色々な意味で厄介じゃが、何とか気張って持ちこたえるじゃ」
ため息をひとつついて、勲は作戦に赴くケルベロスたちの無事を願う。
「配下はともかく、ビルシャナ本人は、もう手遅れで助けることはできん。わしらにできるんは、奴を倒して今後の憂いを断つことだけじゃ。罪もない人々を救うためにも、どうかよろしく頼むじゃ……押忍っ!」
事件の内容はどうあれ、いつも通りの気合いを乗せて、勲はケルベロスたちを送り出すのだった。
参加者 | |
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![]() 天満・十夜(天秤宮の野干・e00151) |
![]() ゼイク・インスレクト(死神の道化師・e00307) |
![]() 三村・美衣子(美少女探偵・e02815) |
![]() オリヴィエ・デュルケーム(癒姫・e04149) |
![]() 五里・抜刀(星の騎士・e04529) |
![]() 大地・キャロライン(最前線に立つ意思・e05436) |
![]() ウル・ユーダリル(狩人・e06870) |
![]() 盛山・ぴえり(超電波系アイドルぴえりん・e20641) |
●鎧でジャブ
朝焼けがのどかな地方都市の風景を照らす、午前5時台。
予知された事件の現場となる小さな公園には、嵐が吹き荒れようとしていた。
嵐。それは、乾布摩擦を狙うパンツ一丁のビルシャナと、10人の配下たち。
嵐。それは、罪もない一般人たちの被害を防ぐために駆けつけた、8人のケルベロスたち。
まごうことなき迷惑な変態どもと、偏りきった教義からの解放を目指す正義の使者が、今激突しようとしていた……たぶん。きっと。そうだったらいいなあ。まあちょっとは覚悟しておけ。
「パンツ一丁って見た目があれだから迷惑だよね」
公園の植え込みから穏やかな笑みと共につぶやくのは、ゼイク・インスレクト(死神の道化師・e00307)だ。右目を隠すように帽子を被ったイケメンであるところの彼が纏っているのは、長い裾のひるがえるコートだ。その下に何を隠しているのか、飄々としたその表情からは、伺い知ることはできない。
「そうね。男がパンツ一丁、じっくり堪能……じゃなくて、きちんと退治しないとね!」
ゼイクに応えを返しつつも、三村・美衣子(美少女探偵・e02815)はどこかそわそわとした様子で、来るべきおぞましい敵……パンツ一丁の野郎どもが現れるのを、今か今かと待っている。その瞳にけしからん光が宿っているように感じられるのは、邪推というものだろう。男性の肉体美への渇望なんて、きっとない。できれば細マッチョのいい男がいたらいいなんて、絶対思ってない。思ってないったら。
「けしからん……ズボンを穿いたままの乾布摩擦など、言語道断!」
早くも不穏な空気の見え隠れするケルベロスたちの気配を知ってか知らずか、果たして予知された通り、野太い声が公園に響き渡る。ゴリマッチョな肉体にモジャモジャと羽毛を生やし、その臀部には白く輝くブリーフを身につけた、どこかシュールな姿……件のビルシャナに間違いない。
「男子たるもの、乾布摩擦に臨むなら、男らしくパンツ一丁になるべし!」
「なるべし!」
突然のことに固まる哀れなサラリーマンたちを尻目に、ビルシャナの後ろには、アイドルのバックダンサーのごとく統制の取れた動きで、パンツ一丁の野郎どもがズラリと並ぶ。
「あ、あなたたち、何なんですか……!?」
フリーズ状態からどうにか半生解凍にこぎつけたサラリーマンの一人が、至極もっともな感想と糾弾をビルシャナたちに向ける。
「愚問、愚問愚問ッ! そのような軟弱な姿で乾布摩擦に臨むなど、堕落の極み! 貴様らも男なら、邪魔なズボンなど脱ぎ捨て、パンツ一丁になるのだ。さあ。さあ、さあ!」
ビルシャナは、純白の輝くパンツに包まれた股間を見せつけるかのように、被害者サラリーマンの若者に向かって腰元をクイックイッとアピールしている。そのインモラルな腰つきは、大変に犯罪的だ。
「男性はパンツ一丁とか古いです! 前時代的です!」
男が男に大事なお宝を包み隠したパンツを見せつけるという、しょっぱなからひどい絵面。五里・抜刀(星の騎士・e04529)は、騎士道男子の矜持を振り絞るかのごとく、ビルシャナとパン一野郎どもの前に堂々と躍り出た。
「これからの男性のファッションはフルプレートアーマーですよ!! デートのおしゃれに金装飾でデコレート、夜寝るときには泥棒対策に!」
シャキーン! と効果音がつきそうなほど胸を張り、抜刀は己のフルアーマーを男たちに見せつける。全身の黒い鱗に引き立つひときわ白い金属は、彼の心の潔白を表すかのようにまぶしく輝き、ビルシャナと配下の男たちを煌々と照らした。
「うーん……確かにカッコいいが、むしろパンツ一丁よりも古臭いような……」
配下の一人が、遠慮がちに感想を述べる。
「え? もっと古い? 何言っているんですか! 昔から男子に人気のロボットアニメだって、装甲モチーフは鎧じゃないですか!」
古いということは、すなわち神代の昔から普遍的な真実でもあるということ。抜刀は控え目な反論などものともせず、己の信じる男のいでたちをアピールするのだった。
●裸でフック
「チッ……こざかしいケルベロスどもめ。惑わされるな、男らしさはパンツ一丁にあり!」
ビルシャナ『乾布摩擦でパンツ一丁にならない奴絶対許さない明王』は、予定していた布教と聖戦に邪魔が入ったことを、はっきりと認識したらしい。配下たちとサラリーマンたちに向け、ビルシャナは言葉に込めた魔力をそのだみ声に乗せる。
「男らしさ、ですか……でも。男らしくするのであれば、パンツも脱ぐべきではないのでしょうか」
そんなビルシャナの強弁に割って入ったのは、オリヴィエ・デュルケーム(癒姫・e04149)だ。桃色の鱗と翼を広げた、心優しき乙女の心を持つじじいドラゴニアン(61歳)。
「男性の象徴を隠しては男らしくとは言えないでしょう?」
そんな彼女(?)は、輝く身体を惜しげも無く解き放ち、優しさをまとった衣を脱ぎ捨てた。
男性の象徴とは何か。その哲学的な命題は、細かくツッコんではいけない。
「この、何者にも守られていない開放感。パンツに守られていては得ることのできない、より高次元のエクスタシー。さあ……全てを脱ぎ去り、高みに上り詰めるのです」
愛に満ちた眼差しで、オリヴィエはビルシャナと配下たちをねっとりと見つめた。
そして、自身の大事なところを、余すことなく解き放つ……!
「あああぁぁぁぁくぁwせdrftgyふじこlp……!」
その神々しい輝きは、パンツ一丁の配下たちには少々眩しすぎたらしい。大胸筋を震わせたパンツ一丁の男たちは、裁きの炎に焼かれたようにその目を抑え、意味をなさない叫びを口にする。
「けけけ、けしからん! す、『全てを脱ぎ去る』なら、そのけばけばしいピンクの毛は、なんなのだ! 毛に覆われておきながら裸を気取るなど、欺瞞の極み……っ!」
オリヴィエの魂を込めた脱衣は、ビルシャナ本人にも少なからずダメージを与えたらしい。それでもビルシャナは意志の力を振り絞り、何とかケチを付けようと言葉を尽くす。
「毛に覆われている? それはあなたも同じでしょう」
オリヴィエは、まったく動じない。それどころか、ビルシャナの羽毛と大事なところを覆う何らかの『毛』に護られた箇所を凝視し、輝かしいポーズを決めてみせた。
愛ある視線をキメつつ、最もインポータントな部分を大いに解放する、秘密のポージング。本格的にいけない部分は『ご都合』のグラビティ・チェインが働き、葉っぱや風に舞うチラシなどで隠されているが、その威力は絶大だ!
「へへへへへんたいだー!」
魂をつんざく悲鳴は、抜刀のものだ。もっとも、その視線はしっかりとオリヴィエのステキなところに向けられており、顔を覆う指のすき間からチラッチラッとその秘宝を目に焼き付けている。
「ああ、いい眺めね……信者の皆さんも、珠玉の美を妨げる余計なパンツなんて、捨ててしまえばいいのに……」
美衣子はうっとりとした眼差しで、ビルシャナの配下たちを頭の先から爪先まで舐め回すように眺め、至福の表情を浮かべている。
「もうやだ、この人たち……!」
誰からともなく、サラリーマンの一人がつぶやいた。救出対象にも多大なダメージを与えつつ、説得合戦は佳境に入るのだった。
●褌ストレート
「パンツ一丁ごときで男らしさを語った気になるなど陳腐! まさにチープ!」
サラリーマンのぼやきなど無かったかのように、可愛らしい声が空を切り裂く。その声の主は、盛山・ぴえり(超電波系アイドルぴえりん・e20641)だ。
「仮にも日本男児なら、たった1枚の純白の布で身も心もキリリと引き締める、古式ゆかしき『ふんどし』の存在を語らずして、何が益荒男魂ぞ! 見さらせ! ぴえりんのぱーふぇくと・ぼでぃー!!」
魔法少女が変身するかのように華麗な光を放ち、ぴえりは纏った衣服を脱ぎ捨てた。
その下に現れたのは、言葉通り、ふんどしを履いたビューティホーなボディだ。
「ちょ、それ、ダメだろ!」
サラリーマンの一人が言うように、少女のふんどし姿は倫理的にアウト? いや、大丈夫。
衣装を脱ぎ捨てた裸の胸は、尖った山頂の存在しないシベリア平原。
そう、ぴえりは男の娘なのだ!
「大丈夫、ラジカル☆ぴえりんは、レーティング全年齢の健全なアイドルだから……どやぁ!」
つるつるぺったんこな胸を張り、ぴえりは己のふんどし姿を360度に渡って魅せつけた。
確かに身体は男の娘だが、顔はコッテコテの美少女メイクのままなので、色々とヤバい。パンツ一丁のビルシャナと野郎どもなど霞む勢いでヤバい。魔法の男の娘アイドル、恐るべし。
「パンツ一丁なんてダサいな。やっぱり褌だよね」
ぴえりに同調してゼイクは満面の笑みを浮かべ、コートを脱ぎ捨てた。
一見常識人っぽいイケメンっぷりなど、何の枷にもならないようだ。そう、ゼイクの身体を覆っていたのも、また褌だったのである……!
「女の子の下着姿は可愛いけど君たちの姿はどう? パンツ一丁なんてダサくないか? そんな姿じゃ女の子に嫌われてモテないよ!」
コートの下に褌姿の貴方には言われたくありません、という、誰かの心の声が聞こえたような気がする。だがゼイクは大真面目に、カッコよくイケメンオーラを放ちながら、輝く男の魅力を褌に包んで見せつけている。
「そうだ、パンツ一丁とか、何生温い事言ってやがる! 漢なら、褌着用あるのみだろ!」
男の娘とイケメンに続き、凛々しいジャッカルの獣人が褌姿で舞い降りた。天満・十夜(天秤宮の野干・e00151)、その人である。
ウェアライダーである十夜にとって、寒さなど大した敵ではない。裸で寒いのなら、冬毛を生やせばいいじゃない(獣人型ウェアライダー並感)。冬毛に褌のマリアージュは、人型では絶対に到達できない神の領域めいた、男と漢の芸術だった。
「はっはっは……パンツ一丁か、なるほど それは確かに乾布摩擦に適した恰好といえよう。だが、本当にそうか? もっと適した恰好があるんじゃないか? そう、褌だ! 軍(いくさ)の衣と書いて褌! 社会の荒波の中で戦う戦士達の戦装束! 乾布摩擦でこれからの戦に備えるのであれば、心の中は常在戦場であるべきだ!」
追い打ちのようにたたみかけるのは、ウル・ユーダリル(狩人・e06870)だ。腹筋と上腕二頭筋もまぶしい女性である彼女は、ある意味この場にいる誰よりも漢らしい、にじみ出るカリスマを備えていた。
「姐さん……」
「同じ下着? 否! 断じて否! パンツ等という軟弱な衣に身に包んだ男を信じるのか!? お前たちは漢(おとこ)だろう! そんなパンツ野朗の扇動などに乗らず、今すぐ褌に履き替えるのだ!」
迫力に押されて思わずウルになびいた野郎どもに、彼女はすかさずアジテーションを贈る。褌はこれ漢(おとこ)の象徴、と語りかける彼女の横顔は凛々しく、ビルシャナに洗脳されかかった精神を打ち砕くに十分な説得力を持ちあわせていた。
「おのれ、この筋肉アラサー女め、詭弁を……」
「残念ながら、私はアラ還でな。漢を語るに、歳はさほど重要ではないのだよ」
「ななっ!?」
ウルがしれっと明かした真実は、ビルシャナ本人に激しいショックを与えたようだった。若々しい筋肉と、ちょっとやそっとじゃ揺るぎのない瞳。それは、ビルシャナが人間であった頃に、とうに失って久しいものだったのかも知れない。
「ええ、パンツ一枚よりふんどしの方がより男らしい……それは、真理です」
ウルに続き、男らしさを語る女性。それは、大地・キャロライン(最前線に立つ意思・e05436)だった。眼鏡の奥から淡々とした視線をパンツ一丁の野郎どもに向け、彼女はおもむろに前に進み出る。
彼女もまた、コートを身に纏っていた。そして、胸元のボタンを繊細な指先でするりと外し、鮮やかな手つきで体を覆う邪魔な布を脱ぎ捨てる。
「最近は、このように女性用の褌もありますが……やはり、殿方の褌こそが素晴らしいと思うのです。いかがですか……?」
キャロラインはあくまで冷静に、パンツ一丁の野郎どもに対し、褌の美しさを説く。ちなみに彼女が身につけている下着は、ふんどしとお揃いの和風ブラジャーをセットにした、お洒落な今風のインナーだ。
「それと、ふんどし姿になった場合……私が代わりに摩擦しますよ?」
キャロラインは信者たちに向け、さらりと爆弾発言を放り投げる。発言のみならず、男性の根源を揺さぶるようなボディランゲージのサービスまでついていた。
「うわ、それ、ヤバいですよ。うわ、うっわー!」
そんな彼女に、抜刀はテンションも高く大騒ぎだ。それは結果的に配下たちを煽るような形になり……パンツ一丁の野郎どもの目は、うつろな教義への熱狂から、次第に目の前の現実を見据えたスケベ目へと変化していった。
「そう、鍛えた身体を魅力的に引き立てるのは、パンツじゃない! 褌! やっぱりこう、お尻の出方がうひひひひ……こほん」
その気になった信者たちを扇動する美衣子の発言からは、多少個人的な願望がだだ漏れていたが……そんなものは、すでに些細なことだった。
裸。尻。褌。
数々の魅惑に満ちたギガンティックな言霊は、配下たちの上昇気流なアンダーバーを熱く揺さぶっている。
「さ~あ、邪魔なパンツは脱ぎ脱ぎしましょうね~♪」
ぴえりは相棒『チャウやん』と共に、悪魔的な微笑みで配下たちの理性にとどめを刺した。パンツを脱がす気満々で微笑む男の娘と、パンツを切る気満々でハサミを構えるテレビウム。ビルシャナとどっちが有害だか分からないが、ケルベロスたちの個性爆発な勢いは、配下たちを新たな世界に誘うには十分だった。
「うおおぉぉ!!!」
パンツ一丁の男たちは、轟く雄叫びと共に、褌の軍門に下った……!
●決まり手:鼻血
「き、貴様ら……許さんぞー!」
配下をパンツごと剥ぎ取られ、ビルシャナが怒り心頭で毛を逆立てる。
「ああ、あと、おっちゃん元体育の先生だっけ? 公衆の面前で裸を推奨するのって、セクハラで訴えられるんじゃね?」
十夜はもっともらしいことを言いつつ、獣化した手足に重力を集中して一撃を放った。
「貴様らにだけは、言われたく……なっ!」
大変に妥当な抗議を遮って、ウルの点穴を通す鋭い矢がビルシャナの大事な所を撃ち抜いた。
「どうぞ、夢の中だけでも安らかに……サービスしますから」
すかさず、キャロラインは太腿でビルシャナの頭をガッチリと挟み、ぐるりと宙を回って鳥の頭をしたたかに地に打ち付ける。
「……!!」
ビルシャナの鼻から、真紅の血潮が吹き上がった。
褌を履いた美女に頭を挟まれ、パンツを履いたビルシャナが、盛大に散ってゆく……!
その最期は、どこか安らかなものであった……めでたし、めでたし?
作者:桜井薫 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2016年1月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 5/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
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