迎撃、星戦型ダモクレス~影法師

作者:baron

「アダム・カドモン率いるダモクレスとの決戦を行う事が決定しました。これが、最後の戦いとする為にも、全力を尽くさねばなりません」
 ユエ・シャンティエが緊張した面持ちで説明を始める。
 現在、アダム・カドモンが座上する、惑星級星戦型ダモクレス『惑星マキナクロス』は、亜光速で太陽系に侵攻、太陽系の惑星の機械化を開始しているらしい。アダム・カドモンの目的は『機械化した惑星の運行を制御し、グランドクロスを発生させる』事だと予知されている。
 グランドクロスは、宇宙版の『季節の魔力』であり、その魔力で『暗夜の宝石である月』を再起動させ、地球のマキナクロス化を行おうとしているのだ。またダモクレス軍は、惑星の機械化と同時に、魔空回廊を利用して、月面遺跡の内部に直接、星戦型ダモクレスを転移、月遺跡の掌握を目論んでいる。
「ゆうわけで皆さんには、万能戦艦ケルベロスブレイドで月遺跡に急行し、遺跡の防衛を行ってもらいたいゆうわけですわ」
 そう言ってユエは軽く頭を下げてから、説明を続けた。
「肝心の月遺跡の制御を奪う為にダモクレスが狙う地点は、聖王女エロヒムの協力により予知することが出来ました。この地点に先回りし、魔空回廊から転移してくる星戦型ダモクレスを迎撃、月遺跡を守り抜くんが、今回の作戦の目的となります」
 敵は魔空回廊を通じて星戦型ダモクレスを送り込んでくる。
 なんでも1つの地域につき投入されるダモクレスは3体。最初のダモクレスが現れてから8分後に、もう1体。更に8分後もう一体が魔空回廊から出現する。
「素早く敵を撃破する事で各個撃破が可能ですが、逆に、倒すのに手間取れば、複数の敵を同時に相手しなければなりません。勝利が難しい場合は、遺跡を破壊して撤退する決断も必要になるでしょう」
 暗夜の宝石の遺跡の破壊はできれば避けたい。だが地球のマキナクロス化を防ぐためには、やむを得ないとユエは告げた。
「宇宙での行動を前提とした星戦型ダモクレスが投入されますが施設の運用上、小型ないし中型のダモクレスが敵となるでしょう。この地図と資料は担当地区の一つですが、此処にはシャドウあるいは影法師と呼ばれるダモクレス。そしてその世話をするメイド型ダモクレスが八分ごとに合計三体出現します」
 ここでユエは三体のダモクレスを簡単に書き記した。
 いかにも戦闘型と言わんばかりの個体と、メイド型ダモクレス、そしてそれらを援護・統括するメイド長型ダモクレスだ。判っているのは概要だけなので、戦闘型がリーダーなのか、それともメイド長型そうなのかは分からない。あくまで外見と予知を組み合わせた、戦闘パターンを述べるのみである。
「まずやって来るのは露払いであり現地確認のメイド型。次に戦闘タイプのシャドウ。最後に援護要員としてメイド長型がやって来ます。最初の個体は攻撃型ではないので戦い難くはありませんが、時間を掛けると大変な事になるという意味では厄介です。気を付けてくださいね」
 ダモクレスは戦闘しかしない相手であっても論理的で愚かではない。
 それなりにクレバーに戦うと思われるので、一体毎はともかく、複数いると危険な事になる。やはり八分以内に倒すことを優先するべきかもしれない。
「それで戦闘方法は?」
「メイド型はどちらも槍とレプリカントの能力を。シャドウはナイフとレプリカントの能力を使用します」
 最後に戦闘データを付け加えてその場に居るメンバーが確認するのを待った。
「遂に、ダモクレスと雌雄を決する時が来ました。金星が近いとはいえ数カ月もかかってしまう為、惑星の機械化を止めることはできません。ゆえに実質的にこの戦いは宇宙の未来を賭けて戦う事になるでしょう」
 月遺跡をダモクレスに掌握されれば、グランドクロスを用いた宇宙規模の『季節の魔力』により、地球は瞬時にマキナクロス化し、決戦は敗北となってしま。それを阻止するには、月遺跡を守り抜くか破壊せねばならない。
「遺跡内部での戦いとなる為、ケルベロスブレイドの援護は受けらませんが、皆さんならばきっと勝利できると信じておりますえ」
 ユエはそういうと深々と頭を下げて皆の相談を見守るのであった。


参加者
タクティ・ハーロット(重喰尽晶龍・e06699)
ウォリア・トゥバーン(獄界の双焔竜・e12736)
セット・サンダークラップ(青天に響く霹靂の竜・e14228)
神無月・佐祐理(機械鎧の半身・e35450)
チャル・ドミネ(シェシャの僕・e86455)
 

■リプレイ


「ダモクレスも大規模な攻撃を仕掛けてきたっすね……」
 セット・サンダークラップ(青天に響く霹靂の竜・e14228)は出撃したケルベロス達を眺めてそう溜息を吐いた。
 相当数の仲間たちが参加したが敵はこの三倍は来襲するとの事だ。
 今回の任務に合わない、潜入・工作に向かない戦闘用の総数は数えきれないだろう。
「来るなら仕方がないよねぇ……」
 タクティ・ハーロット(重喰尽晶龍・e06699)達は予知された道を通り、遺跡の中にある指定位置を目指す。そこに辿り着く過程で安心できることはただ一つ。
「けど、一般人に手を出してないってのは個人的に良き。だからまあ、正面から受けて立つのみなのだぜ!」
 ダモクレスは今回、資源としてグラビティを収集しに来たのではない。
 あくまで決戦を行い『ダモクレス流の導き方』を行うつもりなのだ。
 負けたら機械化で取り込まれるというマイナスはあるが、それでも無意味に虐殺されるわけでは無いのが救いであった。
「ええ。この月……暗夜の宝石での戦い、ここを制して地球を守るっすよ!」
 彼の言葉に頷きセットは身構える。
 向後の憂いなし、ならばあとは戦うまでだ!
「遂にここまで来ましたか」
 神無月・佐祐理(機械鎧の半身・e35450)もまた感慨深げに戦歴を思い出した。
「宿敵・アルギエバ戦以来、かしら。これで終わらせよう、ということですね。『サリー』そして皆と一緒に地球へ帰りましょう!」
 佐祐理は久しぶりに右目の奥に痛みを覚える。
 融合手術によって組み込まれた機械の体。まさに半身たる存在の意識を感じ取った。
 ダモクレスの好きにはさせないと心が高鳴る。

 次第に殺気を感じて正面に視線を移すと変化が表れてきた。
 その先には、変転しつつある空間……。魔空回廊の出現が生じ始めている。
「まだ地球について知りたい事は多いのです。機械化などさせるものですか」
『敵性体の反応を確認』
 仲間を引き連れて飛行を開始するチャル・ドミネ(シェシャの僕・e86455)の前に、空間を割って敵が現れた。
 その姿はいわゆるメイド姿。戦場には似合わない筈だが、主人の露払いと言う意味では正しいのかもしれない。
「ダモクレスなど退けて機械化された星々も取り戻しましょう!」
 チャルは勇ましい事を口にしながらも、その視線は来る途中で見つけた通路に向ける。
 そこは脱出に向いた場所であり、イザとなれば仲間を押し込め殿軍を行うつもりだ。
「ククク。久方ぶりに前線にも出てみるものダ」
 ウォリア・トゥバーン(獄界の双焔竜・e12736)は力強くただ笑う。
 こんなにも面白き戦いが、こんなにも心躍るような死闘がある。
 それも未来を懸けた戦いだ。
「ただの『ニンゲン達』が、『神』と『より良き明日』の為に争う。そしてお前達も今此処に立つ『明日を憂う者』ダ』
 敵として申し分なし。
 事此処に至っては、互いに『明日』を懸けて戦うべき時は今。
「……後は、オレ/我の炎が見定めるのみ。故に……星の運命を、裁きと下さん!」
 これこそが闘争であろう。蹂躙で無く、駆除で無く……。
 だからこそ、この魂が、燃え滾る!

 歪む空間より現れるメイドは攻撃するよりも先に箒を払った。
 いや、イメージに引きずられてしまったが箒ではなく槍だ。
「先に動けるなら攻撃するぜ!」
『敵対行動を認識。迎撃に当たります』
 タクティが左手に付けた籠手より衝撃波が放たれたのだ。
 治療役である彼も味方が無傷ならば無理に回復する必要は無い。
 緑色の籠手に着けられた結晶質の棘がグラビティを操るが、放たれた歪みは槍によって防がれてしまう。
『排除します』
 回転する槍は静かに肩口に添えられ、いっそ優雅な動きで突き出された。
 だがその一撃が刺さるよりも、近くにいたケルベロスの方が一瞬速い!
「やらせないっすよ! 皆さん、コレを使ってくださいっす!」
 盾役のセットは改造したドローンを周囲に展開。
 防御行動を行うだけではなく、収集した情報を高速演算して仲間たちに教えてくれる短気予測装置だ。
 彼はその導きに従い、槍の動きが最大級に加速する前に飛び出たのである。
「あたた……」
「そのまま掴んでイロ!」
 セットが槍を腹筋(?)で押さえている間に、ウォリアが勢いを付けて飛びついた。
 高速の飛び蹴りを浴びせるが、メイド型ダモクレスは槍を斜めに受け流す!
「ヌウ! そうでなくてはな!」
「……長期戦になりそうですね。時間は掛けたくないのですが」
 ウォリアは一筋縄ではいかぬ敵に興奮しているが、佐祐理の方はそうもいかない。
 次に出て来る敵の到着までに倒せるかと思いつつ、古き星座を描いた印の上をなぞる。
 すると前衛陣の周囲に魔力の柱が並び立ち、相互にラインを引いて結界を築いた。
 星の輝きが周囲に満ちるが、その間を割って誰かが飛び出していく。
「そつのない態度だけでは及第点しかあげられませんよ!」
 そこに飛び込んできたのはチャルであった。
 星を示す輝きの中から、彗星の如き体当たり。
 空を飛んでいる事やメリュジーヌの体も合わせて、戦場を引き裂く流れ星であるかのようであった。

 そして数分の時間が過ぎ去り……おそれていた自体が発生する。
「ぬう。八分目! だが我/オレ達ならばやれるハズダ!」
 ウォリアが忠告を放った時、周囲の空間が歪み始めていた。
 メイド型ダモクレスは満身創痍で槍は折れ、敗れた装甲から内部機構が見え隠れしていたがいまだに健在。
 盾役であった事や一同が五名と言うこともあり、回復せずとも何とか保ったというところであった。
「本当なら万全にしときたいところだけど、仕方ないかな。ここが力の見せ所だぜ」
 タクティは精神力で編み上げた障壁を張っていたが、その手を緩めて攻撃に切り替えた。
 ここで倒せないと敵が二体に増える。ミミックにも攻撃を継続させつつ、手甲にグラビティを集めて殴り掛かる!
「なんとか一体ずつ倒せれば御の字っす」
 セットは鉄槌を掲げて思いっきり振り下ろした。
『演算終了。残存グラビティを臨界に!』
 これに対しメイド型ダモクレスは残るエネルギーをビームに変えて解き放った。
 剥き出しいなったコアから閃光が迸る!
「くっここで倒せないとは流石ダモクレス……。ですが、倒しきれない時も落ち着いて一体ずついくっすよ。それで何とかなるっす」
 だが既にあのダモクレスの命運は尽きている。次の敵がフリーハンドに成るかもしれないが、それも長い事ではない筈だとセットは希望をつないだ。
「それもそうだナ。……さて、来たれ星の思念、我が意、異界より呼び寄せられし竜の影法師よ……神魔霊獣、聖邪主眷!! 総て纏めて……いざ尽く絶滅するが好いッ!」
 ウォリアは軽く腰を落として地面を殴りつけた。
 さすれば吹き上がる地獄の炎が、四方より登りて彼の姿を象る。
 彼らは手に刀や槍、あるいは大挟みなどを握って突撃し始めた。
「援護します。当たって!」
 佐祐理は杖をニワトリに戻して突撃をさせる。
 敵の動きを止めて仲間の攻撃を当て易くするためだ。
『任務……完了』
「その覚悟、見事。メイドの務めを果たしましたね。しかし私たちは負けません!」
 チャルの放ったや否は、振動しながらダモクレスの胴体を両断していく。
 だが僅かに残った力でソレを掴み取り、倒されまい……いや仲間の為に時間を稼ごうとしたのだ。

 そして現れた敵が行動を始める!
「九分目! ついに来たか! オレ達の攻撃に、我らを前に耐え抜くとは天晴ッ!」
『現場の引継ぎを終了。掃討を開始する』
『任務……りょう、かい』
 ウォリアの言葉をかき消すように、新手から放たれたミサイルが前衛を引き剥がそうとする。
 おのれと唸るよりも、見事・天晴と称えるのが歴戦のケルベロスであった。
 何より仲間を信じる鋼の絆と言う意味では負けてはおらぬ!
「っ! 気になるがここは譲るぜ。一足先に整えなきゃな」
 残った敵も倒せることと、相手の攻撃を前衛陣が受けてしまった事も含めてタクティは回復に専念。彼の代わりにミミックが頑張ってくれることを信じて、仮面より流体金属を解放する。
 それらは仲間を守ると同時に、その動きを導く力になるはずだ。
 なお……。
「苦しまないようにオレの手で眠らせて……あれ?」
 セットがトドメを刺そうと鉄槌を握り直した時、なんとタクティの連れてるミミックがガブリとトドメを刺していた。
 珍しいがタイミング的には良くあることだし、ドンマイ!
 というか彼自身、仲間に掛けた援護術の回数は結構な数に渡っている。
 もしその一部で攻撃に変えていたら倒していただろうし、ここから何度も攻撃するのだから、長期戦を考えたらその方が良いのは確かであった。
「オレの活躍ー!? まあいっすけどね。今回はこれが盾役の役目っす!」
 セットは苦笑いしながら電極を操りウォリアの意識を活性化。
 なんだかスマンなという言葉にいいっすと返して、本格的な戦いに備えるのであった。
「仕切り直す! ここガ我/オレ達の正念場!!」
 ウォリアは新手に向かって飛び掛かりながら、全身の細胞が若返るのを感じた。
 敵は強く今まで以上、神を名乗る連中や巨大ダモクレスの全力攻撃を除けばこれ以上は無い強敵だ。
 今奮起せずして何時愉しもう。流体金属を溶かして爪に変えて殴り掛かる。もし先ほど見られていなければ蹴りを放つのが万全だったが、それだけが心残りだ。
「確かに強敵ですね。ですが久しぶりの戦闘とは言え、気後れはしませんよ。ともに戦って勝利しましょう!」
 そして皆と一緒に地球へ帰りましょう!
 佐祐理は気合を入れ直す意味もあって、珍しく両眼を見開いた。
 そして湧き上がる気持ちを叩きつけるべく、何もない場所を蹴って大気とグラビティを混ぜ合わせたのである。
 それは星となって駆けメタルカラーのダモクレスを目指してく。
「定命化したのはダモクレスの手に落ちる為などでは断じてありません」
『見解の相違である』
 チャルの思いに鋼のダモクレスは切り返した。
 言葉に言葉を、ぶつかり合う肉の体に鋼の体を。

 グラビティが二人の間ですれ違い、弾け合いはしない。
 相殺すれば流れが変わったかもしれないが、ダモクレスは直撃の後に手刀に添えられた刃を振るう。
 代わりに肉厚のドラゴニアンが割って入り、辛くもチャルは窮地を逃れたのだ。
「コギトエルゴスムの力などより善きものを私は手に入れました」
『証明せよ。力なき反論は無意味である』
 勝ってそれを証明します!
 チャルは瞳でダモクレスを睨み、同時に守ってくれたセットの逞しい背中に礼を言う。
 背中越しの視線で言葉が通じないなど戯言に過ぎぬ。
 力を貸し合い助け合う事で目的を遂げるケルベロスならば、認め合うのは日常茶飯事だ!
「次も耐えられるか? 無理だったら何とかするんだぜ」
「無問題っす! 痛いけど! 耐えられるっす!」
 タクティは握り締めた拳を開き、セットに向けたグラビティを周辺に散らした。
 流体金属が彼を中心として周囲に張り巡らされ、動きの素早い敵に追いつくための一助となる。
 そして後ろから駆け込む音がした。
「合わセロ!」
「おっけ! とーっりゃやあ!」
 ウォリアとセットのダブル・スターゲイザー!
 ケルベロスでも有効打であるとメジャーな技だが、二人のドラゴニアンが同時に放つのは珍しい。
 まあ先ほどミミックが倒したのと、どっちが珍しいかと言えば謎なのだが。
「両方当たった?! なら行ける……? そうよね、サリー! 先に行きます。動きを止めましょう」
 佐祐理は半身のもたらす直観に従い、当たれば倒せる道が続くと杖をニワトリの姿へ。
 体当たりする鶏は危うく外れかけたが、既に相手の動きも鈍っている。
 なんとか直撃、ダメージを与えつつ相手の動きを拘束する事に成功した。
「了解。少々痛くしますよ」
 チャルが見せたのは、一見ごく普通の掌底打ち。
 だが掌から極小の棘を飛ばしているがゆえに、受け流すことも守ることも許さぬ一撃として迫った。
 いかに素早きダモクレスとて、ケルベロス達が放った連携の前に避ける事は能わず直撃したのである。

 そして幾多の技と技がぶつかり合い、グラビティがむせ返るほどに周囲に充満してく。
 やがて『その時』が訪れた。
 勝利の天秤はケルベロス達と星戦型ダモクレス、そのどちらに傾くのか!?
「八分経過!」
「……ジャスト……次の相手だぜ」
 タイムキーパーであるウォリアと、回復役であるために最も観察しているタクティの声が同時に響く。
 魔空回廊の歪みが終わりを告げて、三体目の敵が出現したのである。
『……見事。どちらの健闘を、も、祈る。……祈る? 不可解。奇怪。だが……』
「悪くない? 意外と私もですよ。判らないのですか?」
 チャルの振り切った刃がダモクレスの胴体を両断した。
 彼の腹にはダモクレスの腕が突き刺さったままで、タクティの治療によって応急措置。回転を止めたに過ぎなかったのだ。
『メイド長レイス。戦闘を継続します。計測の時はまだ終わっておりません』
 現れた三体目のダモクレスは、何も持っていない方の指先で静かにスカートの端を持ち上げた。
 その宣言が聞こえたのか聞こえないのか、倒された方のダモクレスは分断された顔からグラビティが抜けていく。
 ゴーグルタイプの目であり発射口から、熱光線が放たれることはもうないだろう。
「降伏して欲しいのですが……」
「無理じゃねえの? これも戦争なんだぜ。……死に行くものに敬礼を!」
 佐祐理の悲しそうな言葉にタクティは首を振ってミミックと力を合わせ治療を始めた。
 カランと音を立てて、チャルの腹に突き刺さったままの手首が落下する。
「一番苦しい時は乗り越えたっすけど、なんだかほろ苦いっすね」
 先ほどの敵は攻撃役で防御力が低かったことや、一戦目から長期戦を想定したこともあって逆転を果たした。
 セットはもはや負けるとは思わないが、それでも戦おうとする敵を見て手を抜くのは失礼だと仕方なく戦う事にする。
「笑エ! ドウセ戦うのであれば笑って弔エ! 倒さねばならぬのであれば、我らは自らの手で終焉を刻むのだ!」
 敵も味方も尊敬できる猛者ばかりだ。
 気持ちよく戦った方がお互いの為である。
 ウォリアは勝機を見出せぬはずなのに挑むメイド長に対して、血の沸く思いを感じて挑みかかった。
 笑顔とは獣が捕食する行為だとはよく言ったものだ。

 三体目とは五分にも満たぬ戦いであった。
 しかしケルベロス達は最後まで気を抜かずに勝利をもぎ取ったのである!

作者:baron 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年6月17日
難度:やや難
参加:5人
結果:成功!
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