恋する電流マシン~湖彩るイルミネーション

作者:雪見進


「城ヶ島の螺旋忍軍の拠点から回収した秘密書類を解析した結果、ダンジョンが発見されたっす」
 新たな情報を少し興奮しながら説明するのは黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)。
 発見された新たなダンジョンは、破壊された巨大ダモクレス。その体内に残霊発生源を内包していたのだった。
 このダンジョンは、現時点でも修復中であり、ダモクレス勢力に協力している螺旋忍軍の一派によって隠蔽されていたため、今まで発見されることが出来なかったのだ。
「そんなダンジョンダモクレスは修復中で、その修復には恐ろしい部品が必要な事が分かったっす」
 このダンジョンの修復には『つがいである2体の人間を同時に殺害して合成させた特殊な部品』が必要であるようで、その部品を回収するために、日本各地に部品回収用のダモクレスが、配置されているというのだ。
「だけど、ダンジョンを探索してくれた人のおかげで、この『部品回収用ダモクレス』の潜伏箇所が判明したっす」
 その結果、その場所に向かい、これ以上、殺されて部品化される人が出ないように、阻止する事になった。
「この事件を起こしているダモクレスは、デートスポットとされる場所に潜伏しているっす」
 そのデートスポットを訪れる男女に対して、その恋心を増幅させて、部品に相応しい精神状態にする電流(仮称、恋する電流)を浴びせた後に殺して、部品としてしまっているようなのだ。


「このダモクレスは、戦闘力は高くないっすけど、隠密性が高く、ダモクレスの恋する電流を浴びせられない限り、発見することは難しいっす」
 つまり、ダモクレスが『人間のつがい』であると判断するような関係性のある者達か、一時的にでも、そのような状態を演出する必要がある。
 そんな事ができるケルベロスが作戦に参加する必要がある。
「このダモクレスの名前は、その能力から『恋する電流マシン』と仮称するっす」
 なんとも判断に困る名前だが仮称でも無いと色々と面倒だから仕方ない。そんな『恋する電流マシン』は一箇所のデートスポットには、8体がいる。
 そのため、8組のカップル或いはカップルに偽装したケルベロスが満遍なく捜索する事で、全ての『恋する電流マシン』を発見する事が可能だと思われる。


「今回、皆さんにお願いしたい場所は、山中湖アートイルミネーションファンタジウムっす」
 この場所では、富士山を望む幻想的な風景の中で、多くの参加者が制作したアートイルミネーションを展示する期間限定の野外美術館が開かれ、花の都公園の広大な敷地の中に作品と巨大オブジェが展示される予定となっている。
 その中をカップルらしく散策すれば、ダモクレスが『恋する電流』を浴びせかけてくるので、その電流の発生源を確認して、戦闘を挑んで欲しいとダンテは説明する。
「あと、一般人の避難は終了してるっす」
 ダモクレスが現れる事が分かっているので、ケルベロスたちが行く頃には全て避難は完了しているので、間違って別の誰かが襲われる心配はない。
 飲食施設に関しては無いのも寂しいので、『作戦の為に』と、お弁当と飲み物が用意されています。


「強大なダモクレスを修復しようとする作戦は絶対阻止するっす」
 色々と複雑な感じの作戦だが、こんなダモクレスを野放しにしては、巨大なダモクレスが復活してしまう。何としても防がなければならない。ダンテはそう言って後を託すのだった。


参加者
テルル・ライト(ルチルシリーズ・e00524)
珠弥・久繁(病葉の刃・e00614)
ユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)
アイル・フェーリス(黒狼の嫁猫・e02094)
神無月・明人(天に唾する・e02952)
浅儀・織(空間忍術・e06748)
イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)

■リプレイ


「綺麗なデートスポットにそんなダモクレスが居るなんて……、許せませんね。絶対に倒さなくてはいけません!」
「そうだな、一刻も早くぶっ壊さねえとな……」
 そんな言葉を交わしているのは神無月・明人(天に唾する・e02952)とイリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)。そんな二人の言葉は重なっているが、心では実はちょっと違う事を考えていた。明人は年に数度しか本心を言わない天邪鬼。なので、ダモクレスの変な攻撃が問題だから、何としても早期決着を狙っていた。
 そんな二人は、イルミネーションが輝く山中湖を腕を組みながらゆっくりと歩く。その歩幅は違うのに、そっと歩調をあわせゆっくりと散策する様子は、どう見ても恋人同士のデート。だけど、これはダモクレスを誘い出す作戦なのだ。

「そこがよさそうじゃん」
「そうですね」
 少し離れた場所では浅儀・織(空間忍術・e06748)と内牧・ルチル(忍剣・e03643)が二人でベンチに座る。そんな彼女の肩にそっと添えられる織の手。そんな手を少し恥ずかしそうだけれど、嬉しそうに受け入れ織に寄り添う二人。この二人はつい先日に婚姻届を提出した新婚夫婦。
 そんな二人の目の前にはアーティスティックなイルミネーション。
「愛してる」
「私もです」
 そんな目の前に広がるイルミネーションよりも大切なルチルの肩を抱き、そっと愛を囁く織。そんな二人に静かに無粋なナニカが近づいていた……。

「綺麗ですね……」
「まるで文明が自然に溶け込んでいるようですね」
「機械と自然の融合、と言えるのでしょうか……」
「……不思議です」
 ファンタジウムの一角では『光の滝』と形容するような美しい滝が煌めき流れていた。
 そんな滝の前でそっと寄り添うのはフローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983) とミチェーリ・ノルシュテイン(フローズンアントラー・e02708)。
 二人は手を繋ぎながら、ゆっくりと光の滝の輝きに彩られながら、二人の時間を過ごすのだった。

「恋人狙いに、良くわからない恋いする電流……非効率ではないでしょうか?」
 今回のダモクレスは恋人同士を殺害し、それを巨大ダモクレスの修理部品にするという恐ろしい相手。確かに非効率に思える。
「あまり恋愛には詳しく無いですが、恋愛小説を一冊読んで予習してきました。見事、敵を釣り上げてみせます」
 そんなテルル・ライト(ルチルシリーズ・e00524)の意見はもっともだけど、それを阻止するのがケルベロス。カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)は事前に勉強してきてやる気十分な様子。テルルの手をとって優しく包み込む。そんな繋がれた手から伝わる温もりが心地よいのは外が寒いからでしょうか。
 そんな恋愛がよく分かっていない雰囲気の二人を彩るのは綺麗なイルミネーション。それを見て回りながらゆっくりと歩く二人なのでした。

「クリスティ、今夜はわた……僕に君のお供をさせて貰うよ」
「う……そういう風に言われるとなんだか恥かしいな」
 紳士的にエスコートをしようとするスーツ姿の男装スタイルのユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)。
「なに、最高のひとときを保障するから」
「まあ、今夜はローゼにお任せするとしよう」
 そんな素敵なエスコートに内心ドキドキしているクリスティ・ローエンシュタイン(オラトリオの巫術士・e05091)。男装といっても、男性として見えるよりも、男装の麗人といった風なユスティーナ。
「今日のクリスティも可憐だね、側によってくれ。もっと近くで君を感じたいんだ」
(「うわわわわ、私何いっちゃってるのかしらっ!」)
 そんな愛を囁く言葉は素敵なのだが、こちらも内心は自分の言葉に非常に緊張かつ心にダメージを負いながらなのだが、これもダモクレスを退治するためだと、自分に言い聞かせているのだった。

「この事を考えたダモクレスは頭が可笑しい、いや、バグっていたんじゃないかな?」
「そうだな」
 バグっているのか可笑しいのかは不明だが、そんな珠弥・久繁(病葉の刃・e00614)の隣を歩くのはヴィオラ・ハーヴェイ(リコリス・e00507)。そんな二人の様子は他と何か違う。それは、普通の人であれば何も感じない、普通に恋人同士に見えるのだが、感のいい人や経験豊富な人であれば気づくかもしれない、そんな些細な差。
「名前すら呼べないような男性を相手するつもりはないわ、ビジネスとはいえ、ね」
「分かりました。今日、この時だけは貴方を名前で呼ぶ名誉を頂こうか。よろしくね、ヴィオラ」
「エスコートしていただけるかしら久繁」
 名前を呼び差し出した手を、少し厳しい視線で見つめて、手を取るヴィオラ。二人は任務の為の今だけのカップルなのだ。

「楽しいにゃ!」
「楽しいね」
 そんな任務を目的とした人もいる中で、元気いっぱい、楽しくはしゃいでいる二人もいる。アイル・フェーリス(黒狼の嫁猫・e02094)とヴォルフ・シュヴァルツ(黒牙は影を縫う・e03804) 。手を繋いで、あっちが綺麗、こっちが素敵と走り回る。なのだけど、途中から二人の顔がそっと近寄る。
「ねえ、ヴォルにゃん。私の事、愛してるにゃよね?」
「もちろんだぜ」
「なら、ここで……。ん……」
 大胆なキスのお誘い。それに無言で答えるヴォルフ。
「にゃにゃにゃー、楽し過ぎるんじゃにゃー」
「そうだよね」
 キスの後、目を開けての満面の笑顔なアイル。そんな感じで、とてもいちゃいちゃで楽しそうはカップルなのでした。

 そんな三者三様の様子で山中湖アートイルミネーションファンタジウムではダモクレス誘い出し作戦が開始されたのだった。


「わぁ、綺麗ですね……!」
 イルミネーションを見つめるイリスからこぼれるような感嘆の声。
「終わったら、また二人で周りませんか?」
「おう、そうさな。ま、終わって時間があるってんなら……いいぜぇ?!」
 そんな明人の最後の言葉が裏返る。それは、イルミネーションの影から放たれた電撃の影響。
「あれが恋する電流マシン!」
 即座に武器を構えようとするイリスだが、それより先に動いたのは明人。
「……明人さん、素敵……」
 そんな動きにときめくイリス。しかし、その明人からでた言葉は、意外だった。
「好きだっ! 愛しているっ!」
 同時にダモクレスを降魔の拳で打ち抜く。それよりも、何よりもときめく彼が叫ぶ愛の言葉に、イリスも答える。
「はい、愛しています、明人さん!」
 お互いの気持ち重ねながらの斬撃をダモクレスに叩き込む。
 突如二人が愛を叫ぶようになったのは、最初にダモクレスが放った電撃。これは普段恥かしくて言えないような言葉が自然と口から出てしまう効果がある電流なのだ!
「一目見た時から好きでした!」
「結婚してくれ!」
 そんな溢れる恋い心、想う愛の心が重なる。
 明人が地面に剣を突き立て、イリスが光を剣と翼に集める。次の瞬間、地面が暴れダモクレスが宙を舞い、そこへイリスの一閃が煌くのでした。

 そんなダモクレスは各所で現れていた。
「真剣な旦那様……かっこいい……」
「ルチルも素敵だよ」
 華麗な蹴りを決めると同時にルチルの頬にキス。そのまま髪をかきあげ、真っ赤になっている耳に軽い吐息と同時に愛を囁く織。
「いつもかっこいいけど……っ♪」
 そしてお返しのキスを織の頬に返すルチル。そして月の光をスポットライトのように織と自分に注ぐ。
「もう、お前は檻の中だ、逃げられねえよ?」
 愛する者の支援を受け、無敵の織。ダモクレスの周囲の空間を球状に歪ませ檻のようにして閉じこめる。
「ほら、聞こえるだろ……歪みの歌が」
 次の瞬間、歪みの檻は縮小していき、ダモクレスを捻り潰す。
「まぁ、俺も恋という名の幸せの檻の中にいるけどね!」
「旦那様、素敵……」
 閉じこめたダモクレスには視線を向けず、織の視線は愛するルチスにだけ注がれる。背でダモクレスが爆発する様子は、二人を祝福する花火のよう。
 その花火を背に、唇を重ねる二人だった。

「電撃だにゃ!」
 アイルとヴォルフに放たれた電撃。電撃で恥ずかしさも何も無い二人。ダモクレスを探すのに、何故かヴォルフがアイルをお姫様抱っこ。
「カップルといったらこれだよね」
「そうにゃ!」
 『いや、デートでお姫様抱っこはしないのでは?』と、突っ込む無粋な者は無し。お姫様抱っこのまま、ダモクレスを発見すると、即座に攻撃開始。
「私達の愛は、無敵なんだにゃー!」
 お姫様抱っこのままでも、戦えるのは愛の証でしょうか。見事な連携攻撃でダモクレスを追い詰め、アイルとヴォルフの拳を重ねる。
「ラーブラブ!! 獣撃拳ーー!」
「ラーブラブ!! 獣撃拳ーー!」
 そのまま二人同時に放つ愛を込めた一撃に大きく飛ばされ大爆発。同時に二人、腕を重ねてのポーズを決める。
「まだまだ、時間はたっぷりあるにゃ! めいっぱい、楽しもうにゃ?」
「そうだぜ」
 そのまま二人でイルミネーションの中、ラブラブイチャイチャなデートが続くのでした。

「あまり使い慣れない武器ですが……」
「慣れない分は私がフォローします!」
「そうね、ミチェーリと一緒なら!」
「はい、支え合う力、見せつけましょう!」
 フローネとミチェーリは見事な連携を見せていた。ミチェーリのバトルガントレットとフローネの縛霊手。それが交互にリズムを刻み、ダモクレスを打楽器のように殴打していく。
「ミチェーリと一緒だろ、ココロがドキドキします……」
「私はもう、貴方無しでは生きてゆけません」
「ずっとずっと、傍にいて欲しいの……」
 打撃と同時に言葉も重ねる……いや、言葉だけでなく腕を重ね、身体を重ね、唇も重ねる。
 そのままの殴打の中でミチェーリがダモクレスの熱を奪い、瞬間的に凍結させ、そこへフローネのアメジストラムが貫く。
「ガガガ!」
 貫くアメジストのラムが同時に砕け空に舞う。次の瞬間、爆発したダモクレスの爆風が空へ上がり……そして、ゆっくりとアメジストの欠片が二人を祝福するように、雪のように舞い散った。
「ふふ、ミチェーリとの思い出。……またひとつ、増えましたね」
「ええ。これからも、二人で思い出を重ねましょうね」
 思い出と共にアメジストの雪の中、もう一度唇を重ねるのだった。

「僕が前に立つッ、早くかたをつけてしまおうッ!」
「は、はい」
(「ローゼが格好良く見えるな……」)
 内心を悟られないように、押しに流されないように……と思いながらも、流されそうになっているクリスティ。実際格好いいユスティーナに加え、恋いする電流の影響もあるのだから仕方ない。さらに、自身をかばいながら戦ってくれるのだ、仕方ないだろう。
 クリスティは自身の羽に似た、周囲を舞わせ、敵を切り裂くと同時にユスティーナが流星の蹴りを見事な連携で放ち、ダモクレスを撃破。
(「綺麗……」)
 その爆発で舞い上がった羽が、二人を祝福するかのようでもあった。

 電流を浴びた後、即座にダモクレスを発見し、戦闘開始したテテルとカルナ。
(「何故でしょうか、敵の前で勇敢に戦うテテルさんの横顔が、とても美しく見えます。女神とはこういう姿をしているのかもしれませんね」)
 そんなカルナは戦うテテルの姿に、思わず見惚れてしまう。
「テテルさん、今夜の貴方はとても魅力的ですよ」
 同時に、思わずカルナの口からこぼれる言葉は、恋する電流の影響なのか、普段のぼんやり系な彼としては非常に珍しい言葉。
「そ、そうですか」
 そんな言葉にどきどき、そして思わずカルナを優しく抱きしめる。その仕草は普段ならテレビウムの先生にだけ行う行動……いや、恋する電流の効果を考えると、ある種のスキンシップ。
 そんな状態でも戦闘を継続しているのは、息があった二人だからでしょうか。そのまま先生を交えたコンビネーションでダモクレスを撃破するのでした。

「恋の病は不治というけど、こんなに簡単に治るならば興ざめだ」
「こんなものえヒトの気持ちを増幅させようだなんて、無粋にも程があるわ」
 浴びた電流を即座にキュアしたのは久繁とヴィオラ。二人は冷静にダモクレスを発見、即座に撃破に移る。
「その程度の風情すらわからないダモクレスは……今すぐ滅びなさい」
 同時に一枚のカードを引く。
「墜ちなさい。崩れなさい。驕り高ぶるモノ達よ」
 そのカードが即座に爆発のエネルギーとなり、ダモクレスを包み純粋な暴力として破壊していく。
「ギギギガガ!」
 そこへ久繁が自身の魔術回路を巡るエネルギーを解放、同時に過剰供給させ、眩く光を帯び、その力でダモクレスを砕き散らせる。
「世界を包め、夜明けの如く」
 久繁の言葉と同時に爆発するダモクレス。しかし、二人とも戦闘態勢を崩さない。
「見つけましたわ」
「そうだね」
 二人は即座に残り1体のダモクレスを発見、追撃を開始していた……。


「こんなに光ると自分もイルミネーションの仲間入りをした気分だ」
 最後の1体を倒し、過剰供給されたエネルギーが消えると同時に、身体の光も消えるが、久繁が言うのも分かる。それほど、久繁の身体は美しかった。
「そうかもしれぬな」
 そんな彼の様子を気にする様子すらないヴィオラ。
「だが、人を守るためなら、これも悪くない」
 しかし、満足そうな顔の久繁であった。そして、ヴィオラに手を差しだす。
「ありがとう、ヴィオラ……いや、ハーヴェイさん。助かったよ」
 『ヴィオラ』ではなく『ハーヴェイ』と呼ぶのは、任務は終わり、夢の時間が終わった証。
「こちらもビジネスです。過剰な礼はいらないわよ」
 そんな久繁の手を取り、戦友として握手を交わすのだった。

「僕は一体何を口走って……!? いや、これは敵の攻撃ですからね!」
 ダモクレスが倒れ正気を取り戻したのか、戦いの最中に告げてしまった言葉に激しく動揺するカルナ。
「ま、まあ私もカルナさんにあのような事をしてしまいました」
 抱っこした事を言っているのだろう。
「攻撃の効果とはいえ、先生以外にこうしようと思ったのは初めてですね」
 テルルの方は、それが恥ずかしい事だとは思っていない様子。
「もう少し効果を受けていれば、恋人というものが理解できたのでしょうか?」
「そうかもしれませんね」
 そんな冷静なテルルの様子を見て、少し落ち着いてきたカルナ。
 そんな二人に連絡が入る。どうやら、最後の1体も無事に倒されたらしい。
「依頼終了、同行ありがとうございました。付き合わせてしまいましたし、何か奢りますよ」
 ダモクレスが全て倒されたので、丁寧にお礼を言う。
「それなら、甘味を希望します」
 二人はパンフレットを確認して、甘味が用意されているエリアへ。一般の人は避難しているから、そこの冷蔵庫にはケーキなどが用意されている。
「分かりました。ちょうど、私も甘いものが食べたかったので……」
 そう言いながら、ごくごく自然に手を握るテルルとカルナ。それは電流の影響なのか、それとも湖を彩るイルミネーションの影響なのか、それは誰にも分からないのでした。

「素敵ね」
「そうですね」
 フローネはミチェーリにお姫様抱っこをされながら、ゆっくり散策していた。そんな二人を祝福するように、イルミネーションが輝き舞い踊る。それこそがファンタジウム。そんな中で、もう少し二人だけの時間を楽しむのでした。

(「邪魔が入るのは最初から分かってたけど……」)
「旦那様と、素敵なところに来れて良かった♪」
 織とルチル。二人で歩きながら、イルミネーションを見て回る。ある意味、ごく少数の貸し切り状態。そんな中でのデートで静かに瞳を閉じるルチル。
「……」
 そして静かに重なる唇。
「これからも、よろしくね……旦那様♪」
「ああ、こちらこそよろしく」
 夫婦の二人には、これからの未来を彩るように見えるイルミネーション。そんな生涯の伴侶に抱きしめられながら、しっぽをぱたぱたと振るルチルだった。

「さきほどの言葉はどういう意味でしょうか?」
「なんのことだか……さっっっぱり分かんねえなぁ?」
 ダモクレスを倒した後、ゆっくり園内を見て回っている明人とイリス。そんな明人は、恋する電流の影響で口走ってしまった言葉を全力で有耶無耶にしようとしていた。
 最初はもう一度本心が聞きたいと頑張っていたイリスだったが、すぐに諦めた。別に恋いする電流は嘘を言わせるモノじゃない。天邪鬼の彼から一度でも、そんな言葉が聞けただけでも、嬉しかったし、彼が戦っている姿にときめいたものあった。
「分かりました」
 そう分かったふりをして、そっと明人の手を握る。その手を振り払う事もなく、そっと握り返して感じる温もりから、大切な事が伝わってくる気がする。
「お、あっちも綺麗だぜ」
 そんな手を引かれ、二人は園内のイルミネーションを楽しむのでした。

「さ、帰ろうか」
「そうだな」
(「事件も解決したし、帰って寝るに限るわっ!」)
 そんなユルティーナの内心を知らず、そっと手を握り帰路に着くクリスティ。そんな二人は雰囲気に少し流されている様子だった。
 
 全てのダモクレスは無事破壊された。他に代用する部品が無ければ一つの危険因子を排除出来た事になる。その結果に安心して、今は山中湖のイルミネーションの中で、楽しい時間を過ごすケルベロスたちなのでした。

作者:雪見進 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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