巨大ドラゴンの進行を止めろ!

作者:七海真砂

 晴れた空の下にある長崎県の諫早市は、大勢の人々で賑わっている。サラリーマンに学生グループ、カップルに親子連れ等、様々な人が様々な目的で、忙しく楽しく街の中で平和な時間を過ごしている。
 市街に溢れていたのは幸せな笑顔ばかりだったが、突如聞こえた轟音と振動によって全ての人の顔から表情が消える。跳ね上がる体を傍にある建物の壁や家具で支えながら、音が聞こえてくる方角に目を向けてみると、ビルを薙ぎ倒しながら、大きな吠え声と共に1匹の巨大なドラゴンが姿を現した。
「な、なんだアレは?!」
「ば、ばば、化け物だああ!!」
 パニックを起こして逃げ惑う人々の群に、ドラゴンが放った激しい稲妻の息が襲い掛かる。建物は次々と壊され、命は次々と奪われ、賑わっていた繁華街は、山積みの死体が点在する廃墟へと姿を変えていった。

「長崎県の諫早市に、ドラゴンが出現します。皆さんの力で倒して欲しいです」
 ヘリオライダー、セリカ・リュミエールは動悸を鎮めようと胸を手で押さえながらケルベロス達と向かい合う。額の汗をハンカチで拭い、深呼吸を数回すると、潜めた眉の下にある目を釣り上げた。
「先の大戦末期に封印されたドラゴンが、復活して暴れ出してしまいます。未だ復活したばかりなのでグラビティ・チェインが枯渇しており、空を飛ぶ事が出来ませんが、建物を破壊しながら人が多くいる場所へと移動していき、大勢の人達を殺して彼らのグラビティ・チェインを奪おうとしているに違いありません」
 グラビティ・チェインを補給したドラゴンは飛行能力と共に強大な力を取り戻してしまう。その前に、弱体化している内にドラゴンを、市街に現れた時に撃破して欲しい。
「敵は10メートル程の大きさです。黒い肌と尻尾に黄色い雲のような翼と角を持っていて、雷を纏ったブレス攻撃をしてきます。他に『ドラゴンクロー』と『ドラゴンテイル』で目についたモノに手当たり次第に襲いかかってきます。軟弱化していてもドラゴンですので、戦う際は十分注意してください。進行方向にあるビル等の高い建物の上で待ち構えて、壊される寸前で飛び下りれば、ドラゴンの背の上に着地する事が出来ますので、そこから攻撃するのが良いと思います」
 あっ建物の事は心配しなくても大丈夫ですよ、と、セリカは微笑みながら補足の言葉を伝える。街はある程度破壊されてもヒールで治せる。だが人の命はそうはいかないので、街の人達に避難勧告を出して、犠牲者を出さずに確実に敵を倒して欲しい、とも付け加えた。
 セリカの説明を聞いていたレオン・ネムフィリアは、窓の外の景色を眺める。晴れ渡った美しい青空を落ち着いた雰囲気を持つ瞳の中に写しながら、明日、この空の下にある長崎県の市街で起ころうとしている惨劇を、何としても防がねばと心の中で誓った。
「人々の平和を脅かすデウスエクスを、放っておく訳にはいかない。俺の魔法の力で、必ず倒してみせる」


参加者
風守・こぶし(風纏い・e00390)
ドルフィン・ドットハック(蒼き狂竜・e00638)
クロコ・ダイナスト(ドラゴニアンのブレイズキャリバー・e00651)
空井・桜乙(放浪する轟音・e00952)
山神・照道(霊炎を纏う双腕・e01885)
塚原・宗近(地球人のブレイズキャリバー・e02426)
ウィッカ・アルマンダイン(殺戮魔術師・e02707)

■リプレイ

●人々の平和を脅かすもの
「ドラゴン戦が初陣とはのう、カッカッカッ!」
 戦いを前にしても臆することなく、ドルフィン・ドットハック(蒼き狂竜・e00638)はビルの上で高笑いしていた。
 足元に広がるのは諫早の街並み。彼らは今、ヘリオライダーが予知したドラゴンを待ち構えている所なのだ。
 地面を移動してくるなら、このビルからが一番攻撃を仕掛けやすいだろう。ウィッカ・アルマンダイン(殺戮魔術師・e02707)は、戦いの中心になるであろうここから人々を遠ざけるべく、全身から殺気を放つ。
「復活したばかりで、空を飛べないのは僥倖ですね。飛び回られたら避難誘導が追いつかないでしょうから」
「はい……」
 ウィッカの声に、クロコ・ダイナスト(ドラゴニアンのブレイズキャリバー・e00651)は不安げな面持ちで頷く。
 ヘリオライダーの予知では、ドラゴンはグラビティ・チェインが枯渇していて飛び回る事などはできないようだが、それでも、放っておけば多くの犠牲が出るという。
 そう、自分達ケルベロスがいなければ。
「あ、あの、わたし皆さんに、呼びかけてきますね」
 クロコは少しでも避難がスムーズに進むようにと、翼を広げて降下する。
「皆さん! ……え、えっと」
 大声を上げたクロコは人々から注目を浴びる。ビクッと肩を震わせたものの、すぐに気を取り直して、ドラゴンが迫っていること、危険だからドラゴンが来るのとは逆の方角へ避難するように呼びかけて回る。
「どっ、ドラゴン!?」
 人々は目を丸くしたものの、すぐに呼びかけられた方へ避難を始めた。
「えっ、えっ、何の騒ぎですか?」
 たまたま諫早市にいたケルベロス、ユイもすぐに事情を呑み込むと、誘導を手伝う。
「いたい~、いたいよぅ」
「ちーちゃん! 泣いてる場合じゃないの! ホラ早く……!」
 転んで泣き出してしまった女の子と、赤ん坊を抱えた母親が逃げ遅れているのに気付いた山神・照道(霊炎を纏う双腕・e01885)は、そちらに駆け寄り手を差し伸べた。
「ガルド流霊武術が癒しの力……」
 穏やかな声と共に纏った力が、女の子が擦りむいた膝を癒す。痛みもすっかり消えたらしく、女の子は笑顔になって、照道が促すまま素直に避難していく。
「ありがとうございます。私だけでは、ぐずったあの子を連れて行けたかどうか……」
「いえ、どうかお気になさらず」
 小さく首を振り、それよりも早く離れた場所へ、と照道は親子連れを見送る。
 辺りにはもう人影は見当たらず、逃げ遅れている人はいないようだ。胸を撫で下ろし仲間の元へ戻ろうとすると、
「山神さん、あの、一緒にお連れしましょうか……?」
「ああ……では、よろしく頼む」
 同じように引き返そうとしていたクロコの申し出に照道は頷く。予知されたドラゴン襲来まで、もう間が無い。ここからなら直線距離を飛んで戻った方が早いだろう。
「向こうから来るのは……レオンか。あちらも、避難は終わったようだな」
 同じようにビルに向かって飛んでいるのは、別方向で避難誘導に当たっていたレオン・ネムフィリア(オラトリオの鹵獲術士・en0022)だ。気付いたレオンが「こちらは大丈夫だ」と言うように小さく頷くのを見ながら、クロコは仲間達のいる屋上目指して飛び続けた。

●巨大ドラゴンの進行を止めろ!
「来たな」
 リュドミーラ・オーバルチェーニ(餓狼・e00168)はドラゴンの姿を認めると、静かに身構えた。
 ビルを薙ぎ倒しながら迫り来るドラゴン。しかし予知されたように逃げ惑う人々はいない。それでも念の為、頼犬達は誰かが巻き込まれていないか確認に走る。
 もし向こうに逃げ遅れている人がいたとしても、彼らが無事に避難させてくれるはずだ。向こうは彼らに任せ、リュドミーラ達はタイミングを見計らってビルから飛び降りた。
 手足に重力を集中させながら先陣を切ったリュドミーラが降下するのは敵の眼前だ。相手の目を惹きつけ、この場にドラゴンを食い止めながら戦うのが重要だろうと、ドラゴンの顔に獣撃拳を叩き込んで着地する。
「隙あり、だな」
 すかさず敵の黒い背に降りた風守・こぶし(風纏い・e00390)が、指天殺でドラゴンを突いた。気脈を絶たれたドラゴンの体の一部分は、まるで石のように固くなっていく。そこに追い打ちをかけるようにドルフィンがドラゴンブレスを吐き、炎がドラゴンを包む。
「これ以上、悪しきデウスエクスの好きにはさせない」
 ブレスが消えゆく中、空を切ってドラゴンの頭部へ着地したのは塚原・宗近(地球人のブレイズキャリバー・e02426)だ。ドラゴンの頭部を踏みしめ、鉄塊剣を構えた宗近は、自身の力のすべてを込めて、鋼刃重撃を突き立てる!
 瞬間、発せられたドラゴンの咆哮が宗近の耳を揺さぶった。地団駄を踏むような敵の動きに不用意な落下を避けるべく、宗近は自らドラゴンの上から飛び降りる。
(「僕達の力が、確かに効いている証だ」)
 ドラゴンの反応は、いずれもそれを示している。宗近は確かな手応えに鉄塊剣を握り直すと、更なる攻撃を繰り出すべく体勢を立て直す。
 一方、ドラゴンはケルベロス達を険しく睨みつけると、振り上げた爪を最後まで背中にしがみついていた、こぶしへと繰り出した。
 振るわれたドラゴンの腕にあおられ、羽織っていたケルベロスコートがどこかへ吹き飛ばされていくが、
(「後でいくらでも回収できるだろう。それより!」)
 それに目もくれず、今はドラゴンが優先だと螺旋掌を放つ。対するドラゴンは状況を把握すべく、周囲の様子を伺っている様子だ。そもそも敵の目的は、グラビティ・チェインを得ること。より容易くグラビティ・チェインを得る方法を探りつつ戦おうとでも考えているのだろう。
 それに気付いた空井・桜乙(放浪する轟音・e00952)は大きく息を吸い込むと、ありったけの声量を駆使して歌声を轟かせた。
「届けェエエええええええええええ!!!!」
 先程のドラゴンの咆哮すら凌駕する大音量の歌声。ドラゴンの目が、それに反応して桜乙を見下ろす。
(「よしよし、こっちを見たねぇ」)
 一瞬でもいい。注意を引ければ、それだけケルベロス以外の人々が巻き込まれる可能性は下がる。避難は完了しているはずだが、それでも、念には念を。更に人々が避難したのとは逆方向へ、さりげなくドラゴンを誘導しようと試みながら戦っていく。
「早めに雁字搦めにしてしまいましょう」
 魔法の木の葉を纏ったウィッカは、媒介となる宝石を取り出しロッドを構えた。古代語の呪文を唱えたウィッカが放った光線は、ドラゴンに突き刺さると、その部分を変色させる。
 尻尾を振るうように振りかぶったドラゴンだったが、動きが一瞬石のように重くなったかと思うと、尻尾がその勢いを失って垂れる。じわり、変色した部分が増したように見えたのは、ウィッカ達の目の錯覚では無いだろう。
「せいぜい派手にいこう」
「カカッ、相手に不足なし! 存分に戦わせて貰うとしよう!」
 クールに笑ったリュドミーラの降魔真拳がドラゴンに食らいつき、楽しげな様子を隠しきれず、わくわくと構えたドルフィンの元からは螺旋氷縛波が飛ぶ。
「あ、あのあんま暴れられると、竜族に対する風評被害激しいんでさっさと退治されてくれませんかね……ひぃ!?」
 ケルベロス達をギロリと睨みつけて来るドラゴン。その視線と目つきの鋭さに、クロコは悲鳴を上げつつも、なんとか気力を溜めてこぶしの傷を癒す。
(「わたしだって、かつて勇者と言われた竜の種族。こ、こわくなんか……あ、ありますぅぅぅぅ!?」)
 びくびく怯えながらではあるが、それでも勇気を振り絞り、クロコは身に纏った守護者のオーラを整え、仲間達の回復を続けた。

●一、対するは九
 ケルベロスの攻撃を受け続けたドラゴンは、どうやら今は眼前の敵を片付けるのが先決だと判断したらしく、雷のブレスで一気に痺れさせてしまおうと口を開いた。
 標的は中衛、特にジャマーとして動くウィッカ達だが、それはディフェンダーの2人が次々と盾になって最大限に遮る。
 照道は、ブレスを吐くため姿勢を下げたドラゴンの喉元を、すかさず旋刃脚で蹴り抜いた。よろめくドラゴンだが、その鋭い目つきが緩むことは無く、むしろ一層ますますケルベロス達を鋭く睨みつけてくる程だ。
(「打たれ強いね、でも」)
 まだまだ諦める訳にはいかないと、宗近は極限まで精神を集中させてサイコフォースを繰り出した。反対からはレオンの放つ火の玉が飛来し、次々とドラゴンを爆破する。
 お行きなさい、と囁いたウィッカのロッドの先端から射出されたファミリアシュートはジグザグに飛んでドラゴンをじわじわと苛む。先程ナイフの刀身に映し出して与えた惨劇の鏡像も、今頃ドラゴンの目には倍増して映っていることだろう。
「今度はさ、こんな歌なんてどうだい?」
 そんなドラゴンの心を迷わせるように桜乙が奏でるのは欺騙のワルツ。迷いに迷いを重ねるように促す旋律が心をかき乱すからか、じわりとドラゴンに焦りが滲む。
 それはここまでに蓄積された攻撃の数々も影響しているだろう。ここまでに与えた傷は、決して浅くない。そして様々な不利な状況に追い込まれてたドラゴンは、それを癒す力を持ち合わせていないのだ。
 対してケルベロス達はメディックのクロコを中心に、回復を挟みながら戦っている。すべての傷を癒しきれる訳ではないが、ブレスの悪影響をマメに振り払いながら戦うケルベロス達は、見た目の負傷度合い以上にドラゴンよりも身軽な動きを保つことができていた。
「みんなの所には行かせないし、逃がす訳にもいかない。必ず、ここで倒してみせるよ」
 宗近は再び鉄塊剣を構え、巧みな動きでドラゴンへ放つ。必ず食い止めてみせると意気込む宗近に、照道も頷いた。
「街を破壊し、人々を傷つけるような行いは、決して許す訳にはいかないからな」
 ドラゴンの無法な振る舞いは、照道にとって嫌悪の対象でもある。照道の拳がドラゴンを捉えると同時に、網状に組み上げられた霊力がドラゴンを戒めるように放射されて敵を縛り上げる。
 彼らを薙ぎ払おうとするドラゴンだが、その身は思うように動かず、ギリッと口惜しそうに牙を噛み締める音が鳴り響いた。
「―――アクセラレーション」
 追い込むなら今だと、リュドミーラは一気に加速した。常人の肉体の限界を軽々と超越するような超高速スピードで戦場を駆け、リュドミーラは両のバトルガントレットを次々と繰り出す。揺らいだドラゴンの体に、どこからともなく飛んできてクリーンヒットしたのは、こそっと一発ぶっぱなしたドラクルの砲撃だ。
「ドラゴンを追い込むには、ドラゴンから鹵獲した魔法が相応しいだろう」
 そう呟くレオンの掌にドラゴンの幻影が浮かび上がったかと思うと、放たれた幻影は一気に敵を燃やした。

●そして街には静寂が満ちる
「カッカッカ、地面とキスせよ!」
 大地を崩さん勢いでドルフィンは踏み込むと、体勢を崩したドラゴンを手と尻尾で絡め取り、そのまま一気に大地へと投げ飛ばした。
 これこそがドルフィンの用いる竜闘技(ドラゴンアーツ)の1つ、地竜崩しだ!
「体が大きいということは、そのぶん死角も増えるものです。……特に、このような時は」
 叩きつけられた衝撃から、すぐさま起き上がろうとするドラゴン。だが、それよりも早く、宝石を手にしたウィッカが虚を突いた。唱えた古代語は魔法の光線と化し、一気にドラゴンの心臓を貫く。
「うん。その巨体が仇となったね、ドラゴン!」
 更に宗近が跳び上がり、鉄塊剣を振り上げた。顎から口へ、強烈に叩き込まれた一撃に、ドラゴンから苦悶の声が散っていく。
「クライマックスはこの曲で締めようかー?」
 そこに響くメロディは、ギターを変形合体させた桜乙が奏でるヘリオライトだ。光と希望に満ちた力強い歌声で、仲間を鼓舞するように歌いながら、桜乙がそこに込めた魔力は旋律と共に弾けてドラゴンを震わせる。
「光か……」
 照道は、自分とはまた違う形で力を振るう桜乙の姿に小さく呟くと、地獄の炎を纏いながらドラゴンに向き直った。敵を見据え、構えた照道は、ブレイズクラッシュを叩き込む。
 ドラゴンは唸ると、渾身の力を込めて反撃を試みた。その身を侵す様々な力に動きを止めることなく、振りかぶった爪。
「カーッカッカッ! そう来なくては!」
 それをドルフィンが真っ向から受け止める。硬質化し、超高速で振り抜かれた爪は深々と傷を刻むが、それでもドルフィンは豪胆に笑って耐え抜き、両腕から降魔真拳を打つ。
「終わりだ。ここで朽ち果てろ」
 再び超高速で戦場を駆け抜けたリュドミーラが、アンリミテッドアクセラレーションでドラゴンを反対に切り刻む。息も絶え絶えなドラゴンに、更にこぶしが繰り出す旋刃脚を避ける力は、もうどこにも残されていなかった。
 ドラゴンは、ひときわ大きな咆哮を放ちながら崩れ落ちていく。動かなくなったドラゴンに踵を突き立て、こぶしは高らかに叫ぶ。
「これから貴様らが奪った物は返してもらう。――これが、私が貴様らデウスエクスに上げる反撃の狼煙だ!」
 声は静寂を取り戻した街に響き、風に乗って青空に舞う。そう、ケルベロス達は、見事にドラゴンを打ち破り、勝利を収めたのだ。
「うむ、いい戦いじゃったわ!」
 満足げに頷き高笑いするドルフィンの傍らで、よかったぁ……と大きく息をついているのはクロコだ。臆病なクロコも敵が倒れてほっとできたのか、その表情は柔らかい。そんな彼女に、他のケルベロス達が回復の礼を告げる。
「風よ……」
 こぶしは、吹き抜けていく風に勝利への感謝を囁くと、ふと辺りを見て「これは修復しないといけないな」と苦笑した。辺りのビルはドラゴンのせいで、派手に壊された箇所も少なくない。
「お疲れ様だよ、せんせ!」
 アリルは照道達に声をかけつつ、早速そうした建物の回復に向かう。ふと太陽を反射したのは、戦いの最中に飛び散ったドラゴンの鱗だろうか。
「そういえば、レオン君は普段どのような魔法を使っているんです?」
「俺? 色々研究したいから、特定の魔法にこだわる事はあまり無いかな。そういえば、魔法といえばさっきの宝石は?」
 同じ鹵獲術士であるレオンに興味を持ったウィッカの問いに、レオンはレオンで彼女が持つ宝石が気になるらしく、互いに武器や道具を手にいくつか魔法について言葉を交わす。
「良かった、一般人への被害は無かったみたいだね」
 被害状況を確認していた宗近だったが、幸いにも怪我人らしい怪我人は出ずに済んだ。宗近の言葉に、他のケルベロス達もホッとする。
「でも建物がこんな状況だと何か影響が残るかもしれないし、一応ケルベロスカードを配りたいところだな」
「あー、じゃあアタシも行くよー」
 こぶしがカードを手に人々の元へ向かおうとすると、桜乙も頷いて歩きだす。街が傷ついて少なからず滅入っている人もいるだろう。だが、みんなの前で何か歌えば、元気になってくれるかもしれない。
「何がいいかなぁ」
 歌は、どこでだって歌える。路上にギターでもあれば十分だ。やる気の無さそうな喋り方とは裏腹に、皆を元気付けられるような曲を選ばなくちゃなぁ、と候補をいくつか思い浮かべ、どれを歌うか思案する桜乙だった。

作者:七海真砂 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年9月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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