シャイターン襲撃~乙女の赤き涙

作者:カワセミ

 昼下がりの住宅街。それは、ごく一般的な三人家族に起きた出来事だ。
「早く逃げろ!!」
 そう叫んで、父が自分と母の前に、背を向けて庇い立つ。
 その背中は少年の目の前で真っ二つに両断された。
 父の腰から上が、重い音を立てて地面に転がる。ぽっかり空いた視界の先には、剣の血を払う――妖精のような羽根を背負った少女がいた。
 妖精は全部で三体。今目の前で父を斬り捨てた一体と、暗い瞳で少年と母を見据える二体。
「お父さん……?」
 今日は珍しく家族が揃った日。皆でデパートに行こうと、玄関から外に出たところだった。
 そんな日常と今起きている出来事の繋がりが、少年には全く分からない。母にきつく抱き締められると、視界は真っ暗になってもう何も見えなかった。
「なんでもします、だからどうかこの子だけは……」
 母の声は、どすん、と響いた重い音に遮られる。抱き締められていたから、母の鼓動が止まったのが少年にははっきり分かった。
「お母さん……」
 少年の呟きと同時に、もう一度、さっきよりも重い音。母の背により深く突き立てられた剣は、母の抱きしめる少年の小さな身体も貫いた。
 動かなくなった母子の身体が、玄関の血の海にごろんと転がる。
「グラビティ・チェインを回収。我らが王子に栄光あれ」
 母子を殺した妖精が、感情のない声で言いながら母親の背に刺さった剣を抜こうとする。
「……ああ……」
 深く刺さりすぎた剣は、すぐには抜けない。足で母子の身体を抑えこみながら剣を引き上げる妖精の目からは、いつの間にか血の涙が溢れていた。

「城ヶ島での戦いも佳境に入っているところですが、エインヘリアルに大きな動きがありました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、集まったケルベロス達へ説明を始める。
「鎌倉防衛戦で失脚した第一王子ザイフリートの後任として、新たな王子が地球への侵攻を開始しました。
 エインヘリアルは、ザイフリートの配下だったヴァルキュリアをなんらかの方法で洗脳し、強制的に従えています。
 そのうえで魔空回廊を通って移動、各地で人間を虐殺してグラビティ・チェインを得ようと画策しているようです」
 ヴァルキュリアを従えているのは、妖精八種族の一つであるシャイターン。
 各都市で人々を襲うヴァルキュリアに対処したうえで、作戦の指揮官であるシャイターンを撃破する必要がある。

「今回皆さんに行っていただくのは、東京都福生市の住宅街です」
 そこでヴァルキュリアが住民を虐殺し、グラビティ・チェインを奪取しようとする。そのヴァルキュリアとの戦闘がケルベロス達の担当だ。
「ヴァルキュリアはグラビティ・チェインを奪取するため行動していますが、邪魔者が現れた場合はその排除を優先するように命じられているようです。
 ケルベロス達に戦いを挑まれれば、ヴァルキュリアが住民を襲うことはないでしょう」
 そこまで説明したところで、セリカは口元に手を当てて少し考え込む。
「……ヴァルキュリアは、本来死者を導く妖精。一般人の殺戮は、その性質とは大きく異なるものです。
 しかし、都市内部にシャイターンがいる限り洗脳は強固です。洗脳されたヴァルキュリア達は、何の迷いもなく市民やケルベロスを殺そうとするでしょう。
 シャイターンを撃破した後であれば、何らかの隙ができるかもしれませんが……確かなことは言えません」
 セリカは首を振って、ケルベロス達へ視線を戻す。
「操られているヴァルキュリアには、同情の余地もあります。しかし、ヴァルキュリアによって無実の市民の命が奪われることこそ、最もあってはならないことです」
 ケルベロス達が戦うことになるヴァルキュリアは三体。皆ゾディアックソードの使い手だ。
「また、状況次第では更に一体のヴァルキュリアが増援として現れる可能性があります。注意を怠らないでください」

 説明を終えたセリカは、背筋を正してケルベロス達の顔を見渡していく。
「新たなエインヘリアルの王子、指揮官であるシャイターン。敵が誰であろうと、私達のなすべきことは変わりません。
 ケルベロスがいる限り、地球を好きにはさせないということ――新たな指揮官にも、教えて差し上げましょう」


参加者
天崎・ケイ(地球人の降魔拳士・e00355)
ネル・アルトズィーベン(蒼鋼機兵・e00396)
サフィーナ・ファイアワークス(菊牡丹の双華・e00913)
ジークリンデ・エーヴェルヴァイン(血穢れの獣姫・e01185)
シルフィディア・サザンクロス(この生命尽き果てるまで・e01257)
和泉・紫睡(紫水晶の棘・e01413)
神宮司・早苗(御業抜刀術・e19074)
時雨・乱舞(サイボーグな忍者・e21095)

■リプレイ


「君たちは……?」
 昼下がりの住宅街。
 玄関前に立つ三体のヴァルキュリアの姿。男性は、後ろの妻と子を守ろうと後退る。
 その様子を無感動に眺めたヴァルキュリアが、音もなく剣を振りかぶった時だった。
「待てーい!」
 張り詰めた空気を斬り裂く声。
 同時に、挨拶めいた手裏剣が一振り、ヴァルキュリアの眉間めがけて投げつけられる。
 男性を斬り捨てようとしていた剣でその手裏剣を叩き落としながら、ヴァルキュリア達は揃って声の主を振り返った。
「あなたの相手は私達です」
 ヴァルキュリアの気を引くため、手裏剣を投げたのは時雨・乱舞(サイボーグな忍者・e21095)。どこか挑発的な声に、ヴァルキュリア達はじっとケルベロス達を見詰めている。
 そして、制止の声を掛け、仁王立ちで堂々と場の空気を支配するのは神宮司・早苗(御業抜刀術・e19074)だった。
「凍てつく氷河の中にいようと、身を焼く炎の中にあろうと!」
 早苗の口から歌うように紡がれるのは熱い口上だ。
「心に誓ったことをひるがえしはしない……!」
「ケルベロスです! 今すぐ避難を!」
 早苗が拳を固めて語っている最中、天崎・ケイ(地球人の降魔拳士・e00355)は家族とヴァルキュリアの間に割って入る。
「みども達が引きつけている間に、早く」
 ジークリンデ・エーヴェルヴァイン(血穢れの獣姫・e01185)もまた、家族を庇う位置に立つ。ジークリンデの放つ殺気とこの状況に、家族は一にも二にもなく頷いた。
「力の攻めにあおうとも、守らなければならないもの……」
「家の中へ!」
 早苗の口上を背中に聞きながら、和泉・紫睡(紫水晶の棘・e01413)の明確な指示に従い、家族は素早く家の中へ逃げ込んで行く。福生市全体が襲撃を受けている今、ケルベロス達が玄関を守る家は最も安全な場所と言って良いだろう。
「人、それを『尊厳』と――」
「邪魔者は排除します」
 三体のヴァルキュリアがそれぞれに剣を抜き、ケルベロス達へ向けて突撃してくる。
 台詞をぶったぎられて早苗も素早く意識を切り替えた。
「こ、こら! わしがまだ喋っとるじゃろうがー! せめて『誰だ!』くらい言わんか!」
 決め台詞が終わるのを待たないヴァルキュリアの不作法に怒りを覚えてはいたが。
「貴方がたはケルベロスです。そう名乗っていましたね」
 尋ねるまでもない、とヴァルキュリアはケイの方を視線で示す。
「私達の正体など関係ないのではないか。――邪魔者は誰であれ排除する、だろう」
 ネル・アルトズィーベン(蒼鋼機兵・e00396)がアームドフォートをヴァルキュリア達に向ける。
 返答はない。ただ、赤い涙を流すヴァルキュリア達の双眸が、ネルの言葉を肯定していた。


「千の菊花よ、美しく散れ。仇なす者共の足枷となれ……!」
 サフィーナ・ファイアワークス(菊牡丹の双華・e00913)の詠唱と共に、突進するヴァルキュリアの周囲に一面の花園が展開される。
 無限に続くかに見える菊の花弁が一斉に散り、ヴァルキュリア二体の足元を次々に戒めていく。
「あなた達も、出来れば助けたい。……でも、それ以上に守らなければいけない人達が居るから」
 それだけは絶対に間違えない。サフィーナは覚悟をもってヴァルキュリア達と対峙する。
「シャイターンが撃破されるまでは持ちこたえる、ね。上手くいくと良いんだけど」
 ジークリンデがぽつりと呟く。三体のヴァルキュリアは、本来手加減のできるような相手ではない。しかし作戦を決めた以上は迷いはなく、ジークリンデもまた敵へ向けて呪文を唱える。
「凍え、狂え万象。――怨姫絶叫・嫉妬の凍結!」
 負の心が冷たい炎となって、ヴァルキュリア達に鎖のように絡みつく。サフィーナと同じく、彼女らを足止めし、時間を稼ぐ戦法だ。
「本当は、今すぐ殺したいんですけどねぇ……!」
 シルフィディア・サザンクロス(この生命尽き果てるまで・e01257)の両手のバスターライフルから、魔力の奔流が溢れ無限に撃ち放たれる。滲み出る殺意はしかし、今は作戦のために自ら抑えこんでいた。自分一人の作戦ではない。それを理解しているシルフィディアのプロ意識は、幼いながらも確かなものだった。
「アメジスト輝石の力よ、その身を伝う聖なる雫で満たして癒しと守りの力を与えん――!」
 紫睡もまた、パーティの盾となる者達へと紫水晶の加護を与える。水晶の泉の光は、前に立つ者へより堅固な力を纏わせた。
「防戦ですか、ケルベロス。そちらから仕掛けてきた割におとなしいのですね」
 そんなケルベロス達の戦法に、ヴァルキュリアは少し不思議そうな顔をする。しかしそれを見たところで彼女達の剣筋が鈍ることはない。
 少し動きづらそうにしながらも、後列のヴァルキュリアに星の守護を受けた二体が、それぞれに剣を構えて後列のケルベロス達へと星座のオーラを次々に放つ。
「おっと、させませんよ」
 その連撃は当然のように防がれる。後衛の仲間達の前に躍り出た乱舞とライドキャリバーのシラヌイが、次々とオーラを弾いて行った。他のディフェンダー――サフィーナやジークリンデ、カミヒメもまた、仲間達を守るため敵の攻撃と後衛の間に立ちはだかる。
 攻撃を犠牲にした代わりに守りに特化した構成。その堅牢さに、ヴァルキュリア達は静かに顔を顰める。
「……護るというのは難しいな」
 冷徹に砲撃するネル。アームドフォートによる一斉掃射も、今は威嚇射撃に近い。
 ただ単純に敵を倒すのではなく、「何らかの隙」という不確かな可能性に賭けることを選んだ。
「誰も死なせませんよ。ヴァルキュリアである貴女方も……」
 自らの信念に反し操られるヴァルキュリアの屈辱。それを思うケイの腹の底からは、熱くこみあげるものがある。
「――ならば、こちらは武をもって貴女方を操る悪意の糸を断ち切りますッ!」
 ケイの覚悟と決意が、旋刃脚に乗ってヴァルキュリアの体に叩き込まれる。
 早苗の放った紙兵の守護を受けながら、乱舞もマルチプルミサイルを放ちヴァルキュリアを牽制する。
「今回は、戦闘を楽しむ余裕はなさそうですね……。長い戦いになりそうです」
 戦いを好む乱舞も、今回は防戦に徹することになる。
 これは、すぐに決着のつく一方的な殲滅戦ではない。いつ届くかも分からないシャイターン撃破の連絡が来るまで――攻撃を凌ぎ、生き延びねばならない防衛戦だ。


「しっかりせい、乱舞!!」
 自分を守り、目の前で崩れ落ちた乱舞の身体を早苗は必死で揺さぶる。
「自分の仕事を、したまでですよ……。さすがにしばらくは、使い物にならなそうですが……」
 早苗になんとか答えてはいるが、乱舞の屈強な身体には、今やほんの少し動くだけの力も残されていなかった。
 間違いなく自分の限界を超えていた一撃を、彼は癒し手を守るために引き受けたのだ。
「手こずっているようだな。私が加勢した幸運に感謝せよ」
 乱舞を斬り捨てたのは、四体目のヴァルキュリア。剣の露を払い、冷徹に早苗と乱舞を見下ろす。
 既に、戦闘が始まってから十一分が経過していた。未だシャイターン撃破の連絡はなく、疲弊し始めたケルベロス達の前には、無情にも増援のヴァルキュリアが到着した。
「彼らの守りが薄ければ、加勢など無用でした。しぶとい者達です」
 三体のヴァルキュリア達も未だ健在。シラヌイとカミヒメは、既に役目を果たし姿を消した。防戦を前提としたケルベロスの戦線も、乱舞が倒れた以上、崩れ始めたと言っていい状況だ。
「今更、引き返せるわけでもないから。決めたことをやり抜くしかないよね」
 戦況が傾いても、サフィーナは迷わない。自らの疲弊を、身体の気力を溜めることで少しでも癒していく。
「ここでやめたら何のために耐えてきたのか分かりませんので。……それに、今から攻勢に転じたところでどうにかなる状況でもありません」
 既に誰もがぎりぎりで持ち堪えている状態。シルフィディアは密かに息を吐きながら、心を曲げずに銃火器での牽制掃射を続ける。
 そんなケルベロスの姿を、ヴァルキュリア達は血の涙を流しながら冷たく見詰めていた。
「このままでは皆死にますよ、ケルベロス。待っていたところで、貴方がたに訪れるのは死神だけです」
 ケルベロス達が何を待っているのか。それはヴァルキュリアの判断に何の影響も及ぼさない。彼女達の振り下ろす剣の重さに、覇気に、早苗が、ケイが、ネルが次々に倒れていく。
「これ以上は、もう凌げない。早く……!!」
 倒れていく仲間の姿に、ジークリンデの脳裏に嫌でも暴走の選択肢が過る。次に攻撃を受ければ自分だって動けなくなりかねない。ならばもう――。
 その時。動けないはずの乱舞とネルが、一緒に顔を上げた。
 二人は顔を見合わせ、互いに一度頷く。そして口を開いたのはネルだった。
「……撃破だ」
 その一言を聞いて、紫睡は迷いなく手にした武装を手放し地に落とした。
 傷付いた身体に鞭を打って、仲間達より前に進み出る。そして、深く頭を下げた。
「とりあえず、お友達からお願いします!」
 紫睡のその言動にか、他の何かのためか――ヴァルキュリア達も一瞬だけ動きを止め、紫睡を見詰めていた。


 未だ立ち続けるケルベロス達は武器を下ろす。倒れた者達も、辛うじて顔を上げて声を絞り出した。
「これ以上の戦闘は無意味です。休戦しませんか?」
 シルフィディアの言葉に、乱舞が微かに頷く。
「貴方達も、本当はこんなことしたくないんでしょう」
「今は剣を納めるべきだ……お前達を助けたい。私達はその為に来た」
 ネルも、腕をついてなんとか上半身だけでも起こそうとする。
「貴方達が殺戮を続けたいと思っているのでなければ、私達も戦闘を続けるつもりはないんだ」
「貴方達が操られてる事は知ってたのよ」
 サフィーナとジークリンデも、そう自分達の考えを述べる。
「いい加減に目を覚ますんじゃな、あんな奴らに従っとる場合か!」
 早苗は動けない身体を無理に起こしながら、切実に声をあげる。
 ケイもまた、震える指を握り締めながら叫んだ。
「シャイターンは既に撃破しました。――その翼は己の意思で羽ばたく為にあるべきですッ! 散っていったヴァルキュリア達の為にもッ!」
 全員の言葉を、ヴァルキュリア達はただ血の涙を流しながら聞いていた。
 沈黙の後。やがて、四体目のヴァルキュリアが一歩進み出る。
「……まず一つ。休戦したい、戦うつもりはない、そのような言い分は相手と互角以上の戦いをしている状態でなければ意味をなさない。このまま続けていれば私達が勝利する状況。今の君達の言葉は命乞いに過ぎず、しかも潔いものとは言いがたい」
 ヴァルキュリアはすらりと剣を抜き、紫睡へ向き直る。
「もう一つ。敵前で武器を捨てることは、敵に命を委ねることと心得よ」
 頭を垂れた紫睡の首を切り落とすための刃が振り下ろされる。
 微かに目を見開いてから、覚悟を決めたように紫睡は目を閉じた。
「――紫睡!!」
 ネルの叫びと共に、ざくり、と肉を裂く音がした。
 血を流しているのは紫睡ではない。
 紫睡の首を落とそうとしたヴァルキュリアは、その刃を自らの足の甲に突き立てていた。
 そして――隣に居たヴァルキュリアもまた、武器を持たぬ者を手に掛けようとした仲間の肩を剣で貫いている。
「武器を捨てた者に向ける刃など、私達にはないでしょう……」
 赤い涙を流すヴァルキュリアの血を吐くような声。自分を、仲間を傷つけるヴァルキュリア達の姿を、ケルベロス達は呆然と見つめることしかできない。
 傷つけ合うヴァルキュリア達を困惑気味に見ていた残り二体のヴァルキュリアは、ふと顔を上げて羽ばたいた。この戦場に興味を失い、速やかに場を離れていく。まるで、何か別の指令を受けたように。
 二体の仲間を見送ることもない。口調の丁寧なヴァルキュリアは、仲間の肩を貫いた剣を引き戻して鞘に収める。
「撤退します。貴方がたの言う通り……そう、これ以上争う理由は互いにありません」
 それは「別の指令を受けた」からではなく、ケルベロス達の言葉と行動を受けた上での、ヴァルキュリア自身の意思での判断だった。
 足の甲を貫いた尊大なヴァルキュリアも、よろめきながらも剣を引き、ケルベロス達へ深く頭を下げる。
「非礼を詫びさせてほしい、ケルベロス。君達の言葉が、どのような戦況にあっても変わらぬものであったと分かっている。……それに、君達がいなければ、私達は取り返しのつかない罪を犯すところだったのだ。そう、今も……」
 洗脳があったとはいえ、武器を持たぬ者を二度も手に掛けようとした。それを思い出した彼女の肩が震える。
 その姿に、紫睡ははっと顔を上げて首を振った。
「あ、えっと、いえ! 私が危ないことをしたのは、本当なので……。それよりも――生きていたザイフリートさんがシャイターン達に暗殺され掛かっています。
 ……今、私達の仲間が救援に向かっている筈です」
「そうなのじゃ! もしかしたら今頃は、ケルベロスと共に戦ってくれているかもしれぬのだぞ!」
 紫睡と早苗の言葉に、ヴァルキュリア達は目を丸くした。互いに顔を見合わせる。
 ヴァルキュリア達の目から、透き通った涙が一筋零れた。
「それが真実なら、どんなに良いでしょう。私達の、本当の王子……」

「初めて会った相手を、すぐに友人と呼ぶことはできません。……けれど、血を流さぬために武力を用い、その身を賭してまで言葉を交わそうとした貴方がたを、私達は決して忘れないでしょう」
 そう言い残して、彼女達は指令を受けたヴァルキュリア達とは違う方角へ飛び去って行った。
「助けられた、って言って良いのかな」
 ヴァルキュリアの消えた空を見上げてサフィーナは呟く。
「良いんじゃないの。みども達の言葉は、しっかりヴァルキュリアに届いたんだから」
 返しながら、ジークリンデは惨劇を回避した玄関口を振り返る。
「私達の武はどうであったか。それを問う機会は、いずれまた訪れると信じましょう」
 玄関の柱に凭れながら、ケイもまた空を見上げる。
「私達もヴァルキュリアも自由でなければいけない。そう思います」
 紫睡の手当を受けながら、自由と戦いを愛する乱舞も身体を休めようと目を閉じた。
 戦いの後の安らぎの中、シルフィディアはようやく武器を仕舞う。
「みなさん、優しいんですから。……まあ、結果が良かったのでひとまずは良しとしますけれど」
 仲間は傷付きはしたが、何一つ取り零さなかった。その結果に、フルフェイスを外しながらシルフィディアも深く息を吐いたのだった。

作者:カワセミ 重傷:時雨・乱舞(純情でサイボーグな忍者・e21095) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 6/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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