八ツ音の誕生日~しちりん

作者:つじ

●ここは空が近い
 日が傾いていくにつれ、セミの声は徐々に疎らになっていき、日中に感じた焼けつくような暑さも、少しばかり収まってきたように感じる。周囲に比べて一際背の高いビルの、その屋上に立てば、遮るもののない風が、火照った肌を冷ましていく感覚を味わえるだろう。
 オレンジ色に輝く夕陽。薄灰色の雲の下には、見慣れた街の景色があった。
 事件に当たって出動する際に、何度も見下ろしたその光景。ケルベロス達を乗せて飛び立つヘリオンの、発着場の一つがこの場所である。

 戦いが終わりを迎えたことと、万能戦艦の存在もあって、今では使われる機会もめっきり減った此処に、レプリカントが一人現れる。スペースの中央に陣取った彼は、一度夕空を振り仰いで、伸びを打った。
 そうして眠そうな顔をしたまま、持ってきた折り畳み椅子に腰かけ、七輪の炭に火を入れ始める。

 夕映えに、白くたなびく煙が一筋。
 
●七輪
 ささやかながら、黒柄・八ツ音(ハートビート・en0241) からパーティ開催の通知が届く。
「平和の戻ったこの時期に、誕生日を祝えることを嬉しく思う」
 そんな文面で切り出されたお知らせには、ケルベロスには皆お馴染みヘリポートの一角と、網の乗った七輪の写真が添えられていた。
 食事の場として相応しいかは疑問が残るが、この場所だからこそ、思い出すような話もあるのではないか。それでなくても普通にバーベキューや焼き鳥をしても良いし、焼き魚をつまみに一杯やっても良いだろう。

 無口な主催者らしい、簡素な通知の最後には、「ご参加お待ちしています」という、やたらポップな文字列が並んでいた。


■リプレイ

●良き思い出を、ここに
 ヘリオンの発着場、ヘリポート。吹く風が、開けた空が、ケルベロス達に思い起こさせる。戦いに挑む緊張と、覚悟を。
 けれど、戦いは終わったのだ。この場所にも別の、もっと楽しい思い出を置いたって良いはず。
 だからこそ。
「ヘリポートでパーティー、いいね!」
 ティユの言葉に、八ツ音は主旨を理解してくれて嬉しい、と頷いた。
「それじゃ、皆一緒に楽しもう!」
「カンパーイ!」
 ジェミ・フロートの音頭に合わせて、一同は杯を掲げた。

 というわけで、彼女等が選んだのは夏らしくバーベキューだった。肉を色々、それから野菜。ティユの持参したラム肉の串焼きも、焼き係を買って出たジェミ・フロートが次々と焼いていく。
 夏の気温と相まって、周囲の熱気は中々のものだったが、それもまた味付けの内だ。何よりこれらはビールに合う。
 乾杯、とグラスを合わせて、ティユはスパイスを効かせたラムチョップを齧る。風味に慣れない人にはタレでご提供、それから空いてる七輪で焼きトウモロコシでも作ろうか。
 焼いたそれ等をせっせと働く友人達にも配って、共に舌鼓を。友人と過ごす、戦争後ともまた違う感覚を、ジェミ・フロートも笑みを浮かべて楽しんだ。

 食べるのも飲むのも止まらない。きっとこれは、当初の予定通り良い思い出になるだろう。
「またこんな風に遊びに行きましょう!」
 ジェミ・フロートの言葉に頷いて、ティユは軽く杯を掲げた。
 良い日に、そしてヘリポートに、乾杯を。

●熟成
 ガラス瓶の蓋を開けると、芳醇な香りがふわりと広がる。梅酒を二人で漬けてから、気付けば半年以上が経っている。
「開栓するときもご一緒出来たらと思っていたので、その……」
 嬉しいです、と控えめに伝えるバラフィールに微笑みかけて、豊は持参したクーラーボックスの蓋を開けた。
「梅酒用に水と氷、ソーダを持ってきたよ。この陽気だと冷たい方がいいだろうと思ってね」
 氷の上から各々の梅酒を注いで、グラスを合わせる。あの日まで積み重ねた時間、そしてまた時を経て、熟成されたそれを思う。香り、味、そして二人の間の関係と。
 少しずつ味わってから、二人は豊が火を入れた七輪を活用し始める。二人の持ち込んだ食材は様々、トウモロコシやアボカドといった野菜に、アルミホイルで包んだじゃがバター。スライスした茄子の上で、チーズがとろけていく様は、食欲をそそる。
 そうこうする内にグラスが空いて、バラフィールは豊の手元へと視線を送った。
「今度はそちらをいただいても?」
「ああ、勿論だよ」
 ホワイトラムの次はブランデーを。また違った風味のそれを味わって。
「これからもこんな風に、ゆっくり過ごせるといいのですけれど……」
 バラフィールの呟きに、そうあればいいと、豊も静かに頷いた。

●未だ慣れぬ日々
 餅や椎茸と一緒に並んだ様々な……あまり見分けのつかない魚を眺めて、ティアンがふむと鼻を鳴らす。
「それで、レスターが釣ったのは?」
 無言で彼が示したそこには、小さなアジが二匹。
「魚拓とる?」
「お前の頬っぺたにでも押してみるか」
 当初の意気込みに対する釣果の具合に、誤魔化すような言葉が出た。歴戦の勇士でも、こればかりは仕方がないもの。
「そういえば、レスター、禁酒は引き続き?」
「……お前と一緒なら、飲む事にするか」
 少し考えた後のレスターの言葉に、ティアンが頷く。
「ティアン火の番してるから、飲み物貰ってきてくれると助かる」
「焦がすなよ」
 同じものが飲みたいという彼女に合わせて飲み物を選び、振り返る。ティアンも丁度、同じ空を見ていた。
 夕陽をあかりに、薄灰の雲。そこに上っていく一筋の煙と、漂う香り。
「ほら」
 冷えたビールの瓶で頬に触れてやると、驚いたティアンが体を跳ねさせる。振り向いた彼女は、仕方ないなというように微笑んだ。
「おかえり」
 続く言葉に、レスターの口元も自然と綻ぶ。
 目的を果たしても、こうして静かに日々は続く。慣れぬそれを日常と呼べる時は、そう遠くはないのかもしれない。

●家族
 七輪のそばに、翔子の持参した袋が置かれる。重そうなその中身は勿論ビール缶の束だ。
「用意が良いな」
「そりゃ勿論」
 俺にもくれ、という俊輝に一本手渡して、翔子は自分の分も蓋を開ける。
「けどシア、アンタはダメだよ」
「分かっております。私はお茶を頂きますわ」
 すまし顔で返すシアに、酔っぱらった彼女の様子を見たことがない……少なくとも記憶にない俊輝が首を傾げた。翔子が警戒するくらいなのだから、よほどなのだろうが。
「俊さんは何をもっていらしたの?」
 今の朗らかな笑顔からは、予想もつかない。
「野菜に肉と魚介、それでアタシが餅と厚揚げか。イイカンジにバラけたね」
 何はともあれ、乾杯したところで三人は早速食材を焼きにかかった。が。
「まて、まて翔子。そのつくねは裏返すには未だ早い!」
 ん、と訝しむ様に翔子の箸が止まる。相手の声が思ったより固い、というか焼き加減を見る目がマジなやつだ。
「俊輝……?」
「まあまあ、頼もしいじゃありませんか」
 鍋奉行、いや七輪奉行か。てきぱきとその場を仕切り出した彼の様子を眺めるしかない翔子の横で、シアの垂らしたお醤油が芳しい湯気を上げた。
「……美雨は真似しなくて良いからね」
「シロ、そのエビは――いや、殻ごとか。そうか」

「あ! 白鳥沢さん、そろそろ焼き芋が仕上がるの。お一つ如何?」
「黒柄サンも、餅が今良い感じに焼けてるんだけどどう?」
 通りがかった二人が「いえーい、いただきまーす」などと盛り上がっている内に、俊輝はキララを見つけて。
「先日は翔子とシアがフランスでお世話になった様で――」
 差し出された端末を覗き込んで、キララはにんまりと笑みを浮かべた。
「――ふふ、よく撮れているね。エイティーン翔子お嬢様」
「何か言ったかい?」
「いやいや」
「なんでもないですよ」

 ビールの缶を空けて一息。翔子と俊輝は改めて、思い出深いこの場を眺めた。
「幾度も戦いに飛び立ったこの場所で、こんな穏やかな時間を得るとはね」
「ああ、願わくば何時までも――」
「お二人とも、早く食べないとなくなりますわよー」
 はいはい、と笑う二人を、シアもまた笑顔で迎える。特別な会話なんてなくたって構わない。それが『日常』であり、何よりのご馳走なのだから。

●食べる人、食べさせる人
 ギフトが焼く係、そしてロコが食べる係。よく焼けた串から順に、ロコの前へと積み上げられる。
「うまい?」
「いい匂い。美味しい」
 焼きたてのそれに舌鼓を打って、ロコが頷く。
「何より、一緒に食べる君がいる」
 ああ、それは流石に照れくさい。誤魔化すようにビールを呷って、ギフトは次に焼けた串を手渡した。
「ほら野菜串もできたぜ」
「……」
「? どうした?」
 好みに任せてこっそり用意したけど、ギフトが焼く係なら隠す意味なかったね――なんて、言えるわけがない。
 そんな一時の沈黙の間に、ギフトは視線を巡らせる。敵がほぼいなくなった今、このヘリポートを使う機会は激減するのだろう。
「殴る以外の趣味を持つのも悪くねェかな」
「……始めるなら差し当たり料理はどう?」
 ロコの言葉に、ギフトがなるほどと口の端を上げる。そう、丁度傍に、料理を食ってくれる奴もいるわけで。
「飲み過ぎじゃない?」
「……」
 はい、と頷きながらも缶を呷りそうになるのを、ぐっと堪えて。
「腹一杯になったか?」
 問いかければ、ロコは満足気に腹をさすって、最高の笑みで答えた。
「ご馳走さま」
「おう!」
 なるほど、悪くない。そんな風に、ギフトも笑顔を返した。

●七輪の可能性
「総勢15名、迷子もなく集合できて何よりだ」
 一同の顔を見てうんうんと頷いて、千梨が広喜に場を譲る。
「それじゃ、後は任せたししゃも大臣!」
「おう!」
 ししゃも大臣って何する役職? 答えは謎だが、今は乾杯の音頭取りがそのお仕事だ。
「チワワお嬢様ー!」
「いよっ! 広喜さんかっこいー!」
 礼や深緋の声援が飛ぶ中、大臣が立ち上がる。
「ししゃもと、2F探偵事務所と、八ツ音の誕生日と、お嬢様と、ヘリポートと……とにかく皆でワチャワチャできることに」
 かんぱーいっ。
 広喜の声に合わせて、一同のグラスが掲げられた。

 何故ししゃもなのかと問われれば、かつて交わした約束のせいだろう。北海道産の本ししゃもを持参した千梨は、思わず遠い目になってしまう。
「まさかあの約束を果たす日が来るとはなあ……」
「そういう事もありマス」
「ありがとなあ千梨っ」
 エトヴァに続けて広喜が嬉々として頷く。早速それを上手く焼くことに挑戦したいところだが。
「ほう、ししゃもか」
 隣の七輪では、既に括が店を広げていた。火の扱いは日々の竈で慣れたもの、絶妙の火加減で炙られた鮎が、山女魚が、食べられるその時を待っている。
「うちの川の獲れたてと、どっちがより美味かのう?」
 この明らかな挑戦に退くわけには行かない。千梨は堂々とそれに応じた。
「ようし、受けて立つぜ、この広喜大臣がな!」
「任せろ!」
「丸投げデスネ……?」
 まあとにかく、括の火加減指導も受けながら、広喜はししゃもを調理にかかった。
 ちなみに括の持ち込んだのは川の幸のみではない。占地に平茸、卵茸、栗に焼きお握りと、素朴ながら食欲をそそるものが大量にある。食材豊富な彼女に次いで、焼き役に立候補したのが鳳琴である。
「職人が手間暇かけて作った塩に、秘伝のタレも持って参りましたので、お好みで」
 料理人を志す者として、食材の焼き加減は熟知している。肉だろうと野菜だろうと魚介だろうと、まとめて美味しくしてみせる構えだ。
「他に何か食べたいものありますか?」
「そうですね……貝類が食べたい、ですわ」
「ですわ……?」
 リクエストを投げたのは、先日のフランスのイベントに触発された風の礼だった。お上品な口調の割に手元のレモンとナイフが既に準備万端であることを知らせている。
「ああ、この旨味を逃さす焼き上げた新鮮な岩牡蠣……!」
 レモンを絞った時の香りのハーモニーが溜まらない。バター醤油を垂らした帆立やサザエも、間違いなく良い味をしている事だろう。もちろん頼むだけではなく自分でも焼きますよ。
「貝類とっても食べたいお嬢様……?」
 リクエストにお応えするべく、鳳琴は調理を開始する。そうこうしている内に、高級ししゃもの方も満足の良く出来に焼けたらしく。
「あ、ししゃもおいしい」
「……はふ、ほかほかで美味しイ」
「うん、どっちも美味えっ」
 引き分けで決着はついたようだ。

「みんな手際良い、凄い!」
 一方こちら、リノはオロシと千梨を連れて、別の七輪がどうなっているか食べ歩きツアーに出ていた。括と鳳琴のように、オーソドックスかつ手広いタイプと違って、こちらはこちらで特色があるようで。
「これは……?」
 彼が思わず足を止めたのは、ジェミ・ニアの前。七輪の上にフライパンが乗っている。そして、アルミホイルの敷かれたフライパンには。
「餃子の皮ピザだよ」
 敷き詰められた餃子の皮に、たっぷりの具材と溶けたチーズが香る。
「パリッと焼けて美味しいよ!」
 切り分けてもらったそれを口にしつつ、二人は先程の驚愕のまま呟いた。
「七輪でこんなことまで……」
「意外と色々やれるんだな、七輪」
「というか……え、メニュー豪華すぎない?」
 そもそも七輪ってこんなに大勢で囲むものだったかしら。セレスティンが戸惑うのも無理はない。
「変わったメニューが気になるなら……ほら」
 そうジェミ・ニアが指し示した場所では、英賀がチーズフォンデュをやっていた。
「まあ、チーズは何にでも合うよね」
 平然と言い放たれたがそういうことで良いのだろうか。カマンベールチーズの上をくり抜いて作った簡易チーズフォンデュに具材をつけて、味わう。そしてその辺りを気にしないエトヴァも早速ラクレットチーズを炙り始めた。
「ではチーズ大臣英賀殿……参りまショウ」
「参りましょうって言われてもな……」
 勝手に就任させられたけど、そもそもチーズ大臣って何。
「ちなみに、君は何を持ってきたの?」
「鮭デス」
「……しゃけ?」
「ほんとに鮭だ……」
 冗談にしか聞こえないが、本当に鮭が一本持ち込まれていた。
「贅沢じゃなあ」
 でもこれどうするの? という問いにはなぜか光流が応じた。
「鮭焼くて聞いたさかい、杉板も持って来てるで」
 鮭の半身を切り身にし、塩胡椒にオイル、レモン、ハーブをのせ、板ごと焼けばBBQの杉板サーモンの出来上がりである。
「いや俺も初めてやからどんな味になるか知らんけど」
「ふむ、やってみまショウ」
 何事も挑戦。まずは良い感じに捌く所からだ。

 とりあえず杉板を渡した時点で役割は果たしたと、光流はビールに口を付ける。なるほど、ヘリポートで飲む酒というのは、一味違うもの。
「ここに来る時て大体仕事前やからな」
「そうだねー、今なら飲み放題だけど」
 これが平和という事なのだろう。いやしかし、あれだけの酒瓶を持ってくるのは大変だったと深緋が嘆息する。割り物からソフトドリンクまで運んできたのだからもっと褒めてもらっても良いはず。その内一本を手に取った彼女は、シルの姿を見つけて駆け寄った。
「シルさん、これが約束の」
「へー、リンゴのお酒なんだ」
「あー、でも幸さん未成年だったか」
 二人で飲んで、と言おうと思ったのだが。渋々揃いのグラスを下げて。
「んじゃ持って帰って、香りづけにでも使ってー」
 ありがとう、とお礼を言ったところで、シアは少し隅っこの方、日焼け止めに帽子を被ったセレスティンへと声をかける。人数の多さもあって少し休憩していたようだけれど。
「セレスおねーちゃん、お酒いれよっか?」
「わ、シルがお酌してくれるの?」
 喜ばしい申し出に、「こんな日が来るなんて」と笑顔が咲いた。料理やお酒の味はもちろん、こうしてみんなで一緒にわいわいできる事が、なによりの贅沢だと彼女は思う。
 そんなセレスティンの顔や、あちこちで酌み交わされる様子を眺めて、勇名が口を開く。
「……ぼくもいつか、みんなといっしょにおさけ、のめるかな」
「未成年はこういう時歯がゆいよね」
 ジェミ・ニアが先日までの自分を思い出すようにして笑う。勇名のそれは、「楽しそう」とそんな気持ちの表れだったのかも知れないが、まだ早い。その辺りを察したように、光流がウォーレンの方へと振る。
「すいーつは良え塩梅やろか」
「ん、カステラ焼けたよー」
「かすてら!」
 勇名の瞳が輝く。ウォーレンの方ではじっくりと時間をかけて、スキレットでカステラを作っていたのだ。
「焼き林檎もあるよ、アイスを添えてどうぞー」
「やきりんご、あいす……!」
 勇名にとって、今のところはこちらの方がじゃすてぃすなのだろう。微笑ましい光景の横では、焼き係に従事していた鳳琴に、シルが取り分けた料理を差し出しているところだった。
「琴、食べてる?」
「そういえば……」
 料理の方に夢中になっていた、という彼女に、ウォーレンが理解を示すようにうんうんと頷く。
「焼き役に回ると手がふさがるからねー……食べさせてもらうの良いと思うよ、ふふ」
 含み笑いの意味するところは明白ではあったけれど。
「……それもありかな」
「そう? じゃあちょっと待ってね」
 ふーふーと吐息で冷まして、シルが摘まんだお肉を差し出す。それを微笑ましく見守って――。
「ちなみに俺も働いてんやけど」
 はいはい。光流の方にも、特別に一口サイズのカステラが差し出された。

「お、八ツ音も一緒に食べようぜ」
「ハイ、鮭が焼けましたよ。こちらもどうぞ」
 広喜のお誘いに応じて、八ツ音もそのご相伴に預かる。エトヴァ手により、鮭の残りの半身も、綺麗に炙り焼きと味噌焼きにされている。それだけに限らず、ここのメニューは本当に多岐に及んでいたようだが。
「なあ、どれが一番美味いと思う?」
 甲乙つけ難い、と悩む八ツ音に、広喜は快活な笑みで続けた。
「俺はな、全部っ」
 なるほど。それは、きっと一番贅沢な答えだろう。
「――ふぅ、どれも美味しかった♪」
 そんな中、一通りの料理を制覇したリノもまた、満足げに息を吐いていた。
「これだけあると、最早祭りだな」
 楽し気な周囲の様子を見て、そう微笑む千梨に、彼も笑顔で答えた。
「また、出来たら良いよね」

 ケルベロス達の笑い声が響く中、ヘリポートを照らす夕日は、ゆっくりと沈んで行った。

作者:つじ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年8月22日
難度:易しい
参加:26人
結果:成功!
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