闇の使者

作者:白鳥美鳥

●出現するドラゴン
 それは巨大な存在だった。全身を鱗で覆い大きな翼をもつ10メートルくらいの恐ろしい顔……そう、ドラゴンだった。
 だが、ドラゴンは本来の能力を出し切れていないようだ。その大きな翼を持っているのに飛ぶ事は出来ないようだ。しかし、その巨大さと街を破壊する姿は脅威以外に何物でもない。
 ドラゴンは街を壊していく。向かうは人々の多い方向へ。そして、人々を余りにも簡単に次々に殺し、悲惨な光景が広がる。
 瓦礫になった街、人々の血で赤く染まるあらゆるもの。
 ……そこには地獄しかなかった。

●ヘリオライダーから
 ヘリオライダー、セリカ・リュミエールは俯いて説明を始めた。
「北海道函館市で、先の大戦末期にオラトリオにより封印されたドラゴンが復活して暴れだすというという予知がありました。復活したドラゴンはグラビティ・チェインが枯渇している為か、飛行する事が出来ません。なので、町並みを破壊しながら、人が多くいる場所に移動し、多くの人間を殺害しようとしています。その目的は、人間を殺しグラビティ・チェインを略奪し力を取り戻すことに違いありません。力を取り戻し、飛行可能になったドラゴンは廃墟と化した町を後に飛び去っていくので、その前に弱体化したドラゴンを倒して欲しいのです。宜しくお願いします」
 セリカはドラゴンの戦闘能力について説明を始めた。
「ドラゴンは様々な効果を持つ、ドラゴンブレスで攻撃します。そのブレスは激しくとても強力です。そのブレスに対してどう対処するかも考慮する必要があるでしょう。なお、市民には避難勧告を出したり、破壊された町もヒールで治せる事が出来ます。ですので、ある程度町が破壊されても大丈夫です。まずは確実に倒す事です。宜しくお願いします」
「なるほど、ドラゴンか……。また凄いものが出てきたね」
 セリカの説明を聞いていたジェイド・バスカールは腕を組んだ。
「スケールが大きな話だけど……破壊された町がちゃんと戻るのが良いね。ちゃんと市民も逃がすようにとも言えるし僕としてもそれが嬉しいな。……倒すことに集中しても、全く問題ないんだね。これなら、確実に仕留めないといけないね。……何よりも人々の為にも」
 人々の癒しを求めるジェイドは戦いへの決意を心に誓った。


参加者
リシティア・ローランド(異界図書館・e00054)
ミリアム・フォルテ(緋炎の拳士・e00108)
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
シオン・アイオライト(術理の獣・e00192)
水晶鎧姫・レクチェ(ルクチェ・e01079)
火雛・菊子(五十口径の信奉者・e01310)
白銀・柳(我学の酔狂者・e02725)
古海・公子(地球人のウィッチドクター・e03253)

■リプレイ

●闇の使者
 まずは街の人々の避難誘導だ。ミリアム・フォルテ(緋炎の拳士・e00108)は殺気を放ち人々を現場から離していく。
「ジェイド、アンタも避難誘導に手伝って!」
「うん、任せてよ」
 ミリアムの言葉にジェイド・バスカール(サキュバスのウィッチドクター・en0023)は走って人々に避難を呼びかけた。フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)もおっとりとした声で呼びかける。
「みなさまー、ケルベロスですわぁー。焦らずお早めにー、避難にご協力くださぁーい」
 シオン・アイオライト(術理の獣・e00192)、古海・公子(地球人のウィッチドクター・e03253)も避難誘導をしている。
「皆さーん、逃げて下さーい!」
「慌てないで、混乱しないで、譲り合ってね~!」
「逃げてー! こっち、こっち、こっちに来てー!」
 戦う為のケルベロス達を支援するように天音・藍も一緒に避難を手伝った。避難する人々を率先し、パニックを起こさないようにと大きく手を振りながら安心させつつ安全な方向に誘導する。
 白銀・柳(我学の酔狂者・e02725)はその翼を羽ばたかせ、空を舞う。
「……逃げ遅れた人々はいないようだ。よし、大丈夫だろう」
 ドラゴンに近づきすぎないように人々の避難を確認してから、仲間達の元に戻った。
 巨大なドラゴンに走り寄る水晶鎧姫・レクチェ(ルクチェ・e01079)は、びしっと宣言する。
「わたしは、水晶鎧姫・レクチェ・ルクチェ! 邪悪なドラゴン、それ以上の乱暴はゆるしません」
 リシティア・ローランド(異界図書館・e00054)は避難を終えるとすぐに駆けつける。火雛・菊子(五十口径の信奉者・e01310)達も続いて仲間達が集まった。
 巨大なドラゴンは建物を破壊しながらこちらに迫ってくる。人々の避難は終わっている。後はこのドラゴンを倒すだけだ。

●ドラゴンを倒せ!
 レクチェは気合いを入れる。
「守ってくれる仲間、癒してくれる仲間、そしてサポートしてくれる仲間がいてくれる。わたしには頼もしい仲間がいる、なんの不安もない。ならばわたしは、敵を打ち倒すのみっ!」
「気合いが入っているね、レクチェ。僕も頑張らないと」
 それにしても大きなドラゴンだ。見上げてもかなりの大きさ、飛べないとはいえ手ごわい相手だ。
「いきますっ!」
 レクチェは凛々しい顔でゾディアックソードの二刀流で地面を蹴ると重力を込めた重たい一撃で叩きこむ。それに続いてジェイドは電撃を放つ。
 攻撃を受けたドラゴンはケルベロス達に気がつく。ぎらりとした金色の鋭い眼光で睨みつけた。すぅっと息を吸うと激しい炎が辺り一面を燃やしつくす。激しい炎が渦を巻きケルベロス達にも襲いかかった。激しい炎に直撃を避けて飛び退く。それでも、炎の直撃は避けられてもどうしても炎がかかる。
 しかし、炎を吐いて動きが少し止まった瞬間に柳は足止めの石化魔法を打ちこむ。
「あまり動くなよ、狙いが反れるだろ」
 ドラゴンは少し動きが止まった。
 リシティアはシオンに声をかける。
「シオン、此方に合わせなさい。あの蜥蜴の動きを止めるわよ」
 それにシオンは頷く。
「ええ、合わせてあの獣の足を止めてやりましょう」
 互いに確認し合うと互いに足止めの魔法を唱えて更に足止めを狙う。三人の集中的な攻撃でドラゴンの動きを動きにくくなった。
 ミリアムの綺麗な緑の葉が舞い、公子は緊急手術を行う。怪我を負っていた仲間達が傷を癒していく。
「僕も一旦、回復にまわるよ。この炎はやっかいだからね」
 そう言うと、ジェイドが癒しの雨を降らせて傷を癒し、ケルベロス達の体勢がもう一度整った。
 動きを鈍くしているドラゴンは、それでも大きな身体を動かす。一度の足止め程度ではこの大きなドラゴンを止めるのは難しい。
「行きますっ!」
 レクチェは再びゾディアックソード振り上げると重力を伴った重い一撃を叩きこんだ。
「地ニ臥Se狂フ堕竜ハ塵血離nI潰シmAセウ」
 フラッタリーはそう呟くと、ドラゴンに鉄塊剣を腕力で振り上げ思い切り斬りつける。
「大人しくしなさいな、トカゲ皮をなめしてホルスターにしてやるわ」
 菊子は愛用のリボルバー銃を構える。凍てつく銃弾がドラゴンに叩きつけた。
「なかなか動きが止まらないな。大きいだけはある」
 柳は再び詠唱を始める。そして、石化する魔法を解き放った。ドラゴンの動きが更に鈍くなる。
「……何時から、術師が接近戦が出来ないと言ったのよ。いいから援護なさい」
 リシティアの言葉にシオンは慌てる。
「って、言ってる傍から殴りに言って……人の話を聞いてたんですか、それでも魔術師ですかあなたは!」
 そんなシオンに構わずにリシティアはドラゴンに殴りかかった。
『時の流れを垣間見なさい』
 そう言うと鋭い速さで無数の体術を叩きこむ。それに合わせてシオンはドラゴンを捕縛する呪術を放った。
 動きが鈍くなったドラゴンはそれでも身体を動かし、建物を破壊し進んでくる。そして、再び激しい炎を吹き放つ。激しい炎が焼き尽くしていく。それの直撃を避けるように動くが、やはり巨大なドラゴンが放つ炎は激しい。菊子とフラッタリーが庇うように動くが、やはり炎は渦巻く。
「今、手当てします!」
 公子は緊急的な手術をして傷が酷い相手を回復させる。
「ダメージを減らすわ」
 ミリアムは黒き鎖を放ち、傷を癒しながら、防御力を高めた。
「みんなの傷を治すよ」
 ジェイドは癒しの雨を降らし、仲間達の傷を治していった。
 レクチェはドラゴンの後方に回ろうとするが、腕の大きさ、尻尾の太さを考えると、腹部を狙うか、リスクを冒すが脳天を狙うかが一番かもしれない。
 ブレスの威力を考えると、前に立つのはまだ危険だ。横に回ってレクチェはゾディアックソードをクロスさせると、気合いを入れて腹部を狙って重い一撃を喰らわせる。動きが鈍っている為、激しい一撃が確実に決まった。
 それを見て菊子がリボルバー銃を構える。
『一発20ドルの高級品よ。あんたの腹に詰め込むにはもったいないわね』
 菊子は銃弾を撃ち込んだ。その一撃は破壊的な破壊をもたらし、花弁の様にグラビティが舞い散った。
「地獄nO焔、誰ガ誰Toテ竜如キ之吐息以下ト申Shi上ゲタノdEセウ?」
 フラッタリーはそう呟くとドラゴンの炎に負けない炎を叩きこむ。
「これ以上、動き回るなよ」
 柳は更に動きを鈍くするために足元を狙って石化の魔法をかける。足止めを続けていたせいか、少しずつドラゴンの動きが悪くなってきていた。
「もっと動きを止めます」
 シオンも詠唱をし、石化の魔法を解き放った。更に動きが鈍くなっていくドラゴン。
「いくわよ、蜥蜴。もっと、苦しむと良いわ」
 リシティアは黒き槍を作り出すとドラゴンへ向かって思い切り貫き放った。ドラゴンは更に体力を奪われていく。
 その身体の無理矢理動かそうと暴れるが、硬くなっている身体はなかなか自由が利かない。
 その苦しい動きの中、再び激しい炎が吐き出される。先程からの炎でドラゴン自体に破壊された建物や木々だけでなく、激しく燃え上がっている建物も数々ある。人々が避難していなかったら、本当に地獄が広がっていただろう。破壊された建物の瓦礫も崩れてきている。渦巻く炎に巻き込まれないようにしながら、更に壊れた瓦礫にも気をつけなければいけない。幸いにもドラゴンはほぼ動けなくなっている。後は、この激しい炎に巻き込まれず、確実に倒す事だけだ。
「これが最後の回復になるといいね」
 ジェイドの癒しの雨が降り注ぐ。炎等で傷を負った仲間達の傷を癒していく。
「レクチェ、アンタを強化するわよ!」
「レクチェさん、私も応援します!」
 ミリアムは守りを、公子は攻撃をレクチェに付与する。
「ありがとうございます、ミリアムさん、公子さん! ご期待に沿えるよう、渾身の一撃を加えます!」
 相手はほぼ動けない。先程の炎のブレスもかなり苦しんで吐いたように見えた。力も強化されている。これなら、いける!
 レクチェは建物の瓦礫、電柱等を足がかりにして跳び上がる。そして、ゾディアックソードで、ドラゴンの眉間に強力な一撃を叩きつけた。ドラゴンの苦しげな咆哮が辺りに響き渡る。
「チャンスね、続くわよ」
 菊子はフラッタリーに声をかける。それに彼女は頷いた。
『一発20ドルの高級品よ。あんたの腹に詰め込むにはもったいないくらいね』
 菊子はドラゴンに走り寄ると、リボルバー銃を構えて威力のある銃弾を撃ち込む。それにフラッタリーも続いた。
『Тэи穣天外、$hI方八法、視得ルワタシノ此ノ景色、伽覧ヨ御覧。煩ワシキ孤之世界』
 陽炎の如く研ぎ澄まされ、発狂した精神をぶつけこんだ。
 更に攻撃はどんどん続く。
『我が炎で打ち砕けろ』
 柳はドラゴンブレスを圧縮し、ドラゴンに放ち当たった途端に激しい炎が弾け飛んだ。
「更に動きを封じます!」
「さあ、死に至るのよ」
 シオンはドラゴンが炎を吐かないように縛り上げる。そこに、リシティアの放つ黒き触手がドラゴンを弱らせ動きが弱いものになっていった。
『解放してあげるわ、アタシの檻から。そして迎えてあげましょう、新しい贄を……!』
 ミリアムは鮮烈の赤を放つと激しい連続的な打撃を叩きつけた。
 公子もそれに続く。精神を集中すると力を解き放ち爆破させる。ドラゴンから苦しそうな声が漏れてくる。あと少しだ。
「デウスエクスと戦うためにお師匠さまから教わった篁流武術、この時のためですっ」
 レクチェはゾディアックソードをクロスさせるとドラゴンを十字に斬りつけた。
 ドラゴンは悲鳴のような咆哮を上げると、そのまま大きく崩れて大きな激しい音を立てて倒れた。
「……倒し……ました、か?」
 レクチェの言葉に柳がドラゴンにそっと近づきそっと手を当てる。
「……ああ、死んでいる。温かいが、もう息はしていない」
 確認をしていると、ドラゴンの身体が少しずつ薄れていく。そして、そのまま消えていった。
「無事に倒したわね」
「後は……建物の修復をしなくてはいけませんね」
 リシティアの言葉にシオンは頷く。
 確かに街の惨状は恐ろしいものになっていた。ドラゴンが暴れ回って炎で焼き尽くしたために、破壊だけでなくあちこちで炎が上がり、それは酷いものだった。
 ヒールを持っていないフラッタリーはおっとりした口調で言う。
「治すのはー、他の人にお任せなのでー」
「じゃあ、皆さん、頑張って街を修復しましょう」
 シオンの言葉に皆は頷いた。
 街のあちらこちらで修復が始まる。恐ろしく破壊されていた建物も木々も戻って行き街は綺麗に元に戻った。
「無事に終わったわね。全く迷惑な蜥蜴だったわ」
 菊子はそう皮肉を言いながら、皆に微笑む。全員が無事勝利できた事に安心の笑みを浮かべ、これからの厳しい戦いに気を引き締めたのだった。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年9月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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