シャイターン襲撃~ゲイレルルの涙

作者:刑部

 東京都あきるの市。多摩地域西部に位置するこの市の住宅街に、絹を裂く様な悲鳴が響く。
「キャー!」
「に、逃げろ……」
「助けてくれー!」
 驚愕に目を見開く人々の視線に映ったのは、子供を抱く主婦を手に持つ槍で貫いたヴァルキュリアの姿。そのヴァルキュリアの後ろには、更に2体のヴァルキュリアの姿があった。
「おんぎゃー、おんぎゃー!」
 貫かれた主婦に庇う様にしっかりと抱かれた子供が、その締め付けに大きな声を上げて泣き始めた。
「おん……」
 その子供に槍が突き立てられ泣き声が止む。
「ひどい……」
 その光景を目撃した女性が呟くと、他の2体のヴァルキュリアもその翼をはためかせ、槍を振るって人々を襲い始める。
 ヴァルキュリア達の頬は、自身の流す血の涙で濡れていた。

「で、城ヶ島のドラゴン勢との戦いも佳境に入っとる所やけど、エインヘリアルの方にも大きな動きがあったみたいや」
 杠・千尋(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0044) の口調が真剣なものになる。
「鎌倉防衛戦で第一王子ザイフリートがうちらに負けて失脚したんか、後任で別の王子が地球への侵攻を開始しよったみたいや。
 王子によって率いてる部隊が違うんやろな。新しい王子はザイフリート配下であったヴァルキュリアを、なんやしらんけど強制的に従えて、魔空回廊を使こうて一般人を虐殺し、グラビティ・チェインを得ようとしてるみたいや」
 千尋の説明は続く。
「結構一杯出て来るから相談して担当決めたんやけど、うちのヘリオンで向うのは東京都あきるの市。この住宅街に3体のヴァルキュリアが現れて、住人を虐殺してまわりよる。どうも新しい王子は妖精八種族の1つ炎と略奪を司るシャイターンを従えとって、こいつが部隊長、ヴァルキュリアが隊員みたいになっとるみたいや。
 東京の他の都市も同じ感じみたいなんやけど、あきるの市には1体のシャイターンと16体のヴァルキュリアが確認されとる。他の部隊へは他のケルベロス達が当たる事になってるから、こっちで担当するのはこの3体のヴァルキュリアや」
 あきるの市の地図の一点を指した千尋は、
「ヴァルキュリアに対処しつつ、シャイターンを撃破せなあかんって事やな」
 と皆に同意を求める様な視線を送る。

「ヴァルキュリアは住民を虐殺してグラビティ・チェインを奪おうとしとるけど、邪魔する者が居ればその排除を優先する様に命令されとるみたいや。せやから、こっちから攻撃を仕掛けたら住民の虐殺は止めて、こっちの排除に全力を尽くしてきよる。
 命令はかなりの強制力があるらしく、指揮官のシャターンが居る限り容赦なく命令を遂行しよるけど、シャイターンを撃破したら、なんかの隙ができるんちゃうかなーと思ってんねんけどな。まー、これはシャイターン撃破に向かう人らに任せるしかないしな。
 元々は戦場から勇者を連れてくる種族や、血の涙流しとるし本心では武器も持たへん人らの虐殺なんかやりたないんかもしれんけど、こっちが負けたらもっと酷い事が起こるのは明白やしな。一時の情に駆られて大局を見誤るなんて事は無い様にせえへんとな」
 千尋の言葉に幾人かのケルベロス達が頷く。
「3体のヴァルキュリアは全員槍を持っとる。光を宿した強烈な一撃を繰り出したり、氷を纏って突撃してきたりしよる。あと仲間を鼓舞して癒す事も出来るみたいや。……そうそう、シャイターンの元にはまだヴァルキュリアがおるし、援軍で来るかもしれへんから、警戒は怠ったらあかんで」
 と、千尋はケルベロス達に注意を促す。

「新しい王子がどんなんか知らんし、強制的に従わされてるヴァルキュリアは可哀想かもしれへん。せやけど人を手に掛ける以上、こっちも黙ってられへんわな。新しい王子もけっちょんけっちょんにして、ザイフリートの二の舞にするで」
 千尋はそう言って八重歯を見せて笑うのだった。


参加者
ラウラ・ロロニ(荒野の琥珀・e00100)
清水・光(地球人のブレイズキャリバー・e01264)
夜乃崎・也太(ガンズアンドフェイク・e01418)
ラティクス・クレスト(獣牙・e02204)
立茂・樒(瑠璃の竜胆・e02269)
アイリス・ゴールド(愛と正義の小悪魔・e04481)
アカネ・ローズクォーツ(ヴォーパルバニー・e13026)
御船・瑠架(剣豪ヘ至ル道行キ・e16186)

■リプレイ


 婦人に槍を突き付けたヴァルキュリアの動きが、耳朶を打つ獣の咆哮によって止まり、その咆哮のした方に向き直る。
「こっちを向きましたよー」
 そのハウリングを起こしたアカネ・ローズクォーツ(ヴォーパルバニー・e13026)が、こちらを向いたヴァルキュリアを見て声を上げる。そのヴァルキュリア達の頬を血の涙が濡らしており、焦点が定まらないその瞳を、駆けて来るケルベロス達に向けていた。
「………血の、涙……。むりやり…たたかう……、つらい……だろうな……」
「操られる美女を救い出す……実にいい! 俺みたいな超絶イケメンにぴったりな仕事!」
 金色の瞳を細めたラウラ・ロロニ(荒野の琥珀・e00100)は、ボクスドラゴンの『トゥルバ』を箱から呼び出し、夜乃崎・也太(ガンズアンドフェイク・e01418)がヴァルキュリア達の美しい顔を見て歯を見せて笑う。
「血の涙を流す、か……。惨いってのこう言う事を言うんだろうな」
「ふむ。洗脳堕ちはある意味テンプレだが、様式美が出来ていないじゃないか、今回の王子はダメダメだなぁ」
 ラティクス・クレスト(獣牙・e02204)が同意を求めると、アイリス・ゴールド(愛と正義の小悪魔・e04481)が設定の練り込みが足りないと嘆息する。
(「敵を助ける……か、うちの性分やないけど……」)
 清水・光(地球人のブレイズキャリバー・e01264)がちらりと仲間達に視線を奔らせ、
(「皆やる気やし、微力を尽くし、全力でやるんよ」)
「清水光、この道を修羅道と知り推して参る」
 と、ヴァルキュリアに、戦闘用光子ビーム発生装置を嵌めた指を突き付ける。
 そのケルベロス達にヴァルキュリア達が意識を向ける間に、婦人達ら一般人は逃げ散り、ヴァルキュリア達は、此方を敵と認めその穂先を突き付ける。
「強敵と戦えることは嬉しいですが、望まぬ戦を強いられている女性を殴る趣味はありません。……さぁ、戦乙女の涙を拭いましょう」
「槍か……悲痛なる槍を手折り、血と涙を止める為、瑠璃が剣、樒。推して参る」
 その動きに応じ、御船・瑠架(剣豪ヘ至ル道行キ・e16186)がゆっくりと鞘から刃を抜くと、各班との通信を確立した立茂・樒(瑠璃の竜胆・e02269)が、瑠架に倣って瑠璃鏡刀・竜胆を抜き、ヴァルキュリアを操る糸を断ち切るかの如く、宙を一閃する。
「その涙、このイケメンが拭ってあげるぜ!」
「さて、うちの戦いを始めるんよ」
 也太がケルベロスチェインを地面に展開し陣を描き、光のアームドフォートが吹く火が戦いの開始を告げる合図となった。


 突き入れられた槍の穂先を刃で跳ね上げ、滑り込む様に蹴りを叩き込んだ瑠架は、
「直線的な攻撃であれば、多少の力量差があろうとも……」
 そのまま地面に手を付いて押し跳び退さると、先程まで瑠架が居た場所を他の2体のヴァルキュリアが繰り出した槍が貫く。その槍の上をアカネ。
「泣いている子を相手するのは、なんかやりにくいんだけどー」 
 と2体の内の片方に白い垂耳を揺らして飛び蹴りを見舞い、ラティクスら仲間達が続くと、
「……あなたたちの……手は、……こんなことで……よごしていいものじゃ……ないはず……」
 その後ろから、也太に続いてケルベロスチェインを展開し魔法陣を描くラウラが、ヴァルキュリアに説得の言葉を投げ掛けた。
 だが、ヴァルキュリア達は反応を示さず血の涙し続けながら槍を振るう。
「耳を貸さないか……いや、貸せないんだよねー。きっと助けてあげるから、諦めるんじゃないよーっ!」
 アカネの吠え声がハウリングとなって、ヴァルキュリアの足を止め、
「……思い出して……本来の……使命を……」
 ラウラが足止めされながらも光に向って槍を繰り出すヴァルキュリに鎖を絡め、説得の言葉を重ね、トゥルバもブレスを吐いて戦線を支える中、一気に距離を詰めた瑠架が刃を振るい、カウンター気味に突き出された槍をギリギリのところで避け、黒髪数本だけを風に泳がせ、樒とアイリスの間を抜けて後退する。
(「……以前なら救う為の刃など考えもしなかった……私も変わったものだ……」)
 手加減をしているつもりはない。だが何時もの様に己を強さを追い求めて振るう刃とは違う感覚に、瑠架は僅かに口角を上げた。

「こういうのは得意やあらへんねんけどな」
 ヴァルキュリアが繰り出す穂先を、鉄塊の如き剣の刃で受け逸らした光がごちるが、樒と鍔迫り合いを演じていた別の1体が、やや後退した樒を追わず、不意に光に向って吶喊する。
「そんな美女を守るイケメン参上!」
 その間に割って入ったのは也太。
 繰り出された槍に鎖を絡め、素早く回し蹴りを見舞って押し返す。
「おっと失礼、レディ。自らが望まぬことをさせられ、赤き涙を流す。見ていられないっすね」
 蹴り返したヴァルキュリアに歯を見せて笑い、仰々しく腰を折って一礼する也太。
「さぁ、このイケメンが貴方達の騎士となりましょう! 心を開いて!」
 と、更に良い笑顔で両手を大きく広げる也太を、
(「それでヴァルキュリアが槍を収めたらびっくりするわ」)
 と、ラティクスと共に他のヴァルキュリアと打ち合いながら、冷ややかな視線を送り心の中でツッコミを入れる光。
 無論予想通り、握手を求める手では無く、殺意を持った穂先で応じられた也太を瑠架が援護する。
「早いっ!」
 その横では、放ったアームドフォートの弾丸を、アカネの一撃を受けながらもギリギリのところで躱し、アカネを追わずに再び距離を詰めて来たヴァルキュリアに光が右太腿を槍で突かれた。
 ラウラから直ぐにステルスリーフのグラビティが光に飛び、
「うちの矜恃はこの程度では挫けへんよ! あんたもただ命令に従うだけのものならば切って捨てるまで、そうやないなら乙女の意地ってもんを示してみせてみいや!」
 啖呵を切たった光が、アイリスと共にタイミングを合わせて、そのヴァルキュリアに攻撃を仕掛ける。
「手を止めれない理由があるのなら、その理由の排除の為に俺が手を貸します」
 槍撃を受けた也太も、痛みを堪えて笑顔で語り掛け続ける。

 既に10分以上が経過しようとしていた。
「別働隊が指揮官倒せばなんとかなるかもしれねぇっていうなら、倒すまで粘ってやるが、連絡はまだないんだよな?」
「まだだ」
 穂先を濡らしたヴァルキュリアの持つ槍に熱心な視線を向けるラティクスが、ラウラから飛ばされた木の葉を纏いながら声を上げると、黒いポニーテールを躍らせ瑠璃色の閃光を叩き込んだ樒が短く応じると、
「くっころさん達も回復があるから、厄介だよね」
 くっころさんとはヴァルキュリアの事らしく、高速で指を動かしネットに心温まるエピソードを投函しアイリスも頷く。
 アイリスの言う様にヴァルキュリア達は互いに鼓舞し合い、またそれにより力を得た槍が、也太らが付与するケルベロス達を守る力を打ち砕いていた。しかしながらキュアを持たない為、既に多重に刻まれた足止めの効果は顕著に表れており、此方の攻撃が外れる事は少なくなっていた。
「瞳に思い出し浮かべてくれ。血ではなく、胸に誓いし誇りの光と、同胞の姿を」
 陣羽織を血で染めた樒が灰色の瞳を真っ直ぐ向け、槍を捌き刃を振るいながら瑠架と共に説得の言葉を重ねる。
「洗脳を解除するためにはより強いインパクトを与えるべし! さぁ、この蒼汁同盟謹製の栄養価満点の蒼汁を飲め」
 アイリスが蒼汁をヴァルキュリアの一体に飛ばすも、洗脳の解けた感じは無い。
「むー、互いに回復があるとは言えこのままだとジリ貧だよね」
 その成果に目を細めたアイリスが言う様に、ヒールでは癒しきれない疲労が蓄積されており、前衛陣の動きは制裁を欠きつつあり、特にディフェンダー陣の疲労は顕著であった。
「戦いってのは自らの意思でやるもんだぜ。無理矢理操られる様に戦わされる者が振るう刃なんかに倒れてたまるかよ」
 ラティクスは、見てて気分が悪いと吐き捨て紙兵を撒布し、ヴァルキュリア達の穂先を逸らした。
「……シャイターンを撃破した。残ったヴァルキュリアたちもひとまずは撤退したようだ」
 その時、連絡用に開いた通信回路から男の声聞こえ、ヴァルキュリア達の体が痙攣する様に震えた。


「……私は……」
 1体のヴァルキュリアが何かを振り払う様に頭を振って声を出すのを見て、一旦攻撃の手を止めるケルベロス達。だが、次の瞬間、そのヴァルキュリアは、隣に並ぶ仲間のヴァルキュリアに槍を突き入れる。
「何を!」
「やめてっ!」
 樒とアカネが思わず叫ぶと、
「いや、違う、私は……」
 槍を突き入れたヴァルキュリアはわなわなと震え、他の2体は思わず身を乗り出したケルベロス達に吶喊してくる。
「どういうこと? 洗脳は解けてるのかな?」
「落ち着いて、自分がどういう存在であったか思い出して下さい。望まぬ戦で自らの矜持を貶めて……それでいいのですか? 抗うのなら私達が力になります」
 小首を傾げてツインテールの金髪を揺らしたアイリスが、ヌメヌメした触手をそのヴァルキュリアに絡め、繰り出された穂先を捌きながら瑠架が声を上げる。
 だが、先程仲間を槍で突いたヴァルキュリアが続いて吶喊してくる。
「つわものの魂を導くことがお前達の誇りだろう! 無力な人々の虐殺や意志に背く命令になど、抗ってみせろ戦乙女!」
 その槍を受け、血を流しながら吼えたラティクスの言葉に、ヴァルキュリア達の体がビクンと跳ねる。
「……本当の使命を……思い出して……」
 ラウラが思いを込めて声を上げてチェーンで魔法陣を描くと、ラティクスを突いたヴァルキュリアが狼狽しながら後退する。そのヴァルキュリアに也太。
「もう泣くのはやめて下さい。さぁ、貴方達が笑顔の為に俺はどんな協力も惜しみません。……ですから今は、失礼」
 抱き寄せるようにして銃口を体に密着させ笑顔を見せた也太が、失礼という声と共に手加減攻撃の拳をヴァルキュリアの鳩尾に叩き込むと、
「あぁ……」
 とか細い声を出してヴァルキュリアが崩れ落ち、也太はその血の涙を拭く。
「握ってくれ。槍ではなく、魂でもなく。私達の手を!」
 その後ろでは別のヴァルキュリアによって、左脇腹に突き入れられた槍の柄を掴んだ樒が、刀を地面に突き立て空いた手を伸ばす。だが、ヴァルキュリアはその手を伸ばそうとはせず、必死に槍を引き抜こうとしていた。
「ごめんね。ちょっと痛いけど、我慢しなよーっ!」
 その槍を抜くのに必死なヴァルキュリアに、宙を舞ったアカネの蹴り。手加減されたその蹴りはヴァルキュリアの顎を掠め、頭を揺らしたヴァルキュリアが槍を手放し仰向けに倒れた。
「ほんま性分やあらへんね」
 最後の一体は光が相手取っていた。滅す、倒す、殺すが性分の光にとっては些か不本意な戦い方ではあるものの、仲間の意見を尊重してヴァルキュリアの攻撃を受け流す事に主軸を置いた戦いを続けていた。
「おまたせだよー」
「とりあえず、戦闘不能にしないとダメみたいだよ」
 アカネやアイリスら、他の2体を倒した者達が次々と加わると、蓄積された疲労もあり、最後はラウラの鎖に絡め取られたところに、手加減した皆の攻撃を受けて崩れ落ちたのだった。

「うぅ……はっ」
 頭を振ったヴァルキュリアがおぼつかない手で槍を手繰り寄せる。
「よせ、呪縛を解かれた今、これ以上何を戦おうと言うのだ」
「ボクひとりでお相手してあげてもいいけどね」
 掌を向けて制する樒の後ろで、アイリスが不気味な笑みを浮かべてヌメヌメした触手を蠢かせる。
「とりあえず、洗脳が解けた事でわかると思うが、このあきる野市に現れたシャイターンはオレの仲間達が撃破した」
 ラティクスの言葉に、そうだろうと頷いたヴァルキュリア達。
「それでどうする。私達を殺すか? それとも慰み者にでもするのか?」
「お望みやったら、そうしたってもえぇけど? ザイフリートが見つかったのにそんなやけっぱちでえぇの?」
「! ザイフリート様が」
 諦めの表情で口を開いたヴァルキュリアは、光の口から出たザイフリートの名に瞳を輝かせ、
「シャイターンに……襲われてた……ので、どうなってるか……わからない……けど」
 続くラウラの言葉にお互い顔を見合わせる。
「美しい女性に涙は似合いません、笑顔を見せて下さい」
 血の涙を洗い流す様に溢れる透明の涙を見て瑠架がハンカチを渡し、
「シャイターンと一緒に居たヴァルキュリアも撤退した様ですので、あなた達も一度他のヴァルキュア達と今後について話し合ってはどうでしょう」
 と提案する。
「……見逃すと言うのか?」
「血の涙流しながら戦う様を見せ付けられてはな」
 ヴァルキュリアの言葉に肩をすくめるラティクスに対し、
「何ならこのイケメンが貴方達の騎士となって、お送りして差し上げますよ。えぇ、貴方達が笑顔の為に俺はどんな協力も惜しみません! ……うわ、なにをする、やめろ」
 手もみする勢いで近付いて行った也太の体が、アイリスのヌメヌメした触手に絡め取られて持ち上げられた。
「ま、よー話し合いや。次会う時は敵かもしれんけど、またやね」
「ハンカチは今度返してくだされば構いませんよ」
 光と瑠架がそう言い皆してヒールを掛けると、ヴァルキュリア達はぺこりと頭を下げて羽ばたいていく。
「あ、ぬかったぜ。1本だけもいいから槍貰っておけば良かった」
「欠片ならあったんだよー」
 ラティクスが名残惜しそうにヴァルキュリアの去った空を見上げて言うと、アカネが削ぎ落とした様な金属片を手に笑顔を見せる。
「さて、他の都市は……ザイフリートはどうなったかな?」
 瑠架の呟きは風に消える。自分達の成すべき事は成した。後は仲間達も上手くやっている事を祈るだけだった。

作者:刑部 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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