シャイターン襲撃~流るる赤き雫

作者:黒塚婁

●流るる赤き雫
 東京都府中市――魔空回廊から現れたヴァルキュリア。そしてそれらは、三体一組に四手に分かれた。
 その一組。
 住宅街に飛来した三体のヴァルキュリア達は宙で視線を巡らせる。人を見かけるや否や、言葉を発することもなく、一矢を放つ。
 見事に額を射貫かれた者が、仰向けにどうと倒れた。
 初めこそ何事かとうろんそうに眺めた人々だったが、眼前に浮かぶヴァルキュリアに気付く。
 沈黙は一瞬。
 悲鳴をあげて逃げ惑う人々を、地に降りて槍をもって追うヴァルキュリア。その反対側から、斧を振るうヴァルキュリアが回り込む。別の通路に逃れようとする人々を、次々と射掛けるヴァルキュリア――彼女達の表情は一様に凍り付いたように動かない。
 だが、その白い頬に――赤い涙が伝う。
 彼女達の心の内は解らぬが、少なくとも身体は淡々と武器を繰り、グラビティ・チェインを狩るべく殺戮を続ける。
 救いを求める、その祈りは届かない――。
 
●命、弄ぶもの
 集まったか、と雁金・辰砂(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0077)は腕組みを解いて、ケルベロス達に向き合った。
「城ヶ島の一件も佳境に入ったところだが、エインヘリアルの方も動いたようだ――鎌倉防衛戦で失脚した第一王子ザイフリートの後任として、新たな王子が地球への侵攻を開始した……との事だ」
 エインヘリアルは、ザイフリート配下であったヴァルキュリアをなんらかの方法で強制的に従え、魔空回廊を利用して人間達を虐殺してグラビティ・チェインを得ようと画策しているらしい。
 そこまで語り、辰砂はひとつおく。
「数多の都市に、ヴァルキュリアの襲撃があるという……その中で、今回貴様らに向かって貰うのは、東京都府中市の、とある住宅街だ」
 そのヴァルキュリア達を従えるのは、妖精八種族の一つシャイターン。
「都市内部のヴァルキュリアに対処しながら、そのシャイターンを撃破する必要がある……こちらは、そのヴァルキュリアの対処にあたることになる」
 襲撃を仕掛けてくるヴァルキュリアは三体。それぞれ、ルーンアックス、槍、妖精の弓で武装している。
 彼女達はグラビティ・チェインを奪う事を目的としているが、その妨害をする者があった場合、それらの排除を優先するよう命令されている。
 ゆえにケルベロスがそこに駆けつけるだけで、ひとたびは一般人の虐殺を止めることができる。
 しかし、都市内部にシャイターンがいる限り、ヴァルキュリア達の洗脳は強固であり、何の迷いもなくケルベロス達に攻撃を仕掛けてくるだろう――だがもしも、シャイターン討伐の後であれば、状況は変わってくるやもしれぬ。
「もっとも、確実に……とは言えん。操られているヴァルキュリア達は不憫な面もあるとは思うが、それと一般人の虐殺は別の話だ」
 つまるところ、ヴァルキュリアを討ち取る覚悟をもって挑むのに変わりは無いと、辰砂は淡々と言う。
 そして、状況によっては更に一体のヴァルキュリアが援軍にくる可能性があると彼は付け足す。
「新しい敵、新しい王子……何を持ち出そうとも、奴らの思惑など挫いてやれ。地球にはケルベロスがあるのだと」
 気を抜かぬようにな、と静かに辰砂は告げ、説明を終えたのだった。


参加者
キャスパー・ピースフル(壊れたままの人間模倣・e00098)
ゼロアリエ・ハート(妄執のアイロニー・e00186)
メリーナ・バクラヴァ(ヒーローズアンドヒロインズ・e01634)
ヴェルセア・エイムハーツ(無法使い・e03134)
狩谷・虚空(月下の舞闘曲・e03811)
ブランシュ・ヴァルディアブ(おめんやさん・e08260)
シエラシセロ・リズ(勿忘草・e17414)
ラズリア・クレイン(蒼晶の乙女・e19050)

■リプレイ

●遭遇
 一般人に避難を呼びかけながら、ケルベロス達は住宅街を駆ける。探さなくとも、弓を持つヴァルキュリア――アダは凍り付いたような無表情で街を見下ろしている姿は直ぐに見えた。
 そして、逆も然り。
 すぐに二人のヴァルキュリアも彼らの前に現れる。彼女達の表情もまた、無であった。
「邪魔しにきたよ!」
 薄紅の翼を広げ、癖のある金の髪に勿忘草を咲かせたシエラシセロ・リズ(勿忘草・e17414)が声をあげ、アピールする。
「キミたちの目的はコッチでしょ? ほらっ相手してあげるよ!」
 黒いコートの裾から武器を覗かせつつ、ゼロアリエ・ハート(妄執のアイロニー・e00186)は笑顔で挑発する。
 まるで相反するものが対峙している――命を無作為に奪うため、強制的に動かされ、表情、言葉ひとつ選べぬもの。朗らかに笑いながら、救うためにやってきたもの。
 よくできた舞台だとメリーナ・バクラヴァ(ヒーローズアンドヒロインズ・e01634)は穏やかな表情の下、苦いものを飲み込む。
「斧に、槍に、弓……カ。さすが天使サマはいい装備使ってんナ。こりゃ個人的な仕事も捗りそうだゼ」
 相手の持ち物を物色しつつ、口元を笑みで歪めたヴェルセア・エイムハーツ(無法使い・e03134)が、ふと視線を感じて首を回すと、キャスパー・ピースフル(壊れたままの人間模倣・e00098)と目が合う。咎めるつもりではないようだが――互いの事を多少は知っているつもりだ――彼は構わず、嘯く。
「助けたいっていうなラ、確りやれヨ――殺さないように手加減なんてできるほど俺は強者じゃねぇからナ」
 宣言にして、警告。相手は決して弱者ではない。
「……全てを救えるなんて思わない、だがそれでも。救えるなら最後まで望みは捨てんよ」
 目を閉じ、ケルベロスチェインの感触を確かめながら、狩谷・虚空(月下の舞闘曲・e03811)は小さく呟く。
「どっちでも構わないけどさ――来そうだよ」
 頭上に巨大なショクダイオオコンニャク、顔はテレビウムを模した仮面という奇妙な出で立ちのブランシュ・ヴァルディアブ(おめんやさん・e08260)が言う。頷き、キャスパーは三人へと言葉を投げる。
「無理矢理動かされてんのは辛いよな、少しの辛抱だぜ! 何がどうしてこうなってんのかは知らねえけどデウスエクスと言えど言葉が通じないワケじゃないんだから後で事情聞かせろよな」
 ゾディアックソードを構えたラズリア・クレイン(蒼晶の乙女・e19050)はブルーサファイアの瞳をヴァルキュリア達に向け、自らに言い聞かせるように、囁く。
「この戦い、絶対に負けられませんの」

●五分の攻防
 ルーンアックスを肩に乗せるように担いだイラが、そのままの体勢で跳躍する。
 柄を両手で握り、全身をバネのように威力を乗せて振り下ろされた一撃を、メリーナが下から受け止める。
 虚空のサークリットチェインによる守りで軽減されたにも関わらず――縛霊手から伝わる衝撃は重く、全身が痺れる――藍の瞳で、すぐ近くにあるイラの顔を見る。強ばった無表情は不自然で痛々しい。
「油断大敵だゼ?」
 前に立つ仲間達の影に潜みつつ、ヴェルセアが氷河期の精霊を呼ぶ。
 狙いは槍を構えるヴァルキュリア――ヘリュだ。彼女は槍を真横に構え、吹雪を堪える。動かず耐える彼女の眼前へ、詰め寄ったのはブランシュ。
「……あなたのお面は要らない」
 ショクダイオオコンニャクが更に大きく、槍を構えたヘリュの顔を覆うように巨大化する――顔面崩壊、そう名付けた近距離からのエネルギー接射。
 相手が数歩後退るに合わせ、飛び退いたブランシュと入れ替わりに、ふたつの時空凍結弾が奔る。それを打ち払うように振るわれた槍と腕が凍っていくのを見たラズリアの視線が、ふと上を向く――天へと放たれた一矢が、放物線を描いてこちら側に落ちてくる。
 その狙いはシエラシセロ。彼女は時空凍結弾を放った直後、それを見つめたまま動けない。
「シェラ!」
 名前を呼ばれた瞬間、道路に倒れ込む。気付けば駆け寄ったゼロアリエと共に地に伏せていた。驚きよりも先に、彼女は幼なじみを案じた。
「ロア、大丈夫?」
「当然」
 彼は笑顔を見せる――その背には深々と矢が刺さっていたが、気にせずに彼女の背を押す。
 ミミックのホコロビへと指示を出しながら駆けつけたキャスパーは、矢を眺め、どうするべきか僅かに唸ったが、意を決して引き抜くことにした。
「我慢してな、ゼロアリエの旦那」
 痛そうだという呟きに本人は小さく笑うが、その傷は浅くはない。ヒールドローン二機がすかさず近づき、癒やす――それとほぼ同時、ヘリュが気合いの一声を放ち、大きく槍を旋回させた。
 氷こそ消えぬが、皆で与えた傷が塞がっていく。
「これからが本番、といった気迫ですわね」
 凛と剣を構えながらラズリアが注意を促す。
 それでも、と頷いたゼロアリエは好戦的な笑みを浮かべ、決めていた目標を言葉にする。
「援軍到着前に、ヘリュだけは全力で撃ち落とすよ!」

 氷が奔った――身体の殆どが氷に覆われつつあるヘリュが、槍を正面に構えて突撃してきた。ホコロビがその身を半ば凍り付かせ、動きを止めたところに振り下ろされるは輝く斧の一閃、相棒を案じるより先、キャスパーは虚空と共に仲間を癒やねばならない。
 返礼のバレットストームが、前に進んだ二人を迎える。
 弾幕に隠れて後ろに下がったヴェルセアと入れ替わり、両腕で振り上げたおのを垂直に振り下ろす――ブランシュのルーンディバイドがヘリュの背を強かに打つと、身を守る鎧が砕けた。
 深手を負った――確信したシエラセロは脚を狙う時空凍結弾、ラズリアは威力を弱めた一撃をそれぞれぶつける。
「私はあなた方を倒します。けれども、絶対に死なせはしません……!」
 ゾディアックソードの一撃による衝撃で、槍を取り落としたヘリュは、目を瞬かせる。
 遅れて、かくんと一度片膝をついたが――深い傷を負った肩を押さえ、蹌踉めきながら、彼女は地を蹴った――ケルベロス達とは、違う方角へ。
「……何処へ!?」
 思わず虚空が声をあげる。だが、二人のヴァルキュリアは道を遮断するように前に出た。
 その表情は相変わらず無に近いが、視線には意志があった――ヘリュが撤退するまで此処は通さぬ、と。
 ――その時だった。
『2体のヴァルキュリアが飛び去ったのを確認したのです。皆さん、どうかご武運をっ!』
 シャイターンとの戦いに向かう者から、通信があった。
「はい、こちらキャスパー……なるほど了解! 確かに情報連携承ったぜ! そっちもご武運を……みんな来るぞ! 構えろ!」
 応答しながら、キャスパーは仲間達へと視線を巡らせる。それは、覚悟を促すものだった。

●六分の死闘
 シャイターン撃破まで彼女達を殺さぬように戦う――言葉にすれば単純であるが、言葉ほど容易な事ではない。それほど、ヴァルキュリア達は強く、攻撃的だった。
「……っ」
 ルーンディバイドの強烈な一振りを受け止め、メリーナは歯を食いしばる。
 何度もその身を投げ出すように、止めてきた。結果、彼女の防具もかなりぼろぼろになっている。癒やしてもすぐに傷付くために、血は常に乾かず流れている。
 更に、横からもうひとつの斧が彼女を襲う。
 何とかイラを突き放し、もう一人のヴァルキュリアの懐へ飛び込む形で躱すが、肩に焼けるような痛みが走る。
「メリーナさんっ!」
「こらこら、私のことなんて振り向かないで戦ってくーださい♪」
 思わず声をあげたシエラシセロに、メリーナは朗らかな声を返す。その視線は相対するヴァルキュリアから外さず、そのままの姿勢で押さえ込む。押し負ければ、その刃は更に深く、彼女を傷つけるだろう。
(「デウスエクスに憎悪はなく、ただ……あは、役者失格ですね。気持ちがぐちゃぐちゃです」)
 見下ろすヴァルキュリアの瞳は何処か物悲しい色をしており、その端に赤い雫が見える。
「……お願い。私を壊れるまで盾にして構いません……私ができない分、あの子たちを救って」
 誰にでもなく誰かに向けて、メリーナはひとりごつ。
 すると、呆れたような吐息が背後から聞こえたような気がした。
「行くゾ、ポンコツ」
 直後、背後から強烈な吹雪がヴァルキュリアを押しやる――メリーナのお嬢、今治す、とキャスパーが声をかけてくる。
「荒治療だけど我慢してな!」
 豪猪の二律背反――宙で匣から放たれた鎮痛剤を塗布された針が、彼女の痛みを和らげた。更に虚空のウィッチオペレーションが簡単にだが、傷を塞いでいく。
 相手が退いた距離を詰めるようにブランシュが駆ける。
「ぶっ飛ばすよ!!」
 豪快なルーンディバイドで相手を更に後方へ押し込めると、涼やかな詠唱が背後より響く。
「始原の楽園より生まれし剣たちよ。我が求めるは力なり。蒼き輝きを放つ星となりて敵を討て!」
 忘却の楽園に降る星の剣――ラズリアの周囲に魔法陣が浮かび上がり、蒼く輝く剣が次々と生み出されると流星群のように降り注ぐ。
 飛んでくる矢をゼロアリエ――彼のコートも随分ぼろぼろになっている――がフォートレスキャノンで撃ち払い、シエラシセロが炎を纏った蹴りを後方から放てば、道路を舐めるよう炎が奔る。
 炎で覆われ、一方で凍り付いた脚のまま、臆せず再びヴァルキュリア達は仕掛けてくる。
 負けじとゼロアリエとメリーナがそれぞれを引きつけるように、迎撃する。
 しぶといナと毒づきながら、ヴェルセアは相手を怯ませるべくバレットストームを放つ。目に見えて、イラの動きが鈍くなりつつある。
 虚空がそれを示唆すれば、再びラズリアはわざと急所を外し剣を振り下ろした。
 低く呻いたイラは翼を広げて飛び去り――これで、残るは二人。

 そして再び、通信が入る。
『シャイターンを撃破っ! もう戦乙女を縛る物は何も無くなったのですよ!』
 待ち望んだ瞬間が、やってきた。

●十一分後の解放
 報せの直後、不意にアダがヴァルキュリアへと矢を向けた。
「違う……こんな戦闘は違う!」
 そう叫び、首を横に振るう――しかし、仲間を射た後には再び無表情に戻ってケルベロスに狙いを定める。射られた方もケルベロスに向かい回復のルーンを向けたりと、どうやら洗脳と催眠が行き来する混乱状態に陥っているようだ。
「とりあえず落ち着こう」
 まず虚空が声を張り、注意を引く。
 そして、両手のケルベロスチェインを手放し、再び声をかける。
「洗脳も解けた今、これ以上戦う必要は無い。こちらは矛を収める、君達も矛を収めてくれないか?」
 だが、無防備な彼への返答はルーンアックスの一撃――を、躊躇うことなくメリーナは受け止め、その距離で、彼女達が置かれている状況、ザイフリートの事を淡々と説明する。
「この現状、互いに放置はできませんよね? でしたら、一緒に戦えませんか! 散々殺し合った仲、信頼しろとも全て許せとも申しません。でも――お願い、です」
 ヴァルキュリアは答えない。
 でも声は届いている――今まで何度もこの距離で彼女達の顔を見てきたメリーナには解る。
 説得する理由だけど、とブランシュはデウスエクスに対するケルベロス達の戦力不足を理由にあげる。
「私達は別に救いの勇者ってわけでもないけどさ。ヴァナディースが人質で逆らえないんだっていうなら、イグニス相手に共同戦線くめばいいんじゃないかなー、こっちは困らないし」
 それはお互いのメリットになる、あっけらかんと本心を告げる。
「俺達と戦うのは本心じゃないんだよね? 知らないヤツに好き勝手されんのも女のコ乱暴に扱うのもムカつくから、キミ達も何とかしたいってんなら力になりたいな」
 ゼロアリエは屈託無く笑いかける。
 彼女達の顔が見える位置まで前に出て、シエラシセロは懸命に呼びかける。
「苦しんでるキミ達を助けてあげたいんだ。王子も助ける方向で仲間も動いてる。今つらいと思うならボクらがきっと助けるから手を取ってほしい。泣くくらいなら抗って――その理不尽に全力で戦って!」
 ヴァルキュリア達は戸惑う。
 ここまで戦って傷つけ合った相手へ、攻撃を投げ打ち、案ずる言葉をかけてくることに。
 そんなケルベロス達に向かい、一人のヴァルキュリアは再び攻撃の姿勢を見せたが――。
「……もうやめましょう、エルシ」
 アダが囁くような声で告げる。弓を下ろして、彼女は前へと進み出る。困惑の表情を浮かべたエルシは留まり、その背を見守る。
「命令されたこと、今の状況は理解できています。その上で……彼らは武器を下ろしたのです。戦う理由はもうありません」
 澄んだ瞳で真っ直ぐケルベロス達を見つめ、彼女はそう言葉を紡いだ。
「だったら……」
 虚空が身柄の保護を提案すると、アダは静かに頭を振った。
「今は未だあなた方と共に行くことはできません。退いた仲間も気になりますし……ただ、感謝します。あなた方は彼女達を殺さず、逃してくれたのですね」
 その言葉に、それぞれ思うところはあったものの――説得を貫けてよかったと、ブランシュは傷だらけの仲間達を仮面の下で眺めながら思う。
「何か困った事があれば頼って下さい」
 ラズリアが連絡先を手渡せば、アダは素直に受け取った。
 今、同じ場所へ帰れないのは残念だが、と虚空は心から零しつつ、
「俺も含めてだが、君達と交流したいケルベロス。結構いるんだぜ?」
 そういって笑みを見せる。
「アダさんと、エルシさん、だっけ? 信じてくれてありがとう。これからよろしく!」
 シエラシセロが前に進んで右手を差し出す。物怖じしない姿に、ゼロアリエさえ一瞬虚を突かれたものの――アダはその手を握り返し、微笑んだ。
「あなた方の言葉が真実ならば、再び会えるでしょう。共に戦い、ゆっくりと語り合える日が来ることを」

「残念だったな、ヴェルセアの旦那」
「何がダ、ポンコツ」
 去って行くヴァルキュリー達を見送りながら、ふと向けられたキャスパーの言葉に、ヴェルセアはあらぬ方を見たまま意味を問うた。
「ヴァルキュリアは皆撤退して、成果なし……って、あれ?」
 だが、よくよく見れば彼は何かを手にしている。あれは白銀に輝く戦乙女の――瞬時に隠されてしまったため確認することはできなかったが、彼は人の悪い笑みを浮かべて言う。
「殺さないでやったんダ、これいくらい文句はねぇよナ?」
 そのやりとりにメリーナは困ったような笑みを浮かべた。でも、そういうものなのかもしれない――種のために命を蹂躙するものと、地球を守るためにデウスエクスに死をもたらすもの。
 私達は、空を見上げて呟く。
「譲れない物のために、似た者同士で殺し合ってるだけ……知ってますよ、ずーっとね」

作者:黒塚婁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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