恋する電流マシン~恋の炎で焼きつくせってか

作者:あき缶

●人間のつがいを同時に殺害して合成させた特殊な部品
 城ヶ島の螺旋忍軍拠点から回収した秘密書類を解析して発見された、破壊された巨大ダモクレスダンジョン。
 体内に残霊発生源を持つそのダモクレスは、修復中であったため、ダモクレスに与する螺旋忍軍によって隠蔽されていた。
 それが白日のもとになった今、ケルベロスによる調査が進められた結果、
「このダンジョンを治すには、『つがいである二体の人間を同時に殺害して合成させた特殊な部品』が必要なんや!」
 えげつな~っ! と身震いするは、香久山・いかる(ウェアライダーのヘリオライダー・en0042)である。
「そんでな、このえげつない部品を回収するためのダモクレスの潜伏場所が分かったんや。こいつらは、デートスポットに居ってな、カップルに恋心をわきたたせる妙な電波をぶっかけた後に、殺して部品化するっちゅうケッタイなダモクレス、名づけて『恋する電流マシン』やねん」
 たしかに、『つがいの人間』を探すには、デートスポットがふさわしいだろうが……。そのネーミングセンスはどうだろう。
 いかるは、続ける。
「これ以上、カップルが部品にされへんよう、部品回収用ダモクレスを倒しに行ってきて欲しいんよ」
 宮城の『SENDAI光のページェント』へ! といかるはいい笑顔でケルベロスに言い切った。
 恋する電流マシンはさほど強くはないようだ。しかし隠蔽力は高いらしく、ダモクレスから『カップルに恋心をわきたたせる妙な電波』つまり恋する電流を浴びた者でないと、発見できないという。
「恋する電流マシンは、カップルにしか恋する電流を浴びせへんねん。つまり、皆にはダモクレスが『あ、こいつ、カップルやな!』って思うような動きをして欲しいんよ」
 光のページェントには、八つの恋する電流マシンが潜んでいるとのこと。
 ケルベロスは、八組のカップルになりすます……もしくは実際のカップルでダモクレスを捜索する必要がある。
 恋する電流マシンの武器はバスターライフルと同じようなもの。
「強くはないんやけど、皆は恋する電流マシン一体につき、二人で戦ってもらうわけやから、互角の戦いになるんちゃうかな」
 といかるは首を傾げた。
 さて、宮城の有名なイルミネーションイベント『SENDAI光のページェント』とは、仙台市都心部の定禅寺通のケヤキ並木が温かなオレンジの光りに包まれる、ロマンチックなイベントである。
 定禅寺通と東二番丁通が交差する場所にある、勾当台公園には大きなヒマラヤスギを電飾したツリーや、光のオブジェなどが設置され、幻想的な雰囲気だ。
 普段は沢山の人でごった返すが、今回はことが事なので、八組のカップルつまり十六人のケルベロスしか、付近にはいない。一般人の保護などは考えなくていい。
「ふつーに、イルミネーション眺めながらデート気分でブラブラしてたら、恋する電流マシンが釣れるから、あとは普通にぶっ潰したってんか! カップル殺すなんてえげつないダモクレス、放置でけへんもんな」
 でもせっかくのクリスマスやし、楽しんできて。といかるは笑顔でヘリオンを指差すのだった。


参加者
ロゼ・アウランジェ(時空歌う黎明の薔薇姫・e00275)
ロイ・リーィング(勁草之節・e00970)
シグリット・グレイス(夕闇・e01375)
アレクセイ・ディルクルム(狂愛月下香・e01772)
ハチ・ファーヴニル(暁の獅子・e01897)
橙寺・太陽(太陽戦士プロミネンス・e02846)
ラティエル・シュルツ(星詠みの蒼きリコリス・e15745)
神宮・翼(聖翼光震・e15906)

■リプレイ

●まだ偽りの恋人
 色とりどりの光のオブジェが立つ勾当台公園、ドギマギぎくしゃくとロディ・マーシャルの歩みはぎこちない。
 腕を組んできた神宮・翼(聖翼光震・e15906)が、笑顔で胸を押し付けるからである。
「当たってる当たってる!」
「何が~?」
 翼がとぼけてみせると、ロディは真っ赤な顔で口ごもる。
「……っ」
 その微笑ましい様子を、翼はニコニコと見つめ、追撃する。
「ねえねえ、キスしたら敵も出てくるかな?」
「キッ……?!」
 もっと真っ赤になったロディを見て、翼はニヤニヤが止まらない。
(「ロディくん、ウブで面白ーい。照れ顔ゲット☆」)
 ロディは困り果てながら、翼をチラリと横目で窺う。
(「恋人でもないのに、こんなのセクハラだろ……。い、いや、不満がある訳じゃない。むしろ翼はかなり可愛い部類に入ると思う……けど……」)
 と内心ぶつくさ言っていると、急に耳にふうっと息を吹きかけられ、ロディは飛び上がった。
「わっ! な、何するんだよ?!」
「ねえ、あそこの茂み、ちょうど隠れられそうだけど……どう?」
「どうって……」
 とロディが言葉に窮していると、翼が指差した茂みから、何やら電撃が二人に襲いかかる。次の瞬間、ダモクレスが飛び出してきた。
「来た!」
 ロディはすかさず、気合を叫び、恋する電流の効果を消し飛ばすと、庇うように翼の前に立った。
 きゅん。
(「あれ……? これが、恋心ってやつなのかな??」)
 まだ恋というものがわかっていない翼は敵を攻撃しつつも、今自分の胸に生まれたくすぐったい感情に首を傾げた。
 恋する電流マシンは、すかさず翼にキャノンを浴びせる。
「持ってけ、ありったけ!」
 腰でリボルバーを構え、ロディは引き金を引いたまま、撃鉄を連打。銃声ひとつと同時に六発の銃弾が、恋する電流マシンに全弾命中。
 ばらりと解けるように分解されたダモクレスは、完全に沈黙した。
「大丈夫か、翼? その……ヘンな気持ちになったりしてないか?」
 ロディが振り向いて、気遣ってくれるから、翼はパッと表情を笑顔に切り替える。
「あ、うん。大丈夫! もうちょっとだけ付き合って、ね」
 ぱっとまた胸を押し付けるように腕を組んでくる翼に、ロディはまた頬を染めた。
(「だから恋人でもないのに……。あ、でも恋人になれば問題ないのか……?」)

 同じく公園には、ラティエル・シュルツ(星詠みの蒼きリコリス・e15745)と仁志・一紀がいた。
 片思い中の相手と、ダモクレス退治という名目で恋人ごっこが出来るのは、ラティエルにとっては嬉しいことだ。
(「甘い雰囲気作らないとね。恋する電流マシンをおびき寄せるため、必要なことなんだからっ」)
 ラティエルは、おもむろに持参してきたチョコレートビーズが添えられたケーキを取り出す。
「この間約束した炊飯器で作るケーキだよ。結構うまくできたと思うから感想聞かせて?」
 ラティエルは有無を言わさぬ速度で二の句を継いだ。
「あ、あーんしてあげる。ほらほら、口開けて?」
 一紀はどきりと目を見開き、一瞬戸惑った。自らを只の一兵と称する彼は、不器用で戦線でのひりついた生活しか知らない。こんな甘い雰囲気は、あまり得意とはしていないのだ。
 照れながら、ぎこちなく一紀は口を開いた。
「た、食べさせてくれるのか? ……ぁ、あーん」
「どうかな?」
「ああ、美味い」
 頬をほころばせてみせる一紀に、ラティエルは顔を輝かせる。
「そう!? やった、我ながら会心の出来だと思うんだよね」
 片翼を失った経緯から、ラティエルは炎が怖い。故に、ガスコンロが使えないラティエルだが、炊飯器のような電化製品を利用した料理はそれなりに得意なのである。
 とても嬉しげなラティエルに、一紀は照れながらも声をかける。
「お、お返しだ……。口を開けろ。ほら、あーん」
「えっ。本当? あ、ぁ……あーん」
 目を閉じたラティエルが開いた唇に、一紀はケーキを入れてやる。
「へへへ……美味しいね」
 もぐもぐと咀嚼した後、頬を押さえ、微笑むラティエルだが。
「っくしゅ、北の方だと夜は冷えるね……でも一紀君の傍は暖かいな。もうちょっと近くに行っていい?」
 突然のクシャミで、仙台の夜の寒さを実感したらしい。
 一紀は苦笑して、ラティエルを抱き寄せる。
「仕方ねェなぁ、こっちに来いよ」
 その二人がくっついた瞬間をダモクレスは逃さない。ビビビと恋する電流が二人を包む。
「……ラティ……今日は普段以上に凄く綺麗だ……」
 甘い視線をラティエルに注ぎながら、一紀は彼女の頬を撫でる。
「ん゛っ!?」
 一紀の一紀らしからぬ発言に、ラティエルは目を白黒させてむせるも、ぽおっと頬を赤らめた。
「って、これが恋する電流マシンの力!?」
 いつの間にか二人の前に這い出している恋する電流マシンを、一紀の縛霊手が唸って網状の霊力で雁字搦めにしつつ、殴りつける。
「血の色をした禍を呼ぶ星よ、今ここに幻出せよ、不浄の子が汝の力を求めるだろう。全てを無に還すために、降り注げ」
 ラティエルの詠唱が公園に響く。
 イルミネーションで明るかったはずの、恋する電流マシンの周囲が夜闇に包まれたかと思うと、真っ赤な彗星がつうつうと流れては、ダモクレスを滅多打ちにした。
 不吉な流星は、恋する電流マシンが完全にその形状を失うまで止まなかった。
「折角だしちょっとあたりをぶらつきたいなぁ。……駄目?」
 ラティエルの誘いに、一紀は口元を緩ませ頷いた。

●恋人の域を超えた幸せ
 公園担当班、最後の一組は先日結婚した正真正銘のカップルである。
「わぁ! すごく綺麗ねアレくん! 一緒に来れて嬉しい」
 光のシャワーを見上げて、弾けんばかりの笑顔を見せるロゼ・アウランジェ(時空歌う黎明の薔薇姫・e00275)に、アレクセイ・ディルクルム(狂愛月下香・e01772)は臆面もなく愛を囁く。
「ロゼ……好き好き好き好き大好き愛してる!」
 病的ともいえるほど、ずっとロゼに想いを寄せてきたアレクセイだ。ようやく結婚という絆を結ぶことが出来て、男アレクセイ、幸せのまっただ中である。
 この狂的な愛の言葉を捧げられても、ロゼは嬉しそうに微笑を返す。
「ん……私もアレくんのこと大好きよ」
「綺麗だ。潤んだ瞳も甘やかな声も……全てが僕のモノだなんてまだ信じられない」
 うっとりと見つめ合い、アレクセイは甘ったるい声でロゼをダンスに誘う。
 ダモクレス退治のために無人になっている公園だからこそ出来ることだ。
「お手をどうぞ、僕の姫……」
 ほっそりとした麗しい手を、差し出されたアレクセイの手に乗せ、ロゼは引かれるままに抱き寄せられる。
 そして二人はくるくると、幻想的な色とりどりのイルミネーションを浴びながら踊りだした。
「夢のようだ」
 頬を寄せ、アレクセイはうっとりと呟くとロゼにくちづける。
「愛してる。ずっとずっと永遠に」
 絡めた指に力を込め、ロゼは背伸びしてアレクセイの耳元に囁いた。
「うん、ずっと一緒にいようね。愛してる……アレクセイ、貴方と共にあることが私の幸せなの」
 そんな甘やかな世界をつんざく電流に、二人はバッと弾かれたように離れた。
「見てた、の!? 私の夫に何て事を!」
 真っ赤になるロゼがアレクセイの前に立つ。
 一方、
「邪魔するな」
 と怖い顔をしたアレクセイは、天誅だ。と呟くと、
「愛の詩を歌おうか。邪なる奇跡紡ぎて未来を絶って。憎悪込め願う。汝、災い抱く呪福あらんことを」
 と詠唱した。突如虚空より、黒き羽喚ぶ鐘の音が禍々しく鳴り響く。イルミネーションとは違う穢れた光がダモクレスを照らし、マシンの足元に奈落を作ると、奈落はずぶずぶとまるで泥の沼のように恋する電流マシンを飲み込んでいった。
 だが平穏も一瞬であった。仲間の仇をとらんとばかりに、続けざまに恋する電流マシンが飛び出してくる。
 焼夷弾をばらまかれ、
「まったく、懲りないやつだ。ケーキの前にダモクレス入刀だね」
 アレクセイは肩をすくめる。
 ロゼは、フィナーレにしましょう、と詠った。
「愛の詩を歌いましょう。聖なる奇跡紡ぎて未来に繋げ。愛を込め願う。汝、倖い抱く祝福あらんことを」
 何処からか、白き羽が舞い散り、麗しい鐘の音が高らかに響く。イルミネーションとは違う清らかな光がダモクレスを照らし、裁きと浄化を与えた。シュワシュワと泡立つように恋する電流マシンは消滅していく。
 二人はお互いの顔を見合わせると、幸せそうに微笑み合い、何事もなかったかのように手を繋いで歩いて行った。

●流れるように初心者の恋
 場所は変わって定禅寺通――葉が落ちきった街路樹に巻きつけた電球が、オレンジ色の光で夜を満たしている。
「これ以上被害を出させはしないっスよ! 一緒に頑張ろうっス!」
 にっと笑いかけてくるハチ・ファーヴニル(暁の獅子・e01897)に、シグリット・グレイス(夕闇・e01375)は戸惑い気味に眉を寄せた。
「ああ」
 とだけ、シグリットがクールに返すと、おもむろにハチが手を握ってきたので少し驚いた。
「ちゃんと恋仲に見えるっスかねぇ? かっぷるって、こういう時他にどんな事するんスか?」
 先日、シグリットに告白したハチだが、修行一筋、硬派というか純朴に生きてきたため、世間の恋仲なる関係がスべきことというものがイマイチわかっていない。
 周囲を見回すも、まだ恋する電流マシンとやらの気配は感じない。
「手を繋ぐだけじゃ効果は薄い……か?」
 シグリットは少し思案した後、ぐいとハチの手を引いた。
「ハチ、恋人らしい事と言えば試したいことがある、少し目を閉じてくれないか」
「おっ、何か秘策があるんスか!?」
 さすがシグリット! とハチは喜色満面に頷き、目を素直に閉じた。
「良いというまで絶対に目を開けるなよ」
 顔を真っ赤にしているところは見られたくない。シグリットはそろそろとハチの顔に手を伸ばし、両手で頬を包むと、そうっと唇に己のそれを重ねあわせた。
「……もう、いいぞ」
「えっ、あっ、ええっ!?」
 まさかの展開に、口を覆って驚愕しているハチに、シグリットは不満気に鼻を鳴らす。
「恋人といえばこういう事をするんだろう? ……まさか違うのか」
「い、いやいやいや。違……わないと思うっス。でも、その、不意打ちだったっスから……」
 もごもごと口ごもり、二人して真っ赤になって顔を逸らした。初なものである。
 そんな甘酸っぱい空気に反応して、恋する電流マシンが現れる。シビビビと恋する電流を二人に浴びせて、ダモクレスが襲ってきた。
「ちっ」
 メディカルレインをすかさずシグリットは降らせる。恋する電流の効果が雨で流れ去った。
「あーー……」
 残念な気持ちでハチは流れていく薬液を見送る。
(「もっと可愛いとこが見れると思ったのに……」)
 だが、気を取り直して、ハチは己の瞳を銀に染めた。
「うちの天使様には指一本触れさせねっスよ!」
 と覚醒之禁術である黒い霧を解放、ダモクレスを縛り付け壊す。
「ハチ、その天使様って言うのやめろ。恥ずかしい」
「? あれ? 駄目なんスか? シグリットは自分の天使様っスのに」
「~~っ」
 シグリットが言葉を失っていると、続けて二体目。
 無数のレーザーが二人を襲うが。
「さぁ……悪魔狩りの時間だ」
 銀弾を込めたリボルバー銃の引き金を、シグリットは引いた。
 正確に恋する電流マシンの弱点を射抜いた弾丸により、あっけなくダモクレスは沈黙する。
「……行くか」
 淡々とイルミネーションの道を歩き出すシグリットの頬にハチは唇を寄せた。
「!?」
 驚くシグリットに、ハチは思わずやってしまった行動にあわあわしながら叫んだ。
「え、あ……さ、さっきの口吸いのお返しっス!」

●婚約旅行新婚旅行
 普段は車道に面しているため、徒歩では見られない並木のページェントを眺め、ロイ・リーィング(勁草之節・e00970)は、ほうと白い息を吐いた。
「高い所のお店からみるライトもとても綺麗なんですよ! ここからみるの、凄く目新しいなぁ……」
 まるで愛する主人にまとわりつく犬のようにロイは隣のガルソ・リーィングに話しかけ、抱きついた。ロイはウェアライダーであるものの、犬ではなく狼なのだが……。
「そうだな」
 とガルソがそう言って、ロイの頭をぽんぽん撫でてくれるのを、ロイは嬉しげに笑いながら受けている。
 今日はガルソに許嫁のふりをしてもらっている。だからこそ普段はしてもらえないイチャイチャも許されているのだ。
(「今日のことで、ガルソ様のつがいとして視野にいれてもらうんだ」)
 とロイは目論んでいるが、どうなることやら。
 べたべたしていると、梢から恋する電流マシンが落下するなり電流を浴びせてきた。
「っ、俺はガルソ様を守るための盾で、ガルソ様の刃だ」
 斬霊刀を抜き放つなり、斬撃を浴びせるロイ。
「良い子だ」
「えっ、ガ、ガルソ様!?」
 褒められた?! とロイは頬を染めて目を見開くと、ガルソの方を見やる。
 うっすら微笑むガルソは、
「可愛いな、ロイ」
 と呟き、ダモクレスに飛び蹴りを叩き込んだ。
(「あ、これが恋する電流の効果なんだ……ぜ、絶対キュアするもんか!」)
 ロイは状況を飲み込み、心の中で固く誓う。
 ダモクレスはミサイル焼夷弾をばらまき、二人を焼く。ロイは自分の怪我も顧みず、ガルソを癒やした。
「ありがとな」
 ロイの頬にキスの褒美を与え、ガルソはダモクレスを前に、ドラゴニアンの翼をはためかせて飛翔すると、
「俺に歯向かうとはいい度胸だ」
 と冷酷な視線を浴びせた。
 絶対零度の視線の圧力に負け、ダモクレスはぷしゅんと煙を噴いて動かなくなった。
「なぁんだ。これで仕舞いか」
 敵を倒したことで、恋する電流の効果が失せたようだ。つまらなそうな正気の表情に戻ったガルソを少し残念な面持ちで見るロイに、ガルソは宙に飛び上がると、微笑みかけた。
「ロイ」
 両手を広げてみせるガルソに、
「ガルソ様っ」
 狼に変身して飛びついたロイ。
「ロイは犬になったな。高いところから見ると綺麗だっていうなら、抱っこしてつれていってやる」
 ばさりと翼を打ち鳴らし、ガルソは仙台の夜空へと舞い上がった。
(「犬じゃないです、狼です。……でも今は犬でもなんでもいいです……っ」)
 ロイはぎゅっとガルソの腕にしがみつくと、空中散歩を楽しむのだった。

 橙寺・太陽(太陽戦士プロミネンス・e02846)と露麗羅・リルは、髪の毛一本も通さぬほどびったりとくっついて、定禅寺通の光のページェントの下を歩いていた。
 厚手のコートをまとっているリルだが、うふふと微笑み、太陽にしか見えない角度でコートを広げてみせる。コートの中は、かなりの際どい服だ。
 なかなかの誘惑に、太陽は笑みを作った。この戦いが終わったら、ネットで予約しておいた温泉宿にリルと行くのだ。宿でのひとときが待ち遠しい。
 二人が愛を燃やそうとした時、恋する電流マシンが現れ、二人を恋する電流で撃ちぬく。
「愛する人が隣にいる、負けない」
 イチャラブ状態がもっとイチャラブ状態になるなら、貰い物だ。
 太陽はマインドリングから光の盾を作り出し、リルを守る。
 リルは二振りの鉄塊剣を振りかざし、巨大な胸をばるるんと揺らしながら、ダモクレスを十字に切り裂いた。
 ダモクレスがビームで対抗する。
「俺の拳に宿れ太陽っ!!」
 夜にはありえぬ太陽の炎が、太陽の拳に宿る。
 気迫の突進の末、振りかぶった拳が唸り、恋する電流マシンにめり込む。すさまじいエネルギーを受けきれず、破片を飛び散らせながらダモクレスが吹っ飛ぶ。
 欠片も残すまいとリルが放った地獄の焔が、恋する電流マシンを包んで焼きつくした。
「これで全部だね」
 アイズフォンで確認すると、自分たちが先程粉砕した分も合わせると八体全てのダモクレスの破壊が確認できた。他のケルベロス達が破壊報告をメールで済ませてくれていたのだ。
「じゃあ、行こうか。……リルさんをお嫁さんにいただきます♪」
 太陽の宣言に、リルが笑顔で頷く。
 二人は、一足早い激熱ラブラブな新婚旅行の第一歩を踏み出したのであった。

作者:あき缶 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 9
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