浮島戦艦竜を撃沈せよ!

作者:雪見進


 ここは相模湾。そこで漁をしている船の一隻が何かに気づいた。
「……なんだあれ?」
「山?」
 それは山のように見える土と木々が見える何か。それが水面をゆっくりと動いていた。常識で考えるならば、植木などを沢山積んだ貨物船のように見えなくもなかったが、船体は見えず、草の生えた土やや苔の生えた岩が見えるだけだった。
「グルルルル」
 その山から唸り声が聞こえた。
「ひ!」
 その『山』に猛獣が住むのだと勘違いした漁師は、慌てて船を急発進させたのだが、慌てたおかげで方向を間違え船はその『山』へ突撃。そのまま乗り上げて船を崩壊させてしまった。
「うわわわわ」
 慌て混乱した漁師たち。何とか『山』に命からがら登るも、とある事に気づいた。
「お、おい……これってもしかして……」
 そんな状況でも、この『山』が何だか気づいた。
「竜だ……」
 この相模湾に浮かんでいた『山は』巨大な竜だったのだ……。

「楓さんの調査で、城ヶ島の南の海にいた『戦艦竜』が、相模湾で漁船を襲うなどの被害を出している事が判明しましたっす」
 そう説明するのはダンテ。狐村・楓(闊達自在な螺旋演舞・e07283)の調査によって分かった内容を丁寧に説明している。
 戦艦竜は、城ヶ島の南の海を守護していたドラゴンで、身体に戦艦のような装甲と砲塔を持ち、非常に高い戦闘力を持っていた。
 城ヶ島制圧戦で、南側からの上陸作戦が行われなかったのは、この戦艦竜の存在があったからだ。
「このままでは相模湾の海を安心して航行できなくなってしまうっす。ケルベロスの皆さんには、クルーザーやボートなどを利用して相模湾に移動、戦艦竜を撃退して欲しいっす」
 戦艦竜は、強力な戦闘力と引き換えに、ダメージを自力で回復する事ができないという特徴がある事が分かった。
 海中での戦いとなる事もあり、一度の戦いで戦艦竜を撃破する事は不可能だが、ダメージを積み重ねる事で、いつかきっと撃破する事が出来ると思われる。
「厳しい戦いになると思いますが、皆さんなら出来ると信じてるっす」
 そうダンテは説明するのだった。
「この戦艦竜はちょっと大きいかもしれないっす」
 今までに何体かの戦艦竜が確認されケルベロスの皆が撃退に向かった。その情報と照らし併せても、通常よりも大きい可能性があるとダンテは説明する。しかし、目撃情報などを整理すると、流木などの影響でそう見えるだけの可能性が高そうだ。
 しかし、その影響で戦艦竜の砲塔や装甲が見えなくなっているのだった。
 ただ、体格的に考え、耐久力が高いのは間違い無いだろう。反面、命中力、回避力は低い事が想定される。さらに、その動きから撤退は容易だと推測出来る。
「この戦いで撃破は不可能でも、次に繋がる戦果を残せるように、最初は調査をメインにするのも一つの方法かもしれないっす」
 そうダンテは説明する。その言葉の裏には無事に帰ってきて欲しいという想いが非常に強く込められているのだった。

「戦艦竜か……」
 その話を聞き、静かに準備を整えるウィリアム。その胸中は分からない。ただ、一つ……無事に帰ってくる事。そして、仲間を無事に帰還させる事があるのだけは分かるのだった。


参加者
那々宮・しあの(パッションローズ・e01100)
森沢・志成(なりたてケルベロス・e02572)
御白・雪之嬢(おふとぅんの使者・e03194)
エア・イミテーション(虚飾レプリカントドール・e04985)
カナメ・クレッセント(羅狼・e12065)
トゥル・リメイン(降り注げ心象・e12316)
勢門・彩子(悪鬼の血脈・e13084)
マイヤ・マルヴァレフ(オラトリオのブレイズキャリバー・e18289)

■リプレイ


 ここは相模湾の海岸線。そこをケルベロスたちが歩いていた。
 そんな中で一際目を引くのが御白・雪之嬢(おふとぅんの使者・e03194)の服装。
「みゅ……未知の生物の調査……これはそう、いわゆる一つの探検……」
 なにを以て未知とするのか、色々と意見が分かれそうだが、とてもやる気な様子。
「ならば、しなければなるまい……伝統の衣装を……」
 そんな彼女の服装はTV番組で登場しそうな探検隊の様な格好。洞窟に入る予定も無いのに付けているヘッドライト(防水仕様)が非常にそれっぽい。しかし、その服の下にはしっかりと水着を着込んでいるあたりは、作戦に対して不真面目でないのが分かる。
「戦艦竜ですか。さて、今の私たちの力がどこまで通用するのか」
 そんな探検目標……ではなく、相手となるのは戦艦のような身体を持つ竜。大きさは10メートル近くもあると言われている。カナメ・クレッセント(羅狼・e12065)はそんな巨大な相手と戦うのに、余裕を見せ、冷静沈着で堂々としている。
「本体のサイズがわかれば、それを作戦にいかせますよね」
 今回の調査にやる気十分なのは皆も同じ。この浮島戦艦竜は周囲に流木等があり、大きさが分かっていない。最低限、それだけでも調べたいというのが、那々宮・しあの(パッションローズ・e01100)の目標なのだった。
「戦艦竜の魂を知れればいいですねえ」
 トゥル・リメイン(降り注げ心象・e12316)の言葉だが、その表現は詩的表現なのか、それとも本質を魂と表現してるのか……。そんな意味深な言葉を呟く。
「ラーシュ、戦艦竜だって、ちょっとカッコイイよね」
 さらに、ボクスドラゴンのラーシュに楽しそうに話しているマイヤ・マルヴァレフ(オラトリオのブレイズキャリバー・e18289)。そんな言葉に眼をキラキラとさせ、楽しそうにしているラーシュ。
(「竜さん、餌付けできないかな……」)
 そんな戦艦竜に対して、ちょっと可愛い事を考えているのはエア・イミテーション(虚飾レプリカントドール・e04985)。確かに、こんな竜を伴って冒険するような漫画やアニメがありそうだ。だが、残念ながら相手は地球のグラビティチェインを奪おうとしているドラゴン軍なのだ。その夢を叶えるのは、不可能に近いだろう。
 そんな皆の様々な想いの様子みながら、手をぶらぶらさせているのは勢門・彩子(悪鬼の血脈・e13084)。普段なら鉄塊剣を何時も使っているのだが、今回は泳ぎに邪魔になるかもしれないと、置いてきている。どうやら、それで手に重みが足らなくて、落ち着かない様子だった。


「おお、色々と準備してくれたのですね」
 出発場所には、様々な海の移動手段が準備されていた。
 動力付きボートだけでなく、騒音の事を考た手漕ぎボート、手が自由に使えるようにと足漕ぎボート。さらに、クルーザーまで用意されていた。
「ありがたいでござるな」
 ウィリアム・シュバリエ(ドラゴニアンの刀剣士・en0007)は、戦い以外でケルベロスに協力してくれる皆に感謝する。さらに、ご丁寧にも『ケルベロスの皆さんで使って下さい、壊れてしまっても大丈夫です』とのメモが。
 もしかしたら、以前にケルベロスに助けられた人かもしれない。そんな人たちが感謝の気持ちを込めて色々と準備してくれたようだ。
「皆、準備は万全だよね?」
 森沢・志成(なりたてケルベロス・e02572)は事前に練習してきた水上バイクの確認をしながら、皆に声をかける。
「うむ、準備完了でござる」
 大型でモーター音が小さいボートに水上バイクを積み出発。さらにユウ・アドリア(影繰人・e09254)は別のボートかクルーザーで近く(といっても戦場とならない範囲)までサポートに来てくれる。
「撤退の手助けには行くからのう」
「よろしく頼むでござる」
 撤退の時は最悪、泳いで海岸まで行く事を覚悟していたケルベロスたちには頼もしい言葉だった。
 そんなサポートのおかげで戦闘と調査に全力を尽くせるのだった。


「なんと、われわれたんけんたいのめのまえに、きょだいなどらごんがあらわれたではないいかー……」
 遠くに見える浮島を見て、演出過剰なテレビ番組のリポータのような解説を棒読みでする雪之嬢。
「うわ、ドラゴンや巨大ダモクレスとかも見ましたけど、これは桁が違います。島ですよ、これ」
 志成が浮島戦艦竜を見て、楽しそうに呟く。以前に現れた巨大ダモクレスは、だいたい7メートルという情報がある。この浮島戦艦竜は周囲の流木を合わせると20メートル以上あると思われる。
 そんな事を言いながらも、ボートで浮島戦艦竜の周囲を大回りに一周し、志成たちが双眼鏡やカメラなどを使い観察し写真を撮る。
「……周囲は殆どが流木のようですね」
「木が隠れ蓑のようになっているみたい」
 その流木もただの流木では無さそう。マイヤの言う通り、蓑虫が周囲の葉や枝で身を隠すかのように、流木を周囲に集めているのかもしれない。
「規則的な行動をしているのだろうか? それとも何かを守っているのだろうか?」
 彩子は海図を用意して、戦艦竜の目的などを探ったのだが、その結果は残念ながら分からなかった。詳細に時間を費やせば分かる事もあるのかもしれないが1日程度の調査では難しい。だが、今後も作戦が続く事を考えれば無駄にはならないだろう。
「……こうして見ると、やっぱり大きいね」
 マイヤは翼を羽ばたかせ、空から写真を撮る。周囲が木々に覆われている事もあり、空から見るとさらに島のようにしか見えない。
「これ以上は危ないかも……」
 遠回りに回りながら、浮島竜の様子を観察していたしあの。徐々にその円を狭めているのだが、これ以上ボートで近寄るのは危険かもしれないと、ボートよりもエンジンの小さい水上バイクに乗り換え上陸を試みるのだった。


 水上バイクや泳ぎながら浮島竜に近づくケルベロスたち。警戒しながら静かに近寄ると、暴れ出す様子は無い。
「それじゃあ、上陸しましょうか」
「後々の為にも出来るだけ多くの情報を持ちかえりたいものです」
 カナメの言葉に皆同意しながら上陸。反応の少ない浮島竜だが、それで油断する様子は誰にも無い。
「ついに、われわれはどらごんのせにじょうりくしたのだ~」
 相変わらず楽しそうな雪之嬢。しかし、その声は小さくしっかり警戒をしている。
「それでは、ボートの番は任せるでござる」
 放置しては流れて行ってしまうかもしれない。ボートをウィリアムに任せ、他のケルベロスたちは上島した……いや、上竜した。

「これはなんだ?」
 エアが流木の中から見つかったのは、『光輝く伝説の剣』……という商品名の100円ショップで売っているプラスチックの玩具の剣。
 どうやら、周囲の流木だけでなく漂流ゴミまで集めているようだ。
 そんな漂流ゴミの影響もあり、正式サイズの測定をエアは諦めた。概算では約10メートルなのは測定出来たが、水中に沈んでいる箇所もあるし、動いている部位(手や足や頭など)があるから正確なサイズ測定は難しい。
「われわれは、でんせつのどらごんのあしをみつけたのだ~」
「足は亀みたいだよ」
 水中から様子を調べた雪之嬢としあの。どうやら亀のような甲羅があり、その上に土が盛られ、木々が生えている。しかし、流木が邪魔で潜るのが大変で、その上水が濁っている事から、これ以上の事は分からなかった。
「ここらへんが柔らかいのかもしれぬ?」
 エアの調査で何カ所か装甲が少なそうな箇所を発見した。しかし、弱点故に周囲は装甲の守られ、意図的に狙うのは厳しい場所。しかし、これらの情報を整理しまとめれば今後の戦いに役立つかもしれない。そんな調査を手伝ってくれる者は多かった。紫瞳竜・四(ドラゴニアンの螺旋忍者・e22130)も色々と調べていた。
 そんな調査を続けていると、なんだか段々と浮島の動きが変化してきた気がする。いくら攻撃していないとはいえ、これだけの人数が背中の上で色々動いているのだ。慎重に調査していたとはいえ、そろそろ気づいたのかもしれない。
「一度、ボートに戻るでござる」
 それを察したウィリアムがボートを寄せ、そこへ避難する。
「ゴゴゴゴゴゴッ!」
 ボートに避難してから、少し波が大きくなり……そして周囲の流木が大きく揺れ、周囲へ流れていく。
「ガオオオオオオ!」
 次の瞬間、水面から頭部を上げ大きく咆哮を上げた。同時に背中から木々が空へ発射され、それがミサイルのようにケルベロスたちへ襲いかかる。
「う……むぅ」
 そんな激しい攻撃にボートも巻き込まれていた。なんとかボートを守ろうとウィリアムと大原・大地(元守兵のチビデブドラゴニアン・e12427)が尽力するも、すぐにボートは崩壊を始める。
「船を捨て、逃げるでござる」
「そうですね」
 二人とも翼を広げ空に逃れ無事だったが、ボートは海の底へ沈んでいった。
「エア殿、待機してくれている者への連絡を頼むでござる」
「そうだな」
 エアが海岸付近で待機してくれている美浦・百合水仙(高機動型鎧装拳士・e01252)に連絡する。
「さて、ドラゴンと闘う機会を得られたことに感謝しましょう」
 流木の上で冷静に堂々と武器を構えるカナメ。周囲の流木がいい感じで足場となり、予想以上にケルベロスにとっても戦いやすい状態だ。
「騎士の誓いと誇りを見せよう」
 カナメは騎士の誓いを口にし戦艦竜へ突撃。戦いの開始だ!


「我が剣を受けてみよ!」
 流木を足場に近づき、両手のゾディアックソートを巧みに操り斬撃を繰り出すカナメ。
「さあ、貴様の能力を見せて見ろ!」
 ちょっと楽しそうな彩子に、浮島竜から発射されたのは、樹木だった。それが、まるでミサイルのような軌道を描き、彩子を狙う。そのミサイルをマインドリングから具現化した浮遊する光の盾で防ぎながら、攻撃の様子を観察する。
「……器用なミサイルみたいだな」
 その樹木ミサイルの軌道はかなり自由度があるようで、一度頭上で旋回する。
 さらに、背後に眼かセンサーでもあるのか、死角は無いようで、背面から動きや全体を見ているマイヤにも樹木ミサイルは飛んでいく。もし、浮島竜の背に乗っていたとしても攻撃可能だろう。
 安全に戦える場所が無ければ正面から戦うまでだ。
「森羅万象から隔離されし、究極の個をここに。原始の静寂を謳歌せよ」
 雪之嬢が静かに言葉を紡ぐと同時に、戦艦竜の動きが停止する。彼女のグラビティが効果を発揮していれば、戦艦竜は五感を喪失し発狂しそうな苦しみを味わっている……はずなのだが、元々動きの少ない浮島戦艦竜。一瞬、樹木ミサイルの発射が止まった以外にはケルベロス達には確認出来ない。しかし、効果はしっかり現れている。
「こんな攻撃をしてくるんだね」
 ミサイルのように飛んでくる樹木を観察しながら、自身のミサイルで迎撃、反撃を行うトゥル。そんな攻撃を、じっくりと見つめ観察するように戦うトゥルは、自身の『知りたい』という想いにとても素直なようだった。
 そんなトゥルと同時に水中からマルチプルミサイルを発射し、サポートしてくれるアンネリース・ファーネンシルト(強襲型レプリカント・e00585)。おかげで、少し余裕を持って観察出来ていた。
「このミサイルはやっかいだね」
 ミサイルの爆発に紛れるように枝や蔓が身体に絡む場合があり、それが行動を阻害する事がある。マイヤもそれに気づき声を掛け合いながら戦う。
「本当は犬にしたいけど、この場ならこれが一番でしょう!」
 志成はファミリアロッドを魚に戻し魔力を込めて発射する。周囲が海なので発射された魚(ファミリアロッド)が妙に楽しそうに突撃した気がする。
 さらに上空より翼を羽ばたかせながら、近藤・美琴(魂の鼓動・e18027)が槍のように長く伸ばしたブラックスライムを放ち、戦艦竜を汚染させる。
「……巨体故に反応が少ないでござるな」
 戦艦竜に斬撃を放ちながら思わず独り言のウィリアム。巨体に加え流木などもあり、相手の反応が見えないのが微妙に戦いづらい。
「いきます!」
 構えた杖の先端からしのあが放つ雷撃が戦艦竜に命中し、火花を散らせ同時に、エアがガトリングガンから放つ爆炎の弾丸が周囲の木々も巻き込み、激しく燃え上がる。
「燃え上がりが激しいけど、これが弱点なのかな?」
 その様子にちょっと驚くケルベロスたち。もしかしたら炎による攻撃は効果が大きいのかもしれない。

 大きく燃える炎の中でも、激しい攻撃は続く。
「カナメさん、なんとか攻撃を弱めます! その隙に!」
 カナメに知らせると同時に、志成はアームドフォートを展開、同時に全砲門を解放し乱れ撃つ。
「騎士の誇り、今こそ見せよう!」
 志成の砲撃支援を受け、一気に距離を詰めるカナメ。同時に蒼と紅の軌跡を描く斬撃が花火のように散り、戦艦竜を切り刻む。
 さらに彩子が降魔の力を拳に込め、戦艦竜の魂を削り、しあの将来を感じさせる一撃が戦艦竜にダメージを与える。
「たんけんたいは、きょだいなりゅうとはげしいたたかいをくりひろげるのだった~」
 雪之嬢は明日から本気だすという心を溶岩に変る。その溶岩を、海中から水中火山のように激しい噴煙と同時に吹き出し、戦艦竜を攻撃する。
「遠慮しないで食べてもらえないだろうか」
 フィオリナ・ブレイブハート(インフェルノガーディアン・e00077)は戦闘中でありながらも、子牛のヒレ肉を焼き上げた謎の料理……いや『謎の物体』を使用し、ウィリアムの傷を癒す。
「う、うむ。感謝するでござる」
 そんな謎の物体のなんやかんやで治る傷に微妙に困惑しながらも感謝する。
「さあ、教えてよ、戦艦竜の魂を!」
 トゥルの左腕に膨大な降魔の力が与えられる。これは我流で編み出した魔神の力。その力を戦艦竜に喰らわせる。
「グググ……」
 ほとんど反応の無かった戦艦竜が苦しそうなうなり声を響かせる。
「撃ちたい放題も悪くない!!」
 その反応に、さらにガトリングガンから爆炎の弾丸を撃ち続けるエア。そんなエアにしあのに、雪之嬢に激しい樹木ミサイルが降り注ぐ。
「これは厳しいな」
 飛来する樹木ミサイルを盾型複合兵装ステーションで防ごうとするも、防ぎきれずに深いダメージを負ってしまう。これは複合兵装が無力なのではなく、樹木ミサイルの命中力が高い為だ。
「わわっ、たいへんだ~」
「これは大変かな」
 被害甚大のダメージにマイヤやサポートの皆が動く。
「待ってて……今、回復するから。ラーシュもお願い!」
 しかし、さらに猛烈に降り注ぐ樹木ミサイルに、マイヤも巻き込まれ、回復に手が回らなくなってしまったのだった……。


「撤退しましょう」
 サポートの皆の支援もあったが、強力な攻撃に4名の戦闘不能者が出てしまった。その時点で、お互いに合図をし合い撤退に動く。
 そんな状態でも浮島戦艦竜は、お構いなしに樹木ミサイルを発射してくる。
「ざんねん、われわれのぼーけんは、ここえおわってしまった……。とぅーびーこんてぃにゅーど……」
 撤退しながらも楽しそうな雪之嬢。
「今のうちに撤退しろ」
「撤退を支援する」
 合図に応じて水上バイクで颯爽と駆けつけてくれた大神・凛(ドラゴニアンの刀剣士・e01645)と玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)。
 さらにリリア・カサブランカ(春告げのカンパネラ・e00241)とトレイシス・トレイズ(未明の徒・e00027)が別方向から攻撃を行い、引きつけてくれている。
「こちらまで来てね」
 さらに離れた場所でクルーザーを待機させてくれているユウと百合水仙。しかし、これ以上近づくと戦艦竜の攻撃対象となってしまう。そこまでは、水上バイクを使ったり泳いだりして逃げるのだった。

「グルルル……」
 ケルベロスたちがクルーザーに乗り遠くまで撤退していくと、浮島竜はクルーザーを睨み付けたかと思うと、そのまま沖へ移動していきそのまま水平線の彼方へ消えていった。
 ケルベロスたちは誰の被害を出す事なく撤退に成功したのだった。


「少し情報を整理してみましょうか」
 今後の分析次第では、次の戦いが有利になる可能性のある情報を持ち帰れた。
 また、現時点で確実なのは炎による攻撃が通常よりも大きなダメージを与える事が出来る事、そして樹木ミサイルは回避が難しい攻撃である事。さらに、ミサイルの攻撃を受けると動きが阻害される事などが分かった。
「よかったら飴でもどうぞ」
 撤退を終え、船で戻る途中で飴を配っている大地。
「大地殿の気配り、感謝するでござる」
 礼を言って受け取るウィリアム。
「ケルベロスでも寒いものは寒い」
 皆、海で泳いだり落ちたり、水しぶきを浴びたりと濡れている。そんな中で甘い飴はありがたい。
「ともかく、戦艦竜は倒せなかったけど、作戦は成功。次回につなげる事が出来ましたよね」
 そう満足そうな顔のしあの。戦艦竜は健在だが、ケルベロス側にも被害は出ていない。ならば、次の作戦を考えるだけだ。
 そう想いながら、浮島戦艦竜が消えていった沖を眺めるケルベロスたちであった。

作者:雪見進 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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