武装竜亀、再び!

作者:雷紋寺音弥

●鉄壁城塞
「お集まりいただき、ありがとうございます。皆さんには、引き続き戦艦竜『ドラゴン・タートル』への攻撃をお願い致します」
 集まったケルベロス達を前に語るセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)の表情は、いつにも増して鋭く険しい。
 彼女の手に握られた数枚の資料は、以前に戦艦竜と対峙した者達が決死の思いで集めたもの。それを提示しつつ、セリカは改めてケルベロス達に語り出した。
「まず、先に基本的な情報を確認させていただきます。城ヶ島の南を守護していた戦艦竜の大きさは10メートルほど。戦艦のような高い戦闘力、防御力を誇り、城ヶ島南からの上陸作戦を断念する要因となりました」
 城ヶ島制圧以後、戦艦竜は相模湾へと移動し航行する船舶を襲っている。これを撃破しない限りは湾内の安全が保障されず、人々の生活が脅かされ続けてしまう。
 唯一の弱点は、戦闘を終えても回復手段を持たないという点だろう。これを突いた波状攻撃の第一陣が、先日に帰還したばかりだ。
「前回、出撃された方々の調査の結果、敵に関していくつかのことが判明しました。詳しくは、お渡しした資料をご覧ください」
 そう言ってセリカが手渡して来た資料には、戦艦竜に関する様々な特徴が記載されていた。
 コードネームはドラゴン・タートル。その名の通り亀のような身体を持ち、背中には多数の砲台を備えている。砲塔は前後左右に隙間なく敷き詰められ、死角のようなものは存在しない。
 頭部の大半は巨大な口が占めており、小型の船舶なら強引に飲み込んでしまえる程である。この口からは猛毒のブレスを吐き出して、複数の相手を纏めて攻撃できることが確認されている。
 また、他にも身体を回転させることで強靭な尾による薙ぎ払いを行える上に、最も人数の多い隊列を狙って執拗に攻撃を繰り出して来ることも判明している。普段は海底に潜み、海上の光に惹かれて姿を現すようだが、戦闘中は目の前の敵を排除することに専念して来る。
「迂闊に並べば、集中攻撃を受ける可能性もあります。敵は攻撃の命中率こそ低いですが、それを手数で補うことで、火力の無駄を少しでも減らすような戦い方をして来ます」
 巨体故に回避力は低いものの、油断は禁物である。敵は守備を優先した迎撃態勢を取るようで、持久戦には極めて強い。下手にチマチマ削っていては、体力の差を利用して強引に押し切られてしまう。
 唯一の弱点らしい弱点は、物理防御に特化していることで、魔術的な攻撃への耐性に難があるかもしれないことだ。それらを上手く突くことができれば、敵に大きな痛手を与えることも可能だろう。
「敵の確認された海域までは、前回同様にクルーザーで向かっていただきます。ただし、敵は水中戦を仕掛けてくる上に、水中でも能力が低下することはありません」
 前回はクルーザーを敵の目のつく場所に停泊させてしまったため、撤退先を悟られた挙句、一撃で撃沈されてしまった。真冬の海を泳いで帰りたくないのであれば、船の扱いにも注意が必要となる。
「敵の損傷は軽微であり、恐らくは全体の一割程しか被害を受けていないでしょう。この遅れを取り戻すためには、せめて今回は全体の三割程のダメージを与えなければなりません……」
 強大な戦艦竜を相手に、総体力の三割ものダメージを一度に与える。なかなか困難な任務だが、ここで成し遂げられなかったが最後、後に続く者達の負担が加速度的に増すことになる。
「とても危険な任務ですが、それでも皆さんなら大丈夫だと信じています。次に繋がる戦果を残せるよう、宜しくお願い致します」
 危険を承知で戦士を死地へと送り出す。だが、そんなセリカの瞳には、不安ではなく信頼の色が宿っていた。


参加者
レナード・ストラトス(誇りを捨てたスナイパー・e00895)
モモ・ライジング(鎧竜騎兵・e01721)
天霧・香澄(ヤブ医者・e01998)
オーネスト・ドゥドゥ(アーリーグレイブ・e02377)
ヤクト・ラオフォーゲル(銀毛金眼の焔天狼・e02399)
葛葉・二十重(葛の葉の末裔・e09992)
アドルフ・ペルシュロン(緑の白馬・e18413)
柚野・霞(玄鳥の魔術師・e21406)

■リプレイ

●嵐の前
 真冬の相模湾は、風一つなく静かだった。
 小さな波が、微かに揺れる。だが、それは本当に、穏やかなる静寂と言えるものだろうか。
 漆黒に染まった海からは、およそ生命の息吹が感じられなかった。眠っているから静かなのではない。ただ、音を立てる者も騒ぎ立てる者もいないというだけだ。
(「もしかして、この海の魚達は既に……」)
 一瞬、嫌な予感が葛葉・二十重(葛の葉の末裔・e09992)を掠めて消えた。不気味な程の静けさ。否応なしに死を連想させる冷たさに、思わず背筋に悪寒が走る。
「戦艦竜が手数で補うなら的の数増やしてやるっす」
 そんな中、アドルフ・ペルシュロン(緑の白馬・e18413)はクルーザーで牽引して来た手製の筏に、次々と光源を取り付けていた。
 敵は光に反応して現れる。どこまで効果があるかは不明だが、囮の数は多いに越したことはない。
 やがて、目的の海域に到着したことで、変化は唐突に訪れた。
 冷たく広がる大海原。その一角が突如として盛り上がり、囮の筏が転覆した。
「現れやがったか……」
 愛用の銃を静かに構えつつ、レナード・ストラトス(誇りを捨てたスナイパー・e00895)は後方から真っ直ぐに敵を見据えて言った。
「でかい亀……美味そう」
 ヤクト・ラオフォーゲル(銀毛金眼の焔天狼・e02399)が、思わず垂れた涎を拭う。彼にとっては巨大なドラゴンでさえも、野生の本能に従い狩猟する対象でしかない。
「鉄壁城塞の戦艦竜、ドラゴン・タートル……。一割しか削れてないなら、三割どころか半分近く削ってやりましょう!」
「そうですね。次につなげるためにも三割と言わず、できる限り削り切らないと……」
 モモ・ライジング(鎧竜騎兵・e01721)の言葉に頷く柚野・霞(玄鳥の魔術師・e21406)。多少の無茶は承知の上だ。その結果、深手を負うことになろうとも、覚悟は既にできている。
「三割なんて生易しいことを言うつもりはねぇ! ぶっ殺してやる!」
 景気付けに、花火を一発打ち上げて、天霧・香澄(ヤブ医者・e01998)は躊躇うことなく冬の海へと飛び込んだ。が、空中で四散した鮮やかな光には目も暮れず、戦艦竜は怒りに満ちた咆哮を上げて、背中の砲塔を一斉にケルベロス達へと向けて来た。
「来るぞ! 避けろ!!」
 そう、オーネスト・ドゥドゥ(アーリーグレイブ・e02377)が叫ぶと同時に、多数の砲弾が流星の如く冬の海へと降り注いだ。着弾した場所から激しい水柱が上がり、囮の筏が次々と木っ端微塵になって行く。
 敵は光に釣られるが、しかしそれで侵入者を見逃すこともない。縄張りを侵した者が目の前にいる以上、捕食や屈性よりも戦闘を優先するのは当然のこと。
 砲撃による洗礼の余波で、音もなく揺れていた海がにわかに激しくうねり出した。流れて来た雲が月を覆い隠し、闇に包まれた海域で、浮沈艦との戦いが幕を開けた。

●厄海の死闘
 開かれた戦端。戦艦竜の砲撃に続け、先に仕掛けたのはモモだった。
 攻撃を終えた敵が海中に潜ったのと同時に、ヒールドローンを展開する。命中率が低いとはいえ、あの砲撃の威力は脅威だ。まずは防御を万全に備えなければ、命がいくつあっても足りはしない。
「まずは、足を止めさせてもらうぜ!」
 すかさず、斬りかかる香澄。左右、それぞれの長剣に星辰の力を宿して斬り付ければ、戦艦竜の巨大な身体が衝撃によって微かに揺れた。
 やはり、物理的な力のみで攻撃するよりも通りがいい。敵の魔術耐性に穴があるのは、もはや間違いない事実だろう。
「やっぱり、亀は美味そうだな。こんがり焼こう」
 今宵の晩餐を思い浮かべ、続けて仕掛けたのはヤクトだった。だが、彼が蹴撃によって打ち出した三日月状の炎は、敵の甲殻に命中こそすれ、大した被害を与えてはいなかった。
 堅い外殻は打撃を受け流し、斬撃を通さずに受け止める。ここまでは、情報にあった通り。闇雲に力で押し切ろうとしても、それでは敵の体力に圧倒されてしまう。
「接敵して仕掛ける。悪いが、援護は頼んだ」
 それだけ言って、オーネストが仲間達に背中を預けて飛び出した。
 巨大な敵と戦う際の定石。それは相手に貼り付いて、ひたすら零距離から殴ることだと。
「無理ですわ……。相手は強大なデウスエクスなんですのよ!」
 オーネストの身を案じた二十重が叫ぶが、しかし彼は止まらない。砕け散った筏の残骸を足場にしつつ、仲間達の援護を受けながらも敵へと肉薄する。
「今は、できるだけのことを、全力でやるだけっす!」
「負傷は覚悟の上。ですが、死ぬつもりもありません!」
 アドルフの放った気咬弾が敵へと食らい付き、霞がオーネストへと生命を賦活する電撃を飛ばす。続けて、ライドキャリバーのカブリオレが機銃の雨をお見舞いするが、それは敵が横薙ぎに繰り出して来た尾の一撃で弾かれた。
「この巨体で、器用に相殺するとはな……。だが、取ったぞ!」
 間髪入れず、オーネストが敵の砲塔に取り付いた。その瞬間、どこからか飛来した魔法光線の一撃によって、戦艦竜の身体がぐらりと揺れた。
 寸分狂わぬ長距離射撃。レナードの放ったものだ。口では適当なことを言っている彼だが、しかし腕は一流である。
「だ、大丈夫ですわ……。こちらには、攻撃が来ることはない……はずですわよね?」
 それでも、未だ怯む様子さえ見せない戦艦竜を前にして、二十重は早くも震えていた。
 敵の砲撃の威力は、先程の一撃を持って十分に知っている。あんなものを食らったら、自分は元より他の者でも、早々長くは持たないだろう。
 とりあえず、まずは少しでも味方の損害を減らすべく、ケルベロスチェインで守護の魔法陣を展開して行く。前衛に立つ者が倒れたら最後、次に狙われるのは自分かもしれない。そう考えると、味方を支援するのにも、ともすれば力が入ってしまう。
 これで、下準備は整った。後は全員で、ひたすら敵を殴るだけ。早くも戦いの流れは自分達へ向いて来たかと思うケルベロス達だったが、果たして戦艦竜もまた然る者で。
「……っ! やはり、一筋縄では行かないな」
 オーネストを振り払うべく、容赦ない尾の一撃を繰り出して来たのだ。しかも、そのまま身体を回転させて、前衛に立つ他の者までも巻き込んで来たのだから、堪らない。
 敵に貼り付いたところで、攻撃を受けないというわけではない。ましてや、同じ場所に貼り付き続けることは、敵に狙ってくれと言っているようなものである。
 足を止めれば、確実に敵の餌食にされる。目の前の厳しい現実が、文字通り強大な壁となって、ケルベロス達の前に立ちはだかっていた。
 
●痛みを越えて
 砲撃が空を裂き、巨大な尾の一撃が海を割る。猛毒の吐息が海上に広がり、触れたもの全てを腐らせて行く。
 戦いが長引くに連れ、戦況は徐々にケルベロス達にとって不利なものとなっていた。
 敵は多数の目標を同時に狙うことを優先し、最も人数の多い隊列を狙ってくる。故に、今回は前衛が中心となって狙われることになったが、それは即ちディフェンダーの負担を増大させることに他ならなかった。
「くぅ……。さ、さすがに、こう何度も食らうと、キツイっすね……」
 力任せに薙ぎ払われた尾の一撃を諸に受けて、アドルフの顔が苦悶に歪んだ。自分も狙われながら、同時に他の者を庇っているのだ。結果、盾を担う者だけが、必要以上に敵の脅威に晒されてしまっている。
 見れば、既に彼の相棒であるカブリオレは、攻撃に耐え切れず消滅してしまった後だった。これで前衛と中衛の数は同数。次は、どちらが狙われるか判らない。
「俺が下がる。後は任せたぜ」
 他の者達が一斉に攻撃を仕掛ける中、香澄は敢えて一手を潰して中衛へと下がった。敵の狙いが、これ以上前衛に集中するのは拙い。そんな彼の目論み通り、次の手番に戦艦竜は、その狙いを香澄達へと定め。
「……っ! あ、危なかったわね……」
 頬を掠めた猛毒のブレスに、モモが思わず溜息を一つ。
 敵の攻撃は命中率が低い。とはいえ、何もしない状態であれば、二回に一回くらいは当たってもおかしくない。
 あれの直撃を食らっては駄目だ。改めて敵の強大さを確認しつつも、モモは両手のリボルバー銃を構えて銃弾を放つ。狙うは海上に漂う筏の残骸。あれを利用し、跳弾で死角を狙えれば。
「効いている? やはり、魔術的な攻撃には弱いのか!」
 敵の弱点を確信し、オーネストもまた攻勢に出た。小動物へと姿を変えた魔法の杖へと魔力を込めて射出すれば、続けて放たれたのはレナードによる正確無比な魔弾の狙撃。
「開けよ世界。過去未来の因果を超えて、この一撃を与える為に」
 どこからともなく飛来した、特製のウイルス入り弾薬。因果を歪め、空間を超え、それは敵を内部から徐々に侵食し。
「さすがは、レナードのおっさんだな。こいつはオマケだ。受け取っとけ!」
 敵の体内に仕込んだウイルスを、香澄が容赦なく爆破させる。衝撃に、さすがの戦艦竜も身体を捩って雄叫びを上げ、口からドス黒い何かを吐き出した。
「俺の心は割りと喰いしん坊らしくてな……。奪われたくなければ、死ぬ気で抵抗してみせな」
 これはチャンスだ。両腕より放つ焔を二匹の狼顎とし、ヤクトは敵の鰭を千切り取らんと差し向けた。紅蓮に包まれる敵の巨体。だが、それさえも掠り傷と言わんばかりに、敵はすぐさま体勢を立て直して動き出す。
「前衛の回復は、自分に任せるっす! 我は優しき北風に希う、万難排す一陣の風をここに!」
 敵の瞳から未だ闘志と憎悪が失われていないことを悟り、アドルフが風神の力を呼び覚ます。二十重もまた、自ら溜めたオーラを解き放って傷を負った仲間達を癒して行くが、いかんせん回復量が絶対的に不足していた。
「これだけ攻撃を受けて、まだ動けるのですか? だったら……!」
 翼を広げ、霞が飛んだ。ファミリアロッドをツバメに変えて、飛翔するブーメランの如く射出する。それは美しい弧の形に軌跡を描き、戦艦竜の身体を鋭く、しなやかに切り裂いたが。
「……っ! しまっ……!!」
 続けて放たれた敵の砲撃が、容赦なく霞の翼を貫いた。衝撃に身体が揺れ、雷を放つ長杖が手から零れ落ちる。
 翼を折られた痛みと、そして襲い掛かる滑落感。回る世界を目にしつつ、彼女はそのまま静かに意識を失った。

●近くて遠い夜明け
 浮沈艦は沈まない。数多の猛攻を受けても尚、ドラゴン・タートルは未だ綻ぶ様子を見せようとはしない。
 その身を炎に焼かれ、猛毒に蝕まれたところで、戦艦竜にとっては些細なダメージでしかなかった。時間を掛ければ効果を現したのかもしれないが、持久戦は戦艦竜にとっても得意とする戦い方だ。
 削りが効果を発揮するよりも先に、ケルベロス達の方が明らかに消耗してしまっていた。おまけに、肝心の攻め手であった香澄が下がったことで、今や手数だけでなく瞬間火力さえも低下している。
 再び迫り来る砲火。アドルフが身を挺して庇うが、彼一人だけで中衛を守り切ることは不可能だった。
「分の悪い賭けは嫌いじゃないけど……さすがに、無理……か……」
 限界を迎え、モモが倒れた。それだけでなく、ヤクトもまた悔しそうに手を伸ばしつつ、筏の残骸の上で力を失った。
「くっそぉ……。せめて、鰭の一枚だけでも……」
 今晩は亀鍋と決めていたが、それが叶うことはなかった。そもそも、鰭を奪う程のダメージを与えられていたら、敵を撃破できていたはずだ。
「結局、残ったのは俺だけか……」
 身代わりになって倒れたアドルフを横目に、香澄が言った。皮肉なものだ。本来であれば、人を助けるはずの医者である自分が、誰かを盾に生き残ってしまうとは。
 敵には既に十分な損害を与え、しかし味方の被害も甚大。当然、ここは退くべきなのだが、香澄は黙って引き下がるつもりなど最初からなかった。
「勝利の雄叫びな……。あんま人間をナメてんじゃねぇよ、ドラゴン様よ」
 こうなれば、己の力を暴走させてでも戦艦竜を仕留めてやる。そう、心に決めた覚悟の色を、他の者も感じ取ったのだろうか。
「そこまでだ。……撤退するぞ」
 暴走寸前の香澄を、オーネストが諭すようにして制止した。
 ドラゴンは究極の戦闘生物。たった一人で戦ったところで、結果はおのずと見えている。
 ドラゴンにも色々といるが、弱いものでもケルベロス8人と互角以上に戦う力を持っていた。戦艦竜ともなれば、その戦闘力は並ではない。
「普通に考えたら、三割削るだけでも十分すごいってのは分かるんだよ。そこを更に超えてこその男ってもんってのもな。だが……」
 ふと、辺りに倒れ漂っている仲間達へと目をやるオーネスト。香澄が暴走したところで、倒れている彼らが戦いに巻き込まれれば、無駄な死人を増やすことになり兼ねない。そして、強大な戦闘力を誇る戦艦竜に、たった一人で暴走して挑んだところで、これまた無駄な死人を増やすだけにしかならないと。 
「もう駄目ですわ! おしまいですわ! 助けて! お母様!」
 おまけに、二十重に至っては、もはや完全に戦意を喪失してしまっていた。撤退する際の荷物が一つ増えてしまったようなものだ。彼女を放置しておけば、遠からず敵の的にされて殺される。
「旦那に死なれちゃ、俺の銃弾を作ってくれるやつがいなくなるからな。それに、堂々とサボって酒を楽しめなくなるのも御免だぜ」
 レナードが、にやりと笑った。だが、その瞳は決して笑ってなどいない。
「ちっ、仕方ねぇ。今日のところは、レナードのおっさんに免じて退いてやるが……」
 次は必ず仕留めてやる。そのために必要なこと、必要なものは覚えたと。
 倒れた仲間達を回収し、香澄を始めとしたケルベロス達は、敵の砲撃を掻い潜りながらも闇に閉ざされた海域を後にした。
 雲の切れ間から顔を出す月は、しかし直ぐに新たな雲に隠されてしまう。後方より響く戦艦竜の雄叫び。相模湾の夜は、まだ明けない。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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