●聖夜にいや増す恋
ヘリポートに集まったケルベロス達に対して、小檻・かけら(サキュバスのヘリオライダー・en0031)が説明を始める。
「本日、12月24日に新たなダンジョンが発見されたのでありますよ」
それは体内に残霊発生源を内包した、巨大ダモクレスの破壊された姿であるという。
「どうやらそのダンジョンは現時点でも修復中でありまして、ダモクレス勢力へ協力している螺旋忍軍の一派によって隠蔽されていたため、今まで発見されなかったのでありましょう」
そのダンジョンの探索した結果、打ち捨てておけない事実が判った。
「ダンジョンの修復には『つがいである2体の人間を同時に殺害して合成させた特殊な部品』が必要らしいのであります」
さらに、その部品を回収するべく、日本各地へ部品回収用のダモクレスが配置されている事も判明したのである。
「部品回収用ダモクレスは、いわゆるデートスポットに潜伏してるでありますよ」
その場所を訪れる男女に対し、まずは互いの恋心を増幅させて修復部品に相応しい精神状態へする電流を浴びせて、その後に殺害、部品として回収していくようだ。
「回収用ダモクレスは、戦闘力こそ高くありませんが隠密性に優れ、ダモクレスの電流を皆さんが浴びない限り、発見することが出来ないであります」
つまり、ダモクレスが『人間のつがい』だと判断するに至る関係性の者達か、もしくは一時的にでもそのような状態を演出できるケルベロスの参加が必要となる。
「このダモクレスの名前は、その能力から『恋する電流マシン』と仮称するであります」
一箇所のデートスポットには、8体の『恋する電流マシン』がいるため、8組のカップル或いはカップルに偽装したケルベロスが満遍なく捜索する事でようやく、全ての『恋する電流マシン』を破壊できるだろう。
「さて、皆さんへお出向き願いたいデートスポットは、白良浜イルミネーションイベント『白砂のプロムナード』であります♪」
場所は南紀白浜、白浜海水浴場である。
「天使や星座を光で表したアーチがとても幻想的で、デートのムードをきっと盛り上げてくれると思うであります♪」
そう興奮した様子で語ってから、慌てて頭を下げるかけら。
「とと、話が逸れました……ともあれ、敷地内を皆さんでカップルらしく徘徊して頂けましたら、ダモクレスが『恋する電流』を浴びせかけてくるであります。その際に電流の発生源を確認して、戦闘を挑んで欲しいであります!」
一般人のカップルは一時的に避難させている為、ケルベロス16人のみが狙われる筈だ。
「恋する電流マシンは、バスターライフルと同様の攻撃方法をとってくるであります。バスタービーム以外の3種――二刀流のも用いてきますから気をつけてくださいませ」
恋する電流マシン達のポジションは全てキャスターである。
「カップルを殺して部品にするだなんて、許せないでありますよね。どうか、恋する電流マシンの殲滅を宜しくお願いしますっ。皆さんの御武運をお祈りするであります〜」
かけらは説明を締め括り、彼女なりに皆を激励するのだった。
参加者 | |
---|---|
御神・白陽(死ヲ語ル無垢ノ月・e00327) |
アリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426) |
トリスタン・ブラッグ(ラスティウェッジ・e01246) |
弘前・仁王(究極的なガッ・e02120) |
トウコ・スカイ(宵星の詩巫女・e03149) |
リーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540) |
近藤・美琴(ゼラニウムの誓い・e18027) |
メッシュ・アルバーン(焦熱の魂・e18130) |
●
聖夜の南紀白浜。『白砂のプロムナード』会場内は、ロマンチックな光の奔流で溢れていた。
「……寒くないか?」
御神・白陽(死ヲ語ル無垢ノ月・e00327)は、くじらの肩をそっと抱き寄せ、優しく囁きかける。
「平気です。折角のお誘いですもの、楽しまなくては損ではありませんか?」
くじらも彼の差し伸べた腕へぎゅぅと抱きついて、くすくす笑いながら応じた。
普段は眼光鋭く決して隙を見せない白陽だから、くじらと仲睦まじく寄り添って光るアーチの下を散歩する様子は、大変貴重であろう。
「夜の砂浜ってなんだか素敵ですね」
高い位置にある端整な顔を見上げ、うっとり言葉を紡ぐくじら。
「ああ、そうだな」
白陽も自らの身体を彼女の風除けにすべくぴったりくっついて、星のアーチが照らす可愛らしい面を見つめ、微笑んでみせた。
白陽自身、演技をしながらくじらを気遣うものの、
(「背は高いけど、まだなんだか可愛いですね-」)
と、くじらが感じる程には、どことなく年上の女性に甘えたがっているような風情も匂わせていた。
(「ついつい甘やかしてしまいますね〜」)
「あ、あのイルミネーションも素敵、12星座でしょうか?」
輝くアーチ群を色々見比べて駆け出すくじらが、砂に足をとられ転びかける。
「大丈夫か?」
白陽が難なく腕を伸ばして、くじらをしっかり抱き留めた。
「ありがとうございます……」
愛おしげに見下ろして微笑んでくる白陽の眼が、僅かばかりでも穏やかに感じられて、くじらが目を見張ったその時。
バリバリバリバリ!
例の恋する電流マシンが、煌びやかなイルミネーションの陰から姿を現し、恋する電流を2人へ浴びせかけてきた。
白陽とて電流から逃れられなかっただろうが、元より戦闘中言葉少なな彼には関係なく。
ただいつものように瞬きする間に消え失せ、視界に映る間合いを一足で侵略、マシンへ最接近して一撃見舞うだけだ。
非物質化した斬霊刀が閃く、霊体のみ破壊する斬撃を。
「夜の海岸と言えば、花火ですよねー」
くじらも、ぽちっとスイッチを押して、マシンを遠隔爆破に巻き込み、着実にダメージを与えた。
彼女は彼女で恋する電流を喰らった筈だが、にこにこ穏やかにブレイブマインで白陽を回復するぐらいで、そのおっとりした雰囲気が崩れる事はなかった。
そして、白陽は自らの存在を普遍的無意識にまで一時拡大、ヒトの魂の総力を以って未来の可能性を瞬間に重ねると、
「斬刑に処す」
十七の同時斬撃を放ってマシンを解体、その命を奪った。
同じ頃。
トリスタン・ブラッグ(ラスティウェッジ・e01246)は、トウコ・スカイ(宵星の詩巫女・e03149)と仲良く寄り添うように連れだって、砂浜を歩いていた。
(「恋人のように見えるようにするべきでしょうね……」)
と、普段から無骨なイメージのある彼でも、この日ばかりはトウコに歩幅を合わせ、彼女の肩に腕を回して、内面に秘めた優しさを遺憾なく発揮している。
「星が、綺麗ですね」
「ええ、綺麗ですわね」
頷きつつも、潮風が寒いのか身震いするトウコ。
そんな彼女の肩を更に抱き寄せたトリスタンは、空を見たまま、
「きっと、トウコさんと一緒に見ているから、より綺麗に思うのでしょう」
トウコは少し驚いた風に目を丸くするも、星空とイルミネーションにうっとり微笑んで、隣を見上げる。
ふと、こちらへ顔を向けたトリスタンと、目が合った。
いつもは眼光鋭い赤い瞳が細められた、と思った時には、トウコは自らの滑らかな頬で、彼の唇を受けていた。
熱いキスの雨が首筋へ移動した、その時。
バリバリバリバリ!
天使のイルミネーションの陰より現れた恋する電流マシンが、やはり例の電流をお見舞いしてきた。
どきどきした気分を抑えきれないトウコは、まるで冷水をかけられた思いがしたけれど、頬の火照りが収まる気配はない。
「しかし、星よりもトウコさんのその碧眼が、一番綺麗だと私は思います……」
電流の効果が出たらしいトリスタンが、彼女を褒めそやしぎゅっと抱き締め、耳元で囁きかけたのだ。
トウコも電流と彼の情熱的な物言いへどきんっと胸をときめかせ、熱い視線でトリスタンを見つめ返す。
「あぁ、トリスタン様……こんな厚い胸や逞しい腕に包まれていると、私、私……」
そして、うっとりと彼の筋肉をべた褒めして微笑むも、最後は昂り過ぎて言葉にならないのか、声を詰まらせた。
その間にも、トリスタンはトウコの首筋に唇を這わせたまま、彼女を酔わせるような言葉を吹き込んでいく。
「少し、勿体無い気もしますが、私の心臓が保ちませんわ!」
最後は赤面したまま涙目になって視線を逸らし、キュアするトウコだ。
「出てきましたか」
トリスタンは、すぐにガントレットを装着して向き直り殴りかかる。
マシンに掴みかかって殴るセイクリッドダークネスの威力は抜群だ。
「邪魔しないで下さいますかしら?」
トウコもハウリングフィストを容赦なくぶちかまして、まずは1体目を機能停止させた。
「歩きませんか、もう少し」
「ええ、よろしくお願いしますですの♪」
トリスタンが差し出す肘へトウコが手を添えて、2人は他の電流マシンの誘き出しにかかった。
●
「カップルを部品にするなんて許せない……絶対に破壊するよ……」
リーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540)は、兄のセイヤと一緒に、恋する電流マシンを探していたが。
(「……後は、にいさんに甘えられると良い、けど……」)
胸の内で幾ら決意しようとも、生来の控えめな性格のせいか、なかなかセイヤとスキンシップを取るまでには至らない。
(「わたし無口だし、感情を表に出すのも苦手だけど……『恋する電流』を受けると、普段伝えられない様な事も、言えるの、かな……」)
と、討伐目的以外でも電流マシンの登場を切実に願ってしまいたくなる程に、自分からは勇気の出ないリーナ。
「リーナが受けてきた依頼だから、リーナの意向に従うが……カップルとは……」
一方、セイヤはセイヤで、大切に想っている妹分とカップル役を演じねばならない事態に、顔を赤くして狼狽。
(「……まぁ、可愛い妹の頼みだ……。別に良いだろう……」)
だが、兄らしい事をしてやりたいという真摯な気持ちが、セイヤに覚悟を決めさせた。
「じゃあ、行こうか、リーナ? あの天使のアーチ、リーナに似てないか?」
かくて2人は、砂浜に聳えるイルミネーションを見て回ったり、大きなイルミネーションを一望できる場所から肩を寄せ合い眺めたりと、デートっぽいひとときを過ごせた。
天使のアーチにぼうっと見惚れているリーナの横顔を、セイヤもまた我知らず見つめていた、その時。
ビシャァァアン!
恋する電流マシンが、2人の至福の時間を引き裂くように、恋する電流を無粋にも浴びせてきた。
「大丈夫か、リーナ……!?」
ぎゅううっ。
「……にいさん……すき、だよ……」
セイヤが妹を心配するも、リーナは電流の力を借りてやっと、兄の首っ玉に噛りついて、ぎゅうぎゅう抱きつく事ができた。
「リ、リーナ!?」
狼狽えた兄はすぐに気力溜めを行おうとして、ハッと思い留まる。
(「そう言えば、自分にはキュアしないで欲しいと言っていたな」)
自分へ抱きついたままのリーナは、とろんとした眼で見上げてくる。口元には笑みが浮かんでいて、どことなく満足そうにも見えた。
「行こう……にいさん……♪」
「……ああ。リーナに手出しはさせん!」
彼女の笑顔を守る為なら、キュアを控えるぐらい容易い。セイヤは潔く攻撃態勢を取る。
「行くよ……にいさん……! わたしとにいさんの連携……耐えられるものなら耐えてみて……!」
そう宣言したリーナは、グラビティを核にして一時的にブラックスライムをドッペル・リーナに変化させる。
分身体と共に、魔力を込めた刃による連携攻撃を仕掛け、マシンをズタズタに切り裂いた。
「打ち砕けッ!! 魔龍の咢ッッ!!」
セイヤも全身から漆黒のオーラを噴き出し、マシンを呪縛して動きを止めた後、すかさず自身は脚力と翼を活かして空中へ跳躍。
漆黒の巨龍の形に変貌したオーラ纏いし超高速の飛び蹴りを見舞ってマシンの急所を的確に打ち砕き、引導を渡した。
他方。
「気を引き締めていこう。戦場に油断は要らない」
近藤・美琴(ゼラニウムの誓い・e18027)の前だと素の口調に戻ってしまうメッシュ・アルバーン(焦熱の魂・e18130)は、彼女へ向かって格好つけてみせるも。
(「美琴とデートとは……ナイスな依頼だ」)
内心では頬の緩みを抑えるのへ苦労する程に気分が浮き立っていた。
「では、参りましょうお嬢様、あちらの天使のイルミネーションなど、綺麗ではありませんか?」
それでも、普段通り黒色の執事服をキチッと着込んだメッシュが、美琴をエスコートして歩く。
美琴は、スマートにリードしてくれるメッシュへ頬を染めつつ、内心ドキドキする気持ちを持て余していた。
「メッシュ……キスしたい」
(「電流があっても変わらない――これ以上どうすれと」)
だから、メッシュの肩へすり寄ったり胸元へしなだれかかったり、首に腕を巻きつけて抱きついたりと、素直に甘えかかる。
「愛しい愛しい私の執事――貴方のせいで燃え上がる心が止められないの」
熱い吐息と共に流し目を送れば、ひたと見つめ返してくるメッシュの瞳にも、熱が篭る。
「今更いけないなんて言わないで……貴方の情熱が私を焦がしたあの日から、私はずっと貴方の物」
潤んだ目で見上げられ、メッシュは美琴の細い身体をきつく抱き締めた。
「……愛してる」
美琴の言葉を飲み込むように唇が重なる。
豊かな金髪が夜風に揺れ、髪に挿した赤いゼラニウム――誓いの花もふわりと踊る。
美琴がメッシュの吐息を貪るように、顔の角度を変えた、その刹那。
ピシャァァアアン!
恋する電流マシンが2人の熱々ぶりに引き寄せられて出現、恋する電流を放ってきた。
「私達はこの世界を平和にしたい、人々を助けたい、だから戦い続けることを止めない」
――さ、メッシュ。二人の初依頼、派手に行こう!
早速、美琴は勇ましく気咬弾を撃ち出し、恋する電流マシンの体力を削った。
だが。
「美琴、ずっとずっと好きだ。誰よりもお前を愛している」
すっかり電流にやられたメッシュは、突然美琴を抱き締め、熱っぽくかき口説く。
「お前が来てくれというのなら、何処だろうが構わない」
電流マシンの放つ凍結光線でも、メッシュの情熱は冷やせないようで、驚く美琴の唇を半ば強引に奪い、言葉を続けた。
その間、美琴のウイングキャットであるエスポワールが、猫ひっかきを駆使してマシンへ攻撃を加えていた。
「これからもお前の側で俺は歩み続ける。例えそこが、地獄であっても」
「メッシュ……」
瞳を潤ませる美琴を再びきつく抱き締めて、メッシュは恋する電流マシンに向き直る。
「彼等と私の紅蓮の炎が、地獄よりも熱く貴方を焦がす!!」
まずは美琴が燃え盛る赤いゼラニウムの鎖を2本召喚、マシンを縛り上げた。
更に鎖は縛り上げた後も増殖。体中包みこんで逃走を困難にした。
「己が定めと諦めな」
片手でマシンの脆そうな機構を鷲掴み、地獄の炎で一気に焼き尽くすと、炎を爆発させてトドメを刺した。
●
「わあ……♪ ミルフィ、見てください…とっても素敵なイルミネーションです……♪」
アリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426)は、恋人のミルフィと腕と組んで歩いていた。
ミルフィは、この日はエイティーンを使用して18歳という遥かに成長した姿へ変貌している。
「本当……素敵ですわね……アリス姫様……♪」
恍惚とした声音で呟くミルフィの大人びた横顔を見やり、密かに胸を高鳴らせるアリス。
(「こんな素敵なイルミネーション、ミルフィと2人で見られるなんて……♪」)
綺麗なイルミネーションに見とれつつ歩を進めていると、
「あ……きゃ……!? 波が……」
打ち寄せる波を避けようとしてバランスを崩し、思わずミルフィに抱きついてしまった。
「ミル……フィ……」
濡れた瞳同士がかち合う。
「……姫様……」
今しも唇と唇が触れそうになった、その時である。
ビシャアアアン!
2人の醸し出す甘い空気から関係性を察したのだろう、恋する電流マシンが、恋する電流を挨拶代わりにぶち込んできた。
「ミルフィと一緒なら……何だってできちゃいますっ!」
元より甘い言葉を吐ける2人だ。果たして電流の効果が現れているか定かでは無いが、気合充分で禁縄禁縛呪を繰り出すアリス。
「姫様への愛の炎は、如何なる敵も焼き尽くしますわ!」
ミルフィもナビゲートの電子音声と同時に『ホワイトマーチラビット』を【タイプ:ファイア】に可変。
両脚に纏わせた炎を時計の針の様に変形させ、それらが時を刻むが如く両脚を回して、マシンへ炎の蹴りを連続で叩き込んだ。
電流マシンとて負けじとダブルバスタービームで反撃してくるも、ミルフィが身を以てアリスを護り、2人分のダメージに耐え切った。
「この想いの前では、そんな攻撃は無意味ですわ!」
「ミルフィがいるから……怖くないです」
堂々言い放つミルフィを、アリスも心から信頼しきっている。
「わたくしと姫様の、愛の籠ったこの鍵で……!」
「私達で……恋の扉……開いちゃいますっ!」
そして、アリスはミルフィの合図を受けて、クイーンオブハートキーを発動。
自身の空色の【地獄】の焔をキーに纏わせるや、マシンへ鍵を差し込むように突き立て、アリスのオラトリオの『力』を【地獄】の焔と共に流し込んだ。
こうして、無事に恋する電流マシンを打ち倒した2人。
「あ……また波が……」
ふらふらと再び足を取られそうなアリスを、ミルフィはひょいとお姫様抱っこ。
「もう……敵さんも……いませんよね……」
どちらからともなく目を閉じ、深いキスをした。
同時刻。
「せっかくの機会です、早く片付けてデートも楽しむとしましょう」
弘前・仁王(究極的なガッ・e02120)は、恋人のカイリとぴったり寄り添って、砂浜に吹く寒風から彼女を守るように歩いている。
「えへへ、仁王とデート……! さっさとぶっとばして、仁王と遊ぶんだからっ!」
カイリも仁王としっかり腕を組んで、うきうきと上機嫌な様子だ。
普段から大人の余裕と色香を漂わせる彼女だが、今日はデートという事で赤く鮮やかな着物を纏い、一層艶やかな装いをしている。
仁王は仁王で黒目黒髪眼鏡に柔和な表情と、実に落ち着いて大人びた風情の為、この2人がゆったりと自分達の星座ゲートを探しながら歩く様は親和感を生み、大変画になった。
「仁王とデート♪ 仁王とデート♪」
そんな中できゃっきゃとはしゃぐカイリは可愛らしい。
「ご機嫌ですね?」
「仁王とデートできるんだからテンションも上がるわよ、仁王は嬉しくないの?」
「勿論……嬉しくない訳がないでしょう」
見上げてくる恋人へ優しく囁いて、微笑む仁王。
「あれですかね、牡牛座のゲートは」
「ほんとね、蟹座はあれかしら?」
互いに互いの星座を探して指差すのも、常に相手の事を考えている証であろうか。
ともあれ、まずは牡牛座のゲートから間近で見ようか、と2人が近づいていった、その瞬間。
バリバリバリバリバリ!
煌めくゲートの陰より現われ出た恋する電流マシンが、恋する電流を放射してきたのだった。
すると、電流の効果かカイリがパッと顔を真っ赤にして、仁王へのときめきを抑えきれない様子で熱い視線を送る。
できる事なら仁王に抱き着きたい、そんな気持ちを持て余す彼女へ、マシンは無情にもゼログラビトンをかましてきた。
「私は、大好きな仁王にもっといっぱい、いーっぱい甘えてデートしたいのっ! ……邪魔ッ! すんなぁッ!」
これでプッツンしたカイリが、風の霊力を帯びたエアシューズを地面に叩きつけた。
自分の周囲に竜巻が如き霊力の奔流を巻き起こしつつ、マシンを打ち上げる。
そこへ、仁王の相棒ボクスドラゴンもタックルを仕掛けて、着実にマシンの体力を削った。
仁王は、戦うカイリの姿を綺麗だと思いながらも攻撃の手を決して休めず、
「私はもっとカイリに甘えて欲しいんです! さっさと、倒れろ!」
と、『倒すのではなく制する拳』の果てにあるらしい奥義を試み、重力を込めた拳でマシンの急所を打ち抜いた。
本来は微細な重力操作で与える衝撃の強弱を調整し、狙った部位だけ機能停止させる技のようだが、今の仁王が望むは邪魔者の排除。
それ故しっかりと恋する電流マシンを絶命させたのだった。
「せっかくカイリの可愛い所もっと見られると思ったのになぁ」
心底残念がりつつも、カイリと互いにキュアをかけ合う仁王。
その時であった。トリスタン達とメッシュ達から、イベント会場内にいるケルベロス達全員の所持する通信機へ、連絡が入ったのは。
彼らの報告内容は同じ――自分達が遭遇した2体目の恋する電流マシンも、無事討伐した――との事だ。
「……仁王が聞きたいなら、電流の効果がなくても、幾らでも言ってあげる……」
安心した仁王は、カイリが可愛い事を言って抱き着いてきたのもあって、電流にかかっていた時よりもイチャイチャし始めるのだった。
作者:質種剰 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年1月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 3
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