ケルベロスハロウィン~収穫祭の夜は未来が見える?

作者:そうすけ


 アダム・カドモンとの最終決戦、ケルベロス・ウォーに勝利して早や4か月……。
 ゼノ・モルス(サキュバスのヘリオライダー・en0206)は、愛機とともに久しぶりにヘリポートに立った。
「よく来てくれたね。じゃあさっそく行こうか」
 一足先にヘリオンに乗り込んでいたセルベリア・ブランシュ(シャドウエルフの鎧装騎兵・en0017)が、中から早く早くと手招きする。
 これから外宇宙へ旅立つケルベロス、そして降伏したデウスエクスのうち『地球を愛せず定命化できなかった者』の船となるマキナクロスのお披露目を兼ね、地球各地で行われるハロウィンのお祭りに行くのだ。
「ここからマキナクロスまでと、現地に着いてからのお祭り会場への移動はボクのヘリオンを使うよ。あ、そうだ」
 ヘリオンのドアに手をかけながらゼノがいう。
「縁のあるデウスエクスがいたら、一緒にお祭りに参加するといいよ。たぶん、マキナクロスの中にいるんじゃないかな。移動中に探して声をかけてみたら、きっと喜んでくれると思うよ」
 喜ぶかどうかは声をかけた相手にもよるだろうが、地球の文化や人々と接してもらうことによって、地球への敵愾心が少しでも薄れてくれるのではないだろうか。
 彼らが地球人への理解を深める事で、定命化までは至らずとも将来的にも地球を侵略しようなどと思う確率が減れば、今回の祭りは大成功だ。
 浮かれ気分のケルベロスたちの顔をジロリと睨んで、セルベリアは膝に置いたカボチャのぬいぐるみをぽんっと叩いた。
「いっておくが、定命を拒んだデウスエクスと戦ったりケンカしたりは無しだぞ。復讐とか絶対にダメだ。4か月前にもう決着はついたのだからな」
「代わりに言ってくれてありがとう、セルベリア。もちろん、そんな人はいないと思うけど、念のためにね」とゼノ。
「うむ。念のために、だ。実をいうと私にも近況が気になっているデウスエクスがいる。アイスが好きな明王とか、ケルベロスへの愛情を拗らせたドリームイーターとか。会えたならいろいろ話が、例えば――」
「ストップ、セルベリア。まあ、他にもこの4か月のうちに就職しただとか、結婚しただとか、積もる話もあるよね。それはお祭りを楽しみながらゆっくり話をしてほしい」
 ケルベロスの中には地球を離れ、別の惑星に定住する者がいるだろう。これが地球最後の思い出作りだ。
 だから……。
「めいいっぱい楽しもう!」
 ゼノは破顔すると、ヘリオンのドアを閉めた。


 アイルランドの先住民、季節の移ろいを大切にするケルト人が行っていた秋の収穫祭「サウェン」がハロウィンの起源と言われている。
 ハロウィンは真っ暗な時期が続く冬に備えて、すべての果物や太陽の恵みを収穫し感謝する祭りだ。
 パイロット席で操縦桿を握りながら、ゼノが祭りの概要をケルベロスたちに説明する。
「アイルランドのハロウィンでやれることは5つ。

 天井から吊るされた林檎を口で取る。
 水を張った樽に林檎を浮かべて口で取る。
 仮装したまま、巨大な焚火を踊りながら回る。
 紐状の林檎の皮を肩越しに投げて、結婚相手を占う。
 そのほか、祭りに関すること。

 4番目のはちょっと説明がいるかな?
 この世とあの世が繋がるハロウィンの夜は「異世界への扉が開く夜」なんだって。異世界への扉が開くと未来が見えらしいよ。そこから派生した占いなんだ。
 紐のように剥いたリンゴの皮を自分の左肩越しに投げて、地面に落ちた皮がイニシャルに見えるとそれが未来の結婚相手のイニシャル……信じるも信じないも勝手だけどね」
 最後に、あれこれ欲張るよりもどれか一つに絞って参加した方がいい、とゼノが付け加える。
 なにせ一日で世界各地を飛び回るのだ。
 マキナクロスは地球の軌道上を高速で移動できるし、もっと急ぐ時は魔空回廊も使える。だから複数の会場を梯子して、パレードに参加する事も問題なく可能ではあるのだが……。
「そうはいっても時間は有限だからね」
 どれに参加しても全員、最後にアップルパイかパンプキンパイが振舞われる。久しぶりに会うものも多いと思うので、ここで旧交を温め合うのも良いだろう。
「パイをもらう時の合言葉は、もちろん『Trick or Treat!』だよ」


■リプレイ


 大きな繭を腕に抱いたリリエッタ・スノウ(未来へ踏み出す小さな一歩・e63102)は、ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)と手を握りあって大地に降り立った。
 まず、ドアの前に立ってケルベロスたちを送り出すセルベリア・ブランシュを祝う。
「セルベリア、お誕生日おめでとう」
「セルベリア様、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。二人とも繭の中のメカナノナノと祭りを楽しんでくれ」
 リリエッタの腕の中で大きな繭が、コトコトと小さな音をたてて震えた。
「んっ、ハロウィンを楽しむよ。メカナノナノもね」
 指で繭をつんつんする。
「あ、リリちゃん。見ましたか? 繭にうっすらとハートマークが浮かびましたよ」
「え、ほんとう? リリも見たかったよう」
 ルーシィドは大好きな親友の目を見つめて微笑んだ。
 休眠状態のメカナノナノだが、もしかしたら祭りの最中に自己修復を終えて繭から出てきてくれるかもしれない。
「お祭りでピュアなハートをしっかり勉強して、また見せてくれますよ」
 二人はストーンサークルを模したお祭りに入った。真ん中でキャンプファイヤーが赤々と燃えている。
 リンゴ採りの場所は、ストーンサークルの東の端だ。
「リリちゃん、足元に気をつけて。テレビカメラのケーブルがあります」
「ありがとう、ルー。でも、ここのハロウィンはちょっと変わってるね?」
 吊るされたリンゴを口で取る遊びとか、まるで運動会のパン食い競争みたいだ。
 一般の参加と一緒にテレビカメラに向かって、全世界にがんばるぞボーズをとった。
 ホイッスルが鳴らされる。
「む、むぅ。でも、パン食い競争より難しいかも。リンゴの表面がつるつるして噛みつきにくいね」
「作戦を変更しましょう」
 後ろからルーシィドがリリエッタの腰に腕を回して持ち上げる。
「これなら楽勝だよ」
 だが、さすがにルーシィド一人で、リリエッタを抱きあげ続けるのは大変だった。
「ああん、ずっと持ち上げるにはパワーが足りないから、急いで食べちゃってくださいまし!」
「頑張って、ルー」
 シャクリとリンゴを噛んだ音にメカナノナノが反応して、繭にハートマークが灯った。


 イリアン・パイプスとバイオリンの演奏が、陽気な雰囲気をさらに盛り上げる。
 エプロンを受け取った斉賀・京司(不出来な子供・e02252)は、紐をうなじで結ぶ。
「魔術師としてはこの試練は受けておきたいからな」
 まさか、元祖ハロウィンと言われるケルト式をやれるとは思わなかった。
 翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525)が京司の後ろに回って、腰の紐を結ぶ。
「またとない機会ですし、楽しみましょう」
 箱竜の『シャティレ』も「きゅ」と鳴いて同意する。
「ふふ、京司さん。魔術師の血が騒いでいるようですね。私も元祖ハロウィン、楽しみです」
 呉羽・楔(黎明の薄紅葵・e34709)がエプロンをつける二人の様子を、スマートフォンで写す。
「さあ、髪を結ってあげよう。どっちか選んでくれ」
 そう言ってかんざしを二本取りだした。
「いつも素敵にコーディネートしてくださるので、今回もアレンジはお任せします」
 ちょっぴりはにかんだあと、風音はくるりと回って背を向けた。
「私は自分で頑張って結います」
「あとで整えてあげよう」
「お願いします」
「風音は?」
 ちょっぴりはにかんだあと、風音はくるりと回って背を向けた。
 京司が慣れた手つきで髪を結いあげていく。
「これでよし。楔、お待たせ」
 楔の髪をちょいちょいと整え、京司が自分の髪を藍染の紐で束ねたところで、樽に小ぶりのリンゴが入れられた。
 みんなで写真に納まった後、テレビカメラに向かってポーズをとって樽を囲む。
「林檎が動くから難しいですね……」
「ああ、思った以上に難しいな」
 三人は果敢にリンゴの窪みから出ている果梗(かこう)をくわえようと顔を近づけるが、水にぷかぷか浮くリンゴは少し力が加わっただけで横へ流れる。齧りつこうとすればなおさらだ。水ばかり飲んでしまう。
「林檎は美味しいが……本当に大変な試練だ」
 楔が顔をあげる。
「こういうのは気合だと思っていたんですが、難しいです。コツさえ掴めればいけるはずなのですが……」
 息を整えると、またリンゴに顔を近づけた。
「色で見分けが……歯でガッと……そうだ! 今の私はリス、リスです! リスになりきるのです!」
 取り損ねて水が顔にかかるたび、周りで笑い声と声援があがる。
 箱竜が、「ぴゃ」と鳴いて樽を覗いた。
「……あら、シャティレも一緒にやる?」
「シャティレは足が付かないから落ちそうだね」
 京司たちが箱竜の足を持つ。
 楔はリンゴと格闘する姿にスマートフォンを向ける。
 フラッシュが焚かれ、岩の壁に箱竜の影が大きく映った。
 それはまるで――。
 夏の夜に気高く散ったドラゴンそっくりだ。
(「ミスティルティオ、シャティレは元気ですよ」)
 風音は星の散る空を見ながら、優しくシャティレの頭を撫でた。


 ゼノ・モルスは、エリオット・アガートラム(若枝の騎士・e22850)と神無月・佐祐理(機械鎧の半身・e35450)の二人を呼んだ。
「好きなリンゴの皮を選んでいいよ。選んだらここに立って、目を閉じて背の後ろへ皮を投げてね」
 10月31日は、古代ケルトでは一年の終わりにあたる。日本のお盆のようなものだ。この世とあの世が繋がるこの日は、古くから未来が見えると言われている。
「結婚相手……ですか? 僕にはまだ早いと思っていたけれど」
 最後の戦いが終わった後、エリオットはイギリスに戻って勉学に励んだ。
 デウスエクスとの戦いが終わってもなお、地球にはさまざまな課題が山積みで残されている。勉強はそれらの課題を少しでも無くすためだ。正直、いまはまだ結婚は疎か恋愛もしている暇がない。
(「でも、いつかは将来のことも考えないといけないかもしれません」)
 お遊びだと割り切ったうえで、何か将来のヒントになればと占うことにした。
 見えるのは結婚相手とは限らない。リンゴの皮が指示すのは、問題解決のためのプロジェクトを共に立ち上げるパートナーかもしれないし……。
 自然とリンゴの皮を選ぶ目が真剣な光を帯びる。
「うーん、どれも同じに見えますね」
 悩むエリオットの横で、佐祐理がひょいとリンゴの皮をつまみ上げた。
「私はこれにする。くるくるっと巻いているところがト音記号っぽいし」
 佐祐理は趣味のバンド活動が高じすぎて、ケルベロスとしての活動を中断。楽器店に勤務しながら時々ライブをやって生活をエンジョイしている。
 叶うなら小さなハコではなく、武道館でライブしたい。作った曲を配信して、ブレイクさせたい。
 それには有能なマネージャー兼プロデューサーが必要だ。それが将来の夫であっても一向に構わない。むしろウエルカム?
 しみじみ、平和な世の中になったものだ。
 ふと、佐祐理はデウスエクスと化したもう一人の自分、サリーと対峙していたかもしれないな、と考えた。
「ほんの少しの切欠のあるなし、だったのかもですね。さて、この先の事は正直解りませんが、一つ運試ししてみますか!」
 佐祐理はまだ悩んでいるエリオットを尻目に、ゼノに指定された場所に立った。
 クラッカーの音がした。
 ちらりと、仲よく談笑するセルベリアと淡島・死狼(シニガミヘッズ・e16447)を見る。
「お誕生日おめでとう! ……って言うのはトリックオアトリートの後がよかったかな?」
「いや、嬉しいぞ」
 死狼がセルベリアの誕生日を祝っているようだ。
(「……あんな風に優しく笑いかけてくれる、カッコイイ人がいいな」)
 もちろん、音楽センスが自分と同じであることが最低条件。これだけは譲れないから、と群青色の夜空に浮かんだ大きな満月に願をかける。
 ちょっぴり地球に近くなった月の明るさが増したような気がした。
「さて、どんな結果が出るか……」
「あ、待って。僕も」
 ようやくリンゴの皮を選んだエリオットが隣に立つ。
「一緒に投げようよ」
「いいわよ」
「じゃあ、『どうか未来が、輝かしいものでありますように』」
 二人は目蓋を閉じると、同時にリンゴの皮を後ろへ放り投げた。
 さて、その結果は……。

「セルベリア、見ちゃダメだよ」
 死狼はセルベリアの腕を引いた。
「どうして? 減るものでもなかろうに」
 セルベリアが唇を尖らせる。子供っぽいしぐさだが、そこがまた愛おしい。
「それより、ボクたちの番だよ」
 もし、イニシャルが彼女のものと違ったら――。
 そう思った途端、緊張した。リンゴの皮を持つ手が、微かに震える。上手く投げられるだろうか。
「じ、じゃあ一緒に。せい、の……」
 二人で同時に体を回して、落ちたリンゴの皮を見た。
「私の皮はSとA。シロー・アハシマのSとAだ!」
 無邪気に喜ぶセルベリアの横で、死狼は体を固くした。
「ん、どうしたシロー?」
 セルベリアは、なんでもない、と自分が投げたリンゴの皮を隠そうとする死狼を横へ押しやる。
「S……Aか!」
「あ、まって。よく見て! 繋がってないけどこれ、ビ、Bに見える」
「ん、B? Aでいいぞ。あっている。これで正解だ」
 いまにも泣き出しそうな顔を見て、セルベリアが嬉しそうに笑った。
「結婚したら、私はセルベリア・淡島になるんだろ?」


 ハロウィンは、古代ケルト人のサムハイン祭が起源といわれている。もとは死の神サムハインを讃えて、新しい年と冬を迎える祭りだったのだ。
 心にしみいるケルトの歌に誘われて、魔女装束に身を包んだモニ・ブランデッド(おばあちゃんを尋ねて三千里・e47974)は、仮装した人々と一緒に、巨大な焚き火を周りながら踊る。
 今夜、死者の魂が故郷の家に帰ってくる。長らく会えなかった人にも再開できるかもしれない。
 モニはアイルランドにあるフィークルという村の出身だ。この祭りの最中、探し続けてきたおばあちゃんに会える予感がしていた。
 くるくる、くるくる。自分自身も回りながらご機嫌になって踊る。衣装に縫い付けた星の飾りが、キラキラと焚き火の灯りを弾いて煌めく。
「おばあちゃん直伝のダンスなのよ」
 モニのおばあちゃんも、ケルベロスであり魔女だった。ある作戦におとりとして参加して依頼、行方不明だ。もう三年も探し続けている。
 ――あれ?
「おばあちゃん!!?」
 踊りを見ている人々の間におばあちゃんによく似た人を見つけたモニは、あわてて踊りの輪から離れた。

 ギネスビールを一杯だけ飲んで、荒々しいアイルランドの音楽に合わせて足を踏み鳴らすと、少しだけ望郷の思いがわく。しみじみして、心がほぐれる。
 晩秋に向かう夜空の下で、製造ナンバーIndigo-248改め名をブルーロワとしたヴァルキュリアは、魔女の仮装をしたレリエル・ヒューゲット(小さな星・e08713)と飛猫の『プチ』、それに吸血鬼に扮した九条・カイム(漂泊の青い羽・e44637)とともに踊っていた。
 冬に深い青色へと変化するブルーベリーのようなブルーロワの翼の色が、春に咲く可愛い花の白のロングドレスによく映えている。
 ちなみに彼女がしているのは、シーツのオバケの仮装だ。
「はい、これ持って」
 レリエルは藍にカブのランタンを手渡した。
「アイルランドのハロウィンと言えば、『カボチャのランタンは、元々は蕪だった』、という話が有名なのよ。だから蕪のランタンを作ってもらったの。せっかく本場の祭りに参加しているんだし、小道具にもこだわらないとね」
「え、ええ……。そうですね」
「そうだ、レリエル。アイルランドのハロウィンでは、吸血鬼で有名な小説家の功績を称える祭りもあるらしいよ。という訳で俺は吸血鬼っぽい仮装で参加している。ブルーロワ、ボクは吸血鬼に見えているかい?」
 カイムなんと返事をしていいかわからず戸惑っているブルーロワに、『プチ』が甘えた声を出しながら頬すりをした。
「……くすぐったい……です。あ、プチさん魔女の帽子が落ちてしまいましたよ」
「ミャウ」
 カイムは『プチ』戯れるブルーロワ様子を、目を細めて眺める。
 もしかしたら、カイムとブルーロワは血縁関係が有るかも……という噂があるが、真相はいまだに明らかにされていない。
 だが、いまとなってはどうでもいい、とカイムは思う。血のつながりがあろうとなかろうと、ブルーロワは友人でも、妹でもある大切な人になっていた。
 婚約者である愛するレリエルとともに。
 踊りの輪に入っていく三人の向こうで、リンゴの皮が高く夜空に投げられる。しばらくすると、きゃー、と歓声があがった。
(「占いか。将来の結婚相手……は既に決まってるしなぁ」)
 でも吊るされた林檎や水を張った樽に浮かぶリンゴをとるやつは面白そうだ。あちらからは楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
 あとでみんなを誘ってやってみよう。


「Trick or treat!」
 リリエッタは口元のリンゴの汁をぬぐいながらパンプキンパイを受け取った。ルーシィドも同じものを受け取る。
「メカナノちゃんはどっちがいいですか?」
 NANO……と、小さく悩む声が聞こえて、リリエッタが跳びあがって喜ぶ。
「Trick or Treat、だね」
 京司と風音もパンプキンのほうを選んだ。
「シャティレもどうぞ。美味しいですよ」
 楔はあえて二人と違うもの、アップルパイを選んだ。
「私のアップルパイも分けてあげる」
 『シャティレ』はお腹いっぱい、幸せそうだ。
「セルベリアはどっちがいい?」
「シローと違うものにして、半分こする」
 逆プロポーズを受けたばかりの死狼は、幸せに口元を弛める。
 エリオットは熟慮の末にパンプキンを選んだ。
 一方、佐祐理は即決でアップルパイに手を伸ばした。
 二人占いの結果は……ナイショ。
 レリエルとカイム、ブルーロワはアップルパイを選んだ。
 パイを分けてもらう箱竜羨ましくて、『プチ』が三人にパイをおねだりする。
「ちょっとだけよ」
「ミャウ♪」
 熱い紅茶が入った紙カップを片手に、みんなで座ってパイを食べた。
 モニは一人、みんなから離れて木の根元に座り込んでいた。
 お菓子を入れたカゴを持って、ゼノが声をかけにいく。
「どうしたの、元気ないね? チョコレートがあるよ」
 唇をふるふると震わせて、モニが腕を伸ばす。
「良い魔女だから悪戯はしないのよ。お菓子は歓迎なのよ。チョコレートも飴も嬉しいのよ。でも……」
「でも?」
「一番好きなのは、おばあちゃんが作るトフィーなのよ」
 涙で顔をグシュグシュにしながら、受け取ったチョコレートの銀紙をむしる。
「そっか。じゃあ、魔女さんにトフィーを出してもらおう」
「え?」
 涙で霞んだ目に、懐かしい笑顔が飛び込んできた。
「Trick or treat 大きくなったわね」

 それはハロウィンの奇跡か、それとも――。

作者:そうすけ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年10月31日
難度:易しい
参加:11人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 2
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。