シャイターン襲撃~落涙は紅

作者:雨音瑛

 東京都昭島市にある、とあるビル。その屋上に突如として出現したのは、魔空回廊と、そこから出てくるヴァルキュリア達。彼女たちは、3体ずつ4方向に散っていく。
 駅近くの住宅地に降り立った3体は、それぞれ異なった武器を手にしていた。一人は剣を、一人は弓を、一人は槍を。
 彼女たちはおもむろに住民に近づき、何の躊躇もなく命を奪った。
 次々と。慈悲無く。造作なく。
 住宅地は血で染まり、屍が積まれてゆく。
 赤く染まるのは住宅地だけではない。ヴァルキュリアの頬を伝う幾筋もの涙も、同じ色をしていた。
 ほんの少し前までは平和だった街で。ヴァルキュリアたちは血の涙を流しながら、虐殺を続けていくのだった。
 
「おつかれさまっす、ケルベロスのみなさん! 城ヶ島のドラゴン勢力との戦いも、いよいよ佳境っすね!」
 ヘリポートで元気よく挨拶するのは黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)。だが、次の瞬間には深刻な表情を見せる。
「実は、エインヘリアルにも大きな動きがあったみたいっす」
 鎌倉防衛戦で失脚した、エインヘリアルの第一王子であるザイフリート。その後任として、新たな王子が地球侵攻を開始したらしい。
「新たな王子は、ザイフリートの配下であったヴァルキュリアを何かしらの手段で強制的に服従させているっす……」
 このヴァルキュリアたちは魔空回廊を通じて遣わされ、人間たちを虐殺していく。新たな王子は、この虐殺によってグラビティ・チェインを得ようと企んでいるようだ、とダンテは視線を落とした。が、すぐさま顔を上げ、ケルベロスたちを真っ直ぐに見る。
「もちろん、このままにしておけるはずがないっす! 集まってもらったみなさんには、東京都昭島市に向かって欲しいっすよ」! そうそう、このヴァルキュリアを直接的に従えているのは、妖精八種族の一つ『シャイターン』ってことも付け加えておくっす!」
 都市内で虐殺をするヴァルキュリアに対処しながら、このシャイターンを撃破する必要がある、とダンテはうなずいた。
「今回戦うことになるヴァルキュリアは、先ほど説明したとおり住民を虐殺してグラビティ・チェインを奪おうとしてるっす。でも、邪魔する者が出た場合は邪魔者の排除を優先するよう命令されているみたいなんすよね」
 つまり、ケルベロスがヴァルキュリアに戦いを挑めばヴァルキュリアが住民を襲うことはない、ということだ。
「でも、都市内にシャイターンがいる限りヴァルキュリアは強固な洗脳を受けたまま、っす。迷うことなくケルベロスを殺しにくることが予想されるっすね……」
 けれど、と拳を握る。
「昭島市のシャイターンの元へ向かったケルベロスたちがシャイターンを撃破した後ならば、何らかの隙ができるかもしれないっす」
 とはいえ、確かなことではない。ダンテは困り顔で頬をかいた。
「操られているヴァルキュリアたちは可哀想っす。でも、ケルベロスの皆さんが敗北すると、住民が虐殺されてしまうっす」
 当然、そのようなことは許されない。心を鬼にしてヴァルキュリアを撃破する必要がある。
 そして、戦うことになるヴァルキュリアは3体。ふたご座のゾディアックソードを装備したヴァルキュリアはゾディアックソードのグラビティ、妖精弓のヴァルキュリアは妖精弓のグラビティを使い分けてくる。槍を装備したヴァルキュリアは、光を宿した強烈な一撃、氷をまとっての突撃、仲間の士気を鼓舞するヒールを使用するそうだ。
「状況次第で、さらにもう1体のヴァルキュリアが援軍としてやって来る場合もあるっす」
 ダンテは、注意を怠らないようにと人差し指を立てた。
「無理矢理従わされ、人間の虐殺を命じられたヴァルキュリアが3体……色んな意味で、つらい戦いになると思うっす。それでも、ケルベロスの皆さんなら何とかしてくれる。自分は、そう信じてるっす!」
 と、ケルベロスたちに笑顔を向け、ヘリオンへと促した。


参加者
ホワイト・ダイヤモンド(面倒臭がりなナイフ持ち・e02709)
池・千里子(総州十角流・e08609)
春花・春撫(優秀な破壊者・e09155)
鋼牙・天子(レプリカントの鎧装騎兵・e13997)
レンナ・インヴェルノ(アリオーソ・e14044)
エシャメル・コッコ(ミリア・e16693)
古牧・玉穂(地球人の刀剣士・e19990)
繰原・マリア(糸繰り人形・e21255)

■リプレイ

●乙女の涙
 東京都昭島市に降り立ったケルベロスの視線の先には、臨戦態勢のヴァルキュリアが3体。市民たちは、対峙する彼女たちの剣呑な雰囲気に圧されるように逃げ去って行く。
「ごきげんよう、ここから先はわたしたちがお相手いたします」
 スカートの裾をちょこんと上げて挨拶するのは、古牧・玉穂(地球人の刀剣士・e19990)。3体のヴァルキュリアは、誰もが血の涙を流している。
 真っ先に進み出たのは、剣を持ったヴァルキュリア。ふたご座のオーラを前衛へと放てば、続くは槍のヴァルキュリア。狙いは同じく、前衛めがけて氷をまとった突撃で攻め入る。メディックの役割を果たす弓のヴァルキュリアも、初手はハートクエイクアローを千里子へと放った。洗脳されたヴァルキュリアたちの攻め手には、容赦も慈悲も見られない。
「強制的に服従ですか」
 ひどい話です、と呟くのは鋼牙・天子(レプリカントの鎧装騎兵・e13997)。現在は敵同士ではあるが、どうにかして救いたい。そのための手段として、洗脳がとけるまで継戦するつもりでいた。二つ装備したバスターライフルを構え、魔力の奔流を槍のヴァルキュリアへと放つ。まずは槍のヴァルキュリアから撃破することを仲間内で決めていた。そして攻撃を続けるのもシャイターンが倒されるまで、と。
 その間の戦線維持をつとめるのは、メディックの春花・春撫(優秀な破壊者・e09155)。縛霊手の祭壇から霊力を帯びた紙兵を前衛へと散布し、ヴァルキュリアたちの攻撃による状態異常を防ごうとする。
 この戦いの主軸は、防戦だ。耐える戦いは初めてであるという池・千里子(総州十角流・e08609)は、妙な感覚を覚えながらも旋刃脚を槍のヴァルキュリアへ見舞う。
(「――これは、互いに望む戦いではない」)
 受けた痛み、その苦しみはヴァルキュリアとて同じはず。戦闘開始時に受けた傷を一瞥する。膝から流れる血は、彼女らが流す血の涙と同じ。彼女らと同じ「戦士」として、千里子は覚悟を決めていたのだ。
「コッコたちはおーじさまを助けにきたな!」
 今、この状態で思いが通じるのかは不明だ。それでも言わずにはいられないエシャメル・コッコ(ミリア・e16693)がひとり、翼で浮遊しながら声を張り上げる。そしてエスケープマインを起爆させると、続くミミックのはこっこも槍のヴァルキュリアへと噛みつく。まだ何の変化も見えないヴァルキュリアに、コッコは辛そうに口をつぐむ。
 そんな中、特に戦いづらそうにしているのはホワイト・ダイヤモンド(面倒臭がりなナイフ持ち・e02709)だ。体内のグラビティ・チェインを武器に乗せて叩きつけるも、すんでのところで回避される。普段と勝手の違う戦いに、どうもうまくいかないようだった。無言で不満そうな顔になり、不機嫌さを隠さない。
「私たちのためにも貴方たちのためにも、ここで止まった方が良いですよ」
 玉穂は両手の斬霊刀から衝撃波を放ち、制するように言う。無論、返答はない。自らの意思など微塵も感じられないヴァルキュリアの様子に、繰原・マリア(糸繰り人形・e21255)は非常に不本意であった。だが、シャイターン討伐までは耐えてみせる。そのために自分がすること、といえば。
「守護陣を展開、此処は持ち堪えて見せます!」
 そう、前衛の守りを固めることが肝要となる。続けてレンナ・インヴェルノ(アリオーソ・e14044)も、マリアにならって紙兵を前衛へと散布する。風圧で、チョコレート色の髪がふわりと揺れた。
 サーヴァントたちも黙ってはいない。各々が主から指示を受け、適切な攻撃を見舞っていく。ミミックのムクロはエクトプラズムで武器を生成し、ビハインドのレノは街中の看板や標識を飛ばし、ダメージを重ねる。
 ヴァルキュリアの頬を伝う涙が、ぽたりと歩道に落ちる。それはほんの僅かな飛沫を飛ばして、じわりと紅い染みになった。

●交わる刃
 無表情のヴァルキュリアたちは、戦闘を続行する。ふたご座の力を宿した剣が冷たく光ると、剣のヴァルキュリアが放った重い斬撃がホワイトに直撃した。が、色白の少女はまるで怯む様子を見せない。痛みを感じていないかのような素振りを見せてはいるが、その腕からは確かに血が流れていた。
 続いて、弓のヴァルキュリアが槍のヴァルキュリアを大きく癒やす。加えて与えるは、呪的防御を破る力。槍のヴァルキュリアは武器を構え直し、光を宿した強烈な一撃で天子を穿つ。確かな痛みはあれど、回復をする仲間がいるから問題はない。槍のヴァルキュリアへ大量のミサイルを撃ち込みながら、天子は刹那、疑問を抱く。これも感情なのか、と。
 受けたダメージをそのままにしておくわけにはいかない。ひときわ大きなダメージを受けているホワイトを、春撫が癒やす。状態異常をどうにかするよりも、仲間が倒れないことに重点を置いている。
 その合間に千里子が踏み出し、指天殺で気脈を絶つ。彼女の横から飛び出すのは、癒えたばかりのホワイト。回復しきれなかった傷をものともせず、ヴァルキュリアへと肉薄する。愚直なまでに接近して見舞うは、急所を狙った電光石火の蹴り。槍のヴァルキュリアが一瞬よろめいたように見えた。だが、弓のヴァルキュリアに回復されているのを差し引いても、まだ半分もダメージを重ねられていないように見受けられる。
「今みんながおーじさまを助けようとシャイターンを止めにいってるな! みんなはきっと勝つな、おまえらを操ってるのもすぐに止めるな!」
 「幻影のリコレクション」を歌い上げたコッコは、やはり思いを伝えずにはいられなかった。続くはこっこも愚者の黄金でヴァルキュリアを惑わす。
 シャイターンへと向かった仲間がいる。ならばそれを信じて、ヴァルキュリアの洗脳が解けるまで耐えるのみ。とはいえ、ヴァルキュリアにも耐えてもらう必要がある。全員が手加減攻撃をする用意もあるが、今はまだその時ではなさそうだ。
「あまり痛くしたくはありませんが……仕方ありません」
 玉穂が精神を集中させ、槍のヴァルキュリアを爆発に巻き込む。巻き起こる爆風でヴァルキュリアの姿が一瞬不明瞭になった。再び現れた彼女は、当然とばかりに健在だ。まだ倒れる気配もない。では、とマリアが構える。
「一ツ日之熾/二ツ仏舎利/三ツ御霊屋/四ツ夜之月/五ツいつ来て/六ツに群れて/七ツに啼いて/音無く忍ぶは七ツ影!」
 行使したのは螺旋忍法『月下七影』。螺旋の力を宿した影を分け与えるものだ。前衛へ伝播させるは螺旋の力、これで状態異常に耐えることができる。主の術をよく知るムクロは戦列から飛び出し、遠慮なく槍のヴァルキュリアに噛みつく。
「少しは時間稼ぎができたらいいな」
 無表情を続けているレンナではあるが、少しでも楽に戦闘を進行できないかと思案を続けていた。結果、選択したのは——行動を阻害するための攻撃。縛霊手の掌から巨大な光弾を発射し、槍のヴァルキュリアへと放つ。主の意図を察してか、レノは心霊現象の金縛りで行動の阻害を狙う。
 三人のヴァルキュリアは、未だ強固な洗脳下にある。その上、まだ1体も戦闘不能状態となってはいない。
 だが、ディフェンダーを担っているケルベロスの数は十分。これならばまだ、余裕をもって耐えられる。

●続く応戦
 剣のヴァルキュリアは、再びふたご座のオーラを前衛へと放つ。槍のヴァルキュリアが自らを癒やすと、弓のヴァルキュリアがさらに槍のヴァルキュリアを癒やす。
 多少なりともヴァルキュリアの体力は削れているはずだが、メディックを担う弓のヴァルキュリアの回復が厄介だ。加えて、こちらにもダメージが蓄積されている。
 天子がおもてなしの心を最大限に放出すると、戦場に光が発生した。その光によって、前衛が癒やされてゆく。
「これがメイドの力です」
 とはいえ、もう少し回復した方が不安も少ない。天子は春撫を見てうなずく。そう、ケルベロス側のメディックの出番だ。
「おまかせください! 前衛のみなさんに、はるはるパワー注入っ!」
 両手を突き出し、おまじないをかける。癒やしだけでなくやる気も得られる、春撫特有のグラビティだ。
 こちらの回復は十分、相手は手加減攻撃にシフトする程には体力は削れていない。今なら、少しばかり大きな攻撃を仕掛けても問題ないだろう。
「……覚悟を」
 千里子は槍のヴァルキュリアの間合い深くへと、凄まじい速度で踏み込む。そのままの勢いで拳の一点へと膂力を集中し——炸裂させた。総州十角流『千天咆』で、槍のヴァルキュリアは軽く吹き飛ばされる。その隙にコッコが「コッコ式世界平和爆弾」を放ち、はこっこは武装を具現化して一撃を見舞おうとするが、体勢を立て直したヴァルキュリアにひらりと回避される。
「コッコたちはおまえらを助けるつもりな! 勝手に身体が動くのが止まったら話し合うな!」
 当たらなかったことにどこか安堵を覚え、コッコはヴァルキュリアへと呼びかける。まだ何の反応も見えないが、いつか言葉を交わすことができる時を信じて。ヴァルキュリアを真っ直ぐに見つめるコッコは、拳を握りしめた。
 そこへ訪れるのは、季節外れの桜吹雪。手加減攻撃に至るまでは、まだ時間がかかりそうだ。ならば多少大きな威力のグラビティを喰らわせても問題はない。
「この剣筋、見えますか?」
 幻惑をもたらす桜の花弁を伴い、玉穂はヴァルキュリアを斬り伏せる。
 マリアが再びサークリットチェインを前衛へ展開したところで、ムクロが武装を具現化し、ヴァルキュリアへと挑む。レンナも、様子をうかがいながら畳みかける。ケルベロスチェインを伸ばして締め上げたところで、レノが飛ばしたバス停や街頭を直撃させていく。見事なコンビネーションだ。

 ——応戦は続く。あと、どれほど守りと攻めを繰り返せばいいのだろう。ケルベロスたちはヴァルキュリアの攻撃に耐えながら、シャイターンが撃破されるのを待っていた。
 異変が起きたのは、戦闘開始から9分を経過したその時だった。
 躍り出た槍のヴァルキュリアがホワイトを槍で穿った直後、弓のヴァルキュリアがはっとしたような表情になる。
「いけません! 我々はこれ以上戦うべきではないのです!」
 そう叫び、槍のヴァルキュリアをとがめるよう矢を放つ。二人をちらりと見た剣のヴァルキュリアは、無言でケルベロスの前衛を癒やした。
「様子がおかしいですね……もしや、シャイターンが撃破されたのでしょうか?」
 マリアが口元に手を当て、ヴァルキュリアたちを観察する。もしそうならば、今が説得の好機だ。

●解放の時
 ケルベロスたちは武器を収め、ヴァルキュリアたちに対峙する。
「落ちついて聞いて頂けますか。私たちには、これ以上戦う意思はありません」
 初めの一声は天子。胸に手を置き、強い意志を込めて告げる。
「悪いシャイターンはザイフリートを騙そうとしてるな! コッコたちはそれを防ぎにきたな!」
「突然のことで混乱している様ですが、よく聞いてください。この事件は王子イグニスの部下、シャイターン軍がザイフリートを処分するためにあなた達を利用したことが始まりです。そして、ザイフリートは生きています」
「だが、彼はいまシャイターンの罠にかかり危機に瀕している。だから、我々の仲間が彼の救援に向かっているところだ」
 コッコの端的な説明をフォローするように、マリアと千里子が言葉を尽くす。その内容に、ヴァルキュリアたちは視線を交わし合う。ケルベロスたちの言うことを計りかねているようにも取れる。
「僕達の仲間は強いから、絶対にザイフリートを救い出してみせるよ」
 レンナは静かにうなずき、ヴァルキュリアたちひとりひとりの顔をそっと見る。頬を流れていた涙は既に乾き、赤い跡になっていた。
「あなた達はシャイターンに操られていた。このまま戦うのは、シャイターンの思うつぼです」
「我々にはこれ以上、戦いを続ける意思はない。この戦は我々にとってもお前たちにとっても本意ではないはずだ。……ここは矛を収めてくれ。お前たちが力を振るうべき相手は、我々ではなく主へ刃を向ける者共ではないのか?」
 春撫と千里子が、ヴァルキュリアへと言葉を重ねる。もとよりそのつもりでの戦いだった。ここまできて争いになるのだけは避けたい。でなければ、不本意ながらも彼女たちの息の根を止めることになる。
「チリコの言うとおりな! コッコたちはおまえらをやっつけるつもりはないな! 戦うのをやめて話し合うな!」
 何度もうなずき、一段と大きな声でコッコが呼びかける。そんな彼女とは対照的に、ホワイトは無言だ。
(「こういうのって、私みたいに余計なこと言う人間は口挟まない方が成功しやすいし」)
 そう思いながらも眉間にしわを寄せ、不機嫌な顔でいる。とはいえ、普段からこのような表情なのだが。
「彼の為にも、今此処で戦うのはやめてくれないかな。理由がなければ、戦う必要はない。そうじゃない?」
 いつもは無表情のレンナも、さすがに少し困った顔をしている。その横から意を決したように進み出るのは、玉穂。
「したくないことはするべきではありません、それはあなた方のやりたいことでしょうか?」
 戦闘時に両手に構えていた斬霊刀は、しっかりと鞘に収めている。ヴァルキュリアのひとりが、玉穂をじっと見つめていた。
「流石に『協力しろ』なんて言いません。けど。ここは、引いてくれませんか? なるべくなら私たちもこれ以上はやりたくはありません……」
 数秒ののち、ひとりのヴァルキュリアがごく小さくうなずく。次いで飛び立ち、残る二人を促す。すると二人もうなずき、連れ立って飛び去って行く。あまりに静かなその動作からは、もはや敵意は感じられなかった。
「何とか、なったんでしょうか……」
 玉穂が大きく息を吐く。ヴァルキュリアたちは戻ってくる様子もない。やがて彼女たちの姿は次第に遠くなり、ケルベロスたちの視界から消え失せた。
「皆様お疲れ様でした。無益な殺生をせずに済んで良かったと私は思います」
 安堵とともに、マリアが丁寧に頭を下げる。
 この戦場での戦闘は終わった。3体のヴァルキュリアたちを誰ひとり殺めることなく、増援もなく。そして、この場にいる全員が無事だ。比較的容易に戦闘を終えることができたのは、シャイターンへ向かったチームと、増援を引き受けてくれたチームのおかげだ。
「……仲間がうまくやってくれたんだろうね。感謝しなきゃ」
 ヴァルキュリアが飛び去った方向を見上げて、レンナが静かに呟いた。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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