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ケルベロスたちの投票により、アダム・カドモン率いるダモクレスとの決戦を行う事が決定した。
すでにダモクレス軍を率いるアダム・カドモンは、惑星級星戦型ダモクレス「惑星マキナクロス」と共に既に太陽系に侵入し、太陽系の惑星の改造を行いながら、火星まで到達。その後は地球を避けて金星、水星方面に移動し、太陽系の全ての惑星の改造を完了させた上で、地球に向けて進軍してくると想定されている。
アダム・カドモンの目的は『機械化した惑星の運行を制御し、グランドクロスを発生させる』、グランドクロスは、宇宙版の『季節の魔力』であり、その魔力で『暗夜の宝石である月』を再起動させ、地球のマキナクロス化を行おうとしているのだ。
予知を得たゼノ・モルス(サキュバスのヘリオライダー・en0206)は、最後の戦いに挑むケルベロスたちの前に立った。
「万能戦艦ケルベロスブレイドで月面に移動したあと、魔空回廊から現れる星戦型ダモクレスを迎撃し、月の制圧を阻止……これが作戦の概要だよ」
ダモクレス軍は、惑星の機械化と同時に、魔空回廊を利用して、月面遺跡の内部に直接、星戦型ダモクレスを転移させ、月遺跡の掌握を行おうとしている。
暗夜の宝石の制御を司る複数の防衛地点については、聖王女エロヒムからの情報により判明しているのだが……。
「敵は魔空回廊を使って直接月の内部に転移してくる。万能戦艦ケルベロスブレイドで迎撃できないんだ。だから、遺跡内部の防衛地点で直接、転移してくるダモクレスたちを待ち受けるしかない」
続いてゼノは予知された敵の動きについて説明を始めた。
「敵は1つの地域につき3体のダモクレスを投入してくる。最初のダモクレスが現れてから8分後に、もう一体。更に8分後に、もう一体が魔空回廊から出現するんだ。素早く敵を撃破しなければ、複数の敵を同時に相手しなくちゃいけなくなるよ」
勝つのが難しい場合は、遺跡を破壊して撤退する決断も必要になる。
暗夜の宝石の遺跡の破壊はできれば避けたいところだが、地球のマキナクロス化を防ぐためにはやむを得ないだろう。
「そうならないためにも、8分以内に確実に敵を撃破していこう。落ちる防衛拠点が少なければ少ない方がいいのは明確だからね」
この戦いに勝利したあと、暗夜の宝石を利用する事が不可能になる場合があるので、できるだけ遺跡を無傷のままにしておきたいところだ。
ちなみに、大菩薩決戦時の遺跡はマスタービーストが改造を加えていた為『邪悪な神の神殿を思わせる禍々しい雰囲気』だった。しかし、今回は暗夜の宝石の本来の姿なので、ヴァルハラっぽい荘厳な神殿内部のエネルギーが枯渇して停止した不思議機械がある区域となる。
「今からみんなが担当する防衛拠点に現れる敵の説明をするから、よく聞いてね。敵のグラビティの詳細は後で配るけど」
一体目に出現すると予知されているのはアプロディーテーという名のダモクレス。研究者タイプだ。
ダモクレスが良く使うグラビティーの他、両腕から絶対零度の輝く風を放ち、複数の敵をまとめて凍らる。
二体目はエニューオーという名のダモクレス。見た目はサキュバスのようだが、ダモクレスである。
ダモクレスが良く使うグラビティーの他、暴風を伴う強烈な回し蹴りで、周囲の敵を守りごと薙ぎ払う。
最後、三体目はエリスという名のダモクレス。
やはりダモクレスが良く使うグラビティの他、手に持つ二本のランスを高速回転させて、敵に無数の突きを繰り出してくる。
「遂に、ダモクレスと雌雄を決する時が来たね。月遺跡内部での戦いとなる為、ケルベロスブレイドの援護は受けられないけど、みんなならきっと勝利できると思う。ダモクレスの野望を砕き、勝ってみんなで地球に帰ろう!」
参加者 | |
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斉賀・京司(不出来な子供・e02252) |
ヴォイド・フェイス(クレイジーフェイト・e05857) |
端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288) |
千歳緑・豊(喜懼・e09097) |
比良坂・陸也(化け狸・e28489) |
北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570) |
ベルベット・フロー(紅蓮嬢・e29652) |
ルフ・ソヘイル(嗤う朱兎・e37389) |
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ヘリオンを飛び出したケルベロスたちの前には、美しく輝く地球があった。
北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)は相棒の一輪、『こがらす丸』とともに月面に降り立つ。
(「まさか再びこの宇宙間戦闘装備を纏う事になるとは……」)
二度目の月になんの感慨も抱いていないが、身につけ慣れていない宇宙間戦闘装備は別だ。これにヘリオンデバイスが加われば、結構な重装備になる。
(「場所が場所だけにしかたがないか」)
次にキョロキョロと恋人の姿を探すベルベット・フロー(紅蓮嬢・e29652)と飛猫の『ビースト』が着地した。
月の重力が非常に小さいため、着地の衝撃で軽くバウンドする。
「わわ……っ」
ヴォイド・フェイス(クレイジーフェイト・e05857)は、浮きあがったベルベットの肩に上から手を置くと、一緒に着地した。
「Hey、ベルヴィ」
「ヴォイドさん!」
端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)は、くるくる回る『ビースト』を抱き寄せて着地した。ほかの仲間たちも続々と着地する。
「ほれ、ビーストを返すぞ」
「ありがとう、熊ちゃん」
「行くぞ。ダモクレスが魔空回廊を開く前に、持ち場についておかねばならぬからの」
持ち場に到着後、ルフ・ソヘイル(嗤う朱兎・e37389)は『ジェットパック・デバイス』を起動させた。
仲間たちを空中に引き上げながら、月のウサギのシルエットを頭に思い描く。
(地球のウサギからささやかなお願いっす。月のウサギさん、月と地球のために俺達の勝利を祈ってくださいっす)
斉賀・京司(不出来な子供・e02252)も『チェイスアート・デバイス』の能力を発動させる。これで敵のどんな動きにもついていくことができるだろう。ついでに酸素供給装置がきちんと作動しているか確認する。
「さすがに地球外の環境で、死にたくはない故な」
ほどなくして空気が遺跡内部に流れ込む鋭い音が聞こえだした。
ケルベロスたちの前方が揺らぎだす。
千歳緑・豊(喜懼・e09097)は普段と変わらず自然体で、戦いが始まるのを待った。
予知で魔空回廊から現れる敵のことはわかっている。一番手は自分を作った、いわば『母』とも言うべき存在のアプロディーテー。二番手、三番手のダモクレスはかつての同僚だ。
「月にこういう形でかかわるたぁね。ところで豊よ、敵と知りあいだってな」
「そうそう。おトヨさんの知り合いが来るんだって?」
比良坂・陸也(化け狸・e28489)とヴォイドが何気なく尋ねると、豊は前を向いたまま、ぽそりと呟いた。
「そうだなぁ。槍を持った二人は同僚、もう一人は……親、みたいなものかな」
計都が驚きの声をあげる。
「千歳緑さんと関わりのある相手とは聞いていましたが、同僚と親とは……。とはいえ、退けない以上は全力でぶつかるだけです!」
「うん、別に遠慮しなくていいよ。陸也君とヴォイド君もね。親といっても、先に殺した兄たちほど仲もよくなかったし。同僚二人は……嫌いじゃなかったけどね」
定命化を受け入れた瞬間から、この時がくるのはわかっていた。兄たちを手にかけたときもそうだったが、とっくに覚悟はできている。
豊はウェポンエンジンの出力を調整して姿勢を安定させた。
「む!」
京司が悪神の瞳をかっと見開く。簒奪者の鎌をくるりと回し、溶けていく空間に向かって身構えた。
「最初の客がお出ましだ。全力でもてなすぞ」
●
アプロディーテーは舞踏会場に赴くような優雅な足取りで、ケルベロスが放った弾幕の雨と状態異常の風が渦巻く遺跡の中へ進み出てきた。
「お前たちの動きは計算済みです。ダモクレス全体のために、私は喜んで捨て石になりましょう。バトンを渡す『我が子たち』の勝利を信じて」
「どうやら思い出話をする余裕はなさそうだね」
久しぶりに会う設計者を前にして、豊は楽しそうに目を細める。
「なれなれしく話しかけないでちょうだい。失敗作は『我が子』と認めていないの」
アプロディーテーが両腕をあげる。
絶対零度に冷やされた空気中の結晶が、ダイヤモンドダストになって輝きながらケルベロスたちに吹きつけた。豊をダモクレスを裏切った愚か者と断罪するかのようにきらめき、無数の結晶片が極寒の月基地をさらに冷え冷えと演出する。
こちらに状態異常をつけるだけつけて弱体化させておき、次に出る攻撃者に繋ぐつもりのようだ。
「こっちにもヘリオライダーの予知がある。お前たちの作戦はお見通しだ!」
計都は『こがらす丸』と人機一体を果たした。
「やっぱり計都くんロボじゃないっすか~!!! やだー!!」
ルフが茶々を軽く流して、計都は機巧砲鎚【嶄巌】を敵に向けた。
唸りをあげて銃身が回転し、秒間数十発の弾丸をバラまいた。発砲で焼けついた砲身から赤い陽炎がたつ。
『俺の全身全霊の一撃、受けていただこうか……!』
【嶄巌】そのものを炎の鎚に変えて間合いに飛び込んだ瞬間、ドリルのように回転させたアプロディーテーの腕が床から這いあがってきた。
炎の鎚がアプロディーテーの頭部を捕え、ヘルメットを粉砕する。
同時にエリスのスパイラルアームが『こがらす丸』の装甲にヒビを入れた。
相打ちだ。
人機一体がとける。
「う……ぐっ」
「計都!」
『ビースト』に守られたベルベットが、ケルベロスチェインで守護魔法陣を描く。
「大好きな緋色蜂のマブ達は私たちが守る!」
ヴォイドがカラフルな爆発を起こして士気を高める。ちょっぴりユーモアを添えて。
「メディックなんだからミニスカナース服着てくれば良かったゼ……」
驚くべきことに、アプロディーテーは相打ちから間髪入れず、全身のミサイルポッドを開いた。
この行動は間違いなくオーバーワークだ。発射口はミサイルが発射される前から白い煙を吐きだしている。
豊は地獄の炎を呼び出すと、獣の姿にかえて敵にけしかけた。
炎獣の牙が白衣に包まれた胴に食い込む。
「冷静な貴女らしくない行動だね。まさか自滅するつもりなのかな?」
「ええ、壊れても構わないわ。ダモクレスが勝利すれば、また――」
無数のミサイルが飛来し、ケルベロスたちの体のうえで爆ぜる。
おそらく、アプロディーテーはこの戦いに赴く前に、どこかにバックアップを残してきたのだろう。
「負けて勝つ、か。その意気やよし。此は彼らの望んだ闘争で、今は前哨戦で、戦いの途中で……じゃから、まだ立ち止まるわけにはゆかぬ。お互いにのう」
もうもうとした煙を割って、翼を広げた鷹が飛びだした。ミサイルを撃ち放ったばかりのアプロディーテーに体当たりをかます。
括の手元に戻ろうとする鷹を、コアブラスターの光が撃ち抜いた。
鷹が鉄砲に姿を戻し、床に落ちる。
陸也は括の鉄砲に伸ばされた白い腕を、如意棒で突きはじいた。すかさず距離を詰め、足払いをかけて転ばす。一連の動作で床に落ちた鉄砲を拾い、バックトスした。
「受け取れ、括!」
「すまぬ。感謝するのじゃ」
京司が藤の花びらを袖から落としながら、陸也と入れ替わりに前へ進み出る。敵の顔を人睨みすると目蓋を伏せ、胸の前で印を結んで精神を集中させた。
床に膝立ちになったアプロディーテーがケルベロスに腕を向ける。――と、その腕が吹き飛んだ。
京司の呪いが爆ぜたのだ。
「……手前らにこう云うのは、もう何度目か。――けれど立ち塞がる方が悪いのだよ」
「腕がなくてもまだ戦える!」
気を吐くアプロディーテーの後ろで、空間が水あめのように歪みだした。
まずい。
次が来る。
「俺達の世界は俺達が守るっすよ。それが出来るってことを証明してやるっす! ヴォイドくん、みんなを頼むっすよ」
「OK、まかされた」
『距離、風速……もう全部OK! 俺は意思のある武器! 勿体ぶらずにドドンといくっすよ!』
ルフの叫びとともに大量の幻影弾が放たれた。幻影に混じるミニキャロットがアプロディーテーが放った閃光に砕かれ、オレンジ色の破片が飛び散る。
「ふん、無駄弾ばかりじゃないの」
「本命は――それだ!!」
「な!?」
アプロディーテーの眉間に穴が空いた。後頭部に開いた大穴から大量のオイルと歯車、砕けた基板が噴きでる。
動かなくなった体が床に叩きつけられ、はずんだ。
「別に好きでもなかったけれど……親殺しというのは微妙な気分なものだね」
吐いた言葉と裏腹に、豊の顔に笑顔がのぼる。
「しかし、初戦で予想外のダメージを受けてしまったな」
「それだけ敵も必死なのじゃよ」
「しみじみとしているところ悪いんだけど、次くる前にチャチャっと厄払いしちゃったほうがいいんじゃね」
ヴォイドは返事を待たず、全身の筋肉に力を込めた。妖しくも眩い光がフルフェイスマスクから放たれる。
『浄化されろオラっ! ……誰だ今「目がぁ、目がぁ!」っつった奴!?』
再び、遺跡に魔空回廊が接続された。
●
エニューオーは床の残骸にちらりと目を向けた。すぐにケルベロスたちへ目を戻す。そこに感傷の色はない。あるのは冷酷な光のみ。
「お待たせ~。さあ、コロシアイましょう」
計都が『こがらす丸』のマフラーを吹かす。
「ようやく平和への目処が立ったのに、まだ戦いたいのか!」
味方の弾幕に守られながら、アクセルを全開にして槍を構えるエニューオーに突進した。巧みなハンドルさばきで、逃げる敵を追い詰めてはねる。
お返しに見舞われたスパイラルアームを、ベルベットと『ビースト』の二枚盾が防いだ。
「いま邪魔をしたのは……あら、かわいいクソ猫ちゃん。串刺しになっちまいな!」
「させぬ!」
括は杜の荒魂を礫にして飛ばし、『ビースト』に伸ばされた槍を砕いた。
『ビースト』はニャンと鳴いて感謝し、ベルベットの後ろに逃げ込んだ。
「よくもやってくれたわね」
暴風をともなって回るエニューオーの脚に、豊が放ったグラビティの猟犬が食らいつく。
「やあ、久しぶり。相変わらず足くせが悪いね」
「うるさい!」
エニューオーは脚に猟犬を食らいつかせたまま、強引に振り切った。
前にでていたケルベロスたちのうち、何人かが薙ぎ払われ、床に突っ伏す。
「どう? あたしは失敗作のあんたと違うの」
勝ち誇るエニューオーに向かって滑空しながら、陸也はマインドリングから光の剣をとりだした。ヒットアンドアウェイで、すれ違いざまに防御しようとしてあげられた青い腕を斬りつける。
その時。
どぅん、と鈍い音が響き、遺跡が微かに揺れた。
「なんだ、いまのは?」
陸也の疑問に答えたのはルフだった。
「遺跡が爆破された……どこかのチームが撤退したみたいっすね」
「あは。ダモクレスが優勢ってこと? うれしい。あんたたちも早く尻尾巻いて逃げなさいよ。逃げないなら……」
エニューオーはミサイルポッドを展開させた。顔つきを一転させて、殺意をみなぎらせた凶暴な目を光らせる。
「死ね、ケルベロス!」
ベルベットと『ビースト』が仲間を庇いに入ったが、すべてを受け止めきれない。突破したミサイルが京司と括を直撃する。
爆発の煙が薄れると、京司は痛みをこらえながら簒奪者の鎌を投げつけた。
回転する鎌はエニューオーの翼をずたずたに切り裂いて、京司の手元に戻った。
敵が怯んだ隙をついて、ルフが爆発する拳を腹に見舞う。
「ちくしょう」
エニューオーは右腕で腹を庇いながら、左肘から先を回転させた。ルフの右頬を狙い――。
ヒットする前に、陸也が翼を失った背に金剛杵を叩きこむ。
『ヴァジュラ・マハル・サムスカーラーーラジャス』
エニューオーの体内に流れ込んだグラビティが荒れ狂い、雷光となって電子回路をショートさせ、暴風が内部機器を破壊する。
「一歩及ばす。残念だったな」
エニューオーは開いた口から煙を吐きつつ、床に崩れ落ちた。
また遺跡が揺れた。
続けてもう一回。
ダモクレスを撃退することができず、遺跡を破壊して撤退するチームがいくつかでているようだ。
「Oh、sh※t……! なかなかシビアの展開になってきぜ。てか、俺様たちもシビアな状況、ズタボロだ」
敵の猛攻を受けての二連戦、こまめに回復はしていたがダメージを拭いきれていない。このあとさらにもう一体と戦うを考えれば、いまベストに近い状態にまで体力を戻す必要がある。
「踊ろう、ヴォイドさん!」
「オーライ、On stage!」
何処から流れてくるたおやかな笛の音のうえで、琴の音が軽やかに弾む。滑るように動くベルベットの足先からグラビティがにじみ出て、冷たい床に魔方陣を描く。
『命の穢れを濯ぐ浄刹の舞。誠に流麗で神韻縹渺である! いざ、南無三!』
手拍子にあわせて床に咲いた純白の蓮華が、赤い仮面の発する慈愛光に照らされて燃えあがる。
炎の花弁は天高く舞い上がると、ひらりひらりとケルベロスたちのうえに降り落ちた。
三体目の敵エリスが魔空回廊からでてきた。
大破した二体を見てギリッと唇をかむ。
豊があいさつ代わりに地獄を猟犬を放った。
「やあ、エリス。ゆっくり話したいが時間が押している。悪いが早々にご退場願うよ」
「黙れ、裏切者!」
まともに攻撃を食らったにも関わらず、エリスは力強く駆けだした。強く床を蹴って、高く跳ぶ。
「ビースト、こがらす丸、ブロックするよ!」
進撃を阻むベルベットと『ビースト』、『こがらす丸』を、高速回転する二本のランスで次々と突き落とし、迎撃動作に入ったルフの右肩を抉って相打ちに持ち込んだ。ボディに入ったダメージを無視して豊に迫る。
「止まれ!」
後方から計都が放った竜砲弾は、胸から放たれた閃光で焼き尽くされた。
が、それは敵を油断させるためのおとり動作。
エリスが両肩に出したミサイルポッドがいきなり爆発した。
赤いマスクが、してやったぜ、と笑う。
「俺様もやるときはやるのよ」
「く……」
京司は豊の前に回り込むと、双眸をぎらつかせてエリスをにらんだ。括と陸也が脇を固める。これが最後、出し惜しみはなしだ。
「「「いざ参るぞ、エリスとやら!」」」
体に残るグラビティを絞り出し、三位一体の攻撃を放つ。
『溢れる水の如く、藤の花よ。朝日に目覚める、五芒星よ。開放の途へ就け』
天空から吹き流れる一陣の紫風がエリスを芯に巻いた。光の鷹がひろげた翼でエリスを切り裂きながら紫風とともに巻き上がり、紫に煌めく流星群を呼び寄せてエリスを叩きのめした。
それでもエリスは執念で豊の元にたどり着いた。
豊はかつての同僚を、死刑台の微笑で出迎える。
「君たちが誰かに倒される前に戦えてよかったよ。永久にさよならだ」
エリスの額に突きつけたリボルバーが灼熱の炎を吹き、ダモクレスの野望の一角が灰燼に帰した。
塵になって落ちていくエリスを、括が見送る。
「蘆原の地を、民を、デウスエクスの流儀に染めさせるわけにはゆかぬでの。すまぬとは、言わぬよ」
月の上を星が流れる。
最終決戦の時が迫っていた。
作者:そうすけ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年6月17日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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