ケルベロス大運動会~ストライクをねらえ!

作者:土師三良

●ザイフリートかく語りき
 ヘリポートの一角に並ぶケルベロスたち。
 その前にヘリオイライダーのザイフリートが現れ、倒置法で告げた。
「今年もまたやってきたな。大運動会の季節が……」
 例年とは異なり、今年の大運動会は世界各地で開催される。デウスエクスに対する人類の完全勝利を祝う祭典としての側面もあるからだ。
 ケルベロスたちは万能戦艦ケルベロスブレイドで地球全土を巡り、様々な競技に参加し、爽やかな汗を(場合によっては鮮やかな血も?)流すことになる。その光景はケルベロスブレイドの小剣型艦載機群によって撮影され、同じくケルベロスブレイドの空中映像投射装置で映し出され、人々に感動と興奮をもたらすことだろう。
「その競技のうちの一つについて解説しよう」
 と、前置きをした後でザイフリートは問いかけた。
「地球には様々な球技が存在するが、それらの中で最も過酷なものはなんだと思う?」
 ラグビー? サッカー? 意外と卓球? 首をひねるケルベロスたち。
 答えを口にした者は一人もいなかったが、ザイフリートはなにやら得心したらしく、満足げに頷いた。
「そう、ボウリングだ」
 何人かのケルベロスはザイフリートに気付かれないようにそっとスマートフォンを取り出し、『過酷』という言葉を検索した。その意味を正しく認識しているかどうか自信が持てなくなったのだ。
「大きなプレッシャーを背に受けながら、ただ前だけを見据えて、ひたすらにボールを投じ続ける。しかも、頼れるのは己のみ。これ以上に過酷な球技が他にあるだろうか? いや、もはや球技とは呼べぬ。誤解を恐れずに断言しよう。ボウリングとは格闘技なのだ!」
『もっと誤解を恐れてください』という言葉をぐっと飲み込んだケルベロスは一人や二人ではなかった。

 過酷な格闘技たるボウリングがおこなわれるのは、アメリカはアリゾナ州の砂漠だという。
 そのような場所が選ばれたのは、通常のボウリングとはスケールが違うから。
 レーンの長さは約1・8キロメートル。
 ピンの高さは約3・8メートル。
 当然のことながら、ボールのサイズも尋常ではない。
 いや、それはボールではなかった。
「ボールとなるのは貴様たち自身だ。大運動会でおなじみのケルベロスキャノンで飛び立ち、十本の巨大ピンを倒せ」
 その無茶な要求に対して、ケルベロスたちは拒絶や抗議もしなかった。しても無駄だと判っているからだ。
「ピンはコンクリート製。底面の中央に穴が穿たれており、地面に固定された1メートル弱の鉄骨をその穴に差し込む形で立てられている。お世辞にも強固とは言えない構造だが、体当たりした程度では倒れないだろう。故にキャノンによる加速が必要なのだ。速度だけでなく、軌道についてもよく考えたほうがいい。たとえば、真上から急降下して中央のピンを破壊し、衝撃波で周りの九本を破壊する……というような作戦も有効かもしれん」
 いつの間にか『倒す』から『破壊する』に変わってる。
「なお、グラビティについては種族特有のもののみ使用可とする。それらを駆使して華麗に飛び、豪快にピンを破壊すれば、中継を見ている同種族の者たちに夢や希望や勇気を与えることができるかもしれんぞ。それと種族特徴と防具特徴の使用も許可しよう」
 ボウリング(という名の人間大砲)に活用できる防具特徴なんてあったっけ? ……と、考え込むケルベロスたちに構うことなく、ザイフリートは熱く語り続ける。
「通常のボウリングと違い、このキャノンボウリングは一投のみ。いや、一射のみだ。その一射にすべてをかけて――」
 真横を向き、遙か彼方をびしりと指し示した。おそらく、アリゾナを意識しているのだろう。方向が正しいかどうかは判らないが。
「――ストライクをねらえ!」


■リプレイ

●アリゾナの野外特設会場から
 全世界の皆様、こんにちわー!
 血湧き肉躍るキャノンボウリングの時間がやってまいりました。実況は私、ねじまきヘリオライダーこと根占・音々子がお送りいたします。
 この超メジャーなスポーツを知らない人などいないと思いますが、念のために説明しておきましょう。キャノンボウリングとは、勇気あるケルベロスが大砲から撃ち出され、1・8キロメートル先にある十本の巨大なピンを破壊するというシンプルな球技です。ええ、球技ですとも。
 さあ、字数……もとい、時間が限られているので、ちゃっちゃと参りましょう。最初の挑戦者は皇・シオンちゃん。私と同じくレプリカントです。
「大砲で吹き飛ばされることに慣れつつある自分が恐ろしいです」
 砲身の中でスタンバイしているシオンちゃんの呟きを小剣型艦載機群のマイクが拾ってきました。以後、挑戦者の発言はすべてマイク経由だと思ってください。
「家族も応援してくれていますし、良いところを見せないと……」
 意を決したところで発射! ピンの真上まで飛び……マルチプルミサイルをどどーん! なお、これは反則ではありません。種族特有のグラビティおよび種族特徴と防具特徴の使用は許可されています。
 シオンちゃん、一気に急降下! ミサイルが討ち漏らしたピンをドリルアームで破壊しつつ、エアライドで華麗に着地!
 見事にストライクを決めました。家族の方々も喜んでおられることでしょう。

 二番手はヴァルキュリアの九田葉・礼ちゃん。パーフェクトボディを使っているため、きらきらと輝いて見えます。
 おっーと! 大砲から発射された途端、ヴァルキュリアブラストを発動させ、全身を光の粒子群に変えました。本当の意味できらきらと輝いてますねー。
 粒子群によって、すべてのピンが粉々に!
 しかし、礼ちゃんは止まりません。通常の体に戻り、周囲に飛び散ったピンの破片をジュディッカの刃で細分化していきます。
 そして、勝利の哄笑。
「ごめんあそばせ。おーほっほっほっ!」
 キャラが変わってますね。フランスでおこなわれている某競技(ステマ)の影響でしょうか?

「ザイフリートが言ってた通り、過酷な戦いだぜ」
 人型ウェアライダーのディオニクス・ウィガルフくんが冷や汗を拭う真似をしています。
 その背後に現れたのは同種族のディークス・カフェインくん。
「では、勝負だな。黒焔の」
「いや、なにが『では』なのか判らねえよ。しかし、勝負には乗ってやるぜ、白犬」
「その意気やよし。先を譲ってやろう」
 黒焔ことディオニクスくんと白犬ことディークスくんの対決とあいなりました。
 まずは先攻のディオニクスくん、発射!
 獣撃拳を次々と繰り出し、ストライク!
 続いて後攻のディークスくん、発射!
 こちらも獣撃拳っぽい技でストライク! ただ、純粋な獣撃拳ではなく、オリジナルのグラビティを加味した『獣撃拳っぽい技』ですから、ルール的にはグレーゾーンですね。
 とはいえ、壊したピンの数はどちらも同じ。二人で握手を交わし、健闘を讃え合うことでしょう。
「グレーどころかブラックじゃねえか! セコいことしてんじゃねえよ、白犬!」
「負け惜しみはみっともないぞ、黒焔の」
「負けてねーし!」
 いえ、讃え合っていませんでした。めっちゃ啀み合っています。

 対決するコンビもいれば、協力するコンビもいます。兎の獣人型ウェアライダーのカロン・レインズくんとレプリカントの音楽家のリリス・アスティさんのように。
「お願いします、リリスさん」
「お任せください」
 リリスさんがエレキブーストを飛ばし、メタリックバーストを撒き、サークリットチェインを展開して、カロンくんにエンチャントを重ねていきます。カロンくん自身もルナティックヒールで強化していますね。
「思い切りやっちゃってくださいませ、カロン様!」
「はい! 世界の皆に教えてあげます! 兎は強いってことを! そして、カッコいいってことも!」
 カロンくん、発射!
 ダブルジャンプで軌道を修正して、ハウリングからの獣撃拳! あっという間にストライク!
 これは認めざるをえませんねー。ウサちゃんは強くてカッコいということを。
「お見事です!」
 フェスティバルオーラで場を盛り上げ、賛辞を贈るリリスさん。
 しかし、ここで残念でお知らせ。『使用可能なグラビティは種族特有のもののみ』というルールは応援者には適用されませんが、リリスさんのエンチャントは応援の範疇を超えていたので、今回の記録は無効です。
「えー!? だったら、僕が撃ち出される前に止めてくださいよー!」
 すいませーん。

「ボウリングって言っていいの、これ?」
 宇宙猫めいた顔をして大砲を見つめているのは薬袋・あすかちゃん。
「扱いが完全に芸人のソレだよね……」
 ぶつぶつとこぼしながらもスタンバイして……発射!
 あ? 接触する前から何本かのピンが破壊されました。サイコフォースですね。
 残ったピンめがけて急降下! 己の肉体にグラビティ・チェインを乗せ、重力による加速も活かし、二重の意味でグラビティブレイク! すべてのピンを破壊しました!
 いやー、豪快ですね。ただ、あまりにも豪快すぎて――、
「だ、誰か助けてー」
 ――地面に埋まっちゃってますけど。

「頑張ってね、柧魅さん」
「くっくっくっ……頑張るまでもない。五十パーの力で十分だ」
 紺崎・英賀くんの声援に自信満々の笑みを返して飛び出したのは神門・柧魅ちゃんです。なんでも神門家というのは忍者の一族なのだとか。
 あ? またもや接触する前にピンが壊れました。見えない刃で細かく輪切りにされたかのよう。これもサイコフォース? ……いえ、違いますね。長くて細い鋼糸を用いてグラビティブレイクを使ったようです。
「グラビティに制限はあるが、武器にはないからな」
 すべてのピンをバラバラにして、柧魅ちゃんは華麗に着地。
「くっくっくっ……完璧すぎるのもアレだな」
 ……アレとは?

 柧魅ちゃんに声援を送っていた英賀くんが声援を受ける側になりました。
「がんばってくださイ」
「にゃおーん!」
 レプリカントのエトヴァ・ヒンメルブラウエくんとウイングキャットのエトセテラちゃんに見送られて発射!
 あ? ぶつかる前からピンに亀裂が生じました。おなじみのサイコフォース。そして、グラビティブレイクの体当たりでどーん! 物凄い勢いですね。
「これ、下手すると、壁の染みになりそう……」
「大丈夫や!」
 英賀くんの呟きを聞いて、清水・湖満ちゃんが叫びました。
「ここは屋外やから、壁はあらへん!」
 そういう問題でしょうか?
 湖満ちゃんとともに観戦していた端境・括さんも英賀くんに声をかけました。
「壁はないが、岩壁は沢山あるのじゃ」
「うわーっ!?」
 岩に突っ込んじゃった英賀くん。だけど、大丈夫です。染みにはなっていません。

 カメラや観客席に向かって手を振りながら、エトヴァくんがスタンバイ。
「それでハ、参りマス」
 発射!
 くるくると回りながら、両手からマルチプルミサイルを降らせていきます。エトヴァくんの回転にシンクロするかのようにミサイル群も錐揉み状態。まるで板野さん家のサーカス。
 ミサイルが次々と着弾し、ピンが粉々に吹き飛んでいきます。派手ですねー……あ!?
「アッ!?」
 飛び散ったピンの破片の一つがエトヴァくんに命中! 今度はエトヴァくん自身が錐揉み状態で落ちていきます。
「救助、お願いしマス」
 落下しながら、アイズフォンで救助を要請するエトヴァくんでした。

 括さんのルナティックヒールと英賀くんのエレキブーストでエトヴァくんが癒されています。グラビティで負傷したわけではないので、ヒールは不要なのですが……まあ、気分の問題ですねー。
 そうしている間に湖満ちゃんが発射!
「私は己の肉体で勝負する!」
 両腕を伸ばし、矢のように飛んでいきます。どうやら、シャドウリッパーを使用している模様。
 レーンの終着点に突っ込み、ピンを切り裂き、あるいは衝撃波で吹き飛ばし、ストライクを決め……そして、腕を伸ばした姿勢のまま、四十五度くらいの角度で地面に突き刺さってしまいましたー。
 ある意味、奇跡的な着弾ポーズですね。

「ここは僕らレプリカントの見せ場だね!」
 エトヴァくんにそう言って、ジェミ・ニアくんが手を天に突き上げました。
「皆、オラに元気とか風向き等の気象情報とか、その他もろもろをわけてくれ!」
 アイズフォンを使って、有用なデータを集めているようです。
「風向きよーし! 角度よーし! 発射!」
 データという武装を纏って撃ち出されたジェミくん。すべてのピンを見事に破壊! ……したように見えましたが、一本だけ残ってますね。
「ぼ、僕も救助をお願いします……」
 あ? 残っていたのはピンではなく、ジェミくん自身でした。頭から地面に突き刺さっています。奇跡の着弾、再び。
「突き刺さり仲間や!」
 湖満ちゃんが大喜びしています。

「……ボウリングとは、こういうものでしたか?」
 戦士にして医師でもあるヴァルキュリアのバラフィール・アルシクちゃん。ちょっと疲れたような顔をしていますね。地面に刺さっていたジェミくんを引っこ抜いて助けてきたばかりだからでしょうか? それとも精神的な疲労でしょうか?
 しかし、ウイングキャットのカッツェちゃんに『気にしたら負けよ』とばかりに肩を叩かれ、気を取り直したようです。
 そして、低射角から発射!
 光の翼で加速し、礼ちゃんと同様にヴァルキュリアブラストからのジュディッカの刃でストライク!
 では、カメラに向かって一言お願いします。
「ケルベロスじゃないかたは真似しないでくださいね」

「可愛い!」
 ジェミくんが思わず声をあげたのもむべなるかな。
 柴犬サイズの熊さんが大砲から撃ち出され、ぴゅーんと空を飛んでいるのですから。
 もちろん、本物の熊さんじゃありません。動物変身した括さんです。
「弾道計算はスナイパーの嗜み。狙いはばっちりじゃ!」
 空中で元の姿に戻り、1番めがけて降下! 獣撃拳で破壊してダブルジャンプ!
 そして、ハウリング!
「くまぁーっ!」
「叫びもかわええなあ」
 私も湖満ちゃんに同感です。
 可愛いハウリングによって、2番から9番が崩壊。
 しかし、括さんは体勢を崩し、背中から地面に激突するような形で墜落してしまいました。
「むぎゅう!?」
「悲鳴も可愛いですネ」
 私もエトヴァくんに同感です。

 続いては姉弟での参加。水瀬・和奏ちゃんと水瀬・翼くんです。
「フォートレスキャノンがOKだったら、余裕なんだけどね」
「おまえのフォートレスキャノンが炸裂した日にゃあ、いろんな意味で『余裕』がなくなるだろうが」
「じゃあ、どうすればいいの?」
「そうだな……こういう作戦でどうよ?」
 作戦会議が終了。和奏ちゃんが大砲の中にスタンバイして……発射!
 おや? 直撃を避けて、ピンの手前に着弾というか着地しましたね。1番を持ち上げて、ぶるんぶるんと振り回し始めましたよ。力任せに振り回しているわけではなく、1番を武器にしてグラビティブレイクを使っているようです。
 十数回転の末、得物の1番も標的の2番から9番も砕け散り、ストライク!
 和奏さん、大砲のところに戻り、翼くんと勝利のハイタッチ。
「当然、翼もやるわよね?」
「え? いや、無理無理無理無理っ!」
「無理じゃない」
 和奏さんが翼くんを大砲に押し込めちゃいましたー。
「無理だって言ってんだろぉぉぉぉぉーっ!」
 叫びを残して飛んでいく翼くん。
 笑顔で見送る和奏ちゃん。
 麗しい姉弟愛ですねー。

 姉弟愛の次は兄妹愛を見せていただきましょう。獣人型ウェアライダーの玉榮・陣内さんと人型ウェアライダーの比嘉・アガサちゃん。実際は兄妹ではなく、従兄妹同士ですが。
 さて、お二人のうちのどちらが飛ぶのでしょうか?
「今こそ出番だよ、ヴァオ」
 あ? お二人が飛ぶわけじゃないみたいです。アガサちゃんはヘタレバツイチドラゴニアンのヴァオ(呼び捨て)を大砲に押し込もうとしています。
「翼飛行で1番ピンと3番ピンの間から侵入し、テイルスイングで一掃だ。判ったか?」
「判らねーわ! てか、俺はこんなのをやるつもりはないから!」
 おやおや。陣内さんが親切に作戦をレクチャーしているというのに、ヴァオは試合を拒否している模様。
「しかたないな」
 アガサちゃんはヴァオを大砲に押し込むのを諦めて――、
「じゃあ、陣が見本を見せるから」
 ――陣内さんを押し込み始めましたー。
「ちょ、待て! 待て待て待てぇーっ!」
 抵抗むなしく砲身の中に消えゆく陣内さん。彼のウイングキャットがそれを助けに……行きませんね。きゃっきゃっと楽しそうに笑ってます。
「ほい、発射!」
「覚えてろよ! このじゃじゃ馬ぁーっ!」
 大砲を撃ち出すアガサちゃん。
 砲弾と化して飛んでいく陣内さん。
 麗しい兇DIE愛ですねー。

 次の挑戦者はメカ大好きドワーフの風戸・文香さん。
「無茶な競技ではありますが……ある意味、ドワーフ族のためにあるとしか思えませんね」
 大砲に与えられた破壊力にスピニングドワーフの破壊力を加え、独楽のように回転しながら、飛んでいきます。
「1番と3番の間に六度で入れるというのがセオリーですが、そこまで正確に配置されていないでしょうから、うまく調整する必要があるでしょうね」
 セオリーに従って、1番と3番の間にどーん! しかし、7番と10番が残ってしまいました。
「最悪のスプリット! だーけーどー!」
 スピンを加速させる文香さん。ぐるんぐるん回って旋風を繰り出し、残りの二本を破壊しましたー。

 続いてはシャドウエルフのリリエッタ・スノウちゃん。
「ふむふむ。1番のピンと3番のピンの間を狙うのがいいんだね?」
 文香さんが口にしたセオリーに倣い、1番に体当たりすると同時にダブルジャンプして、3番をキック! その反動を活かして7番にぶつかり、再びダブルジャンプで9番へ!
 そして、黒影弾をばらまいて残りのピンを打ち砕き、フィニッシュ!
 カッコよく決まりましたねー。でも、リリエッタちゃんは眉をひそめています。
「むぅ……けっこう痛いんだよ」
『痛い』で済むのもケルベロスなればこそ。フツーの人なら、確実に死んでます。

「作戦その一! ピンの真ん中を狙って急降下ぁーっ!」
 アニメ声を響かせて急降下したのはオラトリオの大弓・言葉ちゃん。日々『かわいい』と『あざとい』のボーダレス化に勤しむ養殖系お嬢さんです。
「作戦その二! ピンに仕込まれてる鉄骨の上端のあたりを攻撃!」
 シャイニングレイが撃ち出され、ピンが粉微塵になっていきます。見事な攻撃。でも、言葉ちゃんの腰にしがみついているボクスドラゴンのぶーちゃんはなにやら不安そうな顔をしていますねー。
 ピンの破片が飛び散る中、言葉ちゃんはふわりと着地し、くるりとターンして、可愛くポーズを決めました。
「すとらーいく♪ ……って、痛っ!?」
 おっと、宙を舞っていた破片が頭を直撃! ぶーちゃんの不安が的中したようです。

 トリを飾るのは男の娘アイドルの盛山・ぴえりちゃん。人呼んで、ケルベロスキャノンの申し子! 誰が呼んでるのかって? 主に私です。呼んだのは今日が初めてですが。
「見さらせぇ! ぴえりんが一番輝いている瞬間を!」
 意気軒昂ですねー。テレビウムのチャウやんは距離を取り、虚無的な顔文字を表示していますけど。
 そんなチャウやんを残して、ぴえりちゃんはちゅどーんと飛び出しました。
 射角を高く取り、急上昇。あっという間に豆粒のように小さくなりました……が、その豆粒が降ってきました!
「大砲はすべてを裏切らない! アイ、キャン、フラアァァァーイ!」
 5番の位置に墜落! 残りのピンを衝撃波で吹き飛ばしながら、地面にめり込んじゃいましたー!
 あすかちゃんの時よりもヒドいめり込み具合ですね。カートゥーンさながらに人型の穴が地面にあいてますよ。
 あ? その穴の奥から腕がにょきっと伸びてきました。
 そして――、
「なしとげたぜ!」
 ――サムズアップ!

 勇気と狂気の祭典キャノンボウリングはこれにて終了……あれ?
 す、すいません。まだ終わっていませんでした。いつの間にやら、柊・むつかちゃんがスタンバイしてます。今の今まで気付きませんでした。どうやら、イシコロエフェクトを使っていたようですね。
「デウスエクスの侵略が終わっても、まだ不安な人はいっぱいいるかもしれない。でも、だいじょうぶ。きっと、どんな時もケルベロスたちが支えになってくれるから」
 泣かせるメッセージからの――、
「見ててね」
 ――発射!
 頭からピンに突っ込みましたー! 1番をへし折り、他の九本を吹き飛ばし、ズザザァーっと全身で地面を抉るようにしてスライディング!
「にゃあ」
 ウイングキャットのクロちゃんが心配そうに駆け寄っていきます。
 でも、むつかちゃんは微動だに……いえ! ゆっくりと立ち上がりました!
 そして、こぶができた頭をなでつつ、ぺこりと一礼。

 今度こそ本当に終了です。皆様、お楽しみいただけましたでしょうか?
 最後にバラフィールちゃんからの重要なメッセージをリピートしておきます。

「ケルベロスじゃないかたは真似しないでくださいね」

作者:土師三良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年8月8日
難度:易しい
参加:23人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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