恋する電流マシン~虹色に染まる海に臨む公園で

作者:紫堂空

●カップルを狩るものを狩れ!
「神戸市垂水区、舞子駅のそばにある公園で、訪れたカップルが襲われるという事件が起きるようです」
 セリカ・リュミエールは、集まったケルベロス達に告げる。
 12月24日に新たなダンジョンが発見されたのだが、これは体内に残霊発生源を内包した巨大ダモクレスが破壊されたものだったのだ。
 このダンジョンは現在も修復中であり、そのために『つがいである2体の人間を同時に殺害して合成させた特殊な部品』を必要としている。
「そして、その部品を得るために、日本各地に部品回収用ダモクレスが送られていると判明したのです」
 幸い、同ダンジョンの探索によって『回収用ダモクレス』の潜伏箇所を割り出すことが出来た。
「皆さんには、これ以上部品を作るために殺されるカップルが出ないよう、回収用ダモクレスの撃破をお願いしたいのです」

「事件を起こすダモクレスは『デートスポット』とされる場所に潜伏し、そこを訪れる男女に対して『恋心を増幅させて、部品に相応しい精神状態にする電流』を浴びせた後に殺すことで部品にするようです」
 セリカは、分かりやすいように電流を『恋する電流』、ダモクレスを『恋する電流マシン』と呼ぶことになったと言う。
「このダモクレスは戦闘力は高くありませんが、隠密性が高く、『恋する電流』を浴びせられない限り、発見することが出来ません」
 つまり、ダモクレスが『人間のつがい』であると判断するような関係性のある者達――『カップル』だの『アベック』だのと呼ばれるケルベロスが作戦には必要不可欠なのだ。
 また、あくまで『恋する電流マシン』にそう判断させればいいので、カップルらしく振る舞える二人組でも構わないとセリカは補足する。
「一箇所のデートスポットには8体の『恋する電流マシン』が存在するため、8組のカップル――もしくはカップルに偽装したケルベロスが手分けして捜索することで、全てのマシンを破壊することができるでしょう」
 標的である『恋する電流マシン』は、バスターライフルのグラビティと同等の攻撃を行ってくる。
 戦闘力は高くないものの、2人で戦う都合上、互いの戦力差は無いと考えていいだろう。
「今回皆さんに向かってもらうのは、舞子駅そばにある明石海峡に面した大きな公園です」
 日没後から行われる、淡路島と本州を繋ぐ大橋のライトアップを間近で眺めることが出来るとして人気のスポットなのだ。
 このライトアップは、毎時0分から5分間は虹色に点灯する。
 本体の大スケールイルミネーションもだが、ライトによって橋の下の海が七色に塗り分けられているのは、まことに見物である。
「事前に公園内を無人にしているので、現場には16名のケルベロスのみとなります。
 そのため、一般人の被害を気にする必要はありません。
 また、公園そばにあるホテルが所有するウェディングチャペルも開放されていますので、そちらで愛を語るというのもいいかもしれません」
 デートスポットであるこれらの場所をカップルらしく行動して回っていれば、標的の方から『恋する電流』を浴びせかけてくるので、それを受けて場所を特定し、戦闘に移るという形だ。
「自分達の目的のために人を殺して部品とするなど、許されるはずがありません」
 セリカのダモクレスに対する怒りは、説明を受けるケルベロス達の使命感を沸きあがらせるのだった。


参加者
アリル・プルメリア(なんでも屋さん・e00097)
神代・カガリ(禍狩・e00537)
シェイ・ルゥ(虚空を彷徨う拳・e01447)
テオドール・クス(渡り風・e01835)
ユーベル・クラルハイト(マルチレイヤストラクチャ・e07520)
七種・徹也(玉鋼・e09487)
桜夜・燈辻(琥桜姫・e21586)

■リプレイ

●夜釣り開始
 広々とした公園に、五組十人のケルベロスが到着した。
 大橋のイルミネーションが最も間近に見られる場所だけに、普段のクリスマスならばカップルで溢れているのだが、今だけは貸し切り状態である。
 もっとも、お邪魔虫であるカップル殺害マシンが八体も潜伏しているので、馬のかわりに蹴り壊すというお仕事があるのだが……。

●ユーベル&シェイ
「デートというものは初めてです」
 そう言って面白いところを探したり、ネットでデートのやり方を調べたりしているのは、ユーベル・クラルハイト(マルチレイヤストラクチャ・e07520)。
 デートや恋のことは、分からないなりに楽しそうである。
「妙な敵だけど、おかげで可愛い子とデートできるしね。ラッキーな話さ」
 ナンパなセリフを吐くのは、ユーベルの彼氏役を務める、シェイ・ルゥ(虚空を彷徨う拳・e01447)。
 実際には恋愛に興味が無いものの、軽薄な言動を繰り返す掴みどころの無い男である。
「――なるほど、エスコートする……と」
 ユーベルは検索して出てきた情報に従い、シェイを先導しようとする。
 男女の役が逆になっている気もするが、まぁいいだろう。
「どうやら、この近くに観覧車があるようです」
「それじゃあ、これが終わったら行ってみようか」
 シェイも、彼女があまりにも変なことをしない限りは任せるつもりである。
 背伸びしている妹のような少女と、カップルに見えるように振る舞うのだ。
「……? 何でしょうか」
 イルミネーションに照らされたユーベルの唇に、シェイがそっと口付けを。
 ――するふりをするが、キス自体が分かっていない彼女はただきょとんとするばかり。
「……さて、楽しいデートの時間は終わりかな?」
 だが、標的は見事釣れたようだ。
 甘く、熱く、痺れるような電流が二人の心臓を貫く。
 撃ってきた方向を見れば、確かにひょろ長い体のマシンの姿がある。
「さぁ、やる事やっちゃおうか」
「……はい」
 叫び声をあげて電流の効果を消し飛ばすシェイに、ユーベルもオーラによる自己回復を。
『恋する電流』を浴びても、ユーベルの口から愛の言葉が漏れ出すことはなかった。
(「……でも、すこし、胸の奥が暖かでした」)
 不思議な感覚だったと、興味深げにするユーベル。
 ともあれ、まずは電流マシンの破壊をしなければ。
「シェイは私が護ります。
 決して傷つけさせません。
 ご安心ください」
 攻撃役のシェイに、護りを担当するユーベル。
 彼女のボクスドラゴン、ドラゴンさんは回復係である。
「私の姿を、見て欲しい。私の想いを、知って欲しい。貴方のココロに、触れさせて欲しい」
 まずはユーベルが仕掛ける。
 ユーベルハーツ。
 かつて喰らったデウスエクスの魂を憑依しての一撃を放ち、強制的に意識を自分に向けさせる技だ。
 この攻撃で電流マシンの注意がユーベルに向いた隙を逃さず、シェイが死角から降魔真拳を叩き込む。
『恋する電流』によって不自然に湧き上がってきた感情――他人に心を操られて面白いわけがない。
 その不快さを外に出してユーベルを傷つけるようなことはしないが、拳に力が入ってしまうのは仕方ないだろう。
 ダモクレスの攻撃はユーベルが引き付け、あるいは庇って受ける。
 回復はドラゴンさんの他、二人とも降魔真拳によって相手の生命力を奪うことが出来る。
「これでおしまいだよ」
 シェイが大鎌を勢いよく振り下ろして、容赦なく電流マシンの首を打ち落とす。
 役割分担のおかげで、少し時間はかかったものの危なげなく勝利に至ることが出来た。
「他の敵は、まだ現れていないようですね」
 一息ついて周りを見回す二人だが、戦いが起きている様子は無い。
 今回は八体のマシンを破壊する必要があるため、三チームは二体目を相手にしなければならない。
 ユーベルとシェイは、再びカップルのふりをして公園内を回るのだった。

●アリル&徹也
「幸せな恋人たちを離れ離れにさせるわけにはいかない。
 必ずここで倒すぞ!」
「徹也くん、恋人のフリ恋人のフリ。ぎゅーってくっついて」
 男で一つで娘を育てるお父さん、七種・徹也(玉鋼・e09487)が正義感を見せる。
 アリル・プルメリア(なんでも屋さん・e00097)は、そんな徹也にあくまで任務の為だと言いつつ腕を絡めてくる。
 なんでも屋を営む十二歳のアリルは、恋愛というものにまだピンとこない。
 が、デートが『美味しいものいっぱい奢ってもらって、贈り物とか貰える奴』だということは知っている。
(「やったね。徹也くんにお腹いっぱい食べさせて貰おうっと」)
 徹也とは、一緒に買い物に行ったり食事をご馳走になったりする仲。
(「今回も上手いことやって色々奢ってもらおう」)
 そんな彼女の様子に、苦笑いを浮かべる徹也。
 徹也の方は、実の娘と離れて暮らしていることもあってか、アリルをもう一人の娘のように感じている。
 そのせいで、ついつい甘やかしてしまうのだろうか。
「引っ付きすぎるなよ」
 年の差の分、くっついて恋人アピールをしようとするアリルに、徹也は手を繋ぐくらいでいいと拒絶する。
(「カップルっつーか親子に見えないか心配だが……」)
 そんな懸念を抱きつつ橋の近くへ移動する徹也だったが、ロボ相手に要らぬ心配だったようだ。
 光り輝く巨大な橋を見上げる二人の背後から、物陰に潜んでいた電流マシンがすかさずの『恋する電流』!
「この胸のびりびり……これが恋だね! ……あいたっ、酷いよ徹也くん」
 変な事を言うとポカンと叩かれるのは、いつものことだが――。
 電流の影響を受けてか、徹也の様子の方が普段と違う。
「っ、さっさと倒すぞ」
「はーい」
 そう、襲ってくる電流マシンへの対処が先だ。
 徹也とライドキャリバーのたたら吹き、アリルと彼女のミミックであるみっくんはすぐさま戦闘態勢をとる。
「喰らえッ!」
 小細工はいらない。
 まずは徹也が、鉄塊剣を力任せに叩きつけ、脅威を感じさせて攻撃を自分に集中させる。
 ロボが残りの面々から注意を逸らした瞬間を狙い、たたら吹きが炎を纏い体当たり!
「ガルド流見習い武術、せんせの手刀の真似!」
 続いてアリルも、手刀『治癒の手』で追撃を仕掛ける。
 ガルド流なる武術を見よう見まねで行う、首筋へ手刀を振り下ろす必殺技だ。
 当たり所によっては回復にもダメージにもなる危険な一撃が、ロボの首に痛手を与える。
 さらにみっくんが噛み付き攻撃を行い、反撃に放たれた凍結光線を徹也を庇い受け止める。
 アリルは攻撃と緊急時の回復、及び大鎌による生命力奪取での自己回復。
 徹也は仲間を庇いつつ回復につとめ、余裕があれば攻撃を加えていく。
 さらにサーヴァント二体がダメージを重ねる――。
 すぐに回復出来ないダメージが大きくなれば二人の役割を交換する予定だったが、それまでに撃破することが出来た。
 戦闘に支障はないからとラブラブ状態放置のアリルと違い、亡き妻のことを思って戦闘半ばで『恋する電流』の影響を解除した徹也だが、その一手の遅れで戦況が悪化するようなことも無かった。
「それでも少し疲れちゃったね」
 次の敵を探しに行く前に、一旦休憩。
『恋人っぽく』膝枕を要求するアリルへ、徹也が容赦なくデコピン制裁。
 そんなふうに微笑ましい一時を挟み、二人はデート(のふり)の続きを行うのだった。

●カガリ&ジルベルト
「折角の聖夜を邪魔されてカガリ割とマジでムカついてるのよ。
 だから全力でぶちのめしてあげるわ。
 誤算だったわね。恋する想いを力にできるのは何も貴方達だけではないってことよ」
『恋する電流マシン』へ言い放つのは、自身を絶世の美少女と言ってはばからない神代・カガリ(禍狩・e00537)。
 その美少女っぷりにこの世の誰よりも惚れたと言われて『付き合ってあげてる』ジルベルト・ヴァインと共に、電流マシンの破壊に挑む!
「口ではこんなツンケンする子ですがね、デレると本当に可愛らしいのですよ。
 年相応の可愛さ。それとアンバランスなこの肢体。
 発情と呼ぶのは些か聞こえが悪いですが、愛したくなるのも仕方無い、というものですよ」
 電流を受けたジルベルトは、普段口にしないのろけと少々下世話な本音を垂れ流す。
「いくら美少女とはいえいたいけな11歳のカガリに発情するなんて、とんだ変態よね。ウフフ♪
 でもそんなあんたのこと、カガリはだーい好きだから安心なさい♪」
 カガリの方も、電流効果により普段の小生意気&ツンツンっぷりが嘘のようにデレッデレである。
「ねぇ~♪ こんなやつらどうでもいいからぁ♪ 早く倒して一緒に、ホテル、ホテルぅ♪」
 それいじょういけない。
 ――いや、やはり11歳。まだ20時前なのにもうおねむなのかな?
「やれやれ、急かさないで下さい。
 私は戦闘は不得手なのですから、カガリが頑張らなければ」
 キワドイやりとりを挟みつつ、カガリはジルベルトと共に殺人ロボに攻撃を加えていく。
 こんな状態でも、戦闘にはなんら支障無いのだ!
「カガリを怒らせたその罪、神への返命を以て償うといいわ!」
 先手必勝。カガリが『禍狩螺旋刃』を放つ。
 オラトリオ、螺旋忍者、降魔拳士と自身の力を総動員して放つ螺旋手裏剣が、電流マシンの胴部に激しく突き刺さる。
 攻撃を受けたダモクレスが、グラビティ中和のエネルギー弾をカガリに放つ。
 ジルベルトは、攻撃を受けたカガリに魔術切開で緊急手術を行い、回復に当たる。
 これはいりょうこういです。
「……あんた、ちゃんとBS回復する気あるんでしょうね?」
 相方が回復を担当するので任せるカガリだが、信頼しきれない部分も少々あったり。
 だが、安心していい。
『恋する電流』以外の悪影響を及ぼす効果が三つ重なれば、桃色ミストでちゃんと治療してくれる。
 そんなこんなで、カガリは相方へデレデレっぷりを大盤振る舞いしつつも、電流マシンの撃破に成功したのだった。
 途中、実力が大きく劣るジルベルトがカガリへの攻撃を庇って危うい場面もあったものの、なんとか二人とも無事である。
「さ、他の連中の加勢に回るわよ」
 戦いを終えたカガリは、すぐに未だ戦闘中の味方を助けに行くというのである。
 ジルベルトの言葉通り、言うことはともかく紛れもなく良い子なのだった。

●テオドール&サラフディーン
「似合う?」
「お前は本当に可愛いなぁ……」
 テオドール・クス(渡り風・e01835)が、ドレスの裾を摘まんで聞いてくる。
 素敵なドレスにほんのりお化粧、ばっちりと女装をしたテオドールに、サラフディーン・リリエンタール(蒼き大鷲・e04202)は幸せそうに微笑を浮かべる。
 テオドールにとってサラフディーンは、幸せの探し方を教えてくれた何より大事な存在。
 紆余曲折を経て結ばれたばかりの恋人同士の熱量は、ダモクレスの殺人マシンなどものともしないだろう。
「ムスターファも一緒で、今日はWデートだね」
 ドレスと同じく、大鷲の雌のファミリアロッドであるSultanaもサラフディーンから贈られたもの。
 サラフディーンの持つMustafaとは番いなのだ。
「恋する電流はサラフが二人分受けろよな!」
 普段から遠慮ナシの直球ストレートをぶつけてくるサラフディーンなら、いつもと同じだろうと予測するテオドール。
 サラフディーンの方も、「隠し事なんかないしな」とまったく気にしていない様子を見せる。
 ――だが、その考えが甘かった事をすぐに思い知らされるのだった。
 一つは、電流を浴びせられるまで存在すら知覚出来ないのに庇うのは不可能ということ。
「サラフー、こんなロボ放っておいて二人だけの夜を過ごそうよぉ。
 ねぇほらオレだけを見て?
 オレの大好きなその蒼い眼、もっとよく見せて」
 電流の効果で『だいしゅきモード』に入ったテオドールは、サラフディーンにべったりくっ付き、首に腕を回して甘えだす。
 仕舞っていた角と尻尾、翼がぴょんと飛び出て、瞳がハートマークになってそうなトロけっぷりである。
 ……本当にこれで、戦闘に影響ないのか。
 サラフディーンの回復を受けて正気に戻ったテオドールは、自らの痴態を思い出して羞恥に顔を染めつつ、惨劇の鏡像で電流マシンへ八つ当たりのように攻撃を加えていく。
「こんなこともあろうかと!!」
 依然電流の影響下にあるサラフディーンは、事前に用意していたテオドールへのラブレターを、バリトンヴォイスで読み上げる!
「俺の可愛い夜啼き鳥。
 独りで孤独を抱えてきたお前に、燈火があればと願った。
 夜の帳が下りれば、毎夜燈を掲げ、無事帰るのを祈る――」
「サラフすとっぷーー!!」
 正気のテオドールが声を上げるが、一度走り出したらもう止まらない!
「――温もりもすべて、お前に灌いで。
 慈雨が枕を濡らす時も。
 この想いをどうやって伝えよう……」
 やだ、無駄に美声……。
(「上がれ命中率、狙うぞホーミング!
 テオのハートにホームラン!」)
 対象が変わってる!?
 読むうちに真剣さを増し、半ば言葉攻めともいえるラブレターの朗読。
 テオドールの『†††黒歴史詠唱†††』は、敵だけでなくテオドールへも多大なダメージを与えてしまう。
 二つ目の誤算、サラフディーンのラブ攻撃を甘く見た報いを受け、恥ずか死寸前のテオドール。
 そんな彼――女へ向けて電流マシンが魔法の光線をビビッと飛ばすが、サラフディーンがすかさずお姫様抱っこで庇って受ける。
 ……なにか味方に後ろから撃たれるような形になったが、戦闘自体は問題無く進んだ。
 テオドールが与えたトラウマを、サラフディーンが絶空斬で悪化させ。
 二人のファミリアが、息を合わせた時間差攻撃で追い討ちをかける。
「燈辻からメール……?」
 そうして電流マシンを片付けたテオドールは、友人からのメールを受け、サラフディーンと共に手助けへ向かうのだった。

●燈辻&レオン
「サラフディーン様、チャペルがあるって本当ですの?」
 帰りに寄りたいと三人におねだりしていた桜夜・燈辻(琥桜姫・e21586)。
 今はテオドール、サラフディーンの両名と別れ、姫と騎士の関係だというレオン・ボヤリンツェフと共にカップルを装い行動中。
 燈辻の今夜の衣装は、体のラインが見える黒シースルーのインナードレスに、着物のようなドレス。
 脚の爪先の長さまである漆黒の髪は、お姫様らしく姫カットである。
 そんなおめかしばっちりの燈辻に、エスコート役のレオンは普段のポーカーフェイスからは想像できない笑顔で愛を囁いてくる。
 お出かけ気分なので手を繋いだりといったことには平気な燈辻だが、愛の言葉には何やら胸がちくちくしてしまう。
(「何故なのでしょう……。
 忘れてしまった何かを思い出しそうなの。
 怖い……。
 でも、レオンがいれば平気。
 わたくしの騎士様ですもの」)
 そんな風に少し余裕の無い燈辻だが、ロボが空気を読んでくれるわけも無い。
「ふ、わぁ……い、いやっ」
 電流の不意打ちを受けた燈辻は、隠していた角や尻尾が出て戸惑ってしまう。
 快楽エネルギーが欲しくなったのに、それを伝えられずもじもじするばかり。
 ついには泣き出しそうになる有様だ。
 そして、レオンの方はというと――「愛してる」「好きだ」そんな言葉が、とめどなくあふれ出す。
 普段なら平気で言えることなのに、変に恥ずかしくてたまらない。
「ふえぇぇっ……」
 涙目でサキュバスミストを使い正気に戻った燈辻は、テオドールへと電流マシン発見の連絡を入れる。
 二人とも初任務で実力不足。経験豊富な二人と共闘できれば、これほど心強い事はない。
「…………」
 レオンとしてはあの二人のことをあまりよく思っていないので、この展開は面白くない。
 燈辻の希望や実力面での安定性など、否定することはしないものの、素っ気無い態度をとってしまうだろう。
 ともあれ、二人が駆けつけるまでの間をなんとか凌ぐことが出来た。
 さすがにケルベロス四人がかりとなれば、電流マシンもひとたまりも無い。
 さらに次のマシンを釣りに行くという、テオドールとサラフディーン。
 燈辻は助けてくれた礼を述べ、今度は自分達がお手伝いに行くと言って、ひとまず分かれるのだった。

●残りは三体、大詰めです!
 ……結論から言えば、残りの三体も、特に問題が起きることもなく破壊できた。
 一番先に二体目と戦うことになったユーベルとシェイの組は、同格の相手と二戦目ということもあって苦戦したものの、大きな怪我を受けず勝利。
 アリルと徹也は、苦戦中に「助けてあげるわ」と現れたカガリとジルベルトの増援であっさりと撃破。
 テオドールとサラフディーンも、燈辻、レオンの援護――他より弱いとはいえ、れっきとしたケルベロスである――を受けて大過なく。
 事件と言えるのは、せいぜい二度目の電流を受けたサラフディーンが、再び黒歴史(ラブレター)の詠唱を始め、それを聞いた燈辻が嬉死恥ずか死で昇天しかけたくらいか。
 こうして、舞子に現れた八体の『恋する電流マシン』は、ケルベロスの手によって残らず破壊されたのだった。
 まだ夜も早い時間だ。
 せっかくだからどこかへ遊びに行ったり、デートの続きをするのもいいだろう。
 恋人達の危機を未然に防いだ彼らに、聖夜の祝福がありますように。

作者:紫堂空 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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