恋する電流マシン~煌めく夜に

作者:志羽

●煌めく夜に
 大阪の夜――緑色の光を放つツリー天閣も見えるあべの・天王寺イルミナージュ。その今年のテーマは和。
 天王寺公園で開催されているそれはカップルも多く訪れる場所だ。
 入れば動物達のイルミネーションが続く。色々なエリアの、101匹の動物たちが光り輝き、その先には虹の回廊が。それを抜けると、今年は武将を模したものが広がっている。
 イルミネーションという幻想的な情景の中でカップル達の恋心はもう十分なのだが、それを一層増幅させ、部品に相応しい精神状態にするためダモクレス達はその機を伺っていた。
 恋する電流――それを浴びせた後に殺して、部品とするために。
 電流を浴びせられたカップル達はいつもより大胆さ増し増し、いつもよりドキドキ増し増し、いつもよりいちゃいちゃ増し増し。
 そして、そのテンションが最高潮になったその時、ダモクレスによって部品にされてしまうのであった。

●予知
 いちゃいちゃしてきてくださーい。
 夜浪・イチ(サキュバスのヘリオライダー・en0047)はそう言って笑った。
「そんなに戦闘力は高くないけど、かくれんぼの上手なダモクレスが出現しまーす」
 なお、このダモクレスはダモクレスの放つとある電流を浴びせられない限り、発見することができないという。
 その電流は――恋する電流。
「ダモクレスが『人間のつがい』って判断するような関係の、つまり恋人さんとか御夫婦とか、いい感じの間柄の人とか。まぁ、そのふりできる人達にこの作戦はお願いしたいわけですよ」
 現れるダモクレスの名前は、その能力から『恋する電流マシン』と仮称が付けられている。
 一か所のデートスポットには、8体の『恋する電流マシン』がいるらしく、8組のカップル、あるいはカップルに偽装したケルベロスがまんべんなく捜索する事で、すべての恋する電流マシンを見つけ、破壊するのが作戦だ。
「このダモクレスはバスターライフルのグラビティ使ってくるんだけど、戦闘力は最初に言った通りそんなに高くない。けどこっちも二人で戦うことになるから互角の戦いになると思う」
 そう言って、イチは任せたい場所はここだと示した。
 大阪――あべの・天王寺イルミナージュ。
 遠くにツリー天閣やあべのハルカスも見える天王寺公園にて行われているものだ。
「公園入れば、動物のゾーンが続いて、虹の回廊。その先には戦国時代の武将模したゾーンがあるんだって」
 全部で8体が潜んでいるので、手分けして探してきて欲しいとイチは紡ぐ。
「カップルらしくうろうろしてればダモクレスは『恋する電流』を浴びせてくるから電流の発生源を確認して、戦闘を挑んできてください」
 なお、この地域は一時的に一般人のカップルは避難させているので、16人のケルベロスのみが狙われることになる。また、このイルミナージュにいるパフォーマー等は事情を知っているので戦闘が始まれば自主的に避難する事になっている。
 ダモクレスが狙うのはカップルのみなので彼らを巻き込むこともない。
「ということで、頑張ってきてくださーい。うん、俺は電流絶対浴びたくない系だけど」
 そういうのも楽しんできたらいいんじゃないかなと、イチはケルベロス達を天王寺公園へと送り出した。


参加者
梯・茲野(夢見るたまご・e00017)
乙川・千織(スターヴィセオ・e00711)
疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)
花月・ロゥロゥ(太陽と月の尻尾・e02190)
クァン・カスパール(ヤギ・e05854)
ルオン・ヴェルトラング(コラプサー・e11298)
磯野・燈毬(エックスプレッシヴァ・e16795)
磯野・霖(アダージョ・e16796)

■リプレイ

●煌めく動物たち
 あべの・天王寺イルミナージュに潜んでいる、恋する電流マシンを探し出すべく、ケルベロス達は動いていた
 敵を倒せばメールで連絡、それぞれの場所を被らぬように定めて囮作戦開始。
 色とりどりの光を放つ動物たちがまず迎えてくれる。
「りんちゃんと一緒だし、張りきるよっ」
 磯野・霖(アダージョ・e16796)は燈毬、と磯野・燈毬(エックスプレッシヴァ・e16795)を呼んで手を繋ぐ。
「……はぐれないように」
 そう言って手を繋げば零れる笑い声聞こえて何、と霖は問う。
「普段と違うりんちゃんちょっと楽しみだな~」
 そう言って、燈毬は霖の腕に抱きついた。
 カップルっぽく。それはいつもと変わらないようなと、腕に抱きついてくる燈毬の頭を撫でつつ霖は思っていた。
 燈毬もまた、霖を撫でたいの我慢してにこにこ。
 そうしつつも周囲を警戒。くるりと見回すが敵の姿はない。
「折角だし、動物ゾーン、楽しもう」
「他のゾーンも気になるし、今度はゆっくり遊びにこようね」
 笑み浮かべ、煌めく動物たちに燈毬は笑み浮かべ楽しむ。あれこれと燈毬が示すのを霖も追って、そんな様子は恋人同士のようなもの。
 そこへ放たれるのは恋する電流。その方向を定めつつ、燈毬が霖を見上げると。
「燈毬はいつも可愛いね、まるで陽だまりみたい」
 いつもあまり喋らず、喋っても速度はゆっくり。そんな霖が饒舌に紡ぐ。
 そして触れる度合も、いつも以上。
「りんちゃんっ……!」
「燈毬が笑ってくれるから、俺はいつも心が暖かいんだ」
 そっか、と燈毬はぎゅぎゅと腕に抱きつく力強め普段以上にくっついて。
「今度はこういう状況じゃなくて普通の状況でここに来ようか、燈毬との思い出を増やしたいし」
 今は一先ず、姿見せた敵を。
「りんちゃん、頑張ろうね~」
 りんちゃんに守れつつ私もりんちゃんを守るよっ、と斬霊刀を二振り、燈毬は手に。
 そして燈毬を守るように、霖は立ち簒奪者の鎌を敵へ向けた。
 刃に力纏わせ激しく斬りつけ、その傷口から生命力を簒奪する。
 続けて燈毬の放った衝撃波が敵を襲った。
 それに対するように放たれる弾丸。攻撃うけても、ひるまずそのまま戦い続け、押し切ったのはもちろん燈毬と霖だ。
 最後の一撃、その生命力を霖が奪いきると敵はがらがらと崩れ、壊れてゆく。
「……燈毬、怪我、ない? 大丈夫……?」
 少し乱れた髪を整え、心配し汚れを掃う。
「怪我チェックされてくすぐったいよ~」
 もっと触っていいのにな~と普段思っていた燈毬はくすぐったいと言いつつ嬉しい。気がすむまで、好きにさせて笑い零すだけだ。
 りんちゃん優しいな~と笑みつつ皆にメール送り、そうだと燈毬は霖の方へ向き。
「りんちゃん、お疲れ様」
 ひとつ戦い終わったからと、燈毬は霖へと走り寄りちゅっとキスひとつ。それを当たり前のように、いつものように霖は受け取って。
 けれどまだ、残っている敵はいるはず。
 もう一体見つけて倒したいよね、と燈毬が紡いだ瞬間、恋する電流が近くのクマのイルミネーション辺りから放たれた。
 恋する電流マシンとの再びの遭遇。
 二人は其方へ向かい、息を合わせて戦い挑む。

 幸せそうなカップルを襲うなんて、なんて悪いやつっ! と必ず倒すと乙川・千織(スターヴィセオ・e00711)はぎゅっと拳握って一つ頷き。
「いこうルオンくん。殲滅してやるんだよっ!!」
 その言葉にルオン・ヴェルトラング(コラプサー・e11298)は千織へと手を差し出す。
「ひとまず、行くとするか、千織」
 年齢差はあれど、伴侶として扱う。この作戦立案者の思考回路に興味があると、元ダモクレスとしてルオンは思っていた。
 手を繋いで歩いて行く動物ゾーン。
 見慣れない動物もいるなとルオンは興味津々だ。その様子を千織は見て。
「……る、ルオンくんっ? 動物ゾーンを……堪能してるッ……!?」
 けれど、楽しんでないと、きっと敵さんも出てこないよねっと千織も思う。
 なるべくカップルと見えるように手を繋いで、たくさんスキンシップして。
 ルオンの右手と千織の左手。ルオンの鋼鉄製の手をにぎにぎ。時に揺らしたり、指をからめたりと千織は自由気ままだった。
 けれどふと気づいて。
「あれ? 普段通りじゃない、これっ?」
「そうか?」
 千織には普段通りだったのかもしれない。
 けれど何故だろうか、いつもと違う感覚がルオンにはあった。フリでしかないのに体温と血圧が上がっている。繋いだ手の感触が、やけに気になる。
 とは、思うだけで紡がぬまま。
「……あ。ねえルオンくん、カップルといえばチューだよっ!」
「…………ちゅう?」
「さぁさぁどうぞ、ほっぺたでもおでこでもっ!」
「……おまえは、俺にそれをしろというのか?」
 いつでもいいよっ! とにこにこ笑み向ける千織。
 カップルとして、そうこのちゅーをしようかしまいか。
 その戸惑いの、カップルとしての初々しさ的な雰囲気を電流マシンは見逃さなかった。
 がさっと近くの茂みから現れたそれは恋する電流を放つ。それを千織を庇うようにしてルオンは浴びた。
「ルオンくん!」
「千織……。何故だろうな、俺の体温が高まっている」
 大丈夫かと延ばされた手。それをルオンはとって千織の前に膝をつく。
「お前が、そばにいるからなのかもしれない。だとしたら、これはもしかしてだが、フリなどではない、のか?」
 自分でもわからないような言葉を紡ぐ。その様子を千織は瞬いてただ受け取るだけしか今はできない。
「これが、『想う』ということならば、俺は――!」
 と、最高潮に盛り上がった所を潮時とみたのか電流マシンが仕掛けてくる。
 ばばばと放たれたガトリングの銃弾。ルオンは当然の如く、千織を庇った。
「も、もうっ! いいところだったのに! 普段ムツカシー顔ばっかりのルオンくんがっ!」
 そんなこと想っててくれてたなんて。
 一番キュンキュンする所で、邪魔をされ千織はむむっと敵に視線向けた。
「星の鼓動を宿して、かならず成すよ。遂げる。見つけてみせる、わたしだけの――」
 紡ぐ言葉は、夢を見て未来信じるひたむきな想い。それを敵へと音や声、光の形に変えて叩き付ける。それは衝撃となって敵を襲う。
 その間にルオンは自身を地獄の炎に包ませ、傷を癒すと共に攻撃の意志を高める。
「千織を傷つけさせは、しない」
 ルオンは前へ出て、攻撃を向ける。
 短期決戦。攻撃に重き置いた二人は素早く敵を倒し終わった。
 すると、恋する電流の影響も解けるのだが、ぴょんとルオンへと千織は抱き着いて。
「やっぱりちぃ、ルオンくん、大好きぃっ!」
 そうしてデート再開しようとした二人はもう一体に遭遇。
 再びときめき紡いで無事に退治完了。

 初デートにわくわく。
 キャラメル色のふわふわコートでおめかしして、緑の瞳を瞬かせ梯・茲野(夢見るたまご・e00017)が映すのは捩木・朱砂(薬屋・e00839)だ。
 その端正な横顔に。
(「……は、鼻血がでそうだわ……」)
 茲野にとって朱砂は普段から愛情表現欠かさぬいとおしい初恋のひとだ。周りからは兄妹にしか見えないと思うけれどいつかおとなになったら。
 そう思いながら笑み零しつつ、繋ぎたい手がひらひら。身長差を思って繋ぎづらいかしらと思っているとふわり。
 朱砂は長い手製のマフラーを茲野へかけてやる。
「あたたかいわ。ふふ、しあわせ」
 背中叩いて、行こうと朱砂は茲野を促した。
 イルミネーション輝くこの場所は別世界のようだ。
 きらきら輝きをもって迎えてくれる動物たちの姿。
「わ、きれい!」
 ぱぁっと輝く茲野の表情。
「あのうさぎ、かわいい!」
 その指先に目を細め、生の兎は茲野達と堪能したがと朱砂は言って。
「時間差で跳ねる姿も面白いな」
「本物もかわいいけれど、光るうさぎもすてき」
 笑顔の茲野の肩に手を置いて、軽く引き寄せる。
 近くなる距離に茲野はどきどきだ。
 そんな二人の後方でがさっと音がし――放たれる恋する電流。
 びびっと当てられた二人の視線が合えばそっと外される。それは照れ。
 けれど視界の端に恋する電流マシンを見つければ。
「ネジ、あそこあそこ!」
「ああ、そうだな」
 マフラー巻いて近いまま、一緒に電流マシンのもとへ。
 敵は隠れていた茂みからがさっと姿を現しガトリングガンを構える。
 けれどそれより早く。
 発光するルーンアックスを朱砂が振り下ろす。続けて茲野は。
「いらっしゃい、わたしのいとしいたまごたち」
 強大な卵の創造。それは敵の頭上めがけ墜下。それを喰らった敵はぐらりと傾いで攻撃の機を失った。
 そして朱砂は茲野を抱き寄せて一緒に跳躍し、月斧を振り下ろす。
 その直後、ガトリングガンの連射を敵が見舞う。
 それを受けた朱砂へと茲野は威力を溜めて。
「ネジへのらぶ、とどけ!」
 それを傍らの朱砂へ向ければ傷は癒えてゆく。
 そして何度か攻撃をかけると倒れる敵。
 無事に終えると恋する電流の力も解け――けれど、マフラー一緒に巻いて距離はまだ近いまま。

●虹の回廊にて盛大に
 このまま本当のデートにしちまってもいいけど、最初に仕事な!
 と、クァン・カスパール(ヤギ・e05854)はイケヤギに見える角度でメレアグリス・フリチラリア(聖餐台上の瓔珞百合・e21212)を誘う。
「さぁ、虹の国へお連れしましょう、マイスイートロックソルト」
「え? 何? ロックソルト?」
 互い独り身、気持ちはわかるし今日くらいはと来たメレアグリスはまず聞き返した。
「ロックソルトなのがポイントな! 俺岩塩を愛してるから!」
「やだクァンちゃん面白い!」
 そんな感じで二人で煌めく回廊へ。虹のように変化する光に囲まれたその場所は幻想的な趣も。
「虹の回廊も綺麗だけど、それに照らされるお前の顔が最高に綺麗だぜ」
 クァンの向けるキメ顔――イケヤギの角度でイケヤギウインクしいたずらっ子ぽく舌を出した。
「え、何で斜め向いてるの? その舌は……物真似かな?」
 メレアグリスは笑って視線を進む先に。するとその先で動く影より、放たれたのは恋する電流だ。
 その敵の登場に戦闘態勢。しかし二人は恋する電流の支配下だ。
「早く終わらせて一緒に岩塩を舐めたいぜ、子ヤギちゃん」
 ぺろっと上唇めくりあげキメ顔。そのままクァンは敵へ向かって走った。
「人の恋路を邪魔する奴は俺に蹴られてオネンネだぁ!」
 そんな敵に挑む姿が、電流の力も相まってメレアグリスには、ヤギ面も格好よく見えてきて。
「やだ、イケメン……! 一緒に崖登って岩塩舐めたくなっちゃう……!」
 縛霊手での一撃、そして攻撃うけつつも攻性植物で締め上げ絡め取りつつ。
「前衛で暴れまくる俺にメレアちゃんはメロメロ!」
 この後は告白タイム! という勢いでクァンは戦っていた。
 後ろからのメレアグリスの回復という支援を受けつつ響く声。
 最後の締めは電光石火での蹴りだ。
 敵を倒したクァンはメレアグリスの元に戻り。
「カシミアヤギのような輝く銀の瞳、生まれたてのヤギのお鼻のような柔らかなピンクの髪……」
 イケヤギは、愛の言葉を紡ぐ。メレアグリスはクァンの続く言葉を待ていた。
「メレアちゃん! 俺のハーレムの最初の一人になってくれ!」
 ウインクと口説き文句。それを受け取ったメレアグリスはにっこりと笑み浮かべ。
「まー最後は振るんだけどな! だってハーレムって言っちゃってんじゃん!」
 えっ、どこが、なにがわるかったのかなと。悪いところがあるなら直すと上唇めくりあげクァンは言うが。
「……何そのまくれあがった唇、サキュバスだからって馬鹿にしてんのかー!」
「メレアちゃん!? 俺にさっきまでメロメぐはっ」
 逆効果。それは恋する電流のせいとメレアグリスは声高に言って。
「そのきたねえ顔をハードロックソルトにしてやんぜ!」
 メレアちゃーん! と叫び声響かせながらクァンは律儀に一体撃破を送信。

●煌めく戦国ゾーン
 きらきらと輝くのは焔を模した形。それに囲まれた道を、二人は歩んでいた。
「厄介はさっさと片して、飯、喰い行こうぜ」
 疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)の言葉に道玄・春次(花曇り・e01044)はそうやねと笑う。
 黒歴史案件に誘える異性など居なかった。故に、一番の友人を道連れに。
 炎に馬と様々な光の象りを春次が見ていると、ふと手に温もりを春次は感じる。
 普段と大差ない。けれど隣歩くのは変な気分。『つがい』の演技、難しいと悩んだあげく浚うようにヒコは手を取って顔背けたのだ。
 春次はその顔を覗き込み、面の下で笑む。
「今日は積極的やね?」
 そちらに顔向けてヒコは瞬くと。
「普通の武将面なのに……可笑しいな。誰よりも、似合ってる」
 その言葉に笑ってもらうはずやったのにと春次は想いながら。
「恥ずかしいやつ……」
 そう零すのとこの場所のメインが見えてくるのは同じタイミング。
「……電飾で作っちまうとは恐れ入った」
 見てみろと示したのはメインである戦国武将のイルミネーション。馬に乗った姿が光の輝きで作られていた。
 それを視つつ、ふと。
「あんな輝く鎧はどうだ? 今度、似合うのを贈ってやるよ」
 あんなん恥ずかしくて着れん。
 そう思うのだが演技演技と春次は思い。
「鎧もえぇけど、そんなん無くてもヒコが守ってくれるやろ?」
 ぎゅっと握る手。温かいと互いに感じる。
 今は繋いだコレだけで十分。
「『その時』が来るまで春次のこと、絶対、離さねぇから」
「うん、えぇよ……離さないでいて」
 そして今がその時。
 武将の裏側あたりに動く影が放つ恋する電流が二人を襲う。
「いたっ!」
 手を繋いだまま駆けだしたのは春次。ちらりとヒコを見ればドキドキする。
「今日は俺が守ったる、ヒコは大切な人やからなっ」
 その言葉にヒコは照れ、けれど時間立つといくら敵とはいえ。敵だからこそ、なのかもしれない。
「――……おい。俺以外の奴、見てんじゃねぇ」
 ムッとした声に春次は笑って、戦いの為に手を解こうとするが。
「傍にいねぇとヤダ」
 その手は繋いだままだ。
「音より疾い光は気付かぬ侭、たったの一瞬」
 春次が紡ぐ、無数の細い光の糸達。それは編みこまれ、光の矢となり互いを貫いた。
 その自分たちに向けた癒しによって――恋する電流の影響は解け素に戻る。
 記憶に残る、先ほどの事。
 すぐさま敵に向かうヒコは無言のままで渾身の火力籠めて敵へ。それは先ほどの羞恥分の仕返しだ。
 その様子に春次は笑って、自身とボクスドラゴンの雷蔵も続き、敵が果てるのもすぐだった。
「……よし、自棄酒だ」
 それしかない。
 この後の事を考えヒコは仲間達へと七体目撃破のメールを送信。

●公園の奥で
 七体が残されあとは一体。
 なかなか見えないところに隠れているのだろうとイルミネーションも見えぬ公園の奥へ。
 小さい頃からいつも一緒で兄妹のように育って、つい先日想いを打ち合って恋人同士に。
 普段はつい素直じゃない事ばかり言っちゃうけれど、今日は可愛いワンピースでおめかしして、素直な私をみてもらうんだっ。
 という、設定の花月・ロゥロゥ(太陽と月の尻尾・e02190)は、悪友とカップルを演じる事になり非常に不本意であった。けれど根が真面目ゆえ演技はきっちり。
 そんな姿に御柳・夾(孤高の旅人・e10840)は。
(「……真面目……」)
 と、思いつつ、ウィンク飛ばして。
「超似合ってるぜ~ハニ~☆」
「やばい夾君チャラすぎキモい」
 と、思わずロゥロゥは零した言葉を。
「あ、今のはツンであって悪口じゃないよ!」
 演技でカバー。
「べ、別に褒められて嬉しくなんて……! あ、ある、けど」
 ロゥロゥはそう言って、ちらっと夾を見て。
「もーう、ジロジロ見ないでよ!」
「ちょ! ロゥロゥさん痛い! そんな力込めたら敵より先に俺が死ぬ!」
 バシバシと力いっぱい背中を叩く。
「ばかばかばか! で、でも、好き……」
 そんな、きゅんとする乙女心。しかしやっているロゥロゥ自身は可笑しくて、鳥肌が立っているのを堪えるべく一層強く激しく。
 だがそんな姿は照れあう恋人同士に見えたのだろう。公園の木々の隙間から放たれた恋する電流は夾に向けて放たれた。
「夾君、あそこ! 敵!」
「敵よりも、俺はいつも一生懸命で真っ直ぐなお前が好きだぜ? 出来る事なら……ずっと一緒に居たいと願ってる」
 戦いなんて今はそれどころじゃないと紡ぐ言葉に爆笑しながら敵の方へ。
「お前を全て包み込んで、抱き締めてやりたいな……」
 そんな愛をささやく夾の姿にテレビウムのシンちゃんは、気持ち悪いと一歩引き気味。キュア……と思うがロゥロゥからのストップにその動きを止めて敵への一撃。
「ふははは、レッツ羞恥プレイですわよ☆」
 メモっとくね! とメモ帳取り出しつつ、敵への攻撃も忘れずに。
 けれど延々と紡がれる愛の言葉にロゥロゥも照れて。
「何からも俺が守るからな」
「もう、夾君てば!」
 照れてロゥロゥは殴り、つんのめった夾は敵の攻撃交わす。
 その調子で、やがて敵倒せば恋する電流の影響も解けて。
「ヤバい、死にたい……殴られた場所も痛ぇ……」
 くそぅと零す夾の姿にロゥロゥは笑い零す。
 そして最後の一体は無事倒され、この場所は恋人たちに再び解放される。

作者:志羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年1月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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