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気温が上がり、頭上に広がる青い世界を泳ぐ雲が夏らしい形を作り上げている姿を見て河野・鵠(無垢の足跡・en0303)は目を細めた。
じめじめとした特有の季節は毎年変わらないもので、鵠は7月になったというのにこれだけ暑いとなれば8月はもっと暑いのだろうと考えながら尻尾を揺らす。
「今年は何をするか決めたのかい?」
しっかりと袴を着込んだ中原・鴻(宵染める茜色のヘリオライダー・en0299)の問いかけに、鵠は「まだなにもー!」と元気よく答えてみれば、くすりと笑みを返される。
夏だし、暑いし、涼しいことがいい。そしてなおかつ楽しめるもの。
鵠は尻尾を左右に揺らして、むむむーと唸り声をあげる。
「……ああ、そうだ。今、こういうのが流行っているんだってねぇ」
揺れる尻尾を愉快そうに見つめていた鴻が、懐から一冊の本――雑誌を取り出して、とあるページを鵠に見せた。
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「というわけでー!! グランピングしよ! そんで、ウォーターサバゲーしよ!」
雑誌をバンバン叩いて、今にも飛んでしまいそうな程白い翼を広げた鵠はそう高らかに言ってのけた。
グランピング――「Glamorous」と「Camping」を組み合わせた言葉、云わば魅力的なキャンプという意味だ。
あらかじめ施設にキャンプ用品や食材・食事等が用意されているところで、気軽にキャンプできますよということだろう。
鵠は叩いていた雑誌を今度は食い入るように見て、
「ここね、プールもあってさ、ウォーターサバゲーとかできるんだって!」
ウォーターサバゲーと言っても本格的なものではなく、単純にプールで水鉄砲も使って遊ぶということらしく、鵠が右手で銃の形を作ってみせた。
水鉄砲で飽きたら、普通にプールで遊んで、夜は海沿いの街らしく美味しい海鮮のバーベキューを楽しめる。
グランピングだが、テントではなくアジアンテイストのコテージなので、疲れたらゆっくり休むこともできると鵠は楽し気に声をあげた。
「海鮮バーベキューも良いけど、アジアンフードも美味しそう!」
友達でも、恋人でも、一人でも、皆が気軽に参加してくれたらいいな! とさらに付け加えて鵠はそう笑みを浮かべた。
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お日様きらきら輝く空。
日頃の行いか、はたまた皆の気持ちのおかげか、例年よりも早い梅雨明けとなり、本日は晴天。気温も30度を超えていた。
夏らしい暑さを感じる今日は、イベントにうってつけだ。
グランピング会場も準備万端、プールもウォーターサバゲーができるようにと水鉄砲に、障害物用のエアバンカーも設置済み。
「……にしても、クッソ暑いなおい」
梅雨明けしたおかげで太陽もやる気満々の日差しに、狼炎・ジグ(恨み貪る者・e83604)が水鉄砲を手にして忌々し気に呟いた。
夏特有の湿気と日差しの強さは、やはり何度経験しても慣れるものでもなく。
ジグが水鉄砲の加圧を繰り返していると、背中に刺激的な冷たさが。
「おい! いきなり撃ち込んでくるな!」
「油断している方が悪いのよ?」
背後からの攻撃にジグが振り返ると、シーリン・デミュールギア(断罪天使・e84504)がポンプアクションタイプの水鉄砲を二丁構えている姿があった。
「油断……か。なら俺からの攻撃も食らえ!」
「ふ、甘いのよ……!」
先手を取られたジグだが、彼もケルベロスだ。加圧を済ませた水鉄砲の照準をシーリンに定めてトリガーを引く。
所詮おもちゃである水鉄砲の威力はたかが知れているが、一方的にやられ続けるのも面白くはない。
ジグもシーリンもこの青空の下で、譲らぬ戦いを続けていく。
水を浴びているおかげか、暑さはそれほど気にならなくなってはきたが、逆に違う意味で熱くなっているのは気のせいだろうか。
「そうだ、敵の攻撃がうざいなら殴って黙らせれば良いのよ……。我ながら名案ね……」
ジグから攻撃を避けていたシーリンだったが、そう物騒なことを口にした。
幸い彼女の手には二丁の水鉄砲があるのだ、どちらかを鈍器にしたところで問題はないのかもしれない。
「シーリン! お前怖ぇよ!」
目が座ったシーリンがじりじりとジグに迫りくる様子は、誰が見ても恐怖を感じるかもしれない。
ジグはシーリンから距離を取る為に、プールへ飛び込んで応戦する。
「殴って黙らすとかルール違反だから止めとけな。あとその眼止めろ!」
「フフ、大丈夫よ」
本気で殺りかねないシーリンに、ジグは必死の抵抗を見せていく。
そんな二人が戯れる中、他の水鉄砲に水を補充していた河野・鵠(無垢の足跡・en0303)に近づく人影があった。
「鵠、お誕生日おめでとう」
「お誕生日おめでとうございます、鵠様」
真っ白なスクール水着を着たリリエッタ・スノウ(未来へ踏み出す小さな一歩・e63102)と大きな丸眼鏡をかけたルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)がそれぞれ鵠にそう言うと、鵠は「ありがとう!」と笑顔を浮かべて返す。
「素敵な遊び場に、お誘いありがとうございました」
「ううん! 来てくれて嬉しいよ!」
「それと、こちらプレゼントですわ」
そう言ってルーシィドは、綺麗にラッピングされたそれを鵠へと手渡した。
くるくるとしたリボンに、可愛らしい包装紙。鵠が丁寧な包装を慎重に剥がしていくと、そこからは立派な瓶が姿を現した。
「うわぁ! シャンパンだ!」
「はい、お口にあえばいいのですが……」
「めちゃくちゃ嬉しいなぁ、あとでゆっくり飲ませてもらうね!」
鵠がさらに笑みを深めると、ルーシィドも笑顔を浮かべる。
「手ぶらでキャンプが出来るんだね。むぅ、それにプールもあるなんてすごいね」
水鉄砲を吟味していたリリエッタが、周りを見回してそう口にした。
キャンプの知識や道具がなくても、気軽に楽しめるようにと作られたこの場所は、本当に色々揃っているのだ。
「グランピングはもちろん、期待の涼しいプールも楽しみましょう!」
デデン! という効果音が聞こえてくるような登場の仕方をしたのはミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)だ。
ミリムは水着に浮き輪を装備している。完全装備の彼女に視線が刺さる。
「お、泳げないわけではな、無いですよ? ただ沈むのが得意なだけっ」
「ミ、ミリムさん何も言ってないよ?!」
視線を感じたミリムは浮き輪について突っ込まれる前にそう捲し立て、鵠もびっくりしたように叫んでしまった。
「リリも泳げないよ? んっ、水に浮ける人はとってもすごいんだよ」
なんてリリエッタが冷静に言うが、ミリムは一目散にプールへと駆けて行く。その手にはしっかりと水鉄砲も握られていたのは言うまでもなく。
あわわとなっている鵠を後目に、リリエッタも一番大きな水鉄砲を一つ手に取ってプールの端へと歩いていく。
リリエッタがプール端でぱしゃぱしゃしていると、ミリムがプールに飛び込んで、高らかに宣言!
「私に勝ったら後で美味しい海鮮焼き食べさせてあげますよー?」
まさかの海鮮焼きを掛けた死闘宣言。
ミリムの言葉に、ルーシィドも水鉄砲を借りて、ミリム達のもとへと急いでいく。
出遅れてしまったルーシィドにミリムが水鉄砲で攻撃すれば、きゃーと悲鳴がプールに響いた。
「ルー、協力しよ」
悲鳴をあげながら的外れな方向に水を発射していたルーシィドに、リリエッタが協力要請をかけた。それにルーシィドは二つ返事で承諾。
スナイパーポジションを活かした動きをするミリムだが、水補給の際には隙が生じる。そこが狙い目になるだろう。
水補給のタイミングを見計らってリリエッタがすかさず反撃!
「あわわっ! 慌てた拍子に浮き輪がぁー?!」
ミリムはうまいことリリエッタに反撃できたが、眼鏡が濡れて視界不良だったルーシィドはまたあさっての方向に水を発射してしまう。当たっていないはずなのに聞こえたミリムの悲鳴に、ルーシィドは慌てて眼鏡の水滴を払い視界を取り戻すと、
「あれ、ミリム様が尻尾に?って、ミリム様がさかさまですわー!?」
じゃぶじゃぶとプール内で慌てるミリムに、リリエッタとルーシィドが急いで救助にかけていくのだった。
「最強の私が率いるチームに挑むとは良い覚悟です!」
シャキーンとイルカ型水鉄砲を構えた華輪・灯(春色の翼・e04881)が、正面にいるケルベロス達にそう告げた。
プール際に集まって2チームに分かれた彼ら、その額には美津羽・光流(水妖・e29827)が持参したポイ付きヘアバンドを装着している。
Aチームには灯、ジェミ・フロート(紅蓮の守護者・e20983)、櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)、エトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)の四人。
Bチームにはシル・ウィンディア(鳳翼の精霊姫・e00695)、カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)、ジェミ・ニア(星喰・e23256)、光流の四人。
そして応援係として、羊のフロートに乗って優雅に浮かぶウォーレン・ホリィウッド(ホーリーロック・e00813)がいた。
「AチームもBチームも頑張れー」
フロートの上からウォーレンは両チームに声援を送ると、それを合図に一気に動き出した。
「ポイが破れても退場はナシや、本気で行かせてもらうで!」
地を蹴り駆け出していく光流に、それならばと広範囲に水を撒く作戦をとるエトヴァ。
エトヴァは広範囲弾幕でBチームをかき乱す作戦のようだが、Bチームはそんな広範囲弾幕に恐れることはなく。
「この白ジェミの俊敏な動きを見よ!」
「シルさん! いまのうちに攻撃しますよ!」
ジェミ・ニアの俊敏な動き。舞う様に、踊るように、Aチームを幻惑させるような動きだ。
素早い動きをするジェミ・ニアに狙いを定めるのは一苦労だろう、そのうちにシルの後方からカルナが後方支援を開始する。
大型ウォータバズーカーが火……ではなく水が吹くぜ! みたいなノリでガンガン応戦するシル。
「鯖芸、古式ゆかしい一対一で鯖を射抜く漁法。ここで対峙することになろうとは」
なーんてね☆ とジェミ・ニアはそんな冗談を言いながら、さらに速度をあげる。シルとカルナと光流の三人で集中砲火といこうとしたときだった。
「……誰かおさかなの話してマス?」
ここで弾幕を張っていたエトヴァの背後からぱさりと翼を広げる猫の姿が。
エトセテラがそのままエトヴァの背後から現れジェミ・ニア目掛けて突進!
「魚に釣られたということですか……、ですが僕はそんなに甘くはないですよ!」
カルナの狙いは灯。回避能力が上がっているなんて問題じゃない、確実に当ててみせるという強い意志がカルナにはあった。
「ふふん! ガード頼みましたよ、シア!」
にゃおーんと登場アナスタシア! 飛んでくるアナスタシアにカルナが目を丸くして驚き、水鉄砲の狙いがずれてしまう。
エトセテラをもふもふしていたジェミ・ニアは追加投入のにゃんこことアナスタシアも懐に入れ、さらなるもふもふを堪能し始めてしまい背後から水を浴びせられてしまうのはもうお察しだろう。
「猫がいればいつどこでもリアルに充実!」
敵陣を翻弄している灯の背後から順調にジェミ・フロートが撃って撃って撃ちまくっている今。さらなる狙いは……、
「おやおや、指輪がきらきら素敵じゃない! お相手さんとはどんな感じなの?」
ガチ勢っぷりを見せつけていた光流の元に、鮮やかな赤のジェミ・フロートが揺さぶりをかける。
「ジェミ先輩……惚気で隙ができると思うたら大間違いや」
暑い日差しの真下で水鉄砲を構えた光流が、応援してくれるウォーレンの声で本気を出す。これぞ愛。
「好きな人には良いとこ見せたいに決まってるやろ!」
「いいねー! いいねー!」
光流の言葉にジェミ・フロートのテンションも爆上がりだ。
すぐ近くのエアバンカーの影にいた千梨は、ひっそりと不意打ちを狙いながら彼らのやり取りを聞いていた。
誕生日祝いバーベキューと聞いていたら、まさかのサバイバル。三十路のガチを見せようと千梨は静かに心に決めていた。
そしてリア充をどんどん狙っていくのも、影からひっそりと聞いていたのだが……、
「あ、美津羽が離脱したな……」
三分しかもたへんのやなんて言いながら、ジェミ・フロートとやりあっていた光流が早々にウォーレンのもとへ避難している。
光流のガチ逃げを阻止しようかと、千梨がエアバンカーから移動しようとしたその時だった。
ふらりと、二つの影がしゃがんでいた千梨の上に落ちてきたので見上げれば、エトヴァとカルナがにっこりと笑顔を浮かべている姿が。
「あ、俺の事は水辺の妖精さんだと思ってどうか気にせず……」
左右と背後にはエアバンカー、まるで四面楚歌状態の千梨はそんなことを言って逃げようとするが、チームを超えた友情の前ではそれも叶わず。
「俺の友情は裏切られた」
狙い撃ちにされた千梨は恨み言を残して水浸しになってしまうのだった。
「あかん、もう無理や……」
「光流さんお疲れ様~」
ぷかぷか浮かぶウォーレンのもとへ光流が逃げてくると、ウォーレンはふふっと笑顔を浮かべて迎いいれた。だがその手は組まれており、ぎゅっと握れば即席水鉄砲に早変わり。
「隙ありー」
「レニっ、なにするんや」
完全に疲れ果て油断していた光流は、ウォーレンからの水鉄砲を顔面で受け止める羽目になった。
「もう皆、びしゃびしゃになったねー」
「本当に! シルさん……一騎打ちといきましょうか」
光流とウォーレンが戯れ、リア充狙い撃ちのジェミ・フロート、裏切られた友情に打ちひしがれる千梨、チームを超えた友情を育んだエトヴァとカルナ、もふもふタイムなジェミ・ニアと、個性豊かなメンバーが目まぐるしく広いプールを満喫している中のこと。
イルカ水鉄砲を構えた灯が地面を蹴り上げて、シルの懐へ潜り込む。
懐に潜り込まれたシルがピンチに……と思いきや、シルはにやりと笑ってカラフルなものを取り出した。
「本命はこちらですよ!」
「水風船!?」
軽快な破裂音とともに飛び散る残骸、両者が一気に水浸しになったのは言うまでもなかった。
●
水浸しになって、しっかりと遊んで、いい感じにお腹も空いた頃。
コテージ近くではバーベキューの準備が完了していた。
「遊び疲れましたね!」
右手にトング、左手に海鮮が乗ったお皿を持ったミリムが、そう言ってから素早く鉄板に海鮮を乗せていけば、リリエッタはその手捌きを見て、わくわく感を隠し切れない様子を見せる。
「わたくしも手伝いますわー!」
ミリムが海鮮を載せている横で、ルーシィドは野菜も載せていく。エビやイカ等が焼けていく音は食欲を刺激するには十分で。
「良い感じに焼けてきましたね!」
「うん、リリはこれ食べたい」
「こちらですね、リリちゃん。ミリム様もどうぞですわ」
焼けたものをルーシィドが皿に取り分けて、三人はぱくりと頬張った。
海が近いからかここにある海鮮類は新鮮で、その美味しさにほっぺが落ちてしまうのではないかと思うくらいで。
ミリムもリリエッタもルーシィドもワイワイと、海鮮焼きを堪能していく。
海鮮焼きの漂う場所からそう遠くもない場所。そこには冷たいデザートを用意してくれている一角がある。
赤、青、緑……綺麗な色のシロップと、南国のフルーツが並んでいるテーブルにジグとシーリンが座っていた。
「やっぱり夏といえばかき氷よね……」
たっぷりシロップがかかった氷の山をスプーンで一匙掬って口に運べば、ひんやりとした冷たさが口内に広がっていく。
シーリンはかき氷を味わいながら、ふと傍らに積まれたお皿を数えた。
「これで15杯目だったかしら?」
「シーリン、かき氷15杯も食ったのか……」
まさかの数にジグが呆れたようにそう口にする。明らかに一人で食べる量ではないのだ、きっと誰だって呆れてしまうだろう。
「よく腹壊さないな……ってか太るぜ」
「太る? 何を今さら……」
最後の一口を食べきって、シーリンはジグを気にせず追加のかき氷をオーダーするのだった。
楽しいチーム戦を繰り広げていた9人も、お腹を満たすべくコテージの方へ集まってきていた。
目の前に広がる海鮮、お肉、野菜はまるでお宝の様に見えているのかもしれない。
そんな中、ジェミ・ニアがしれっと一升瓶を取り出していた。
驚いて目を丸くする灯が一升瓶の正体を聞こうとするよりも早く、ジェミ・ニアが、
「アイスハーブティーですが、何か?」
なんて、なんでもないように答えて琥珀色の液体をプラカップに注いでいく。
「ハーブティーですか……私もこれで乾杯していいです、か?」
まだお酒が飲めない灯も、ウィスキーの色に似たハーブティーで皆とお揃いの気分になれたらしく、嬉しそうに笑みを浮かべていた。
各自がお酒やお茶などを手にし、近くでルーシィドに貰った高級シャンパンを開けていた鵠を呼ぶ。
「それじゃシルさん、鵠さん、お誕生日おめでとう」
ウォーレンの乾杯の音頭に合わせて聞こえるおめでとうの言葉。
シルと鵠は二人顔を見合わせて、太陽よりも輝く笑顔で「ありがとう!」とプラカップをあげて答える。
「それにしても、海鮮豊富なんは嬉しいわ。レニもいっぱい食うんやで」
「うん、ありがとう光流さん」
光流が次々と焼きあがる海鮮をウォーレンのお皿に載せていくと、空いた場所にエトヴァがお肉と野菜もどんどん鉄板に並べていく。
「いっぱい焼きまショウ、どんどん食べてくだサイ」
エトヴァは炭水化物もいるだろうと思い、広い鉄板の上にパッタイも一緒に焼いていっていた。
夏、水辺、BBQ。三点の最高のエンチャントが付与されたビールを飲み干した千梨は、焼けた海鮮をいくつか食べてからすぐに、追加の食材をエトヴァと共に並べていく。
「サボらない俺は貴重だぞ。しっかり味わえ、若者達」
最年長の千梨の言葉に、「はーい!」なんてしっかりした声が返ってくる。
「スタミナをつけるため肉もだーいじ! けど、野菜もガンガン食べましょう!」
「いや、ほら、野菜は……」
「お野菜も美味しいよ! ほら、カルナさん!」
先ほどからずっと野菜を避けていたカルナに、ジェミ・フロートとシルが焼きあがった野菜を載せていく。
香ばしい焼き目のついたとうもろこしに、ほくほくと焼けた人参。
うぅっと唸るカルナに、ジェミ・フロートがしっかり食べなさい!と発破をかける。
「健康的ないけめんはさらにいけめんよ!」
「まぁ、少し位なら……」
本当ならお肉と海鮮だけを食べようとでも思っていたカルナだが、観念して載せられた野菜を口に入れていった。
「何でも食べるいけめんさん、ステキです」
何でもバランス良く食べていた灯は、カルナに野菜をあげる皆ににこにこと笑顔だ。
灯が頑張って野菜を食べるカルナにステキなんて言葉を送ると、カルナは自分の皿に広がる野菜をしぶしぶ食べていくのであった。
「さらに追加の食材きたよー!」
けっこうな量があった食材はあっという間になくなり、追加の食材が9人のテーブルに届く。
パッタイ、海鮮、その他諸々を山の様に皿に載せ、余すことなく平らげたシル。20歳になったシルの手には梅酒のソーダ割りがあった。お酒が解禁となって初めて飲んだお酒は甘くてしゅわしゅわで、とてもすてきな味がするようで。
「こうやって、お祝いされるとやっぱりうれしいよね、鵠さんっ♪」
誕生日が一日違いの鵠に、シルは可愛らしい笑顔を浮かべてそう伝え、鵠もそれに答えるように大きく頷いたのだった。
作者:猫鮫樹 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年7月22日
難度:易しい
参加:14人
結果:成功!
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