シャイターン襲撃~鮮血の戦乙女、その瞳も血に濡れて

作者:青葉桂都

●戦乙女の殺戮
 神奈川県相模原市。
 県への北の玄関口として知られる町へ、デウスエクスの魔手が伸びていた。
 とある駅近くで開いた魔空回廊から、濁った目を持つデウスエクスに率いられたヴァルキュリアたちが現れる。
 ヴァルキュリアたちはいくつかの隊に分かれて、魔空回廊から散っていく――。
 散ったヴァルキュリアの1隊が現れたのは、相模原市の北部だった。
 北の中心部である橋本駅からさほど離れていない住宅地に、3体のヴァルキュリアは無言で降り立った。
 獲物を探す間にも、誰も言葉を発しない。
 そして、彼女たちが目をつけたのは、住宅地の中において比較的大きな建物……すなわち、学校であった。
 槍を手にした1体と、二振りの刀を持った1体を前衛に、弓を構えた最後の1体が少し距離を置いて学校へと走る。
 校内にいる子供たちも、そして教師たちも、自らの不幸にまだ気づいてはいなかった。
 道路に最も近い位置にあった窓が、大きな音を立てて割れる。
 最初の犠牲者は、音に気づいて様子を見に来た教師だった。
「何者だ、君たちは……!」
 日本刀が一閃して、首が飛ぶ。
 斬ったヴァルキュリアは何の感慨も抱く様子もなく死体を踏み越え――。
 けれど、越えたところで、その瞳からはなぜか赤い筋が流れ出した。
 手近な教室に踏み込んだ戦乙女が、中にいた児童と教師を迷いなく手にかけていく。
 3体の瞳から一様に血が流れていくが、その理由を口に出すことは決してない。
 それは、いつも彼女たちが行わう勇者を生み出すための殺人ではなく、ただ殺すことだけが目的であるようだ。
 やがて血涙は、犠牲者たちの返り血に紛れて見えなくなった。

●ヘリオライダーからの依頼
 集まったケルベロスたちに、石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)は静かに語りだした。
「城ヶ島のドラゴンとの戦いが佳境に入っていますが、エインへリアルにも動きがあったようです」
 鎌倉防衛線で失脚したザイフリート王子の後任として、別の王子が地球への侵攻を解したというのだ。
「エインへリアルはザイフリート王子の配下だったヴァルキュリアたちを何らかの方法で強制的に従えているようです」
 魔空回廊を利用して送り込んだ戦力で人間たちを虐殺し、グラビティ・チェインを得ようとしているらしい。
「東京と神奈川のいくつかの都市で敵の出現が予知されています。ここにいる皆さんに向かってほしいのは、神奈川県の相模原市になります」
 各都市でさらに複数の部隊にわかれたヴァルキュリアたちを、それぞれ迎え撃たなければならない。
 部隊の1つが橋本駅の近くにある小学校を襲撃するので、撃破してほしいと芹架はケルベロスたちに告げた。
 ヴァルキュリアは人々を虐殺してグラビティ・チェインを奪おうとしているが、邪魔する者が現れた場合はその排除を優先するように命じられているらしい。
「ですから、皆さんが戦いを挑めば、当面のところ一般人に犠牲は出なくなるということになります」
 敵は3体ずつの隊に分かれて行動しているようだ。
 このチームに対応して欲しいヴァルキュリアたちは、それぞれ槍、刀の二刀流、弓を装備している。
「日本刀と妖精弓については皆さんもお馴染みの武器と同じものです」
 槍についてだが、光を宿して敵を貫き、その動きを止める攻撃が行える。また、氷をまとった突撃で近くにいる者をまとめて攻撃することもできる。
 他に、槍には仲間を鼓舞して呪的防御を破る力を与える能力もあるらしい。
 状況次第でさらに1体増援が来る可能性もあるので、注意して欲しいと芹架は言った。
「ヴァルキュリアはなぜか血の涙を流しながら戦っているようです。ただ、都市内にシャイターンがいる限り、ヴァルキュリアの洗脳は決して解けることはないでしょう」
 シャイターンを倒した後ならば隙ができるかもしれないが、確かなことはいえない。
 操られているヴァルキュリアには同情の余地もあるが、倒さなければ殺されるのは地球の一般人たちである。
「もとより、エインへリアルを生み出すために地球人を殺してきた相手です。同情の余地があるとはいえ、殺すのをためらう必要ないでしょう」
 芹架は言った。
 新たな敵、新たなやり方。
「ですが、私たちがすべきことは何も変わりません。皆さんならあらゆる敵を打ち破れると、信じています」
 芹架は表情を変えなかったが、言葉には確かに信頼がこもっていた。


参加者
天城・恭一(イレブンナイン・e00296)
朔頼・小夜(東天紅に浮かぶ月・e01037)
狗上・士浪(天狼・e01564)
アリエット・カノン(鎧装空挺猟兵・e04501)
杉崎・真奈美(オークスレイ屋ー・e04560)
ヤマダ・タエコ(ボッチなアニソンロッカー・e11869)
成瀬・涙(死に損ない・e20411)

■リプレイ

●戦乙女を止めるため
 ヘリオンから降りたケルベロスたちは、ヴァルキュリアの襲撃地点へと急いでいた。
 敵もまた、もうすでに橋本駅付近まで近づいてきているはずだ。
 あるいは獲物を物色している頃かもしれない。
 移動しながら、携帯電話を取り出したのはアリエット・カノン(鎧装空挺猟兵・e04501)だった。
 青の軍服を着た少女は、着信音と音量の設定がきちんとできていることを最後にもう一度だけ確かめて、ポケットにしまう。
 相模原市のシャイターンを狙うチームと連絡を取るためのものだ。
 戦闘の最中、電話やメールの内容をゆっくり確認している暇はない。ケルベロスたちは音で連絡の内容がわかるように予め準備を整えているのだ。
「確かにヴァルキュリアの境遇には同情します……が、あのような行いを見過ごすわけにはいきません。犠牲者が出る前に対処を」
 口に出すのは凛とした言葉。
「涙を流して戦う……そんなヴァルキュリア、は殺さずに撃破したい……」
 朔頼・小夜(東天紅に浮かぶ月・e01037)が小さな声で呟いた。
 アリエットは彼女の言葉にうなづいた。
 彼女とてもちろん、無駄な血を流さずにすむならそうしたいと思っている。
 程なく、前方に大きな建物が見えてきた。
「狙われる小学校がありましたよぉ」
 小さな布地では押さえきれない、褐色の大きな胸を揺らしながら、ヤマダ・タエコ(ボッチなアニソンロッカー・e11869)が言った。
 ヘリオライダーからの情報で、ヴァルキュリアたちが最初に狙うと言っていた場所だ。
 果たして、敵の姿はすぐに見つかった。
 小学校の前で、デウスエクスとケルベロスたちは対峙する。
 ヴァルキュリアはケルベロスたちの姿を見つけると、すぐさま地上へと降りた。
 ケルベロスの中には敵が飛行して戦うことを警戒する者がいたが、ケルベロスにせよデウスエクスにせよ遠距離への攻撃は可能な者のほうが多い。
 むしろ地上で適切な距離と間合いをとって戦うほうが有利なのだ。
 ケルベロスたちにはなるべく殺さずに戦おうという意図があったため、飛行されて加減した攻撃が届かないことを警戒してしまったのだろう。
 だが、普通、敵が自分たちを殺さないように攻撃してくるなどと想定するわけがない。正気であろうとなかろうと。
 道路に立つヴァルキュリアたちは表情を変えることなく、声も発することなく、ただその武器を構えた。
「シャイターンに使われる、ねぇ。俺は誰かに使われるとか死んでもごめんなんだが」
 天城・恭一(イレブンナイン・e00296)がリボルバーの銃口を敵に向ける。
(「――ま、哀れには思うが、ヴァルキュリアも色々あるんだろうな」)
 心の中で肩をすくめて、恭一は敵に狙いをつける。
「なるべくなら生かし、洗脳されていたとはいえ生きて罪を償って貰います」
 無銘の刀を両の手に構えるのは杉崎・真奈美(オークスレイ屋ー・e04560)だ。
 だが、彼女の決意にも戦乙女たちは反応を示さない。
 ノーザンライト・ゴーストセイン(のら魔女・e05320)はそんな彼女たちを感情のない目で見つめた。
 表情の変化に乏しく、何を考えているかわからない彼女の視線。果たして、哀れみがこもっていることに気づいたものはいるだろうか。
「傲慢な存在の魔女から見れば……いかにも可哀相に見える」
 少なくとも敵はノーザンライトの内心など察することはない。
 槍を構えたヴァルキュリアと、二刀流のもう1体が、ほとんど同時に近づいてきた。
 その目に赤い涙が溜まっている。
「……『血の涙』かい。まぁ、俺だったら……まず先に元凶をブッ殺したくなるだろうがな」
 狗上・士浪(天狼・e01564)は味方の前衛とぶつかり合う敵へと鋭い視線を送った。
 後衛のヴァルキュリアが、妖精弓を士浪に向けて放ってきた。
 肩口に矢を受けながら、彼はナイフの刀身に手を添えて横向きに敵へ突き出す。
 刀身には、敵にとって忘れたいなにかが映っているはずだ。
 始まった戦闘に、成瀬・涙(死に損ない・e20411)が傍らにいたウイングキャットへと視線を向けた。
「……」
 いくよ、と声に出さずに、涙は視線に思いをこめる。
 スノーベルという名にふさわしく、雪のようにふわふわとした毛並みを持つサーヴァントは、言葉にせずともきっと主の気持ちをわかってくれるはずだ。
 翼を羽ばたかせて、スノーベルは軽やかにヴァルキュリアへと向かっていった。

●救える命を救うため
 さらなる敵の攻撃を防ぐべく、アリエットがドローンを生み出して前衛の仲間たちをかばわせる。
 ケルベロスたちは反撃を開始した。
「汝の魂が救われますよう……」
 小夜が放つ翡翠色の光が魔力を伴った風と化す。
「邪竜よ、その目を開け。真紅の眼差し以って、我が敵どもを狂気の闇に叩き落せ」
 ノーザンライトが呼び出したのは、赤き単眼を持つおぞましき竜の姿だった。
 タエコはサキュバスの魔力を秘めた瞳を、敵へと向けた。
 できれば戦闘が始まる前に仕掛けたかったが、彼女よりもヴァルキュリアたちのほうが動きが素早かった。
 魔力が敵前衛の2体を捕らえる。
「同士討ちとはいわなくても~、連携しづらくなればぁ……」
 魔力をものともせずにヴァルキュリアたちは動いているように見えるが、催眠の魔力は即座に効果を表すとは限らない。
 手応えが確かにあった以上、どこかできっと魔力は同士討ちを引き起こす。
「とらわれた魂、落とされた存在、かつての私たち」
 難しいことを考えるのは、タエコは得意ではない。
 けれど、そんな彼女にでもなんとなくわかることがある。
「助けてあげたいとは思うけど自分で助からないとダメだと思うの、だから、全力で戦うよ、ぎりぎりまで」
 次いで彼女は白いギターを敵へ向けた。
 偉大なるミュージシャンの1人へと捧げるギター。
 だが、それはただのギターではなく、ネックには銃口が開いている。
 敵を蜂の巣にすべく、彼女はその銃口で狙いを定めた。
 鉄の塊のような剣が空を切る。
 二刀流のヴァルキュリアは、紙一重のところで重たい刃を避けてみせた。
「……」
 涙は攻撃をかわされても舌打ち1つすることはなかった。
 槍を構えた敵が突進をかけてきて、涙を含めた仲間たちを凍りつかせた。
 さらに敵の持つ二本の刀が薙ぎ払われると、空間ごと涙の体が切り裂かれる。
 ドローンは守ろうとしてくれていたが、その防御があってなお苛烈な刃に少年は痛烈に薙ぎ払われていた。
 傷口から血が流れた時も、声は漏れない。
 喋れないわけではない。ただ、声が地獄化して以来、少年は必要最低限しか言葉を発さなくなった。
 表情も変えない。
 けれど心の中では満足していたかもしれない。彼の初撃は外れたにもかかわらず、敵が防衛役である涙を狙ってくれたのだから。
 オラトリオの少年は、再び繊細な手で重たい剣を構え直す。
 スノーベルの羽ばたきが彼を癒し、目線だけで涙は謝意を示した。
 重厚な一撃は今度こそ二刀流のヴァルキュリアを捕らえる。おそらく二刀流が攻撃役、槍が防衛役だ。
 血涙を流す瞳と彼女の刃が、はっきりと少年へと向けられた。
 槍と刀が敵の前衛だが、どちらかといえば刀のほうが体力で劣るようだった。
 真奈美の刀が、空の魔力を込めて敵の傷口を切り開く。
 士浪が放った螺旋を描く氷が、二刀流の敵を囲んだ。
 恭一は仲間の狙いに合わせて銃口を向ける。
「さて、狙いに行かせてもらうとするか。死んだら死んだで恨むなよ……? ってことで――」
 敵の思考を読み、計算する。
 エックスレイ……チェスの用語で『何手か先を見通して、現在取れない駒を取ること』を意味する彼だけの技。
「悪いな。動きは読ませてもらった。このまま詰みまで持って行かせてもらうぜ。ってわけで……ま、喰らっとけ!」
 連続した射撃が確実に敵を捕らえる。
 ヴァルキュリアの瞳からだけでなく体に開いた穴からも血が流れる。
 だが、掲げられた敵の槍が傷ついた彼女を鼓舞し、祝福された矢が傷を癒す。
 癒しの技を持つヴァルキュリアは、狙われている仲間を援護する。
 当然、癒せない傷は徐々に蓄積していくが、詰みまではだいぶ間がありそうだ。
 今はまだ、手加減するどころの状態ではない。
 まずは殺戮を防ぐために全力で攻撃を仕掛けていくしかなさそうだ。
「――運が良けりゃ死なずに済むだろ」
 周囲にある塀や電柱も考えに入れ、恭一はさらに敵の思考を読む。
 小夜は血涙を流しながら戦う敵を間近に見て、拳を強く握った。
「悲しい……んだよ、ね。殺したくないんだよ……ね? 大丈夫、きっとみんなで何とかできる……から……!」
 二刀の斬撃から両手を広げて涙をかばう。
 彼が一瞬眼を伏せ謝意を示すのに、小夜も頷きを返した。
 アリエットの懐から音が鳴ったのは、その時だった。
 援軍がシャイターンの元を離れたという連絡。周囲の状況を確認するが、まだ敵の姿は見えない。
 殺害を辞さずに戦うよりなくなるかもしれない。
 それでも、小夜はまだ敵を殺したくないと思っていた。
 想いの強さに差はあれど、積極的に殺したいと考えていないのはケルベロスたちに共通していた。
 長年地球に侵攻し続けてきた敵を救おうとする想い――それは彼らの強さだ。
 けれど、想いだけではかなえられないこともある。
 ――ケルベロスたちの中で最初に倒れたのは、敵の攻撃を自分に引きつけた涙だった。
 スノーベルも彼よりわずかに早く敵の矢に倒れている。
 倒れるときもまだ、彼は無言のままで……けれど、後は頼むと、その視線が仲間たちに語っていた。

●戦場に響くバラード
 アリエットは何度も防衛ドローンを作り直し、指輪の魔力で盾を作り直していた。
 敵の攻撃には呪的防御を打ち破る力がある。
 できればその力を逆に砕きたいが、敵はその余裕を与えてくれない。
 狙いすました妖精弓の矢が、タエコの褐色の腹部を貫いた。
 背中まで矢が貫通し、そのまま彼女は倒れる……。
 二度目の着信音が聞こえた。
 撃破の連絡音ではない。また、シャイターンのもとから援軍が出たのだ。
「皆様、援軍が来ます!」
 一度目の連絡ではどこに現れるかわからなかった。おそらくここではなかったのだろう。だが、二度目は間違いなくここにも来る。
 せめて1体を倒そうと全力を尽くす……が、間に合わない。
 連絡からほとんど時を置かず、敵は現れた。
「援軍……やっぱり、来た……ね」
 とっさに周囲を警戒した小夜が敵をいち早く発見し、しかしそれ故にゾディアックソードを手にした増援は彼女を狙う。
「この子がここに来たってこと、は……シャイターンの護衛が崩れた……」
 治癒の雨を降らせるが、新手の攻撃力は回復を上回った。
 重たい剣が小夜の体を切り裂いて彼女を打ち倒し、槍が意識を奪った。
 恭一や士浪が二刀流に攻撃を集めた。
「何人増えても、目の前の敵を倒すのみ!」
 真奈美が気合を込める。
 彼女がまだ立っているのは、涙や小夜、スノーベルが攻撃を引き受けてくれていたおかげだ。
 刀を左手に構え、一歩後退。
「……いくわ……」
 瞬速の踏み込み突きを敵がかわす……が、横薙ぎの刃が敵の動きに対応する。
 二刀流がしたたかに切られてよろめいた。
 あと一撃で倒せる傷だが、抜く手も見せぬ反撃の居合いに切り裂かれた真奈美の足から力が抜ける。
 真奈美を倒した敵に、ノーザンライトは背後から忍び寄る。
「助けると決めた。魔女は……欲は絶対に遂行する」
 もはや手加減している余裕はない。だが真奈美の剣を受けた敵は、手加減しても倒しきれる状態。
 回復される前のこの一撃だけが最後の機会になるだろう。
 首に手を回そうとする……寸前、魔女の眼前から敵が消えた。
 加減した攻撃は当たやすいものではない。後衛から狙うか、あるいはせめて中衛でも攻撃を当てやすい間合いを選んでいたなら当てられたかもしれない。
 攻撃はかわされ、弓が癒やしの技を使う。
 槍と、刀と、剣の連続攻撃に、魔女が倒れた。
 もはや後衛しか残っていないケルベロスたちに、ヴァルキュリアが近づく。
「……殺るしかねぇ、か。恨みたきゃ恨めよ。……あの世がありゃ、いつか詫び入れてやる」
 士浪はナイフを持ち替えた。
 二刀流は一度限界まで行っている。まずは殺してでもこの敵を止める。
 問題は倒しきれるかどうか……アリエットが容赦なく集中攻撃を加えられ、倒れる。
 だが、次いで士浪へ攻撃しようとした二刀流の手が止まった。
 それは戦闘のもっと早い段階でノーザンライトが射た矢の影響だったが、今はそれを考えている余裕はない。
 さらに、回復しようと構えた槍が向いていたのは恭一だった。タエコは倒れていたが、彼女の催眠はいまだ効果を保っているのだ。
 祝福の矢による回復を、恭一の攻撃が改めて削り取る。
「荒れ狂え」
 突き刺したナイフから士浪は体内へと氣を流し込む。共鳴増幅した氣が腹腔内を荒れ狂い、ヴァルキュリアが血を吐いて倒れる。
 だが、それが限界だった。
 二刀流を倒すのとほぼ同時に恭一が倒れ、3体がかりの攻撃が士浪に向けられる。
 ゾディアックソードを肩口に受け、槍に腹部を、矢に胸を貫かれる。
 止めを刺すべく近づいてくる敵。体は動かないまでも、士浪は敵を睨みつける。
 剣を振り上げる敵……その肩をつかんだのは、槍を手にしたヴァルキュリアだった。
「やめなさい。私たちの戦いは勇者を導くためのもの。敗れた者を貶めるような真似をしてはいけない!」
 槍の乙女は言葉の後で頭を押さえ、今度は彼女が恭一に止めを刺そうとする。
 弓の使い手が彼女を止めた。
 次々、入れ替わりに互いを制止し、さらには攻撃までも加える。
 混乱する3体は、やがて新たな指令を受けたらしく、その場を去った。
「なんだってんだ?」
「シャイターンが倒されたということです」
 士浪の疑問にアリエットが言った。
 敵が混乱し始めた少し後に携帯が鳴ったらしい。
「ギリギリでなんとかなったってことだな」
 襲撃を防ぎきり、敵の1体は討ち取った。仕事は果たしたといっていいのだろう。
 だが……勝利を喜べる気分の者はいなかった。
 微かに物悲しいバラードが響く。
 それは、タエコの歌うアニメソングだ。
  ただ無心に歌うその調べの中、ヴァルキュリアの死体が音もなく消え去った。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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