シャイターン襲撃~真紅

作者:白鳥美鳥

●シャイターン襲撃~真紅
 東京都あきる野市。西の山中で魔空回廊が開く。その中からヴァルキュリアが出現した。
 彼女達は飛び立つ。3体のヴァルキュリア達が目指すのは、あきる野市の公園。
 赤い長髪をし、ゾディアックソードを持つヴァルキュリア。
 緑のショートの髪をし、ルーンアックスを持つヴァルキュリア。
 金色でみつあみの、妖精弓を持つヴァルキュリア。
 彼女達は公園に降り立ち、そこに居合わせた人間達に、無表情で武器を剥けた。
 次の瞬間、周囲の人間達は斬捨てられる。逃げようとしている人間達を追いかけ、更に殺害を繰り返す。
 ……赤い髪のヴァルキュリアはかつてケルベロス達と遭遇した事がある。しかし、その時の姿とはもう別のものだった。
 公園には次々と死体が生まれ、血に染まる。
 ヴァルキュリア達の殺害行動は止まらない。
 ……無表情の中、血の涙を流して。

●ヘリオライダーより
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)はケルベロス達に現状の説明を始めた。
「城ヶ島のドラゴン勢力との戦いも佳境になっている所ですが、エインヘリアルにも大きな動きがあったようです」
 続けてセリカは大きな動きの話を話す。
「鎌倉防衛戦で失脚した第一王子ザイフリート。彼の後任として新たな王子が地球への侵攻を開始したようです。エインヘリアルは、ザイフリート配下にいたヴァルキュリアをなんらかの方法で強制的に従え、魔空回廊を利用して人間達を虐殺してグラビティ・チェインを得ようと画策していると思われます」
 セリカは続けてヴァルキュリア達の話を始めた。
「ヴァルキュリアは、住民の皆様を虐殺し、クラビティ・チェインを奪おうとしています。ですが、邪魔する者が現れた場合、その邪魔者を排除を優先して行おうと命令されているようです。つまり、ケルベロス……皆様達がヴァルキュリアに戦いを挑めば、ヴァルキュリアが住民を襲う事は無いでしょう」
 ただ、と追加する。
「都市内部にシャイターンがいる限り、ヴァルキュリアの洗脳は強固です。迷うことなく皆様を殺しにかかるでしょう。ですが、シャイターン撃破に向かうケルベロスの方々がシャイターンの撃破に成功したのであれば、なんらかの隙ができるかもしれないのですが、確かな事とは言えません。操られているヴァルキュリアには同情の余地があるでしょう。ですが、皆様、ケルベロスが敗北してしまえばヴァルキュリアによって住民の方々が殺害されてしまいます。それは許せるものではありません。心を鬼にし、ヴァルキュリアを撃破する必要があるのです」
 セリカは表情を固くして最後の言葉を締めくくる。
「……新たな敵は、妖精八種族のシャイターンです。どんな能力なのか、その力はどんなものなのか全く分かりません。ですが、ヴァルキュリアを強制的に使役して人間の虐殺をしようとしています。それは阻止しなければならない事なのです。皆様、宜しくお願い致します」


参加者
鵺咬・シズク(黒鵺・e00464)
リアトリス・エルス(鮮血の・e01368)
レイ・ゲルハルト(病魔を喰らいしワルキューレ・e05434)
リリー・シュティーリム(ウェアライダーの刀剣士・e06150)
夜船・梨尾(懐中時計を持つ犬と獅子・e06581)
クロード・リガルディ(行雲流水・e13438)
麻里・烏子(空虚な夢の器・e14898)
李・飛蘭(ウェアライダーの降魔拳士・e19509)

■リプレイ

●シャイターン襲撃~真紅
 東京都あきる野市の公園。そこには無表情のヴァルキュリアが三体、そして八人のケルベロス達が対峙していた。
「こんにちは、ヴァルキュリア。虐殺を止めに来たよ。今回は、利害の一致、だね。よろしくね」
 麻里・烏子(空虚な夢の器・e14898)はそう声をかけると攻性植物で構えをとる。それと同時にヴァルキュリア達もそれぞれの武器を手に構えた。
 赤い髪のヴァルキュリアはリアトリス・エルス(鮮血の・e01368)、レイ・ゲルハルト(病魔を喰らいしワルキューレ・e05434)、リリー・シュティーリム(ウェアライダーの刀剣士・e06150)、夜船・梨尾(懐中時計を持つ犬と獅子・e06581)にとって面識のあるヴァルキュリアだ。出会った時は戦いの意思ではなく、ただ必死に勇者を求める姿で……とても同じ姿には見えなかった。ひたむきだった姿も今は欠片も見当たらない。無表情で血の涙を流す……ただ悲しい姿。
「誰かを操るとか、ひどいよね」
「みぎゃ!」
 リアトリスの言葉に、白くてふわふわのボクスドラゴンのステラは同意する。
 しかし、その操られているヴァルキュリアはすぐさま攻撃を仕掛けてきた。先ずは赤い髪のヴァルキュリアが星の光を操り仲間達の守備を固める。その加護を受けた緑の髪のヴァルキュリアがルーンアックスで飛びかかり、更に金髪のヴァルキュリアが弓を引く。続けて繰り出された攻撃が鵺咬・シズク(黒鵺・e00464)へと撃ち込まれた。
「その壁は、邪魔かな」
 烏子は無数のブラックスライムを放つ。ヴァルキュリア達を覆っていた加護の光が破かれた。
「よし……。これで有利に持ちこめるか……」
 クロード・リガルディ(行雲流水・e13438)は、赤い髪のヴァルキュリアのヴァルキュリアにドラゴンの幻を放つと燃え上がらせた。レイはシズクに光の盾を放つとその傷を癒す。
「仕方ない……実力行使で止めさせてもらうぞ!」
 訳ありだと分かりつつも、まずは攻撃を止めさせなければならない。李・飛蘭(ウェアライダーの降魔拳士・e19509)は鋭い蹴りを放つ。
「鳴いている相手と戦うのは気分が悪いね。……どうにかして正気に戻してやるよ!」
 シズクは冷気を放ち凍結させる。リアトリスは漆黒の槍で貫くとステラが続くように衝撃波を放った。
「悪夢から解き放ってあげるからね」
 リリーは元気よく言うと、ファミリアを飛ばす。梨尾は鋭い蹴りを放ち、更にダメージを加えた。
 炎による傷が赤い髪のヴァルキュリアを襲う。金髪のヴァルキュリアがまず癒しの矢を放つと赤い髪のヴァルキュリアのヴァルキュリアも再び自らを含めて傷を癒す。しかし、蓄積されたダメージは払いきれない。逆に緑の髪のヴァルキュリアは攻撃を繰り出す。一度狙っているシズクに再び高く跳び上がると斬りかかって来た。そこを梨尾が庇う。斬り返すように飛蘭が星の力を込めた斬撃を与えた。
「そろそろ加減をした方が良いな……」
 クロードは倒すまでにはいかない攻撃を放つ。それを見たシズク、リリーが続けざまに攻撃を繰り出す。その攻撃を受けて、赤い髪のヴァルキュリアはそのまま倒れ込んだ。そして、驚いた表情をすると長い髪を揺らしながらそのままどこかに飛び去ってしまう。
「完全に倒しはしませんでしたが……逃げてしまいましたね……」
「ええ、出来たら彼女とは話がしたかったのですが……」
「うん。一番話しやすいと思ってたからね……」
 彼女との会話を望んでいたレイ、梨尾、リリーは少し落胆する。しかし、これで彼女達は手加減して倒せば逃げ去る事だけは分かった。
「逃げてくれるなら、どちらにせよ今の時点では悲劇はおこらないと見て良いな」
「……後はシャイターンを倒す奴らの動き次第って所か」
 シズクと飛蘭は目の前で仲間の敗退にもさして関心を抱いていないヴァルキュリア達が居た。表情は変わる事もなくただ血の涙を流すその姿は……哀しさを体現している様にさえ見える。
「逃がすにしろ何にしろ……止めるのが先だな……」
「だね」
 クロードは金髪のヴァルキュリアに狙いを定めると漆黒の槍を放つ。更に烏子が鋭い蹴りを叩き込んだ。
 金髪のヴァルキュリアも弓を引き、緑の髪のヴァルキュリアもルーンアックスを構える。狙いはやはり先程から狙っているシズク。
「危ない……!」
 飛蘭が庇うが、全ての攻撃を防ぐ事は出来ない。
「まずはシズクさんを集中的に回復させましょう」
 レイは光の盾を放ち、ステラ、梨尾、烏子、飛蘭がそれぞれシズクの傷を癒す。その間に、梨尾のビハインドのレーヴェが妨害に入った。
「ありがとな! よし攻撃再開だ!」
 シズクは癒してくれた仲間達に礼を述べると同時に精神集中した一撃を飛ばす。それに続いてリアトリスの放つ漆黒の闇が放たれ、リリーは炎の一撃を加えた。
「我が喚ぶ、『骸大蛇』。……標的を薙ぎ払え……」
「…………ゥゥ…….」
 クロードの放つ骸骨化した大蛇が、烏子から沸きだす黒い液体が熱を帯びた多面体となって金髪のヴァルキュリアに襲いかかった。
 緑の髪のヴァルキュリアは癒しの力を金髪のヴァルキュリアに放つ。様々なダメージは消せないものの、幾分回復した彼女は再び弓を引いた。眠りの様な心地にリアトリスは襲われる。すかさずレイが光の盾を放ち、彼女の傷を癒した。
「うん、大分弱ってきてる! 倒し切らないように攻撃だよ!」
 リリーはそう呼びかけると力を込め……でも、撃破しないように加減を加えながら攻撃を放つ。梨尾、クロード、烏子、飛蘭、シズク、リアトリスも気をつけながら攻撃を叩き込んだ。
 次々に攻撃を叩き込まれた金髪のヴァルキュリアも、驚いた表情に変わるとそのまま飛び去って逃げて行く。
 残るは緑の髪のヴァルキュリア。しかし、一人になっても彼女に変化は見られない。まだ強固な洗脳は解けてはいないようだ。こうなると何かの変化が無い限り、逃がすより他は無いだろう。
 シズクはまず氷の螺旋で彼女の動きを奪う。リアトリスは漆黒の槍を放ち、続いてステラが衝撃波を放った。リリーもファミリアを放つ。
 光り輝く閃光が走る。ルーンアックスが切り裂くように動いた。梨尾と飛蘭が庇うように動く。
 リリーが炎を放つ蹴りを加えた時、緑の髪のヴァルキュリアに光の矢が放たれ彼女の傷を癒した。
 空を仰ぐと妖精弓を構えた銀髪のヴァルキュリア。
「増援が現れたか……」
 クロードが呟く。
 銀髪のヴァルキュリアは上空から降り立ち、緑の髪のヴァルキュリアを支援するように彼女は動きを取った。やはり、こちらのヴァルキュリアも無表情だ。やはり洗脳されているのだろう。
 回復した緑の髪のヴァルキュリアは再びルーンアックスを繰り出す。更に銀髪のヴァルキュリアの放つ祝福を齎す矢が彼女を援護した。再びシズクが狙われる。彼女を護っていた盾ごと斬りつけ守備を切り裂く。
「回復しますよ」
 レイは再びシズクを回復する。飛蘭も更に回復を重ねた。
 援護を受けたシズクは緑の髪のヴァルキュリアを斬り上げる。リリーと梨尾は炎を纏った蹴りを放った。クロードとリアトリスは漆黒の槍を貫き、烏子は蹴りあげた。
 緑の髪のヴァルキュリアがかなり弱って来た時だった。急に彼女達に異変が起こり始めたのだ。
 混乱しているような姿を見せ始めたのだ。いきなり、緑の髪のヴァルキュリアが仲間である筈の銀髪のヴァルキュリアに攻撃をしかけたのだ。
「だめ、こんな事しちゃ……!」
 はっと意識を取り戻したような顔をするが、再び元の表情に戻る。
「……?!」
 明らかに可笑しな行動だ。シャイターンの撃破に成功したのだろうか。強固な洗脳をされている筈の彼女達の動きが明らかに乱れている。
 だが、次の瞬間には緑の髪のヴァルキュリアはケルベロス達への攻撃に移り始める。銀髪のヴァルキュリアに関しても同様だ。こちらは自らを攻撃して苦しんでいる。
 ケルベロス達への戦闘をしかけながらも同士討ちの行動を取ったりもする。
 ……正気、とまではいかないが可笑しい。これならば、こちらの声も届くのではないだろうか。
「今ならきっと抗えるはずだ。自分の力で誇りを取り戻してみやがれ!」
 シズクが強い声をかける。それにヴァルキュリア達は少し反応を見せた。
「なぁ、アンタらこんな虐殺紛いの事好き好んでやるのか? それともザイフリートの命令なのか? 勇者だってこんなことしても見つかるもんじゃないだろ? 目をさませよ!」
 飛蘭の声にヴァルキュリア達は少し呆然としているようだった。彼女達の戦意がかなり落ちて来ている。それに彼女達自身もかなり傷ついている。出来ればこれ以上、同士討ち等で命は落として欲しくはない。
「武器を収めてください。その刃は貴方達の意思によるものではないはずです」
 レイはヴァルキュリア達に声をかける。
「貴方達を支配していたシャイターンは私たちの仲間に討たれました。意思を捻じ曲げられ、血の涙を流してまで人々を虐殺する理由など無いはずです」
 その言葉にヴァルキュリア達は構えていた武器を下ろす。半信半疑のようだが、洗脳が若干解けかかっているので言葉を受け入れる事は出来たようだ。
「勇者はまだ必要ですか? 自分は勇者になれるような力や勇気はありませんが、貴方達の助けになりたいんです」
「そうだよ! キミ達じゃないけど……キミと一緒にいた子はね、一度対峙した時に戦う必要がない相手には剣を向けなかったんだよ? ……だから、お互い傷つけあう事もなかった。あの子と一緒にいるキミ達もきっとそうだよね?」
 梨尾とリリーは、今は飛び去ってしまった赤い髪のヴァルキュリアの事を伝えながら、目の前のヴァルキュリア達に言葉を伝える。
 そしてリリーはにっこりと笑った。
「キミ達に声が届いて洗脳が解ける、これって王道でしょ?」
 その笑顔にヴァルキュリア達は、無表情の中にも少し笑みを零したように見えた。自分達をとても心配してくれている人達がいる事が分かって、嬉しかったのかもしれない。
 二人のヴァルキュリア達はゆっくりと舞いあがる。そして、空の彼方へと消えて行った。
「とりあえず、これでヴァルキュリア達を殺す事なく撤退させられたか……」
「まあ、まともに話が出来た訳じゃないけど今回の目的自体は達成出来たって所かな」
 空を見上げながらクロードと飛蘭は呟く。
「ステラ、頑張ったね。帰ったらご褒美にステーキだから!」
「がうがう!」
 リアトリスに撫でて貰ってステラは嬉しそうに鳴いた。
 戦いにひと段落がついてレイは緊張の糸が切れたようにへたり込んだ。
「……大きな声で自分の気持ちを伝えた事が無かったので、ちょっと緊張していたんですね」
「そうなのか? お疲れ様っ」
 恥ずかしそうに微笑むレイにシズクがにっこりと笑った。
「一番知っているヴァルキュリアと話せなかったのが残念だったね」
「そうですね。でも、他のヴァルキュリア達には少しでも伝わった……そんな気がします」
 リリー、梨尾は少し残念そうだが、どちらにせよ結果としては良かったのかもしれない。
 空を見上げる。少なくともヴァルキュリアの起こす惨劇や、彼女達を傷つけることなく終わった事も……上々の成果だろう。一先ずの結果に胸をなで下ろすケルベロス達だった。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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