●黄昏に惑う者
太平洋に浮かぶ小島に立つのは、一人の女性だった。
背中には一対の翼。オラトリオだ。
その全身は蒼き鎧で覆われ、その瞳の色も蒼い。
翼の先端もまた、蒼に染まっている。
全身を包む蒼の中で、左胸に突き刺さったルビーの結晶と、そこから伸びる細い金鎖だけが、彼女を現実にとどめる楔のように、赤い輝きを放っていた。
厭わしげに一度ルビーに触れた女性は、黄昏に染まる空と海を仰ぎ見た。
乱れる心の中で、底冷えのするような憎悪が渦を巻く。
「ドラゴン……」
その憎悪の向かう先たるデウスエクス種族の名を、彼女は口にした。
ドラゴンとの戦いの中、コギトエルゴスムと化していくオラトリオ達。その光景を思い描き、彼女は自らの無力さに歯噛みする。
自分の名すらもあやふやな意識の中、一つの地名が自らの赴くべき場所を示す。
三浦半島、城ヶ島。
「守護の蒼。これ以上、ザフィールの名に恥じぬ戦を」
既に出奔し、関わりを断ったはずの血族の名を口にすると、蒼き騎士は飛び立つ。
瞬き始めた星が、彼女を照らしていた。
●蒼の聖騎士
「行方知れずになっていた、オルテンシアさんの行方が判明しました」
セリカがそう告げると、集まったケルベロス達から安堵の溜息が漏れた。
昨年、竜十字島で『ゲート』の位置を確認したケルベロスの一人であるオルテンシア・マルブランシュ(e03232)は、竜十字島を脱出する際に追手のドラゴンから仲間を守り、行方知れずとなっていた。
どうやら竜十字島から追って来ていたドラゴンからは、逃れることができたらしい。
だが、手放しで喜ぶとはいかない状況になっている、とセリカは説明を続ける。
「現在のオルテンシアさんは記憶が混濁した状態となっており、それがすぐに帰還できなかった理由でもあるようです」
おそらくは力を暴走させた悪影響なのだろう。
オルテンシアの姿は、巫術によって降臨させた彼女の一族の祖霊の如き、蒼き聖騎士と化している。
その頭の中では、聖女王の守護騎士であったという一族の伝承や、自身の過去の記憶が入り混じっているようだ。
自身がケルベロスであることさえ、覚えているのか怪しいところだろう。
「さらに問題なことに、ドラゴンへの憎悪に衝き動かされていまして……先の戦いの舞台となった城ヶ島に出現するのが予知されました」
ケルベロス達が制圧した城ヶ島だが、周辺には現在もドラゴン勢力が残っている。
オルテンシアは、なおもドラゴンと戦おうとしているのだろうとセリカは推測を述べる。
「ですが、暴走し、本来よりも大幅に強化されたケルベロスとはいえ、複数体のデウスエクスと遭遇すれば、勝利が保障されるものではありません」
特に近海にいる戦艦竜と遭遇してしまえば、無事に済む見込みは薄い。
「オルテンシアさんの出現地点は、城ヶ島東端の安房崎灯台です。ヘリオンで向かいますので、降下して彼女を包囲し、暴走を止めてください」
今のオルテンシアは、敵味方の見境のない状態になっている。
ドラゴン勢力と戦う妨害をすれば、戦闘は免れられない。戦闘の際には、ミミックに錬成させた蒼い長剣を武器を手に、ケルベロス達を排除しようとするだろう。
「この機会にオルテンシアさんを助けることが出来なければ、もう助ける機会は無いかも知れません……。どうか、よろしくお願いします」
セリカの言葉に、ケルベロス達は力強く頷くのだった。
参加者 | |
---|---|
イェロ・カナン(赫・e00116) |
メロゥ・イシュヴァラリア(宵歩きのシュガーレディ・e00551) |
八柳・蜂(械蜂・e00563) |
エルス・キャナリー(月啼鳥・e00859) |
青泉・冬也(人付き合い初心者・e00902) |
カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112) |
アストラ・デュアプリズム(グッドナイト・e05909) |
蓬栄・智優利(覚醒ヒロインイズム・e13618) |
黄昏時の灯台に、羽音が響く。
蒼に染まった翼をはばたかせ、灯台の傍に降りて来たのはオルテンシアだ。
陸地に差し掛かると同時に指先に引っかけるようにしてぶら下げていたミミックを放り出し、彼女はその傍らに着地する。
青い鎧を身に着けた彼女は、ドラゴン勢力の気配を探るように城ヶ島を見渡した。
「島内にはドラゴンは、いないか……でも、奴らに仕える者達を許してはおかない」
竜とその眷属に対する、果てしない怒りが彼女の身を震わせる。
その時、不意に、彼女の髪が強い風に揺れた。
聞こえて来るヘリのローター音に頭上を振り仰いだ彼女の目に映るのは、降下して来るヘリオンと、そこから飛び降りるケルベロス達の姿だった。
●
「何者? 邪魔をするのであれば……」
飛び降りて来たケルベロス達を警戒の目で見据えるオルテンシア。
その姿を、メロゥ・イシュヴァラリア(宵歩きのシュガーレディ・e00551)は胸を締め付けられるような思いで見つめた。
「遅くなって、ごめんね。星の導きを受けて、気儘な風に誘われて迎えに来たわ」
穏やかに声をかけるメロゥ。
しかし、オルテンシアはその言葉にいぶかしげな顔をするばかりだ。
記憶が混濁していると言ったヘリオライダーの言葉を、エルス・キャナリー(月啼鳥・e00859)は思い出す。
(「もう二度と仲間を失いたくない。あんなこと、もう嫌なの……!」)
ドラゴン勢力のゲートがある『竜十字島』を発見した時のことを思い出し、エルスは目頭が熱くなるのを感じる。
だが、今は涙を流すわけにはいかないと、彼女は強くオルテンシアを見据えた。
「貴方の悲しい気持ちが、ちうりんの中に、流れてくるよ……! やめよう? もう帰ろう☆」
蓬栄・智優利(覚醒ヒロインイズム・e13618)が、そう呼びかける。
周囲には所属する旅団の団長や団員、それに城ヶ島制圧戦で共に戦ったケルベロス達が眼前におり、さらにヘリオライダーのセリカから場所を聞いて応援に駆け付けた旅団【空々亭】や【九龍城砦】の団員をはじめとしたケルベロス達も、オルテンシアの暴走を確実にここで止めようと遠巻きに状況を見守っていた。いざとなったら自分が盾になろうとする者、ドラゴン勢力による妨害が無いよう、警戒に当たる者もいる。
等しく共通する思いは、オルテンシアを必ず救うということ。
「もう大丈夫だから、落ち着いて!」
『貴女を大切に想う人達を、憎しみや悔しさで喪う前に……オルテンシアさんである自分を思い出して』
『あの局面を潜り抜けた命をここで終わらせてはいけない』
アストラ・デュアプリズム(グッドナイト・e05909)が、スマホに遠巻きに様子を見守る者達からのメッセージを映し出す。
だが、それを目にしてもなお、オルテンシアは戦う姿勢を崩していなかった。
「そこを退いてもらえる? これから戦いへ行かなければいけないのよ」
「悪いが、ドラゴンのところへなんか行かせないぜ」
「無謀な戦いをする貴方を止めに……いや、助けに来たんだ」
イェロ・カナン(赫・e00116)と青泉・冬也(人付き合い初心者・e00902)が呼びかける。だが、彼女が口にした言葉は、戦意を示すものだった。
「そう、邪魔をするの? ……分かったわ」
軽く言うと、彼女は背後に控えていたミミックのカトルに手を差し伸べる。
「カトル、剣を出しなさい。早く」
困惑するように体を震わせるカトルに、オルテンシアは怪訝そうに再度手を伸ばす。
「どうして拒むの? あれは私の敵よ」
渋々といった様子で口を開けたミミックの中から、青い長剣がオルテンシアの手に収まった。エクトプラズムでしかないはずだが、主の暴走に伴ってカトルもまた力を変質させているのだろう。剣は剣呑な冷たい輝きを帯びてケルベロス達へと向けられる。
「やる気ですか……」
カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)が警戒した次の瞬間、青の聖騎士は加速した。燐光と共に、瞬く間に距離を詰めたオルテンシアの蒼き長剣の切っ先が、光を帯びて、メロゥの下げるペンデュラムへと伸びる。
「貴方は……邪魔よ」
冷たい声と共に、鈍い音が海に響いた。
●
「っ……!」
「仕損じたわね」
オルテンシアの切っ先は、メロゥへと届いてはいなかった。
代わって貫かれたのは、八柳・蜂(械蜂・e00563)の地獄化した左腕だ。痛みをこらえる蜂の足元で、鎖が魔法陣を描き始める。
「オルタさん、蜂が知ってるあなたは包丁も握れないのに。慣れない刃物で、本領発揮できますか?」
腕に食い込んだ剣を引き戻そうとする力の強さに内心で瞠目しながら、蜂は密着したままに言葉を放つ。
「それに、自分の手で大切な人達が傷つくなんて……まるで悪夢ですよ。だからせめて、メロゥさんの事だけでも思い出して」
「邪魔立てをしないで貰える?」
噛み合わない言葉と同時に鎧に包まれた足で蜂を蹴りつけ、強引に剣を引き抜くオルテンシア。
彼女の逃走経路を阻むように動きながら、カルナは無念そうに走り出す。
「互いに苦しい時間です。早く終わらせましょう」
「ああ、全くだ……」
狙いを定めるべく位置取りをしていく冬也。その射線を妨げるように主の盾となる位置へ動いていたミミックに声を向けたのはイェロだった。
「カトル、ご主人様は任せなさいって。必ず連れ戻してみせるから!」
その声を受け、ミミックのカトルは僅かに逡巡した様子を見せたが、ぴょこんと頭を下げるような動作と共に、攻撃を止め、蓋を閉めた。蜂がその様子に目を細める。
「有難う、オルタさんの傍にいてくれて。絶対に助けるから、動かないでね」
「カトル……後で折檻よ」
主の意に反した行動をとるサーヴァントの姿に、オルテンシアが苛立ち混じりに剣を振るう。同じくミミックをサーヴァントとするアストラが呟いた。
「褒めてあげるべきだと思うけど」
「オルテンシアさんが、そう思えるようにしてあげましょう……いきます!」
舞うように近付いたカルナの足が流星の如き煌めきを帯びた。
跳び退るオルテンシアへと、伸身の飛び蹴りの一撃が叩き込まれる。
強かに蹴りつけられ、転倒しようとするのを剣を地に刺して堪えたオルテンシアを覆うように襲い掛かるのは、エルスの呼び出した幻影の竜だ。
「弾幕薄いよ、なにやってんの!」
「これからやるところです……!」
スマホを叩くアストラのコメントを受けながら魔導書を手繰るエルスによって、幻影の竜が炎を吐き出す。
(「オルテンシアさんに、ああさせたのは、私だから……」)
ならば今は彼女の暴走を鎮めるために戦うのだと、エルスは声を張り上げた。
「オルテンシア様、私は無事で帰還したの。竜十字島の情報もちゃんと皆に届けたよ……! だからもう帰ってきて! 清十郎様とリカ様の分も、ちゃんと生きて!」
「くぅ……!!」
頭痛を堪えるようにしながら剣を一振り、オルテンシアは幻の炎を切り払う。
その一瞬の隙を突き、智優利は狙いを定め、気力を集中した。
「パワーチャージ! そしてドーンッ☆」
放たれた気咬弾は、勢いよくオルテンシアの胸元へ着弾した。
「やった! ……って……」
「その程度で、止まるものか」
動きを止める様子もない蒼騎士の姿に、智優利は勿論、他の者達も渋面を浮かべる。
暴走するオルテンシアの力は本来のそれを大きく上回っている。
「けど、この空と海に浮かぶ夕陽に少しでも記憶が重なるなら……待っててくれたって期待しても良いはずだよな」
混濁する記憶の中でも、オルテンシアは自分達の元へ帰還することを望んでいる。
そう確信しつつ、イェロはオルテンシアへと狙いを定めた。放たれた矢が、オルテンシアを追っていく。
(「本当は、誰もあなたを傷つけたいわけではないのに」)
蜂やイェロと切り結ぶオルテンシアの姿を見ながら、メロゥは思う。
それに、オルテンシアだって、本当は自分達を傷つけたいはずがないのだ。
「メロが見たかったのは、そんな悲しそうな顔じゃないわ」
凍てついたかのような騎士の顔に、メロゥは悲しみの情を見る。
再び、オルテンシアに笑顔を取り戻す。その決意を胸に、メロゥは詠唱を口にした。
「満ちる空の輝き。降り注ぐ星の、瞬きの歌が――ねぇ。あなたにも、聴こえるでしょう?」
暮れゆく空から目も眩まんばかりの星の光が降り注ぎ、オルテンシアを包み込んだ。
星光に照らされ、蒼き騎士の鎧が輝いた。
「まるで、サファイアのよう……」
呟きながら、蜂はオルテンシアが繰り出す剣を受け止めた。傷ついた体に痛みが走るが、アストラがすかさず動画を投稿。蜂が癒されると共に、再びスマホの画面に応援のメッセージが映し出される。
『私、まだまだオルテンシア様とお話ししたいことがたくさんあるんです! だから、ちゃんと皆で一緒に帰りましょう』
『依頼でハロウィンパーティしたり芋煮したり、そういうのすげー楽しかったんだぜ。またそういうの一緒しよーぜ!だから勝手に居なくなんなよ!』
『お前さんを待つ者たちのところへ帰るんだ。大切な者が戻らないなんて悲劇をこれ以上増やすな。どうか、頼む』
知己の者達、そして竜十字島の事件で友を亡くした者達。面識の有無を問わず、彼らの願いを目にし、オルテンシアの表情が一瞬揺れたのをアストラは見逃さなかった。
「心配している人も沢山いるんだから……ちゃんと、戻って来てよ!」
アストラの声と共に、オルテンシアを案ずる者達のコメントは流れ続ける。
●
戦いはさほどの時間をかけることなく、ケルベロス達の優位に傾いていく。
動きを封じようとするケルベロス達の攻撃は、暴走するオルテンシアの動きを確実に鈍らせていった。イェロや蜂、それにアストラのミミックが攻撃を通すまいと奮戦し、その間にカルナや智優利、メロゥが、確実な攻撃で動きの自由を奪っていく。
あるいは、その動きの遅滞には、オルテンシア自身の本来の意識も原因の一つとしてあったのかも知れない。
「何故、私の……ザフィールの力は……」
「どんなに力があろうとも、所詮一人では出来る事は高が知れている」
右手で銃の引金を引き絞った冬也の左手が扇ぐように撃鉄を操作、リボルバー銃から連続の銃声が鳴り響いた。銃とアームドフォートから放たれる弾幕が、オルテンシアの逃げ場を奪わんとする。
「魔空回廊の時を思い出せ。あれだけの敵をどうやって踏破した?」
「魔空、回廊……」
「忘れたとは言わせない。皆で力を合わせたからだろう!」
「そうだよ、一人で戦い続けることなんてないんだからね!」
両手を広げ、オルテンシアに抱き着こうとしながら、智優利が言う。冬也の弾幕に動きを鈍らせながらも、抱き着かれるのを避けるべく剣で智優利を牽制するオルテンシアへと、横合いからカルナが切り込んだ。
「思い出してください。貴方は勇敢で誇り高いケルベロスの戦士です。こんな処で、無策にドラゴンへ突っ込む無謀な方では無いはずです」
だからこそ信頼すべき人なのだと、月弧を描いた刀が、オルテンシアの長剣と噛み合い金属音が響いた。
鍔迫り合いに持ち込もうとしたカルナは、しかしオルテンシアの長剣に力が注ぎ込まれるのを見て咄嗟に距離を取るべく踵で地を蹴る。
だが、それよりも早く周囲にいたケルベロス達へと、剣から青い衝撃が放たれた。
咄嗟の判断で飛び出した蜂とイェロが、仲間達を庇いそれを受け止める。
蜂は自分の首元で、オルテンシアから贈られた首飾りが音を立てるのを感じながら、鎖の守りをさらに広げた。イェロも同じく、サキュバスミストを放出して手傷を癒す。
「オルタさん……過去の憎悪に飲み込まれて、今を生きる自分を忘れないで」
「もうそんな風に、ひとりで戦わなくて良いから。何も背負わなくて、良いから。――帰って来い、オルテンシア」
2人からかけられる言葉に、オルテンシアの表情が歪む。
「だが、私はドラゴンを狩らなくては──」
「憎悪に飲まれるな、自分を取り戻せ! お前にはまだやるべき事や……帰るべき所がある筈だ……!!」
冬也の言葉に背中を押されるようにして、メロゥが蒼石の飾られたペンデュラムをかざし、前へ出た。蒼石を宿したペンデュラムは、オルテンシアの胸に突き刺さった赤い宝石と形を似通わせているようにも見える。
剣を振るわんとしたオルテンシアの動きを、エルスの放った禁縄禁縛呪が封じ込めた。
「お願い、一緒に帰りましょう……!」
「ねぇ、聴こえる? メロの声を、聴いて。──メロは――私は、あなたが大好きよ」
だから、この手が届くまで、いくらでも手を伸ばし続ける。
ただ再び共に歩くことを望み、メロゥが撃ち放った時空凍結弾は、一直線にオルテンシアの胸へと吸い込まれた。
●
オルテンシアの纏っていた青の鎧が音もなく消えた。
髪に咲く花が、翼の先端が、赤の色を取り戻していく。
「かつて朽果てた時空より甦れ──」
本来の姿へ戻りゆくオルテンシアの口から静かに小さく詠唱がこぼれ、蒼き騎士のエネルギー体が現れる。
「わわっ、大丈夫?」
先程までの彼女のような姿に、一瞬智優利が驚きと警戒を顔に浮かべる。だが、騎士のかざした剣の光は、オルテンシアから受けたケルベロス達の傷を癒していった。
ケルベロス達の傷が癒されるのを見届けると、オルテンシアの体が傾く。そのまま意識を失い、崩れ落ちる彼女を、飛び出したエルスが抱き留めた。
「お疲れ様でした……おかえりなさい」
喜びの笑顔のまま、ぼろぼろと大粒の涙をこぼしながら、気を失ったオルテンシアを抱き留めるエルス。
その姿に、遠巻きに状況を見守っていたケルベロス達から、歓声が上がった。アストラのスマホの画面が歓喜のコメントで埋め尽くされる。
魔空回廊からの長い懸念の一つがようやく解決を迎えたことを感じ取り、カルナと冬也は他の戦友達と共に、それぞれに安堵の息を漏らす。
「……良かったです」
「ですが、今の状態でドラゴン勢力や戦艦竜に発見されてもしたら元も子もありません。すぐにここを離れましょう」
冬也の言葉に、イェロが頷いた。
「ああ。帰ったら、とびっきりの冒険譚を聞かせてくれるって約束だからな」
蜂と協力し、オルテンシアの軽い体を背負い上げる。
元の力に戻ったミミックのカトルが、ケルベロス達の後ろに続いた。
「目が覚めたら、また改めて、おかえりなさいを言ってあげないと」
メロゥは呟き、気を失ったままイェロに背負われるオルテンシアの手をそっと握る。
夜の帳が、城ヶ島に降りる。
惑いの刻は終わり、繋いだ手が離れることはもはやない。
城ヶ島大橋の向こう、灯る街の灯りがケルベロス達を祝福していた。
作者:真壁真人 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年1月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 87/素敵だった 18/キャラが大事にされていた 2
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