シャイターン襲撃~公園を染めるヴァルキュリアの涙

作者:沙羅衝

「さて、今日はどれくらい走ろうかな……」
 ここは東京都日野市にある公園。ランニングが出来るスペースと、子供の遊び場を兼ねた公園である。ランニングを日課としたサラリーマンの姿や、遊具で遊ぶ子供達、それを見守る母親の姿があった。
「ん? キミは、誰だい?」
 ランニングを開始したサラリーマンの目の前に、一人の金髪の少女が現れた。その少女の手には、装飾の施された槍が握られている。
「キャー!」
 そこへ、突如悲鳴が上がり、サラリーマンは声のした方向を見る。すると、公園で子供を見守っていた母親が、銀髪の少女に槍で胸を貫かれていた。
「え?」
 驚くサラリーマンは、自分の身に起こったことに、更に驚くことになる。先程の金髪の少女が、その手に持った槍を使い、自分の胸に槍を突き立てているのだった。サラリーマンは、何が起こったかを悟ることなく、そのまま絶命した。
 子供達がそれを見て逃げ出そうと、蜘蛛の子を散らすように思い思いの方向へ走り出す。しかし、二人の少年の前に、同じ格好をした黒髪の少女が現れ、槍を一閃する。公園はたちまち殺戮の現場へと変わっていった。
 その三人の少女達は無表情のまま、次のターゲットへと狙いを付け、次々に人々を襲っていく。その頬に血の涙を伝わらせながら。

「あー、みんな突然ごめんな。これからドラゴンとの戦いも大詰めやねんけど、どうやらエインヘリアルのほうにも動きがあったみたいなんよ」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が集まったケルベロス達に、申し訳なさそうに話しかける。
「ザイフリートっていうエインヘリアルの第一王子ってのがおるんやけど、それとは違う王子が地球へ侵攻してくるっていう情報をキャッチしたんや」
 ザイフリートの名を聞き、ケルベロス達はざわつく。ザイフリートといえば、鎌倉奪還戦の時に姿を消したエインヘリアルである。
「で、違う王子がザイフリートの配下やったヴァルキュリアをなんかの手を使って強制的に従えて、魔空回廊からやってくるっちゅう話や。目的はグラビティ・チェインやな」
 新しい敵の存在を聞き、ケルベロス達は詳しく話を聞こうと、絹に続きを促す。
「今回の敵は、その王子がシャイターンっちゅう種族を使って都市を襲いにくる。シャイターンは14体おって、それぞれにヴァルキュリアを従えてる。みんなは、東京都日野市に乗り込んでくる部隊の所に向かって欲しいねんな。シャイターンを撃破しつつ、ヴァルキュリアの殺戮を止めなあかんねんけど、みんなはそのヴァルキュリアを抑える役をして欲しいんよ」
 ケルベロス達は、自分達が日野市に向かい、住民を護る事を理解した。
「ヴァルキュリアは住民からグラビティ・チェインを奪おうとしているんやけど、邪魔者がいれば、そちらを優先するように命令されてるみたいやな。だから、みんなが先にヴァルキュリアに戦いを挑めば、住民に被害は出ぇへん。でな、ここからが問題なんやけど、この日野市に現れたシャイターン、『ファイサル』ちゅうヤツみたいなんやけど、そいつがいる限りは、ヴァルキュリアの洗脳はそうとうきついみたいで、絶対に解けへんみたいやねん。だから、話し掛けたとしても、槍の餌食にされるだけや。『ファイサル』に向かった部隊がそいつを倒せば、なんか隙ができるかもしれんねんけど……。こればっかりは確かなことは言えんわ。操られてて可哀想な感じもするけど、みんながやられてしもたら、当然住民が教われる。それだけはあかん。それに、『ファイサル』がもし倒されへんかったら、そこから増援も考えられる。そうなると、戦況は不利になっていくと思うねん……。だから、冷静になって、撃破していく必要があるやろな……」
 絹はそう言って、今回のヴァルキュリアの特徴を話し始めた。
「みんなに戦って欲しいんは、公園に現れる3体のヴァルキュリアや。全員槍で武装してて、髪の毛が金、銀、黒の特徴がある。場所はうちが案内するから、そこに向かって欲しい」
 絹はええかな、と言ってケルベロス達に確認をする。
「シャイターン……新しい敵や。その力はわからんけど、ヴァルキュリアを使って人を殺戮するんやったら、当然うちらは阻止せなあかん。気ぃ抜いてたら、こっちがやられるで。頼むな!」


参加者
蛇荷・カイリ(あの星に届くまで・e00608)
琴宮・淡雪(淫猥サキュバス・e02774)
村雲・左雨(月花風・e11123)
キティエリス・ジョーンズ(日常の少女・e16090)
スヴァリン・ハーミット(隠者は盾となりて・e16394)
四条・玲斗(町の小さな薬剤師さん・e19273)
ノンナ・カミンスキー(凍える森の魔女・e20640)
九頭龍・夜見(ハラキリハリケーン・e21191)

■リプレイ

●強襲
「キャー!」
 公園で子供の遊んでいる姿を見守っている二人の母親の元に、銀髪のヴァルキュリアが現れていた。その手には見事な装飾が施された槍が握られ、その母親の一人を貫こうとしていた。
「待て! てめぇの相手は俺だ!」
 村雲・左雨(月花風・e11123)がそのヴァルキュリアの前に立ちふさがり、鉄塊剣を上段から大きく振り落とす。
 ドウ!!
 左雨の鉄塊剣は空を切り、地面に鈍い音を反響させた。すると、左雨のボクスドラゴンが左雨の隣に並び、母親の元に行かせまいと両手を広げ、構えをとった。
「私の相手もしてもらおうかしら?」
 蛇荷・カイリ(あの星に届くまで・e00608)の電光石火の蹴りが、左雨の攻撃を避けた銀髪のヴァルキュリアの胴体にめり込み、その身体を吹き飛ばした。
「さあ! こちらへ!」
 キティエリス・ジョーンズ(日常の少女・e16090)が、その母親二人を公園外に導く。キティエリスは不安による動悸を押さえつけ、母親に語りかける。その言葉から、母親達は突然の事にも落ち着きを取り戻す。しかし、母親の視線の先には、子供の姿と黒髪のヴァルキュリアの姿があった。
 キティエリスはその母親の気持ちが分かり、言葉の先が出ない。それでも、勇気を振り絞って母親に呼びかけた。
「だいじょうぶ、です……。あたし達に、お任せください!」
 すると、黒髪のヴァルキュリアに向かい、一つの影が飛び込んでいった。
「こっちは、任せるでござるよ! 唸れ、腹斬一文字!」
 九頭龍・夜見(ハラキリハリケーン・e21191)は地獄の炎を纏わせたゾディアックソードで、黒髪のヴァルキュリアを斬り付けた。ヴァルキュリアは肩口にその剣を受け、地獄の炎を傷口から噴出させながらバックステップで夜見との距離を空ける。
「ここは子供たちの遊び場です。お引取りください」
 ノンナ・カミンスキー(凍える森の魔女・e20640)は、その黒髪のヴァルキュリアにバスターライフルの銃口を向け、追撃した。黒髪のヴァルキュリアは、素早く起き上がってビームを避けるが、左腕をかすめた。子供達の前には夜見のボクスドラゴン『村雨虎徹獅子王丸』が仁王立ちで立っていた。
「子供達。こっちよ!」
 ノンナが子供達に、優しいまなざしを向け、母親の元に誘導した。
「お母さんから離れちゃだめよ」
 ノンナとキティエリスが、母親と子供達を無事に公園の外へと連れ出していく。

「ほら、お兄さん。こっちは任せて、行った行った」
 スヴァリン・ハーミット(隠者は盾となりて・e16394)は金髪のヴァルキュリアの槍を受け止めつつ、腰を抜かしているランニングウェアのサラリーマンに話し掛けていた。その隣ではスヴァリンのボクスドラゴン『イージス』が自らに属性インストールを施す。
「あ……あ、す、すまない。腰が……」
「ほらほらぁ。お兄さん。こっちにいらして」
「え? ……あ、はい」
 琴宮・淡雪(淫猥サキュバス・e02774)がサラリーマンに話しかける。すると、サラリーマンは淡雪に誘われるように動き出した。
「はい、そのまま公園の外まで行くのよぉ」
 サラリーマンは淡雪に言われたまま、公園を出て行った。
「良し。これで一般人は大丈夫。さて、私も……」
 四条・玲斗(町の小さな薬剤師さん・e19273)が金髪のヴァルキュリアに向かい、両手に持った小太刀を弧を描くように斬り付けた。金髪のヴァルキュリアの左足の足首を切り裂き、ヴァルキュリアは少し足を引きずる格好となった。
 ヴァルキュリア達は、自分たちの敵をケルベロスと定め、全力の攻撃を繰り出し始めた。その攻撃には一切の迷いが無く、鋭い。しかし、ふと彼女達の顔を見ると、血の涙が滴り落ちているのであった。

●悲愴
「貴女たちが疲れ果てるまで付き合ってあげます。こういうのは……得意なんです」
 ノンナがそう言いながら、公園のジャングルジムの後ろから、黒髪のヴァルキュリアに狙撃を行う。
 ケルベロス達は、ヴァルキュリアを殺さないと決めていた。出来るだけ時間を稼ぐつもりだった。ファイサルが倒されるまで。
 ケルベロス達はダメージを与えつつ、ヒットアンドアウェイで十分な距離を保ち、じわじわと攻撃を与えていっていた。
 銀髪のヴァルキュリアの攻撃を左雨のボクスドラゴンが受け、吹き飛ばされる。銀髪のヴァルキュリアは、そのままカイリに向かい、更に槍を構え、突進してきた。
「へへっ。待ってたよ」
 カイリはバトルオーラを噴出させ、両手を地面に叩きつけた。
『全部……吹きッ、飛べぇッ!』
 すると、カイリの周囲を竜巻のような霊力の奔流が巻き起こった。ヴァルキュリアはその竜巻を食らい、コンクリートで出来たトンネルがある2メートルほどの山に叩きつけられた。

「こんなに可愛い子たちなのに……本当に勿体無いわぁ」
 金髪のヴァルキュリアに淡雪がウイルスカプセルを与え、スヴァリンが至近距離で御霊殲滅砲を放つ。その攻撃は直撃するが、それをものともせず、スヴァリンに槍の一撃を敢行する。
「ぐあっ!?」
 意表を突かれたスヴァリンは、その槍を避けることができず右肩を貫かれた。
「スヴァリンさん!」
 すぐさまキティエリスが、スヴァリンにブラッドスターを、イージスが属性インストールを施していく。
「二人とも、さんきゅ。しかし、増援が来ないってことは、向こうも善戦してるってことだよな……耐えるぜ」
 既に戦闘開始からかなりの時間が経とうとしていたが、ヴァルキュリアの増援部隊はやってこない。向こうも頑張っている。ケルベロス達はそう思い、耐えることを選ぶ。

 遊具が広がる一角では、黒髪のヴァルキュリアがノンナのフロストレーザーの一撃を食らい、地面に叩きつけられていた。そして、その身体から氷が出現する。黒髪のヴァルキュリアは、既にギリギリの状態であることが見て取れた。
「もらったでござる! 五感を地獄化した某からは、何人たりとも逃れられぬ……っ!」
 夜見が、黒髪のヴァルキュリアに対し、ゾディアックソードを構える。
『デウスエクスは切腹すべし!某が刃のさ……』
 夜見は集中し、腹斬旋風刃の構えを取る。しかし、殺してはならないないことを思い出し、詠唱を止め、ゾディアックソードをそのまま上段に構えなおして振り下ろす。しかし、力ないゾディアックソードの一撃は空を切り、剣が地面を叩いた。
「……危なかったでござる」
 夜見はかなり難しい選択をしたのだなと、今更ながらに実感していた。

●涙
 何度剣を交え、拳を叩き込み、槍で突かれただろうか。ヴァルキュリアの攻撃をひたすら耐え、手加減攻撃を狙うケルベロス達。ヴァルキュリアは三体とも目に見えて疲弊しており、その槍の穂先がケルベロスの急所を貫くことは少なくなっていた。持久戦を覚悟の上で臨んだ戦いとはいえ、ケルベロス達の顔には、殺さずといことを疑問視する表情が浮かび始めていた。
 金髪のヴァルキュリアはランニング用のトラックを蹴り、槍を玲斗に向けて無表情のまま突進する。疲労の色が濃いとはいえ、攻撃の鋭さだけは変わらない。
「っく!」
 玲斗の日本刀がその槍を弾き、急所へのダメージは免れるが、槍はそのまま玲斗の足にぶつかった。玲斗はダメージを極力抑えようと、その槍の動きにあわせ、自らも飛ぶ。
「動きを制限させてもらうわ……」
 着地と同時に、玲斗の日本刀が弧を描く。その切っ先は、再び金髪のヴァルキュリアの足を捉える。金髪のヴァルキュリアは両足の足首から血を流し、明らかに動きのスピードが落ちていった。そこへ、淡雪の爆破が重なる。金髪のヴァルキュリアはその爆風によってトラックに打ちつけられた。

 銀髪のヴァルキュリアも他のヴァルキュリア同様に、左雨とカイリの攻撃を受け、既にボロボロの状態となっていた。しかし、ヴァルキュリアは攻撃を止めようとしない。ヴァルキュリアの流す血の涙が、公園のあちらこちらにぽたりと落ちていった。
 カイリは木刀の見た目をした霊斬刀を構え、急所を少し外した突きを繰り出す。しかし、槍に弾かれその突きをかわされてしまう。カイリもまた、この依頼の難しさに舌を巻いていた。
 ケルベロス達の手加減攻撃は同じ動作の為、繰り返す度に益々避けられてしまうことになっていた。しかし、他の攻撃を与えてしまうと、ヴァルキュリアが絶命する恐れがあった。ケルベロス達はジレンマに陥っていた。

 その時、黒髪のヴァルキュリアが膝をつき、倒れていく映像が左雨の目に飛び込んできた。
「殺したのか!?」
 左雨は黒髪のヴァルキュリアを斬り付けた夜見に問う。
「安心されよ、峰打ちでござる」
 夜見はそう言い、黒髪のヴァルキュリアのほうを確認する。黒髪のヴァルキュリアはやっとの事で起き上がり、光の翼を広げて来た方向へと大きく跳躍し、帰っていった。

「お姉さん達。黒髪のお姉さんは撤退したようだよ。さあ……って聞いちゃいないよな」
 金髪のヴァルキュリアの攻撃を受け流しながら、スヴァリンが話し掛ける。だが、数が減って怯むかと思われた他の二体のヴァルキュリアは、攻撃を止めようとしない。
「なあ、止めようぜ……。こんな無意味な事はさぁ!」
 操られているとは言え、所詮はデウスエクスである。スヴァリンはこの作戦は、あまり乗り気ではなかった。しかし、あまりの姿に珍しく感情的になる。気が付けば、味方に対して言うように、ヴァルキュリアに叫んでいた。
 血の涙を流しながら、全力で攻撃するヴァルキュリアに対し、手加減攻撃で無力化しようとするケルベロス。数の差はあるのにもかかわらず、その意識の違いにより、防戦一方になってしまう。零れ落ちる血の涙が砂や遊具、トラックにと染み込んでいき、その点の数だけが増えていく。
 ファイサルの討伐はまだか。焦るケルベロス達。そしてついに、回復に孤軍奮闘していたキティエリスをヴァルキュリアの槍が捉えた。
「それは、駄目だろ!」
 スヴァリンがとっさに手を伸ばし、その槍を掌で受け止め掴み取る。スヴァリンの手から鮮血がほとばしった。

●使命
「ぐ!」
 スヴァリンはそのまま槍を掴み、金髪のヴァルキュリアごと突き飛ばした。彼の元へイージスとキティエリスが駆け寄り、回復を施していく。
 突き飛ばされたヴァルキュリアは、そのまま再びキティエリスへと槍を向ける。
「もう、これは駄目でしょ……」
 と、ノンナがヴァルキュリアに必殺の銃口を向ける。グラビティがそのライフルに充填されていき、引き金に手をかけた。
「え!?」
 しかし、ノンナが見つめた先に、銀髪のヴァルキュリアが金髪のヴァルキュリアに対し、槍の一撃を放っている映像が目に飛び込んできた。
「待たせてくれるね……」
 スヴァリンの左目にターゲットサイトの模様が映し出される。ファイサル討伐隊からの通信が入ってきていた。
「みんな、ファイサルが倒されたよ!」
 その言葉を聞くまでもなく、ケルベロス達は現状を理解し始めていた。二体のヴァルキュリアは混乱を始め、互いに槍をぶつけ合っていたからだ。
「落ちつきなさい! 愚かで可愛い妖精達! ファイサルは倒されたわよ? あなた達が本当に敬愛してるのは、ザイフリート王子でしょ! 目的を間違えてはいけないわ……。それに、ザイフリート王子は生きてるわよ?」
 淡雪の言葉を聞き、武器にこめる力が弱まり、明らかに困惑の表情を浮かべるヴァルキュリア達。
「……ザイフリート……さ、ま。生きて……いらっしゃ……る?」
 銀髪のヴァルキュリアは目から最後の涙を落とし、立ち尽くした。
「武器を収めろ、そして話を聞くんだ」
 左雨はライフルを収めながら、ヴァルキュリアに近づいていく。
「ザイフリート王子の保護作戦が動いています。貴方たちは、こんな所に要るべきではないのではないでしょうか?」
 ノンナも左雨と同様に近づいていく。ただ、緊張は保ったまま、おかしな動きがあれば、攻撃できる態勢は取っていた。
「そう……だ。私達は……」
「王子も某達の仲間が保護するであろう、お主達は行くべき所があるのではござらんか?」
 夜見もヴァルキュリア達に語りかける。ザイフリートがどうなるかは、正直賭けであった。しかし、その作戦が動いているのは事実。ケルベロス達は、他の仲間の成功を祈りつつ、言葉に力をこめた。それは、自分たちの希望も入った言葉であった。
 ガラン……。
 ヴァルキュリアが槍を地面に落とす。
「どうやら、分かってくれた……ようね」
 カイリはその姿を見て、己の斬霊刀の構えを解く。
「ザイフリート王子!」
 金髪のヴァルキュリアが叫ぶ。そして、自分の頭の片隅に残っていた思念を振るい落としているかのように頭を振った。
「行きましょう」
 銀髪のヴァルキュリアが金髪のヴァルキュリアの肩にそっと手を当て、互いにうなずく。ヴァルキュリア達は、落とした槍を拾い上げながら、背中に光の翼を出現させていく。
「行くのね……」
 玲斗は最後まで武装を解かなかったが、その姿を確認して武器を収めた。
 ヴァルキュリアの翼が最大限に大きくなった時、彼女らは地面を蹴り、大きく跳躍して公園から去っていった。

「……ふう。一時はどうなることかと思ったよ」
 スヴァリンは安堵のため息を吐く。
「これは……うまく行ったのでしょうか……」
 キティエリスは安堵しつつ、本当にこれで良かったのかを考えていた。キティエリスはそのまま座りこんだ。
「あの子たちがどうあれ、私達は全員生きている。それに、公園の平和も護った。それで良いんじゃないかしら?」
 カイリは不安そうな表情のキティエリスに言う。
「私は、あの子達も気になりますが、ひとまず、と言った所でしょうかぁ」
 淡雪も彼女達の行く末を案じてはいるようだが、結果には満足していた。
「そう言う……ものでしょうか。あたしには、まだ、分からないです。でも、人々を護ったというのは、分かります」
「そうそう。それでいいんだと思うよ」
「まずは、人々を護った。それで良いのよ。それで……」
 スヴァリンと玲斗もカイリの言葉に同意しつつ、ヴァルキュリアの飛び立った方向へと視線を向けた。
 ヴァルキュリアがこれからどうなるのか、そして新たなる敵、シャイターンのことや、ザイフリートのことなど、まだ誰も、何も分かっていない。多くのことがこの事件で起き、自分達は人々を護った。そのことだけは事実だ。
「胸を張れば良いさ」
 左雨は、自分に言い聞かせるように呟き、空を見上げた。
 冷たい風が舞い、雲が千切れるような速さで流れていく。それは、これからのケルベロス達の行く末なのかも知れなかった。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 0
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