●ガイセリウム、侵攻開始
まさに異様、そして絶望的な光景だった。
焦土と化した八王子市内に突如として出現した人馬宮ガイセリウム。幅数百メートルはあろうかというその巨大な城型の移動要塞は、多数のヴァルキュリアたちの哨戒を共に、四本の足で自ら都心へ向けて侵攻を始めたのだ。
あまりにも突然で、あまりにも無慈悲な侵略。
その圧倒的な存在感と威圧感を放つ悪魔のような要塞から、人々はただ一歩でも遠くを目指して無心で逃げ惑う事しか出来なかった。
●防衛線を死守せよ
「エインヘリアルのザイフリート王子による情報にあった、人馬宮ガイセリウムが動き出したっす」
慌ただしさの中、黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)もまた焦りを隠さない様子でケルベロスたちの前に現れた。
人馬宮ガイセリウムが動き出したという事実は、それだけ衝撃をもって受け止められていた。
「ガイセリウムは巨大な城に四足が生えた移動要塞で、現在八王子から東京都心に向けて侵攻中っす。周囲にはヴァルキュリアの軍団が警戒に張り付いていて、下手に近付けばエインヘリアルの強力な『アグリム軍団』の出撃を誘発してしまうため接近は事実上不可能っす」
当然、ヴァルキュリアたちの妨害もあるだろう。大多数を相手に巨大要塞を攻め落とすのは、残念ながら現実的ではなかった。
「進路上の一般人の避難は既に開始してますけど、都心部に侵攻後の行動が予測できないため、避難が完了したのは多摩川までの地域だけっす。これ以上先は人口の多さもあって思うように進んでいないのが現状なんで、皆さんには何とか敵が多摩川を越える前に食い止めて欲しいっす」
多摩川が絶対防衛ライン。ここを越えられたら一般市民の虐殺はもちろん、東京の中枢部が敵の手に落ちてしまう事になる。
「ガイセリウムを動かしたのはエインヘリアルの第五王子イグニス。目的はザイフリート王子の殺害処分とケルベロスへの報復っすね。また都心部に来る以上、一般人からグラビティ・チェインを得る事も目的の一つと思われるっす」
つまり、先の敗北を受けての侵攻というわけだ。エインヘリアル側も相当な覚悟を持って仕掛けてきた事が窺われる。
続いて、ダンテは作戦の概要を説明し始めた。
最終目標を人馬宮ガイセリウム。だが、現状では直接手出しする事は不可能に等しい。
不安を見せるケルベロスたちに、ダンテは少し表情を和らげて見せた。
「敵は余りにも強大っすけど、救いもあるっすよ。ガイセリウムは駆動に膨大なグラビティ・チェインを必要としますけど、シャイターン襲撃を阻止した事で十分な量は確保できてない様子なんすよ。……まあ、だからこそ都心部を狙ってグラビティ・チェインを得ようとしているんでしょうけど……」
相手も無理をして勝負を掛けに来たと言う事だ。だからこそ、そこに勝機がある。
「まずは多摩川を背にして布陣し、数百人規模でガイセリウムに砲撃を行うっす。ダメージは与えられないっすけど、グラビティ中和のために残り少ないグラビティ・チェインを消費させる事ができるはずっす。これによりガイセリウムを足止めしてエインヘリアルの『アグリム軍団』を誘い出し、各チームで個別撃破するのが今回の作戦になるっす。アグリム軍団を撃退する事ができれば、ガイセリウム突入のチャンスが出てくるっすからね」
巨大要塞の進撃を止めるために、まずは活路を開かなくてはならない。強力なアグリム軍団が相手であろうとも、絶対に失敗できない重要な第一段階なのだ。
「アグリム軍団は、同族からも嫌われているというエインヘリアル・アグリムを長とした暴虐な軍団と言われてるっす。深紅の甲冑に身を包んだ彼らは、連携などせず個人の武力に頼る連中ですが、その強さは第五王子イグニスが切り札として用意するほどに確かなものっす。各チーム一体ずつでの戦闘ですけど、油断は絶対禁物っすよ」
説明を終えると、ダンテは改めて戦況の難しさと作戦の重要性について真剣に語った。
「都心をやられると取り返しが付かない状況になってしまいますから、ここは絶対に負けられないっす。各員、抜かりのないように準備と作戦の立案をお願いするっす!」
参加者 | |
---|---|
アマルティア・ゾーリンゲン(リビングデッド・e00119) |
万道・雛菊(幻奏酔狐・e00130) |
ケーゾウ・タカハシ(鉄鎖狼の楽忍者・e00171) |
ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720) |
神楽・凪(歩み止めぬモノ・e03559) |
柳橋・史仁(黒夜の仄光・e05969) |
チューマ・ウチョマージ(荒野の鉄火・e11970) |
霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388) |
●降り立つ深紅の鎧
曇り空の下、迫り来る巨大な要塞に数百人のケルベロスたちは息を呑んだ。
人馬宮ガイセリウムは川沿いに陣取るケルベロスたちを気に留める事もなく確実に歩を進め、無人になった街を踏みつぶしながら迫っていた。
ぴりぴりと張り詰める空気。緊張感と焦燥感の入り交じった無限とも感じる時間。
ガイセリウムが射程に入った瞬間、それらはすべて凄まじいまでの轟音によって切り裂かれた。
光線、砲弾、弾丸、音波、炎、氷、雷……。ありとあらゆる砲撃が織り糸のように重なり、交差しながらガイセリウムの巨体に襲い掛かっていく。
城の要塞は砲撃の雨に呑み込まれていき、瞬く間にその姿は白煙に包まれた。
「まだまだよ~。相手の足が止まるまで、手を緩めないでね~」
万道・雛菊(幻奏酔狐・e00130)が螺旋手裏剣を次々と放りながら仲間に声を掛ける。
「これだけやって、傷一つ付けられる見込みがないってのもうんざりするな」
彼女と並んで同じく手裏剣を投げていたケーゾウ・タカハシ(鉄鎖狼の楽忍者・e00171)は皮肉めいた笑みを浮かべた。
やがて数分間続いた砲撃が止み、もうもうと立ち込めていた白煙も次第に風に流されていく。
その中から再び姿を現したガイセリウムは、予想した通り砲撃前と何ら変わらぬ様子でその場に佇んでいた。
ただ、その足は完全に止まっている。
「……とりあえずは目論見通り、か?」
フォートレスキャノンを構えたまま、神楽・凪(歩み止めぬモノ・e03559)が様子を窺う。
ガイセリウムはしばらく制止したままだったが、やがてその足の付け根辺りから無数の小さな影が飛び出してくるのが遠目に見えた。
影は空中でバラバラに散らばると、布陣するケルベロスたちの方へとそれぞれ向かっていく。
そのうちの一つがこちらへ一直線に降りてくるのを確認し、チューマ・ウチョマージ(荒野の鉄火・e11970)は腰を落として軽快に片足を後方へ滑らせた。
「ようやく奴さんのお出ましか。まずは手厚く歓迎してやるとするか!」
「絶対にここは突破させませんわ!」
霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388)も、構えを取って身に纏ったオーラを一段と強く輝かせる。
二人が迎撃姿勢を取るのと前後して、柳橋・史仁(黒夜の仄光・e05969)は魔法の詠唱を始めていた。
「──闇と異質なその姿、真に露にしてくれる」
巻き起こる疾風が史仁を中心とした後衛陣を包み、彼らの身に邪を払う加護の力を与える。
その疾風が吹き止むと同時に、チューマとちさの初撃が放たれた。
一筋の炎と光の気弾は、ハッキリと視認できるほどの距離に迫った人影に向けて真っ直ぐに伸びていく。
二人の攻撃は高速で突っ込んでくる赤い影を真正面から捉え、激しい爆炎を巻き上げた。
しかし、直撃にも関わらず相手の勢いは一切削ぐ事は出来なかった。影は煙の尾を引きながら、変わらぬ速度でケルベロスたちに向かって飛び込んでくる。
「させるかッ!」
史仁を狙って振り下ろされた巨大な斧の一撃は、間に割って入ったアマルティア・ゾーリンゲン(リビングデッド・e00119)が受け止める。だが、その余りにも強烈な衝撃に、アマルティアは身体ごと押し込まれて大きく後退った。
「……ほう、思ったよりは骨のある連中のようだな」
真っ赤な甲冑を纏った大男は感心した様子で小さく笑いを零す。
兜に覆われたその表情を窺い知る事は出来ないが、わずかに覗く眼光の冷たさだけで彼の持つ凶暴性や残虐性は嫌と言うほどに感じ取れた。
「面白い。やはり、戦う以上は壊し甲斐のある相手でなければな。……アグリム軍が戦士ビルケルト、参る! 精々、愉しませてくれよ!」
ルーンアックスを地面に突き立てて咆哮する深紅の戦士に、ケルベロスたちは一斉に臨戦態勢を取った。
●全てを弾く力
「私はアステローペの黒曜牙竜・ノーフィア! アグリム軍のビルケルト、お相手願うよ!」
じりじりとした睨み合い。その沈黙を破って仕掛けたのはノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)だった。
思い切って地を蹴ると、身体を大きくしならせて敵の背に痛烈な蹴りを叩き込む。
しかし──。
「ふん……温いな!」
直撃したにも拘わらず、ビルケルトは少し踏ん張っただけで攻撃を受け切るとノーフィアを弾き飛ばして斧を構えた。
そのまま、その巨体に似つかわしくない猛烈なスピードで一気に距離を詰めてくる。
「あらあら、そう簡単に好きなようにはさせないわよ~」
咄嗟に雛菊が放った手裏剣はビルケルトの手元を撃ち抜いた。が、それでも巨漢の戦士は一切動じる事なく、ノーフィアに向かって突進を続けた。
「その程度で俺を止める事など不可能! さあ、まずは一匹目だ! 砕けて散るがいい!」
手にした斧を豪快に振り下ろす。ルーンの力を帯びた斧は光の筋を引きながら、ノーフィアの目前にまで迫る。……と、すんでの所で飛び込んで来たボクスドラゴンのパフが、彼女の身代わりとなって刃を受け止めた。
鱗をいとも容易く貫かれ、鮮血を辺りに撒き散らす。
それでもパフはすぐに起き上がると、体勢を崩したビルケルトに渾身のタックルを喰らわせて可能な限りの距離を取った。
「ちっ……邪魔されたか!」
狙いを外された上に一撃で仕留めきれなかった事に、ビルケルトは舌打ちを漏らす。
「ぬっ……!?」
そんな一瞬の苛立ちの隙を突いて、史仁の放った御業が狂戦士の身体を掴むようにして包み込んだ。
「打たれ強さには自信があるみたいだが、油断してると痛い目見るぜ?」
身動きを封じられたビルケルトにアームドフォートの砲口を向けた凪は、小さく笑みを浮かべながらトリガーを引いた。
炸裂する無数の爆炎。至近距離から放たれた主砲の斉射は確実にビルケルトを呑み込む。
「どうだ、少しは効いたか……?」
期待の表情を浮かべる凪。だが、立ち込める煙の中から赤い影が頭上高くへ跳び上がったのを見てその顔は凍り付いた。
巨体の全体重を乗せて打ち下ろされたルーンアックスは、飛び退こうとした凪の肩口を深く切り裂く。
「くぅ……ッ!」
「凪、下がれ! ……この化け物め。全て真正面から受け切って、なお動きが鈍らないとは……」
慌てて転がりながら後方に退く凪。入れ替わりでアマルティアが対峙すると、ビルケルトは余裕のある動きでゆっくりと彼女に斧を向けた。
「アグリム軍の武勇を甘く見てもらっては困る。貴様らがどれだけの攻撃を重ねようとも、この肉体を打ち破る事は不可能!」
その言葉通り、微塵もダメージを感じさせない様子でビルケルトは構えを取った。
●深紅の甲冑は砕けるか
一進一退、と言うには似つかわしくない打ち合いの様相を呈していた。
回避を考えず強引な突破を仕掛けるビルケルトに対し、ケルベロスたちの攻撃はほとんどがクリーンヒットしていた。が、一方でその素早く強力な一撃のほとんどを正面から受けざるを得ない状況が続く。
結果、根本的なタフさの差が顕著に出てしまい、状況はじわじわと追い込まれつつあった。
「真の戦士とは如何なるものか、その身で味わうがいい!」
遠距離からの攻撃を悉く弾き飛ばしながら、ビルケルトはちさに迫るとルーンアックスを軽々と振るった。
「きゃあッ!」
深い踏み込みからの攻撃に身を退ききる事が出来ず、ちさは斬撃をまともに喰らって吹き飛ばされる。
「うくっ……! こ、このくらいでは、まだ倒れたりしませんわ!」
傷口を押さえて立ち上がるが、前衛で攻撃を受け続けてきたダメージは確実に蓄積しており、彼女の足下は既にふらついておぼつかない様子だった。
そんなちさを庇うようにチューマが前に立った。
「無理をするな。ここは交代だ。……奴とて永遠に戦い続けられるわけじゃない。焦る必要はないさ」
「ふん。そう上手くいくかどうか、試してみるがいい!」
ビルケルトはお構いなしとばかりに何度目かの突進に出る。
「ここが我慢のしどころだ! しっかり気合い入れろよ! 確実に叩いて必ず挫いてみせるぞ!」
「おう! 強がっていられるのも今のうちだけだって、キッチリ分からせてやるぜ!」
チューマが銃を速射して牽制するのに合わせ、史仁が魔導書を開いて呪文を詠唱した。
現れた緑色の粘菌が網のように広がり、突っ込んでくるビルケルトの身体を覆う。
しかし、ビルケルトは大振りに斧を打ち下ろし、纏わり付く粘菌を力任せに切り裂いた。
「何度やっても無駄だ!」
斧の切筋はそのまま史仁の身体を捉え、辺りに血飛沫を飛ばす。
「ぐあぁ……ッ!?」
「なんて力だ……。これだけやって、まだ一撃必殺の威力を有しているとは……」
倒れ込んだ史仁をチューマが引き摺りながら一歩後ろに下がる。と、代わりに雛菊が飛び出していった。
「お見事な強さだけど~……油断してると、壊しちゃうわよ~!」
雛菊は敵の懐に入り込み、深紅の鎧にそっと触れるとそのまま脇を走り抜けた。触れた部分から鎧の内側に螺旋の力が送り込まれ、ビルケルトの体内に重い衝撃を発生させる。
「ぬぅっ……!?」
「ほらほら、まだ終わりじゃないよー!」
わずかに身体を折るビルケルトの目前に、続けて踏み込んできたのはノーフィア。
飛び込みの勢いそのままに、高速の蹴りを心窩に叩き込んだ。
「ぐっ……なかなか良い攻撃だ……!」
連続して身体の中心を打ち抜かれたビルケルトは、思わずその場で膝を突く。それは段違いの打たれ強さで圧倒してきた戦士が、初めて見せる苦悶の姿だった。
確実にダメージは蓄積している。
そう確信し、疲弊し始めていたケルベロスたちはにわかに意気を取り戻す。
しかし、相手もこの戦況を易々と受け入れるほど甘くはなかった。
「……貴様らを少し侮っていたか」
そう言って、ビルケルトが虚空に手を伸ばした。すると空間がわずかに歪み、そこからもう一本のルーンアックスが引きずり出される。
「かくなる上は、全力をもって粉砕する!」
二本の斧を構えて咆哮するビルケルトの身体から、禍々しいオーラが噴き出す。
勝負を掛けに来ようとする敵に、ケルベロスたちは互いを庇い合うようにして相対した。
●果てる狂戦士
壮絶な攻勢だった。
ただ敵を殺すだけを目的とした攻撃の連続。まさに狂戦士と化したビルケルトは、自身が生き残る事は二の次と言わんばかりの突撃を繰り返した。
「このままじゃ、ヒールが追い付かないぞ!」
ケーゾウが焦りを顕わにして叫ぶ。
既に全員が手負い、半分以上が仲間の治癒に回っている状況だった。形勢はハッキリ言って悪い。
だが、相手もさすがに息を切らしており、こちらの攻撃を受けては幾らかよろめきを見せるようになっていた。
退くべきか否かの判断の時が迫る中、チューマが提案を出す。
「……このままでは押し込まれるだけだ。こちらも一気に勝負を掛けよう」
一同は息を呑んだ。
確かに、敗北が濃厚になる前に大きな打撃を狙う方が得策だ。しかし、それは犠牲を払う可能性がある事も意味している。
言葉に窮する仲間たちの内で、最初に賛同の意を示したのはアマルティアだった。
「……その案、乗ろう。退くにはまだ早い。ならば、半端な立ち回りなどせず勝機を見出すために前に出るだけだ」
彼女の言葉を受けて、全員が覚悟を決める。
それを確認してから、アマルティアは先頭を切って飛び出していった。
「来い。お前の相手はこの私だ」
「はっ、自ら死に急ぐとは愚かな奴め!」
ビルケルトが二本の斧を振りかざす。
渾身の力を込めて放たれたダブルディバイドは、アマルティアの肩口から横腹に掛けてを深く抉るように傷を付ける。
「ぐっ……かはっ……!」
アマルティアは激しく喀血し、その場に両膝を突いた。
次を喰らえば命はない。そう分かっていながらも、足は動いてくれなかった。
「ちぃ、耐えるか!? ならば、もう一度……!」
まだ息がある事に驚きを見せながらも、ビルケルトは再び斧を振り上げる。……が、今度はその斧が振り下ろされるよりも先に、雛菊の放った螺旋手裏剣がビルケルトの腕を弾いた。
「それ以上はさせないわよ~! アマルティアちゃんが作ったチャンス、無駄にするわけにはいかないんだから~」
「これ以上、長引かせるわけにはいかねぇんだ! 遠慮せずに、たっぷり食らってけ!」
間髪入れずに凪が全力でガトリングガンをフルオート射撃した。弾丸の雨あられがビルケルトの上半身に集中攻撃を浴びせる。
「うおおおおおッ! 雑魚どもが調子に乗るなッ!」
続け様の攻撃は深紅の鎧を大きく破壊し、ビルケルトの一度は体勢を崩す。が、それでも彼は強引に身体を持ち上げるとルーンアックスを振り回した。
「見境をなくしましたわね! 勝機ですわ、一気に攻めきりましょう! ……ケーゾウさま、アマルティアさまを避難させてください!」
ちさはそう叫ぶと、アマルティアにトドメを刺そうと暴れ狂いだしたビルケルトに簒奪者の鎌を投げ付けた。鎌は高速回転しながら弧を描いて飛んでいき、ビルケルトを絡め捕るようにして襲う。
「ぬおぉっ! な、何だ!?」
不意打ちを喰らったビルケルトは、鎌の動きに気を取られて手を止める。
その間に走り寄ったケーゾウが、アマルティアを抱えて敵の足下から脱出した。そして、すぐさま待機していたエクレアとペレの二匹のサーヴァントと共に出来うる限りの治療を開始する。
「よし、負傷者の待避は完了だ! 後は頼んだぜ!」
ケーゾウが伝えると同時に、ノーフィアが史仁とチューマの援護射撃を得ながらビルケルトへと突進していった。
「これで終わりにするよ! わたしたちの攻撃を受け切った事は褒めてあげる。……だから、最後も真っ正面から堂々と喰らい尽くしてあげるね!」
「舐めた口を聞きやがって……! 道連れにしてやる!」
ノーフィアの腕から飛び出した降魔の牙と、二本のルーンアックスが交錯する。
両者互いに退く事なく繰り出した攻撃は双方の身体を完全に貫いた。
「バカな……この俺が……ケルベロス如きに……ッ!」
ビルケルトは信じられないと言った様子で悔恨の言葉を残すと、砕かれた鎧の隙間から目映い光を放ってそのまま拡散して消えていった。
「ノーフィア! 大丈夫か?」
敵が消滅すると同時に崩れ落ちたノーフィアの元へケーゾウが駆け寄る。
彼女は全身から流血して苦しそうに息をしていたが、それでも力一杯笑って見せた。
「へへっ……最後に痛いのをもらっちゃったけど、何とか仕留めたよ」
ノーフィアの笑顔を見て、一同は安堵する。
「手酷くやられたが、やれるだけの事は為したか……。後は突入部隊に任せて、俺たちは一旦後方に退くとするか」
怪我人の搬送準備をしながら、史仁はガイセリウムを見上げる。巨大要塞はただ静かに、そして不気味に佇んでいた。
作者:水無月衛人 |
重傷:アマルティア・ゾーリンゲン(フラットライン・e00119) ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年1月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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