冬美の誕生日~スイーツバイキングはナメ放題

作者:大丁

 6月。梅雨の時期。
 軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)は、どんな天気でも部屋の中でも、フード付きのポンチョ型レインコートを着ている。
 いや、ときどき脱いではいるけども。
 あの雨具は、生まれた日に関係あるのか、と考える者もいた。それはともかく……。
「スイーツバイキングの予約がとれたから、わたしの誕生日がてらパーティしよう!」
 冬美から、ケルベロスの面々にお誘いがくる。
「デウスエクスとの戦いも、もうひとガンバリ。そんな情勢だからこそ、みんなで甘いモノでもペロペロして英気を養おうってわけよぉ」
 いつでも元気な人が飛び跳ねる。
 会場は、高級ホテルにはいっているレストラン。
 日によってスイーツバイキングを催しているが、今回はケルベロスの貸し切りだった。
 レストラン支配人の女性は、ケルベロスにはとくに好意的で、お誕生会用になら飲食物の持ち込みや調理場の貸し出しも許可してくれるという。
「お店のケーキの種類も豊富よぉ。たいていのものなら頼めるぅ。お腹いっぱいになっちゃうから、服装は緩めのほうがいいかな」
 そう言って冬美は、ポンチョの脇から手をだして、スナップをぱちぱちと外しはじめた。
「支配人さんがね。貸し切りなのと、気軽に楽しんで欲しいからってことで、ドレスコードもなしでいいって♪」
 え、都市部の高級ホテルなんでしょ、と顔を見合わせる者たちもいたが、冬美のかっこうで大丈夫なら、そういうものなのかな、とパーティ参加を表明した。


■リプレイ

●バースデー
 純白のテーブルクロスに手をついて、同じくらいヒラヒラしたレインコート姿が立ちあがった。
「さて、最初のオーダーぶんは、みんなに行きわたったかな?」
 高級ホテルのレストランには場違いな格好でも、軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)の様子はいつもと変わらない。
「「はーい!」」
 と、応えた人々も、似たようなものだったし、脇に控えたレストラン支配人も、白いポンチョを着ていた。
「軽田様とお揃いに、とアンナ様がご用意くださいました。さ、乾杯の音頭もお願いします」
「えっ、あの、私でいいんですか……?」
 紹介された、カフェ・アンナ(突風はそよ風に乗って・e76270)は、照れながらもグラスを手にした。
 その姿は、あえて依頼時のレスキュー装備。オドオドとした態度とは裏腹に、イボ付き双頭をコネクトさせて勇ましい。
「ハ……ハッピーバースデー、冬美さんっ! 乾杯!」
「「乾杯!」」
 スイーツバイキングは、オーダー式とビュッフェ式の混合だった。
 丸テーブルに座席が用意されて、立食ではないものの、ビュッフェボードへと移動するついでに、来客はあちこちへと席を代わるようになる。
 バンダナを巻いた青髪の青年が、冬美のもとに来た。
 日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)だ。
「軽田、おめでとうな。こんなとこ、一人だとちょっと入り難いから、いい機会だったよ。ありがと」
「うん、ゆっくり楽しんでいってねぇ。……あむっ」
 プリンをふたつのせた皿に取り掛かっている。レインコートの胸元が緩くて、立っている蒼眞からは、合計4つの山がプルプルと揺れているように見えた。
(「おっとぉ。しかし、ここでダイブするのは、いくらなんでもな」)
 軽く手をふり、蒼眞もボードへと。
 代わって、叢雲・紗綾(無邪気な兇弾・e05565)と叢雲・蓮(無常迅速・e00144)の姉弟が顔をだした。
「冬美さんお誕生日おめでとうございますー♪」
「冬美姉、おめでとうなのだよ~♪」
 弟の蓮は、学ラン姿だが、姉の紗綾はずいぶん着崩した制服だった。丈の短いシャツの、胸元を大きく開けている。
 いわゆる、アメカジだ。
「ありがとうねぇ。紗綾ちゃんは、締め付けないようにしてきたのかな?」
「大胆でしたか? ……くす」
 本当のアメカジなら、見せブラがシャツから出ているものだけれど、それがない。ウリウリと肩を揺すってアピールする相手は、蓮。
「ボ、ボクはスイーツをゲットしにいくのだよ~」
 弟くんは、視線を上向きにして、その場を離れていった。
「ほんとーわぁ、ふたりでデートに来たんでしょお?」
 露出ヘリオライダーはお見通し、といった態度でノーブラの乳をつつく。
 紗綾が、またくすりと笑っているあいだに、蓮のように照れている場合でないような格好のケルベロスがふたり、席にやってきた。
 というのも、安尻・咲笑(跳惑ガーネット・e30371)は彼女なりの正装、いつもの白褌。
 三本のリボンがトレードマークのエル・ネフェル(ラストレスラスト・e30475)は、今日にかぎってリボンもなしの、普段以上に全裸。
「冬美さん、お誕生日おめでとうございます……!」
「誕生日おめでとうございます! お招きありがとうございますねー」
 エルが、腕をまわしてきたので、冬美もそれを受け入れ軽くハグすると、咲笑は横から頬にキスをした。
 続けて、ポンチョの脇のスナップが外れているのをいいことに、中に手を差し入れる。
 だが、そこにあった肌の感触に、咲笑はびくっとなって、手をまた戻した。
「あの、えと、普段はあまり冬美さん自身と相対する機会がないので知らなかったのですが、ポンチョの中にはタイツみたいな黒っぽいの、着ていませんでしたか?」
 その質問にはなぜかエルが答えて。
「んんー。見えるひとにはそうというか、本当は影みたいなものといいますか……」
 すると、さらに口を挟みにきた男がいて。
「ま、今日は普段より緩い格好をしているってことでよろ~」
 地獄化した耳をもつヴァルキュリア、白焔・永代(今は気儘な自由人・e29586)その人であった。

●プレゼントとスイーツ
「て、ことで誕生日おめー」
「永代くんは、目の保養に来たのねぇ。でも、ようこそぉ」
 ご指摘のとおり、青年は冬美だけでなく、集まっていた女性たちの姿を堂々とガン見してくる。
「うん。エルちゃんはリボンもなしの無修正なんだねー」
 まあ、と紗綾は、ほりだしかけた胸を手で覆い、咲笑も口を尖らせた。
「男性には、見られたくはない、です、が」
 ふたりが離れるのも、サンキュー、サンキュー言いながら、永代は見送る。
「咲笑ちゃん、だっけ? 前にもそんなこと言われたねん」
 そして、ぶら下げていた紙箱を差し出した。
「スイーツバイキングって事で無粋かとは思ったんだけど、冬美ちゃんは甘味好きっぽかったから、これ、たい焼きの差し入れ」
「ありがとぉ♪」
 片手にエルを抱きながら、ぴょんと跳ねて受け取る。
「俺の世話になってる所の品で、結構評判良いんだよん? アンコとカスタードとチョコの詰め合わせになってるから、お土産にでもねん」
 などと、言いながら、冬美の捲れあがったポンチョの中身をしっかりと確認している。
「……あ、此処はチョコバナナとかの方が良かった?」
 イタズラ気味に、ペロっとだけ触ると、けっこうまんざらでもない状態。それを見たエルがポンと手を打った。
「わたしからもプレゼントがありました!」
 身一つでバスに乗って徒歩で会場まできた彼女にも、入れて置ける場所があって。
「例の水着のお返しです。つけてみてください」
「プールにエインヘリアルが出現したときのねぇ。入るかしら」
 大きさと形は、親指と人差し指でつくったU字くらい。
 シリコン素材のそれが、ビラビラの内側を支えて、奥まで見えるようにしている。
「またナイスな目の保養。俺のチョコバナナがあっても、勝てなかったよん。おめおめー!」
 その後も、かわりばんこに出席者が挨拶にきた。
 なかにはエルが依頼を通じて知り合って、声をかけた元被害者もいる。一般人とはしょっちゅう交流し、ケルベロスカードを配っていたから。

 ビュッフェボードでは、チョコを巡って男ふたりがドギマギしていた。
「……スイーツってこんなに種類があるものなのか……?」
 蒼眞は、まっさらな取り皿一枚を手に、右に行ったり左に行ったりしている。
「名前すら聞いた事もないようなものばかりだし、説明文を読んでも材料やらの単語そのものが分からないものも多いし……」
 どんな時にも迷わず手を出すはずの青年の、珍しく物怖じした態度に、蓮は声をかけずにいられなかった。
「蒼眞兄は、どうしたのだ?」
「あー。……取り敢えずチーズケーキ辺りから……と思ったんだけど。……うん、分からん」
「そっか、美味しそうなのばっかりで目移りしちゃうのだ♪」
 蓮はといえば、躊躇なくミニケーキを皿に盛っていく。そんな少年に青年は教えを請うた。
 とりあえず、どれからいくべき? と。
「このガトーショコラかな。外がカリっと焼き上がってて、たぶん中身は柔らかい生チョコになってそう。絶対に好きだもん♪」
 屈託のない笑顔に、蒼眞は察しつつも、問うて。
「……好きって、誰が?」
「紗綾姉!」
 だろうな、とブレない姉弟愛に、聞いた相手がちがってました、と蒼眞も観念し、適当にスイーツを積み始めた。
 そもそも、言われてみれば、蓮の皿はチョコレート色に偏っているではないか。
 せっかくなので、ガトーショコラとやらも取り、運ばれてきたばかりのパフェももらう。
「あれ、軽田……じゃないな、店員までポンチョ着てるぜ?」
「カフェ姉が『仲良し』になった印に着せてるみたいなのだ」
 支配人だけだった冬美とのお揃いが、フロアのスタッフに行きわたりつつある。厨房のほうから艶のある声も聞こえてきたりして、あのイボ付きでかたっぱしから手を付けている様が想像された。
「甘いの食べ放題のナメ放題、かよ。そういやカフェのやつは一般人を連れて逃げるのが上手だったよなぁ」
 蒼眞には、助けた巫女さんを預けたら、あっという間に食べられた経験もある。が、それには、蓮も一言あって。
「わふ? 蒼眞兄もお持ち帰りは得意だったのだよ?」
「……はは。んじゃ、席にもどって、ケーキ食おうぜ」

●ナメ放題
 冬美の隣に戻ってきた咲笑は、フルーツ盛りをテーブルに置いた。
「お嫌でなければ、……宜しいでしょうか?」
「ん……。お願いよぉ」
 かわいいピックに刺されたイチゴは、いったん咲笑の口に含まれると、尖らせた唇から突きだされた。冬美は、すぐにそれを受け入れて、口移しにイチゴをもらう。
「あむぅ……むちゅ」
 最初はぎこちなく、次からは大胆に、果実が渡る。
 冬美が咀嚼するあいだ、咲笑の唇は首筋から胸元へと下がっていき、ポンチョの留め紐を探り当てると、咥えて引いた。
 緩んですべり落ちていく、感触。
 ごくりと、喉を鳴らす音。

「はい、次はイチゴのショートケーキ。あーんしてくださいです……ふふ、美味しいですか?」
「うん! 紗綾姉はボクの好きなお菓子ばかり持ってきてくれたんだね」
 蓮はモンブランと交互に食べさせてもらっていた。
 そして、姉の口にも集めたチョコ系を運ぶ。
「……ん、美味しいです♪ 蓮くんも紗綾の好きなの取ってきてくれたです♪」
「あ……ガトーショコラの中身、思ってたよりトロトロだったのだよ?!」
 アメカジの開いた胸に、溶けたチョコがかかる。
 紗綾はスプーンを置き、両手を蓮の首にまわした。
「……直接食べにきてもいいですよ♪」
 貪るように、顔をうずめられて、とっくにナメきっても、舌の動きは衰えない。
 乱れたシャツからはみ出したものも吸われて、紗綾はあっと、のけぞった。
「……!」
 空いたテーブルをふたつ挟んだ先に掛けている男性。イチャイチャしているところを、ずっと見られていたと気が付く。
 永代だ。
 相変わらず、遠慮なしのガン見である。
「れ、蓮くん? この後……ホテルのお部屋、取ってあるですから……!」
「ちゅぱ、今がいいのだ。クリームもその下も、凄く美味しそうだから♪」
「ああ……」
 赤い顔で、もう一度、ノゾキの様子をうかがう。
 彼の口が声なく動いた。
(「沢山楽しんでねん!」)
 それは、このフロアに限らず、誰にでもとってきた姿勢だ。
 紗綾もさっきは、つんけんしたけれど、そういえば蓮とこうしているのを、チョコレートソースな敵の出た喫茶店で見せ合ってた人だった。
 永代の視線、スケベな目的にブレはなくとも、その中に思いやりを感じる。
「蓮くん……いいですよ……」
 気持ちを弟に戻すと、シャツに続いて、短いスカートを外させた。

「……うん、美味」
 蒼眞は結局、適当に盛ったスイーツを堪能していた。
「味の予測がつけられないのはなんだけど、どれもおいしく頂きました」
 行きかう従業員の、ヒラヒラから覗く脚や尻も楽しみつつ。
「ありゃあ、前から後ろからヤラレてんなぁ。……んん?!」
 するうち、給仕コスの張本人であるカフェが、厨房から姿を現す。
 大きめのワゴンを押してきた。
 載っている料理は。
「エル、だよな?!」
 思わず駆け寄った。他の参加者も集合した。
 頭の後ろに両手を敷き、ガニ股の仰向け、丸晒しポーズ。
 周囲には、ホイップ、チョコクリーム、ハチミツなどなどが、絞り袋からデコレートされており、いわゆる女体盛りと違うのは、食べ物で要所を隠すようにはデザインされていないところだ。
「少しずつ盛ってペロペロしてくださいね?」
 ちょっと顎を引いたエルの、下腹部越しの言葉を、みなに促されて中央に進みでた冬美は聞いた。
「エルちゃん、すごいよぉ。では、わたしから口をつけさせてもらおうねぇ」
 ワゴンの押手をカフェから代わって握ると、うんと身を乗り出して舌をエル自身に届かせる。
「はむ、ぺろ、くちゅ、ちゅっ……」
 そこにクリームを運んでは、またそれを舐めとり。
「あはっ……あん……あひっ!」
 最初はくすぐったさを感じていたようなエルも、やがて息が荒くなってくる。
 自分を取り囲むみんなにも振る舞う旨を、まだ喋れるあいだに伝えた。
 冬美のお尻も、身体を支えるうちに突きだされるような格好になって、うしろにまわったカフェが、その腰を掴んだ。
「冬美さんも、『仲良し』しませんか……? 絶対に気持ちよくしますよ……」
 返事は待たない。
 気弱で縮こまったようなカフェだが、猫背を直すとオウガらしい体躯を持っているとわかる。
 U字のシリコン支えのナカに、シリコン棒を力強く届かせた。
 ワゴンの支柱がギシギシと軋む。
「激しく行きますよ……声我慢しないで下さいね」
「うん♪ はあう、……ひん!」
 重なっている3人に、見るだけの者もあり、ダイブして参加する者もあり、お祝いの無礼講が許されている。
 咲笑は、褌を緩めると、ワゴンの台に登り、エルの身体をまたぐように両脇に足を置くと、冬美の頭を見下ろして声をかけた。
「んっ……冬美さん、そろそろ喉が乾いてはきませんか?」
 エルの部分から、液まみれの顔をあげて、大きく口があけられた。
「私自家製のドリンクを出せますので……どうか零さず、飲んで下さいぃ……」
 言うが早いか、ひとすじに、垂れる。
 じょろろろ……がぶ、がぼぼ。

 貸し切りにしておいて良かったのは、レストランはもうパイ投げ会場みたいになってしまっていたからだが、ケルベロスがヒールをかけてくれることは知っていたし、支配人の女性は始終ニコニコしていた。
 今はまた、カフェのが結合部の見える姿勢で入っていて。
「それでは最後は全員入った記念写真で♪」
 エルのセッティングで機器が置かれ、クリームまみれの客とスタッフとが、適当に入るようにし、全部丸見えなポーズで揃った。
 前列の中央には冬美。お相手は、蒼眞。
「みんな、ありがとねぇ。レッツゴー、チーズぅ」

作者:大丁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年7月2日
難度:易しい
参加:7人
結果:成功!
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